磐梯山の足長手長
福島県の磐梯山は,今は静かな美しい観光地ですが, この山は明治時代に大噴火があった火山です. 明治21年(1888年),7月15日の噴火では,山体の北側が大崩壊し, いくつもの村を襲い, 多数の死傷者をだしています. それ以前の歴史時代にも何度も噴火があったようです.会津に伝わる足長手長の民話は, 鳥海山の手長足長民話と同様, 噴火現象に関係のある民話のようです.
(あらすじ)
大昔,会津に足長と手長という夫婦の怪物が住んでいた.夫の足長は足が長く,会津盆地をひとまたぎできた.片足を磐梯山,もう片足を博士山や明神嶽にかけ,両手で空の雲をかき集め,盆地全体を真っ暗にした.妻の手長は手が長く,磐梯山に腰掛けて猪苗代湖の水をすくって会津盆地にばら撒いた. この夫婦は,おてんとさまを隠したり大雨を降らせたり,息を吹きかけて盆地の木や家などを飛ばしたり,悪いことを繰り返していた.人々はこの怪物たちにおびえて暮らしていた.
ある日,旅の僧がやってきて, その怪物の退治を始めた. 僧は磐梯山の山頂で, 「足長手長, おまえら威張っているが,できないこともあるだろうが」と言った.怪物は「わしらにできぬことなどなに一つないわ!」そこで僧は,小さいつぼをとりだし, 「よし,それならやってみろ,大きいなりをしたおまえらは,二人でこの小さなつぼに入ることはできまい.」 足長手長は怒って, 「あとで命はもらうぞ」と言って小さくなりながら二人いっしょにつぼの中に飛びこんだ. 僧はつぼのふたをしめ,それを法衣に包んだ.そしてこのつぼを磐梯山の頂上に埋め, 大石を載せて呪文を唱えた. つぼの中からは足長手長はどうしても出ることができなかった.
-その解釈-
おそらく,足長手長のしていた悪さとは, おもに磐梯山の噴火現象ではないでしょうか?大雨を降らせると言うわるさも含まれているので,,それだけではないと思います.手や足の長さとは,噴煙が上空に広がったり, 麓を覆ったりすることなどの比喩ではないでしょうか. もし,「風を吹きかけて木や家を吹き飛ばす」と言うのが噴火現象によるものだとしたら, 強い爆風を伴うような爆発的噴火があったことを示しているように思われます. ちなみに1888年の大噴火はきわめて爆発的でありました.磐梯山と同様に活動的な火山である鳥海山でも全く同様の手長足長伝説があるのは実に興味深いことです.
参考文献 福島の昔話 第1集 (著者出版社不明)