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鳥海山の手長足長

 鳥海山の西麓の海岸ぞいに有耶無耶(うやむや)の関というところがあります。国道7号線の秋田山形県境付近にあたります。この有耶無耶の関のいわれとなった民話がこの付近に伝わっています。


(あらすじ)
 昔、鳥海山に手長足長という鬼が住んでいました。手長足長は、手足の伸び縮みが自在で、手を伸ばしたり足を伸ばしたりして、麓の人々に悪さを働いていた。ときおり街道や村までやってきては人を食うなどの乱暴ぶりだった。
 鳥海山には大物忌神が奉られており、大物忌神は三本足の霊鳥を遣わして人々を苦しみから逃れさせようとした。この霊鳥は、手長足長が鳥海山の山頂にいる時は、「無耶」となき、里に下りてきている時は「有耶」と鳴いた。人々はこの鳥を、ありがたい大物忌神の使いだといって拝んでいた。
 貞観6年(632年)、慈覚大師は、仏教を広めるため東北地方をまわっていた。大師は鳥海山の麓で、手長足長に人々が苦しめられているのを知った。鬼を封じ込めるため、三崎山(有耶無耶の関付近)に護摩壇をつくり、不動尊像を置いた。
 百日間の火散の法の満願の日、不動尊像の目からすさまじい閃光が鳥海山めがけて走った。すると大地が鳴動し、鳥海山の頂きがはじけ飛び、手長足長も粉々に飛び散ってしまった。飛んだ鳥海山の頂きは、海に落ち、飛島になったと言う。

−その解釈−

 私の生れ故郷は鳥海山麓なので、この話は子供のころからよく聞かされました。手長足長などと言う怪物は、全く想像上のものだと思っていました。しかし、この怪物は、何らかの自然現象をあらわしたものと考えたらどうでしょうか。鳥海山付近で山から下りてきて人々に被害を与えるのですから、やはりこれは火山噴火と考えるのが妥当ではないでしょうか?自由自在に手を伸ばしたり、足を伸ばしたりするというのは、火山噴出物が鳥海山から麓へ到達する現象の描写のような気がします。そう言うと、あの雲仙の火砕流のようなものが一番しっくりくるのですが、鳥海山はあまり火砕流が発生しない火山のようです。したがって噴煙か溶岩流でしょうね。火山噴火の噴煙は上に向かって立ち上がるもののような気がしますが、1974年の噴火では、噴煙が地面に沿って降りてきてました。確かに麓に向かってたなびいたのを、小学生の私はみていまいした。あともう一つ可能性があるのは、泥流。1974年4月(確か?小学生の時の記憶なので曖昧)の噴火の時は、雪の上を泥流が流れ下りました。ある朝、鳥海山をみたら、長く黒い筋がこちらに向かってできていたのにはさすがにびびりました。
 慈覚大師の話の中で、「閃光が走って鳥海山の頂きが吹き飛ぶ」などというのは、相当規模のおおきな噴火をあらわしているような気がします。残念ながら、632年に大噴火が起きたと言う記録は無いようですね。でも、大規模な噴火でも古文書に記されていない、あるいは古文書が見つかっていない例は多いのではないでしょうか。十和田湖の八郎太郎の大火砕流でさえ、まともに記録はないのですから。ちなみに飛島は鳥海山よりもずっと古い地層でできていて, 噴火のときにできたものではありません.



参考文献
日本の伝説4 出羽の伝説 須藤克三・野村純一・佐藤義則 角川書店

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