白山火山
白山山系は石川,岐阜,福井の三県にまたがり,2000m級の山が連なっています。その中でも白山,大日山,経ヶ岳,丸山,願経寺山などは火山ですが,歴史時代に噴火の記録が残っているのは白山だけです。この火山は,白山修験道の霊場としても有名です。
白山はどんな火山か?
白山火山の山頂は標高2702mもありますが,火山本体はかなり標高の高いところだけです。標高が高く,アクセスが大変な山です。山頂付近には御前峰,剣ヶ峰,大汝峰の3つの主峰と,翠ヶ池,紺屋ヶ池などの火口があります。翠ヶ池は歴史時代にできたものとされています。この火山は歴史時代に何度か噴火が起きており,その記録が古文書として残されています。噴火らしき記録は奈良時代〜平安前期(706,853,859)にありますが,確実な噴火の記録は1042年からです。1547年から1659年にかけては1547,1554,1579、1582,1599,1600,1645,1648,1658,1659と噴火の記録が残っており、断続的に噴火が起きていたようです。これらの記録の中では,噴煙のことを童子,法師,坊主などという表現が成されています。たとえば1042年の記録では,二人の童子が土石を投げて室を埋め,その土石を掘った場所が2カ所あったとされています。これは二つの火口から噴煙があがったということでしょう。
白山周辺にもだいだらぼっち伝説が残されていますが,これも噴煙を表現したものでしょう。
霊場白山
白山は修験道霊場として有名な場所です。修験道で最も有名で勢力があったのは熊野修験道ですが,白山修験道はそれに次ぐものでした。その開祖は泰澄であり,奈良時代頃に活躍しました。泰澄は熊野修験道の開祖役行者に次ぐ超能力をもつ行者と伝えられます。白山修験道は,熊野修験道同様に,全国に広まっています。
修験道では,修験僧の前に現れる日本古来の神々に対し,権現号が与えられてきました。そして,その権現がそれぞれの修験道の主尊となっています。例えば,蔵王権現,熊野権現,箱根権現などがあります。白山の主尊の白山妙理権現は,女性の権現です。白山比刀iしらやまひめ),白山比女(しらやまひめ)と呼ばれていました。平安前期の噴火らしき記録では,この白山比女に位が授けられています。江戸時代には,白山権現は日本書紀に出てくる菊理媛神(きくりひめ)とされ,白山菊理媛と呼ばれました。
上記のように、噴煙が立ち上がると,童子,法師などと,擬人化されています。白山比女も噴火の度に現れていたのでしょうか?
泰澄の白山権現感得の伝説
白山で泰澄が白山権現を感得したのは泰澄36才の時,718年のことです。この伝説は,火山学的には大変興味のあるものです。いくつか異なった伝承があるようですが,共通する内容として,白山比女神は,白山山上の翠池に現れます。初めは九頭竜権現という9つの頭を持った竜の姿で現れます。九頭竜はこの付近では様々な伝承や地名として残されています。泰澄がその竜の姿に満足せずに,さらに祈念すると,最終的に真の姿である十一面観音の姿になったといいます。
翠池は火口湖でありますので,この伝承は噴火現象と解釈することができます。やはり噴煙の姿と考えられます。噴火の推移とともに,噴煙の形状が変化するのは当然のことで,その推移が九頭竜から十一面観音への変化として現されているようです。これとよく似た噴煙の変化は,1997年の秋田焼山火山の水蒸気噴火の際にみられました。約一時間の噴火ですが,このときの噴火では,前半では激しく水柱を立てた噴煙が観察されました。水柱とともに泥や岩塊が放出されたようです。そして,後半には,もくもくとした煙状の噴煙に変化してゆきました。秋田焼山の水蒸気噴火のように,初めは荒々しく柱のように立ち上がる竜,のちに穏やかな姿の十一面観音に変わったのではないでしょうか。なお,白山火山は水蒸気噴火を頻繁に起こしている火山で,この時の噴火もそうだったかもしれません。
参考文献
白山火山 石川県白山自然保護センター
修験道の本 学研