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沼沢沼の大蛇

 会津の金山町に沼沢沼という美しい沼があります。この沼は、小さいものの、十和田湖や屈斜路湖と同様カルデラ火山です。十和田湖の八郎太郎伝説と同様の、大蛇伝説が沼沢沼にも伝えられています。


(あらすじ)
 昔,沼沢沼に雄と雌の大蛇がすんでいた。建久のころ、領主佐原十郎義連は,この大蛇を退治しようと、家来五、六十人と共にいかだを沼に浮かべ、大声で怒鳴りつけ、沼に矢を放った。すると突然水が逆流して渦巻き、雷がとどろいて稲妻が光った。そのとき小山のような波が持ち上げられ、目玉をらんらんと光らせた大蛇が現れた。侍たちは矢を射るひまもなく、いかだもいっしょに水中に巻き込まれてしまった。沼はしばらく静かな波を立てていたが、また大きな波が起こり、十メートルも水柱をたてて渦巻いた。それがみるみる赤黒い色に変わり、苦しむ大蛇がのたうっていた。やがて大蛇はぐったりと浮かび上がってきた。すると大蛇にのまれたはずの佐原十郎義連が大蛇の上にまたがっていた。陸にあげられた大蛇の腹を切ってみると、家来たちのなきがらが入っていた。

−その解釈−

 この物語の内容を偏見を持って見ると、やはり噴火のように思えます。各地のカルデラ湖には,大蛇や竜と勇者との戦いの伝説があるようです。そして、その戦いの場面の多くは,いかにも噴火を思わせるものです。

 さて,沼沢沼火山には,有史の噴火記録はありません。この沼は約5000年前に噴火してできたものであることはわかっています。その後の噴火の痕跡は、地質学的にも残っていません。しかし、地質学的に噴火の痕跡が残るのは、ある程度規模の大きな噴火であり、そうでない噴火は地質調査でもわからないことがあります。歴史記録というのも、案外あてにならないもので、十和田湖の平安時代のかなり大規模な噴火でさえ、(おそらく数千人は被災者がでたはず)まともな記録が無いのです。この沼沢沼の物語についても、噴火があったという証拠は何もありません。しかし、だからといって噴火が起きていないとは言えなさそうです。



参考文献
やさしく書いた会津の伝説 (村野井幸男編.歴史春秋社)

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