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殺生石伝説

 栃木県と福島県の県境には那須火山があります。那須火山は南北に広がり、いくつもの嶺がありますが、もっとも有名なのは那須茶臼岳でしょう。茶臼岳のかなり高いところまでロープウェイで登ることができ、いつも観光客でにぎわっています。その那須茶臼岳の麓に殺生石があります。


(あらすじ)
 九尾の狐を探して那須野に赴いた三浦介義純と上総介広常は、那須野の野に火を放ち、草を燃やし続けた。ついに火に追われた九尾の狐は二人の前に巨大な姿を現した。義純の一の矢は脇腹に、二の矢は首筋を貫き、広常の長刀が切り伏せた。息絶えた狐は大石と化し、後にこの石に近づくものは毒気に当たって死んでしまい、人々は恐れて殺生石と名づけた。

−その解釈−
 
那須茶臼岳は活火山であり、いつかまだ噴火する可能性があります。殺生石はこの茶臼岳の山麓にあり、その周辺の温泉とともに、茶臼岳の火山活動に関係したものです。火山では、有毒なガスが発生することはごく普通であり、噴火活動がおきていないときでも定常的にガスが発生しています。ガスが発生するのは必ずしも火山の火口付近とは限らず、火山の周辺でも危険な場所はあります。殺生石はこのようなガスの発生地点です。
 以前、私のところへ某TV局から問い合わせがありました。福島県安達太良火山で4人もの登山客が火山ガスでなくなるという事故があり、東北地方ではそのような有毒ガスを発生する火山が他にどこがあるのか、というものでした。そういわれると、実は東北地方にある火山のうち、かなり多くの場所で有毒ガスが発生してます。安達太良火山の事故の前にも、八甲田火山の山麓でも演習中の自衛隊員が火山ガスで亡くなりました。他にも、恐山、秋田焼山、八幡平、岩手山、鳴子、鬼首、蔵王、吾妻などといった火山で有毒ガスが発生しています。また、北海道や九州の火山でもそのような火山はたくさんあります。諏訪之瀬島など、離島の火山でもそのような場所があります。
 火山で発生するガスにはいくつかの種類があります。炭酸ガス、二酸化硫黄、硫化水素、塩素、フッ素などです。場所によって発生するガスの種類も変わりますが、同じ場所でも火山活動の変化によってガスの成分が変わったりします。最近、岩手山の火山活動が活発化しつつあることが報道されていましたが、以前はにおいがしなかった場所で、強烈な塩素のにおいがしていました。
 殺生石付近で発生するガスの種類はよく知らないのですが、おそらく硫化水素ではないかと思います。硫化水素自体は危険なのですが、死に至るかは、その濃度によります。また、火山活動の変化によって、硫化水素の発生地点で二酸化硫黄が急激に増加することもあるので、要注意です。ガスによって危険性の高さがちがいますので。


 99年7月16日、那須火山の調査のついでに、殺生石に行って参りました。アベックと老人の観光客ばかりでした。

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参考文献
関東もののふの詩 ふるさと伝説の旅3 生方たつゑ 小学館

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