「化物丁場」
99/11/17
丁場とは、宿駅と宿駅の間の管理区間のことです。化物丁場とは、岩手県の雫石と橋場の間の,雫石川沿い地盤の悪い場所のことです。ここを現在通っている線路は,秋田新幹線と田沢湖線です.現在の田沢湖線の駅は、雫石から西へ、春木場、赤渕、田沢湖となっていて、赤渕と田沢湖の間で仙岩峠を超えます。橋場は、赤渕から西北西に谷間を上ったところにあるが、現在の田沢湖線はここを通っておらず、赤渕から南側を巻いて、県境を超えて田沢湖に抜けます。当時はルートが違っていたようです。
化物丁場の正確な場所はわからないけれど、現在の春木場〜赤渕周辺のどこかと考えられます。現地に行ってしらべてみたいです。(実は現地付近には調査に何度か行っているんだけど、化物丁場のことは考えていなかったのです)
この付近の地質は,第三系(上部中新統:山津田層)の柔らかい岩石(シルト岩、砂岩など)の上に第四系(玉川熔結凝灰岩)の硬い火山性堆積物(熔結凝灰岩:火砕流が流れてきて固まった硬い岩石)が重なっています。これは通産省工業技術院地質調査所1985年発行の「仙岩地熱地域地質図」にも描かれている。
「〜この化物丁場はよくあちこちにある,山の岩の層が釣合いがとれない為に起こるっていったさうですがね,誰のあんまりほんとにはしませんや.」
賢治自身はここで述べたわけではないけれど,賢治はこの地質をよく知っており、このような層序のところは、岩盤崩壊の恐れがあることもしっているようです。「なるほど」という一言は,賢治の愛想ではなく,本当に「なるほど」と思ったのでしょう.柔らかい堆積岩の上に,硬い岩石が厚く重なっているのですから,釣合いがとれない重なり方をしているわけですね.
どんな地層がどのように重なっていると、岩盤崩壊が生じやすいのか?現在でも検討が行われています。記憶に新しいのは、北海道積丹半島豊浜トンネルの1996年の2月10日の岩盤崩落事故があります。20名もの尊い命を失った事故です。翌97年島牧村第2白糸トンネル岩盤崩落は、人身事故には至らなかったとはいえ、豊浜トンネル岩盤崩落の6倍もの大規模なものでした。これらの事故がどのような地質の場所で起きたものか、地質学者は現在も詳しく検討しています。
赤渕〜春木場付近にはさらに、南北方向の断層があり、今年9月4日に震度6の地震を引き起こした雫石盆地西縁の活断層と一連のものの可能性があります。これにより、さらに岩盤の不安定による危険度を増しているのかもしれません。
参考文献
1.仙岩地熱地域地質図 (1985) 地質調査所
2.新第三紀ハイアロクラスタイトの岩盤崩落二例 (1998) 山岸宏光、山崎文明、
畑本雅彦。日本火山学会講演予稿集1998年度秋季大会 p51.