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山の争い

 


青森市の南にある八甲田火山は、活火山に指定されていますが、文書としては歴史時代の噴火の記録はありません。しかし、小規模ながら江戸時代頃に噴火があったことが地質観察からわかっています。やはり活動的な活火山なのです。ここでは数年前には火山ガスによる自衛隊員の不幸な事故もありました。
この八甲田付近に伝わるいくつかの伝説があります。八甲田からは津軽平野を挟んで岩木山を望むことができます。岩木山とも関連した伝説もあるようです。


物語のあらすじ
(1)
 青森市の東にある東岳は頂上が平らな山である。八甲田山と東岳は仲が悪かった。そして、山の争いが始まった。壮烈な戦いの末、八甲田山がすっぱりと東岳の首をはねてしまった。それで平らな形になったのである。
 東岳の首は岩木山まで飛んでゆき、その肩のあたりに落ちた。それは岩木山の肩のこぶのようにくっついている。
(2)
 八甲田山には大人(おおひと)といって、不思議なはたらきをする者が住むという伝説がある。ある正月の夜、麓の横内部落のある家に、見たこともない大きなひげ面の男が主の枕元に立っていた。「おれが里に来て姿を見せるのはおまえだけだ。おまえの心がけがよいのに感心して来たのだ。」主は歓迎して餅を食べさせた。それ以来毎年正月に大男が来るようになった。


 これらは直接火山活動と結びつく伝説かどうかはわかりません。他の地域の例では、山の争い(阿寒、十和田、屈斜路の伝説)も巨人伝説(だいだらぼっち)も噴火に関連していることがあるようなのですが、これらに関してはよくわかりません。八甲田山は青森市からほど近い場所にあり、伝説の地として格好の場所です。八甲田山は活火山でありながら歴史記録がなく、有史時代の噴火の有無については不明でした。最近私たちが研究したところ、江戸時代頃に、八甲田山麓の酸ヶ湯温泉付近で水蒸気爆発が起きたことが明らかになりました。
 噴火活動の規模は小さかったのですが、伝承として残るかどうかは、必ずしも噴火の規模だけでは決まらないでしょう。もし、付近に人がいたなら、小規模な噴火でも伝えられる可能性があります。
 ところで「小規模な噴火」というと、大規模な噴火活動と較べて安全な噴火活動という印象を持ちがちです。常々火山噴火のマスコミ報道を見聞きしていて感じることですが、伝える側が大規模=危険、小規模=安全という誤解のもとに報道しているように思えてなりません。もしそうなら、明らかに間違いを犯しています。規模の大小と、爆発性の高さは一致しません。都市でのガス爆発事故は火山噴火からみると規模はけた外れに小さい爆発によるものです。しかし、そのような事故の場合、人が近くにいる可能性が高く、その危険性は認識できるでしょう。小規模な噴火も同様です。規模が小さくても、人が近くにいたら危険なのです。小規模なら安全だと思っている方、それは誤解です。
 八甲田山で江戸時代頃に噴火した場所は、現在すぐ横に国道と温泉があります。今同じ場所で観光シーズンに水蒸気爆発が起きたら...
 八甲田山では、火山ガス事故が1997年に発生しています。火山活動とは関係のない遭難事故(映画の「八甲田山」は八甲田北側山麓)などもあります。そのようなところですので、様々な伝承が残されても不思議はありませんね。

参考文献 
森山泰太郎、北彰介 青森県の伝説 日本の伝説25 角川書店

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