| 銀座の有名クラブのママを辞めた私は、資金繰りが難しくなってきた上に、知り合いに用立てした五千万円の返済も見込めず、購入した億ションのローンが月八十万円もあった為、前のお店の子に貸してある私所有のマンションを売りに出す事にしたのですが、約束した日に出ていってくれない上、猫がいるので室内いたる所がボロボロでそのまま売る事も出来ず、いつ出て行ってくれるか話し合おうとマンションを訪ねると、部屋には大きな仏壇がドーンと置いてあり、何事かと思いきや、今迄面倒を見てくれていたパトロンが突然亡くなってしまったとの事、これでは益々出て行ってくれそうもない。そんなこんなで生きていくのが嫌になってしまったのです。
不動産会社に勤務の知人が、凄い先生がいると常々云っていたのを思い出し、相談してみようと思い知人に連絡を頼んだのですが、先生は御多忙でなかなかつかまらなく、やっと連絡が取れたので、強引に知人と一緒に先生の所に押しかけてしまいました。先生の前に座るなり立て板に水の如く、私の生い立ちから現在に至るまでしゃべりまくると、そのうち先生が、
「身体の具合、特に異常な肩凝りと肩の冷えがありますね。貴方には、貴方に関係のない『侍』の霊が付いています。」とおっしゃったのです。そして部屋の簡単な間取りを書くように云われ、お見せすると、
「この箱(チェスト)は何ですか」と聞かれ、私は思わず「あっ!」と声を出してしまいました。このチェストの二段目の引出しには、以前借金のかたに護身用の刀を貰ったのが入っていたのです。有名な刀師の作で、奥女中かお姫様のものだったそうです。先生は、
「この刀は飾りではなく、実際に三人が殺められていてそのうちの一人の侍が、ずっとその刀についてしまっています。その為に、お風呂から上がってポカホカしているはずなのに、ガンガン暖房をかけなければ寒くて眠れませんね。肩が凝るというより痛くて、マッサージをしても何をしてもとれないでしょう。丁度その肩の部分は侍が切られた所で、わかって欲しい為にとりついているんです。」とおっしゃるのです。
私は更に驚いてしまいました。先生がおっしゃった事は全て身に覚えがあり、この刀を貰った時も「この刀は人を殺めた」と聞いていて、見た時に形がふっくらしていなくて研ぎ直した跡があったんです。いいながら刀の形を書いてお見せすると、先生が「切った時に刃がこぼれたのがみえます」とおっしゃいました。
先生の御指示は、
「まず、手元からこの刀を早く手放す事です。借金のかたにくれた方は七百万円位の値打があると云ったそうですが、そんな事を問題にしていると売れないので、上野方面の骨董屋の鑑定士にみせて下さい。また、寝室の整理ダンスの上に、お店のお客さんから頂いた神社・仏閣などのお札が六つ並んでいると思いますが、二つを残して、他は深川の富岡八幡宮でおたき上げして貰ってください。」との事でした。
夜の八時半から夜中の一時半まで延々ご相談にのっていただいたのですが、内容が内容だけに、恐くて恐くて家に帰れそうもなく、どうしようどうしようとわめいていると、ついて来てくれた知人が「私は何とも感じないから貴方の家に泊まってあげる」と云って一緒に来て下さってとても助かりました。次の日からその刀は知人がカバンに入れ持ち歩いてくれたのです。
数日後、その刀を新宿の方へ持っていくと五万円なら引き取ると云われましたが、いくら何でも五万では困ると思いあちこち持ち歩き、結局、御徒町の店で買入れて貰いました。先生は上野方面とおっしゃったのに、人の紹介であちこち行ってしまい、最初から上野方面に行っていたら無駄足をしなくてすんだのに、と反省しました。
刀を手放したとたん、パトロンが死んでしまってでられないといっていた店の子が、新しいパトロンが見つかったから出て行きます、と信じられない早さで引越しして行きました。
急いで内装したものの、普通の人には一寸不便な場所だし買手がつくかなと心配していると、マイカー通勤の青年医師が「都内で車庫がついている所が欲しかったので云うことありません」といい、しかも、不動産屋が契約の条件を説明し始めると「一発で、一回即金で結構です」とおっしゃられ、普段の手続きよりも簡単に済んでしまい、売りに出して僅か一ヶ月で売買が済んでしまったのです。
勿論、肩の凝り、冷えは何もなくなりました。
比加利先生より一言
怨念の深いものは身内に限らず、自分の苦しかった事をわからせる為に憑依し、信じられないような事を次から次へと起こします。
|