下田治美さんは『2DKの呪い』や『やっと名医をつかまえた』などでおなじみの
エッセイスト・作家です。少々とんがった語り口が、読んでいてしんどいこともあり
ますが、この本では小気味よく聞こえます。
何人かの精神科医という個人を論じることで、結果的に日本の精神医療の“まずし
さ”も浮き彫りになっています。イニシャルで登場する医者たちの中で、町沢静夫医
師は実名で出てきますが、さもありなん。「有名医師はブンガク者」は、町沢批判に
当たられた1章です。
「テレビマンも新聞記者、雑誌記者も、ほんとうに不勉強な人が多い。きちんと医
学的論拠をもった精神科医はいくらでもいるのに、さがそうともしない。取材の労を
はぶき、自分たちはラクをしながら、氏の医学的論拠不在の単純明快なホラ話をいつ
までたれ流すつもりなのか。」(p.164−165)と、彼を御用達医師にしているマスコミ
にもかみついていますが、まったく同感です。
下田さんによれば、「精神科には、なぜ無能な医師がはびこるのか」は、「精神科
医の臨床能力には採点がないから」ということになり、アメリカのように保険会社が
保険金を支払った(医療ミスをした)医師名を公表したらどうか、と提案しています。
著者の最終結論は「自分の病状と薬剤について、医者より勉強しなければならぬ」で
す。
この本の中でとくに興味を引かれるのは、町沢静夫とともに実名をあげて斉藤環医
師を批判している「ひきこもりは病気か」の章。斉藤医師は体制に適応できない者に
精神病のレッテルをはっているとして、不登校やひきこもりに関わる多くの人たちの
反論を引用しています。同じ趣旨で最近『「心の専門家」はいらない』(小沢牧子著、
洋泉社新書)という本が出ました。こちらは臨床心理学批判ですが、併読をおすすめ
します。
下田さんの本にもどれば、感情優先で議論が荒っぽく、客観性を欠いていると思え
るところもあり、悪性症候群とからめてリタリンに言及しているところ (p.75−79)
など、もっと頭を整理して書いてほしいと思いますが、全体としては、精神医学はサ
イエンスといえない、(日本の)精神科医はヒョーロン家またはとブンガク者、と斬
って捨てたところは、親の立場からは充分に納得、同意できると思います。
(Black Ice)
ほんとうにびっくり「ウツ病も治せない精神科医」がたくさんいること
(本書の帯より)
ウツ病で精神科医にかかった経験のある著者が書いた 精神科医にかかって、適正な
治療受けられなかった人々の記録。
マスコミで有名な医師にかかって、薬で体を壊された少女の症例など とても人ごと
とは思えません。
有名な医師が名医どころかまともな精神科医でないことが多々あるようです・・・・
私の65才の知り合いは、ウツ病にかかり、眠れない、食べられないという症状を訴
え、抗鬱剤の投与を1ヶ月続け、効果がなく、最後は、歩けないほど体が衰弱してし
まいました。病院を変えたら、命にかかわる状態で、その場で入院し、適正な治療を
受け、体も、ウツもよくなりました。この方は、心臓に持病を持つ方ですので、一歩
間違えば命を落としていた危険もあったのです。
この本を読んで、この知り合いのことを思いだし、背筋が寒くなりました。
日本児童青年精神学会認定医師一覧付きです。
(ルーシー)
『精神科医はいらない』
下田治美著, 角川書店, 2001年, 四六判, 244頁, \1200,ISBN4-04-883724-9.
【目 次】 はじめに
由布さんの薬箱
新聞報道で知った医師の診察能力
イズム診療ってなに?
老女の恋(ファーストラブ)
精神病の医師
有名医師はブンガク者
精神科医にプロはいない?
ひきこもりは病気か
あとがき
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