1
汽車 汽車 走るよ
線路の上をまっすぐに
風にのって 光にのって
時の流れをこえるように
すべるように 走る 走る!
走る 走るよ 汽車は走る
真夏の熱い空の下
涼やかに 風を切って
線路わきの ひまわりが
やさしく ぼくらに笑いかける
明日から夏休み!という日、
学校帰りに 駅長さんに呼び止められた。
「明日、臨時村議会がある。
きみも来なさいということだ」
「え?」
「わけは知らん。村長さんからの伝言だ」
「村長さんの?」
「まったく、どういうこっちゃろうな?
きみみたいな子どもを呼んで、一体何を話し合うつもりなのか」
駅長さんは首をかしげた。
「わかった、行く」
村長さんのお願いなら、行かなきゃね。
ぼくらの村の村長さんは 大らかな人で、
悪くいえば大ざっぱなんだけど、
いい人だから みんなが尊敬している。
ときどき、パッと思いついたアイデアで臨時村議会を開いて、
議員じゃない人を呼んだりもして、ざっくばらんな話し合いをする。
困っているたった一人の人のために わざわざ村議会を開くこともある。
なぜだかそれがいつも とってもいい感じになる。
ぼくが呼ばれたって、どういうことかな?
もしかして、けんちゃんのことかな?
何か考えてくれるんだろうか?
まあ、あしたのお楽しみだ。
それより早く うちに帰ろう。
通信ぼ 早く母さんに見せたいな。
はじめての オール5!
明日からは夏休み!
かぶと虫やくわがたをたくさんつかまえて、飼うんだ。
ミヨちゃんにもあげると約束した。
学校はお休みだけど、「なかの」駅まで汽車に乗って、
ミヨちゃんちに遊びに行くんだ。
ときどきは、ミヨちゃんが汽車に乗って
ぼくらの村まで遊びに来る。
タケシもさそって、川に行こう。
川の水は冷たくて気持ちがいい。
魚だってつかまえられる。
ひまわりの森には、ミヨちゃんと二人だけで行こう。
1万本のひまわりの迷路の中、
手をつないでお散歩するんだ。
ところが、
小学四年生のぼくの夏休みは、そんないつもの夏休みとは、
ちょっとちがったものになっていったんだ。
2
「んだば、はじめっべ!」
村長さんの一言で、臨時村議会は開会された。
いちおう議長という人もいるらしいが、
臨時のときは 村長さんにまかせることになっている。
「さっそく本題に入るっべ」
「んーっだ!」
「けんちゃんのことだべ」
ああ、やっぱり。
それでぼくがよばれたんだ。
一番のなかよしだもんね。
村長さんは、しゃべり始めた。
運転士のゴンタおじさんがもうじき退院すること。
ボチボチ仕事にもどりたいと言っていること。
今はけんちゃんがいるから、
ボチボチ体をならしていくことができるので、とても助かる。
もともと、運転士さん一人だけで 鉄道を運営するというのは
危険なことなので、二人になるのはいいことだ。
これからは、運行停止にしなくても、
けんちゃんにも、ゴンタおじさんにも休みをあげることができる。
でも、お金のこととか、経営上のこともあるし、
どうしていくのがいいか、みんなで話し合っておきたい。
ついでに、けんちゃんという人をみんなでどうしてあげるのがいいのか
一度話し合っておきたい。
突然やってきて、そのまま働いてもらってるけど
どうみても 変わっている。
うまく話ができないので、どうしてあげたらいいのかわからないところがある。
どうつきあっていったらいいのか、アキラがよくわかってるみたいだから、
このさい、教えてもらおうじゃないか。
だいたいそんな話を、駅長さんは冗談もまじえながらわかりやすく話した。
「えー、経営的には」
と、駅長さんが話し始めた。
「それほど問題ないと言えますな」
「んだば、給料二人に払うことになるべ?」
議員さんの一人が聞いた。当然だ。
「いやー、そのー、それはですな・・・。
理由はよくわからんのですが、彼が来てから、燃料が半分、
いや十分の一以下で足りるようになったのです。
それで最近、経営的には好転しておりまして。それに・・・」
「それに?」
駅長さんは、言いにくそうにしていたが、言わないわけにはいかなかった。
「何と言うか、彼には、給料とか、金銭というものがよくわからんみたいで、
毎月ちゃんとそれなりの額を渡すのですが、受け取らんでおきっぱなしにするんで、
そのまま、一応、金庫で保管しまして、その中から適当に菓子パンを買ってやったり
しとるのですが、いやあ、何とも金のかからん男です」
駅長さんの話に、みんながおどろいた。ぼくもおどろいた。
「ちょっと、そりゃあひでえんじゃねえべか?」
「菓子パンしか買ってやらんってどういうこっちゃ?」
「いや、その、菓子パンしか食わんのです。
あと、適当に畑でとれた野菜や果物を
みんなで適当に持っていってやっとるんですが。
いやあ、何とも偏食が多くて食の細い男でね」
うん、それはぼくも知ってる。
けんちゃんは、お弁当とかおにぎりとかはダメで、
主食はクリームパンなんだ。
あんパンはだめ。食パンもだめ。
おかずは、キオスクとかでも売ってる細長いピンク色のソーセージ。
親切なおばさんたちが野菜を持っていってあげてるけど、
全部食べてもらえるわけではない。
野菜がキライというわけじゃないけど、味にうるさいんだ。
いちごはぼくんちのじゃないとだめだし、
トマトは、タケシんとこの。
きゅうりは山本さんの。キャベツは村田さんの。レタスは田中さんの。
オクラは佐藤さん、にんじんは鈴木さん。
それ以外は受けつけない。味がびみょうにちがうらしい。
ぼくにはよくわからないけどね。
気に入られた人たちは、うれしくて、収穫のたびに持っていってあげている。
「やっぱり、味のわかる男はちがうね」
なんて言って、おばさんたちはうれしそうだ。
けんちゃんは、きれいに水洗いして、手づかみでシャキッとかぶりついて食べる。
キャベツやレタスはちぎって食べる。
おいしそうにニコニコしながら。
その食べっぷりが何ともかっこいいのだそうだ。
けんちゃんは、汽車の車庫の中にある仮眠室で寝泊りしていた。
それはそれはきちんと暮らしているらしい。
駅を掃除するおばさんが 時々のぞいて
掃除もしてあげるんだけど、いつもゴミ一つ落ちてないって。
毎日 駅とそことを行き来しているだけで、
村に出て行くことはないし、
だれにも迷惑をかけていない。
しかも 生きていくのにお金もかからない。
「んだば、これからもずーっと駅でめんどうみるべってことで、いっかな?」
村長さんは早々と結論を出してしまった。
議員さんたちは、んーっだ、んーっだと、うなずいた。
ところが駅長さんは、
「ちょっと、待ってください」
と言った。
「なんか、問題あるべか?」
と、村長さん。
「いや、その、あの男は何というか、社会性ゼロでして、
何せ会話ひとつろくにできんのです。
これから先、駅がどうなるかはわからんのですし、
バスが通るようになったら、廃止ということにもなりかねない。
そうしたら、その後も村にいてもらってもどんなもんだか」
「あんた、そんな先のことまで、考えるんか、頭いいなあ」
村長さんは、何だかとぼけたことを言った。
「そのとき、もし、村を出て行くとかいうことになったら
よそで生きていけるんか、心配でね。だから」
「だから?」
「ちょっとずつ、社会性を身につけさせてやるとか、
そういったことを やってやらんといかんのじゃないかと
思っとるんです」
「どう思う、アキラ?」
えっ? 村長さんは突然、ぼくを指名した。
「えっと、あの・・・」
ぼくはドキドキしてしまった。
ざっくばらんな臨時議会とは言え、村議会で発言するなんてことは初めてだから。
でも、勇気を出して言ってみた。
「よくわかんないんだけど、
あんまりきびしいこと言ったら、かわいそうだと思います」
ぼくは知っていた。
駅長さんが最近、けんちゃんにきびしくしてるってこと。
あいさつのこととか、きびしいんだよね。
運転ができても、人間としての基本がなってないとダメだ!とかさ。
けんちゃんときたら何回言われても言う通りにしないのだから、
よけいに怒りたくなるのはわかるけど。
「んーだ、あんたちょっとキツすぎるべな」
村長さんが言った。
「泣いとったの見たべ。
大の男が泣くっちゅうこたあ、よっぽどキツイこと言われたんだべな」
議員さんの一人が言った。
駅長さんが言い訳した。
「ちょっと、待ってください。
わしは何も、にくうていじめとるわけじゃあない。
彼のためになると思って、心を鬼にしとるんです。
あれは、頭のいい男です。
汽車のことは、機械のことまでよくわかっとるし、
運転の腕も、見てのとおり、天才的ですな。
そろばんも電子計算機も使わずに何でもかんでも計算してしまうもんで、
経理の方まで助かっとります。
何年の何月何日が何曜日だった? とか聞けばすぐ教えてくれるし、
それに、どういうわけか、村中の家の電話番号を覚えとるんです。
そんな男がですよ、人とのつきあい方を覚えられんってことはないでしょう?
あの年で、他人とのしゃべり方も知らん。
あいさつひとつもろくにできん。
よっぽどひどい家庭で育ったんでしょうな。
何っちゅうか、ふびんでね、それで教えてやっとるんです。
一種の親心ですな・・・」
駅長さんの言葉にはそれなりに説得力があったので、
んーっだ、んーっだと、うなずいている議員さんもいた。
「あのー」
ぼくはまた、勇気をふりしぼって発言してみることにした。
「けんちゃんはね、けんちゃんなりにがんばってるんだよ」
みんながぼくに注目した。
すごくきんちょうしたけど、ぼくは続けた。
「だから、ぼくたちの方も、ちょっとくらい けんちゃんのために
がんばってあげてもいいんじゃないか、と思います」
「だから、がんばって いろいろ教えてやっとんじゃ」
駅長さんが言った。
「そういうことじゃなくって・・・」
「どういうことか、駅長さんにもわかるように言ってやってくれ」
村長さんが言った。駅長さんはムッとした。
「えっと、だから、けんちゃんには、大変なんです。
この世界で生きていくのが。
線路の上だけならいいんだけど、そういうわけにもいかないから。
生きていくだけで、すごくすごく大変なんです。
だから、えっとその・・・、
けんちゃんが生きていきやすいように、
ちょっと考えてあげたらいいんじゃないかと」
「だから、わしは・・・」
駅長さんが口をはさもうとしたが、村長さんに止められた。
「そういうこっちゃねえだべさ。わかんねだべか?
アキラの言うのは・・・」
「そうだ、そうだ」
「んーっだ、んーっだ!」
議員さんたちは、駅長さんに賛成だった。
村長さんが結論を言ったわけじゃないし、
ぼくだって自分で何を言ったのかわからないくらい混乱していたのに。
「つーこって、アキラ、たのむべ」
村長さんは、いきなりぼくに言った。
つーこってと言われても、何のことだかさっぱりわからない。
でも、すでに、駅長さんを除いて全員賛成で可決されている。
「はア?」
「まずは、けんちゃんとつきあうにはどうすっべか、手引書を作るだべ。
夏休みの宿題だべ」
「ええっ? ぼくが?」
小学四年生のぼくが?
「アキラがけんちゃんのこと、一等わかっとるだべ」
駅長さんに言われて、すぐに納得してしまったけど、
思い切って言ってみた。
「それなら、ぼくにも、お願いがあります!」
「何だべ?」
「けんちゃんにも、夏休みをあげてください。
けんちゃんは、いろんな汽車に乗ってみたいと言っている。
ぼくがついて行くから、旅行に行かせてください」
「それはどうだろうね?」
と、駅長さんが言った。
「旅費はどうするんだ? 旅費は?
それに、けんちゃんとアキラだけで旅行なんてダメだ。
大人にも一緒に行ってもらわないと」
大人? けんちゃんは大人じゃないか?
何かバカにしてるよね、そんな言い方って。
「旅費は、けんちゃんの今までの給料で何とかなるべ。
二人では、たしかにちいと心配だべな。
んだ。おらも行くべ」
村長さんが言った。
「夏休みはやればいいべ。駅長さんも依存ねえべな?
ゴンタさんもじき復帰できるし、学校も休みだから、
1日2日 汽車が止まってもどうってこたあない」
「んーっだ、んーっだ!」
可決。
駅長さんは何も言い返せない。
「んだば、手引書は、アキラにまかせた。
みんなも、こういうこと書いといてほしい、つーことがあったら
アキラに言ってくれ。
できたら、臨時村議会で発表してもらって、みんなに確認してもらうべ。
よしということになったら、刷って、各家庭に一部ずつ配布するべ」
「わかりました。やります」
ぼくは、はっきりと言った。
そうなんだ。けんちゃんにどうしてあげたらいいか、
「手引書」でちゃんとみんなに教えてあげたら、
けんちゃんはこの村でもっと生きやすくなる。
けんちゃんがぼくらの世界に合わせるのはすごく大変なことなんだ。
駅長さんに厳しく言われたくらいですぐに身につくものでもなさそうだ。
でも、ぼくらの方からけんちゃんに合わせてあげるのは
それほど大変なことではない、たぶん。
多数決で少ない方が多い方に何でもかんでも合わせなければならないというのは、
実はすごく意地悪なことなんじゃないかと、ぼくは考え始めていた。
みんなで 一人の人のために合わせてあげたっていいんだ。
本当にそれが必要なら。
3
けんちゃんは、ぼくたちとはちょっとちがっています。
ちょっとじゃないかも知れません。
でも、ぼくたちはみんな ひとりひとり ちがうと思うし、
それはそれでいいことになっています。
同じ人が二人いることはぜったいにないのです。
だから、けんちゃんがちがっていても、いいことにしてあげてください。
おねがいします。
どういうふうにちがうのか、どうしてあげたらいいのか
せつめいします。
よく読んでください。
ぼくらにはわかるけど、けんちゃんにわかりにくいこと
ぼくらにはかんたんなのに けんちゃんにはむずかしいことを
思いつくだけ 書いてみます。
それと、こういうときは、こうしてあげてほしいと、
ぼくが思っていることを書いてみます。
もしかしたら、まちがってるかも知れないけど。
まず、みんなにけんちゃんのことをわかってあげてほしいと思います。
わかっていたら、けんちゃんが悪気もなくやってしまうことに
おこったりもしなくなるだろうし、
けんちゃんが 少しでもこの世界で生きやすくなるにはどうしたらいいか、
みんなで考えてあげれるようになると思います。
1.けんちゃんは人の目を見て話すことができない。
でも、その人のことがきらいで、わざと目をそむけているわけではない。
だから、気にしないでいいし、お説教したりしてはいけない。
2.けんちゃんは、いつもすごくそっけない感じがするけど、
あんまり気にしないでください。
あいさつしても、すぐに言葉が返ってこないことが多いけど、
気にしないで。おこらないで。
わざと無視してるわけじゃないんです。
冷たいとか、血が通ってないみたいとか、言わないでください。
けんちゃんは本当はだれよりもやさしい人なんです。
線路から動けなくなったネコをひかないで、助けた話、知ってますよね?
3.けんちゃんは、どうでもいいことのおしゃべりをするのが苦手。
何の気なしに話しかけた、どうでもいい、かんたんなことにうまく答えられない。
何でもじっくり考えなければ答えられないみたい。
こっちが言うことの意味がわからないこともよくある。
これは、ふざけているのではなくて、本当にわからないみたいだから、
おこらないで。
4.けんちゃんと話すときは、はっきり、わかりやすく、具体的に話してあげて。
「これ」とか「あれ」とか「ちょっと」とか「こないだ」とか「だいたい」とか、
ばくぜんとした言葉じゃだめ。
「察してくれ」とかいうのも無理(大人はこういうこと言い過ぎるよね?)
5.でも、けんちゃんは全くお話ができないわけではない。
テーマが決まっていたら、そして、よく知ってる話だったら、
びっくりするほどしゃべってくれる。
たとえば、乗り物のこと。
しゃべりだしたら、止まらないし、こっちが言うことは聞いていない。
でも、あんまり気にしないで、しゃべらせてあげたらいいんじゃないかな?
なかなかおもしろい話もしてくれるから。
6.けんちゃんは、人の顔や名前を覚えることが苦手。
ぼくは「ボク」と呼ばれている。
相手の人が、自分のことを言っている言い方で呼ぶんだ。
だから、「ワシ」とか「アタシ」とか呼ばれてもおこらないで。
名前で呼んでほしかったら、たとえば、けんちゃんと話すときには、
自分のことを名前で言うといい。
7.けんちゃんの体を急にさわったら、けんちゃんはびっくりして、
その手をはらいのけてしまう。
親切で何かしてあげようとしたときにそうされたらおこりたくなるけど、
お願いだから、がまんして。
けんちゃんは、急にさわられるのが苦手なんだ。
体がビクッとするらしくて、もしかしたら、すごくいたいのかも知れない。
「今から手をにぎるよ」とか、「肩をさわるよ」とか、言ってからなら大丈夫。
ふざけてわざとさわったり、おどかしたりしてはいけない。
それは悪質ないじめです。
8.けんちゃんは、自分から人をさわるのは平気みたい。
と、いうか、人の体にふれるときは、こうしたらいけないとか、
力のかげんとかいうことがよくわからないみたい。
いたかったら、なるべくおこらないで、
「力が強すぎるよ」「いたいよ」とか言えばいい。
9.けんちゃんは、人がとなりにいるときに、
どれくらい仲良しだったらどれくらい近くに来てもいいとか、
そういうことがよくわからないらしい。
いつもは、人からすごくはなれているのに、
突然、くっつくくらいに側にいることもあるけど、
気にしないで。
10.けんちゃんは、初めての所に行くとき、とても緊張する。
まっすぐ歩けないくらいに。
だから、初めての所には、だれかが連れて行ってあげたほうがいい。
2回目からはだいじょうぶ。
一度行ったところなら、道順も完全に覚えている。
11.けんちゃんは、目も耳も鼻もすごくいい。
だから、ぼくらには見えないものが見えたり、
聞こえない音が聞こえたり、においにすごくびん感だったりする。
それで、ぼくらには何でもないことに、すごく反応してしまって
すごくつらい思いをしている。
がまんできなくて大声をあげて泣くこともある。
こんなときには、助けてあげて。
「そんなことで泣くな」とか「しっかりしろ!」とか言って、おこっちゃだめ。
12.たとえばけんちゃんは、
・土のついた野菜のニオイがだめ。
・爆発するような音とニオイがだめ。
・快晴の日のお日さまはまぶしすぎる。
・犬がこわい(ネコは好き)。
・食べられないものが多い。
(赤い色のものは食べてみようという気になるらしい)
・白衣はいつも真っ白じゃなきゃだめ。
他にもあるかもしれないから、思い出したらまたついかする。
13.けんちゃんは、時間をぜったいに守る。
どんなことをしてでも。
何時に何をするとか、きっちり決まっていて、少しでもちがってくると、
わけがわからなくなって、頭の中が混乱してしまうらしい。
駅のつごうとかで、何かいつもとちがうようにしなければならないときには
急に言わないで、前もって教えてあげて。
心の準備ができてればだいじょうぶみたいだから。
14.ヒマなとき、けんちゃんは、ビー玉を並べて遊んでいる。
ずーっとそればっかりしている。このとき、話しかけても聞こえない。
このとき、いたずらしたりしないで。
このビー玉はけんちゃんの宝物。取り上げたりしてはいけない。
一つ一つの玉にすごいパワーが入っていて、うっかり使い方をまちがえたら
どうなるかわからない。
15.他に、けんちゃんの趣味といえば、時刻表を読んで覚えること、
乗り物の図鑑や絵や本物を見ること、汽車の運転(これは仕事だっけ?)。
それくらい。
テレビの話やスポーツの話をしても、わからない。
自分が興味がないことは、何にも知らないみたい。
でも、ばかにしないで。
けんちゃんは本当は、すごく頭がいいんだから。
16.そう、けんちゃんはすごく頭がいい。
汽車のことは何でもわかってるし、電話番号とか、発車時刻とか、
パッと見ただけで すぐにおぼえてしまう。
次元のちがう宇宙のような所に行けるような理論と公式を考えて、
本当に行ってしまうくらいに、頭がいい。
でも、だからといって、ぼくらにわかることが何でもわかるわけではない。
べつにふざけているわけではないし、わざといじわるして
わからないふりをしているわけではない。
17.けんちゃんをしからないで。おこらないで。
こわい言い方で何か言われると、大人のくせにすぐに泣き出すんだ。
何かを教えるときには、「できたね」「えらいね」
と言ってあげたほうがわかりやすい。
というより、そう言わなければわかってもらえない。
それから、男の人の大きなきつい声が苦手。
怒られたと思って、話の中身はそんなでもないことで泣いてしまう。
なるべく優しくしゃべってあげて。