ひねもすサウンドトラック (1)
2002年1月−2月掲載
Soundtracks, A Go Go!

(ディスクデータは、メディア種別/発売年/レコード会社/レコードナンバー/原盤会社/定価/中古購入価格の順に記載)

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クリント・イーストウッドの世界
MUSIC FOR THE MOVIES OF CLINT EASTWOOD (2001)
(コンピレーション盤)
音楽:エンニオ・モリコーネ、ジェリー・フィールディング、ラロ・シフリン、エロール・ガーナー、クリント・イーストウッド、レニー・ニーハウス他
CD/2001/WARNER/9-48060-2/WARNER/\2,490[輸入盤]
 私が買ったのは輸入盤ですが、日本発売盤のCDタイトルでご紹介。タイトル通りの、クリント・イーストウッドの主演映画を並べたコンピレーション盤です。イーストウッド映画というのはあまりサントラ盤が出ませんし、さらに全曲オリジナル・サウンドトラックなので二重の意味で貴重です。フランキー・レインの唄う「ローハイド」、モリコーネ「続・夕陽のガンマン」、シフリン「ダーティハリー」、エロール・ガーナーのジャズの名曲「ミスティ」などおなじみのナンバーもありますが、イーストウッドがテーマのTVドキュメンタリーの音楽(らしい)「アメリカン・フィルムメーカー」(ニーハウス)などは珍しいところ。私にとっての収穫は、ジェリー・フィールディング「アウトロー」とレニー・ニーハウス「ペイルライダー」。残りはクリント・イーストウッド作曲が半分を占めてまして、「許されざる者」「パーフェクト・ワールド」「タイトロープ」「目撃」「トゥルー・クライム」「スペース・カウボーイ」「マジソン郡の橋」と7曲にわたっております。・・・・「ハートブレイク・リッジ」「ダーティハリー3」「ファイヤーフォックス」とか欲しかったのですが、この辺は権利関係の問題で、イーストウッドの楽曲が多かったりするんでしょうな。残念。(2002.2.17)

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ガントレット THE GAUNTLET (1978)
音楽:ジェリー・フィールディング
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、パット・ヒングル、ウィリアム・プリンス
CD/2001/WARNER/9362-47882-2/WARNER/\2,404[輸入盤]
 マフィア裁判の証人ソンドラ・ロックを護衛する警官イーストウッド。しかし行く先々でトラブル続出、あげくの果ては家もバスも穴だらけという天下無敵の蜂の巣映画。冗談としか思えぬ、あのバスが穴だらけになるクライマックス、本当に冗談で撮ったそうでイーストウッドさんたらお・茶・目。

[音楽とサントラ] ワーナーから復刻された一連の過去の名作のうちの一枚で、サントラ盤リリースが数少ないジェリー・フィールディングだけに貴重な作品。サックスの奏でるブルースをメインに据えた渋い渋いジャズアルバムで、ハイノートのトランペットがからむアクション曲や、ラテン風味のマーチ・ジャズ、珍しやバリトンサックスがソロを取る曲まで、バラエティに富んでおります。ジャズを基調にしつつも、ボレロを使ってみたりアクション曲のバックに暗いリズムを対比させてみたり(これはポピュラーミュージックでは映画音楽以外ではまずやらない)、映画音楽らしいワザもきかせる充実ぶり。独立したジャズアルバムとしても十分いけます。パーソネルにはジョン・ファディスやアート・ペッパーも。あと、最近のイーストウッド映画の音楽を担当しているレニー・ニーハウスも確か参加していたはず。(2002.2.17)
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スペース・カウボーイ SPACE COWBOY (2000)
(コンピレーション盤)
(本編音楽担当:レニー・ニーハウス[CD未収録])
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナー、トミー・リー・ジョーンズ
CD/2000/WARNER/WPCR-10803/WARNER/\2,520/\800[中古]
 イーストウッド、サザランド、ガーナー。いやもう、こういうメンツの映画が見られるのは実に嬉しいですなあ、私のようなオジサンは。「ルーキー」「シークレット・サービス」をはじめ、近作では「老い」をテーマにすえているクリント・イーストウッド。本作は、サルに宇宙初飛行を邪魔されたロートル・スペースマンたちが、若い者を押しのけて人工衛星を救いに宇宙に向かうというリターン・マッチに挑みます。これまでの作品に見られた「若者にその場を譲る」みたいなテーマはここに及んでついに吹っ飛び、「若いもんなんか知るか。ワシらがやるけんね。何も教えないもんね」と不良老年全開的に突き抜けてしまいました。まあ、「ルーキー」でその座を譲ったはずのチャーリー・シーンがどっかに消えちゃったからなあ。老年パワーが全開している分だけしっとり感が足りない気もしますが、少ししけったせんべいのように歯に残るコメディタッチのドラマです。イーストウッドはまだまだ面白い。

[音楽とサントラ]  コンピレーションアルバム。とは言ってもジャズ好きのイーストウッドらしく、ポール・サイモンやイーグルスの曲をカバーしていても、全体としてはジャジー。11曲中半分はジョシュア・レッドマン、ブラッド・メルドーらによるジャズ・インスト。「旅立てジャック」なんぞひさしぶりに聴きましたがな。ボーカル曲は、スタンダードの「瞳は君ゆえに」、イーグルス「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」などをジャズで聞かせます。ポール・サイモンの「時の流れに」をウィリー・ネルソンがカバーしてますが、この人が唄うとどうしてもカントリーに聞こえますな。
 ラストの曲は、映画のエンディングに使われた、フランク・シナトラ/カウント・ベイシー楽団の豪華共演「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。×××××××××が×××に横たわるエンディングに流れたこの曲、そもそもが月ロケット成功の際につけられたタイトル(原タイトルは "IN OTHER WORDS")であるわけですから、二重にイキな選曲でありますね。夜、夜景を眺めながら聞くのに最適なジャズ・アルバムです。(2002.2.17)
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アニマル・ファーム (テレビ) ANIMAL FARM (1999)
音楽:リチャード・ハーヴェイ
監督:ジョン・スティーブンソン
原作:ジョージ・オーウェル
出演:ケルシー・グラマー、イアン・ホルム、ジュリア・ルイ・ドレイファス、ジュリア・オーモンド、ピート・ポスルスウェイト、ポール・スコフィールド、パトリック・スチュワート、ピーター・ユスチノフ
CD/1999/VARESE/302-066-082-2/VARESE/\2,890[輸入盤]
 全然知らないテレビ番組ですが、ジャケット写真に並ぶ犬を中心にした動物のお歴々、そして「アニマル・ファーム」のタイトル。きっと動物農場の動物たちの友情を、犬をメインに描いた番組に違いありません。きっと「ベイブ」のような楽しい話でしょう。明るく楽しい曲が聴けそうなので、ひねもす基準「準犬映画認定作品」に指定し、わざわざ取り寄せまでして買ってみました。

[音楽とサントラ] ところが聴いてみたらびっくり。ハンス・ジマー調のドラムの連打のオープニングに、荘厳・壮大なアクションスコアが続き、ホーナーのようなコーラスまで入ってきます。たまにボーカル曲が入るとアメリカ軍歌みたいな曲に、さらにはエルフマンのような「暗黒童謡」。おー怖い。明るい曲なんかほとんどありゃしねえ。こうしてみると、ジャケットの動物の写真もスパルタンでハードボイルドに見えてくるから不思議なもの。

 で、よく見たら、ブックレットに「原作:ジョージ・オーウェル」とありまして、この人、かの有名なディストピア小説「1984」の、あのオーウェルさんです。調べてみましたら「動物農場」という小説のテレビ・ミニシリーズ化でした。そのストーリーは、虐待されていた動物たちが一致団結して農場から人間を追い出したはいいが、その功労者の豚が動物農場の独裁者になると言うもの。当時のソ連のスターリン体制を風刺した、オーウェルらしい暗黒小説。ちっとも明るくないです。なるほど、イアン・ホルムとかピート・ポスルスウェイト、ピーター・ユスチノフなど渋いキャスティングな訳だ。いやCD自体は、聴き応えのあるアクション曲ばかりで拾いものなんですが。ちょいとビックリな一枚でした。(2002.2.4)
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ベイブ BABE (1995)
音楽:ナイジェル・ウェストレイク
監督:クリス・ヌーナン
出演:ジェームズ・クロムウェル、マグダ・スバンスキー(声の出演)クリスチーヌ・キャバノー、ダニー・マン、ミリアム・マーゴリーズ、ヒューゴ・ウィービング
CD/ 1995/ SLC/SLCS-7273/VARESE/\1,880/\300[中古]
 周知の通り犬ならぬ豚が主人公の映画でありますが、脇役として犬が大活躍するひねもす認定「準犬映画認定作品」なのでご紹介。CGを駆使して動物がしゃべる、いわゆるアニマルトーク映画です。

 たまたま食肉になるのを逃れ、農場に引き取られた子豚の「ベイブ」が牧羊犬を目指す姿を描く。サブエピソードごとに黒バックに飾り文字のエピソードタイトルが入る構成、芝生の緑・空の青・水たまりの茶色など目に痛いほどの発色の非現実感あふるる映像など、完全にファミリー向けファンタジーの作りになっています。しかし、無知で無垢で純粋な子豚や、にわとりの代わりに「時をつくら」(朝のいななき)ないと食われてしまうと信じ込んでいるアヒルなど、個々の動物が人間らしく(?)よく描かれていて、十分、ドラマの中に入り込めます。逆に、人間の出演者は徹底的に戯画化され、主婦は食事と生活のことだけ、子供はうるさくてわがままな生き物、娘婿はただウザいと人間味なく描かれているのも、動物の人間らしさを浮き上がらせるための意図的なものでしょう。その中で、唯一、人間らしいのが農夫(ジェームズ・クロムウェルが好演!)。子豚の成長と農夫や周囲の動物の愛情を暖かく描いています。特に、病気のベイブを元気づけようと思わずヘタな踊りをするシーンは、寡黙な農夫の素朴な愛情がよく出た名シーン。涙なしでは見られません。

 もうひとつ重要なこと。豚とは食われる動物である、ということにも逃げずに言及し(屠殺場にベイブが迷い込むシーンは、なかなか怖い)、ディズニー映画のような、みんな幸せバンザイバンザイという本当のファンタジーともひと味違ってまして、この設定の中で暖かいドラマを作ったのは驚異的ともいえます。普段、犬猫映画を楽しんでる身としては、「そうやな、イヌネコって食わないもんな」としみじみ思ってしまいました。

  さて犬といえば、職務に忠実なオスの牧羊犬のプロフェッショナリズム、子犬を奪われ、子豚を我が仔のように可愛がる慈母のようなメスの牧羊犬、この二匹が最終的にはチームを組んで、ベイブの「牧羊犬コンテスト」出場をサポート。クチパク、表情、そして声のアテレコとも、とてもCGとは思えぬ完璧さ。クライマックス、ベイブは予想通り「牧羊犬コンテスト」で優勝するのですが、実になにもスポ根的な努力はせず、×××という前代未聞の方法でしれっと勝ってしまう。そこには、素直に真っ正直に生きてきたものが最後には勝つ、という製作者のメッセージが見えるようです。動物ドラマとバカにしてはいけませんぞ。こいつは傑作です。ちなみに続編「ベイブ・都会へ行く」もあります。

[音楽とサントラ] セリフいりのファミリー向け構成で、映画未見の際はセリフが邪魔だったんですが(サントラマニアですから)、映画見たあとはソレゾレのシーンが思い出されてよし。ビゼーの「カルメン」やグリークの「叙情小曲集」など既成曲のアレンジがメインで、ウェストレイクの曲はサスペンス・スコアなどの情景描写が主となります。映画全体のメイン・モチーフは、「動物の謝肉祭」で有名なサン・サーンスの「交響曲第3番」。とは言ってもクラシック調ではなく、メインテーマでのアレンジや、詞をつけて歌われる、野ネズミのカン高い声のコーラス(エンドタイトルソング)などは実に楽しい曲に仕上げ、映画音楽としてきちんと消化されています。ことに、この曲でジェームズ・クロムウェルが歌い踊るシーンは感動的。

 ウチの奥さんは、野ネズミ・コーラスが歌うやたらとハイテンポな「ブルー・ムーン」(スタンダード・ボーカルの名曲)がお気に入りで、カン高い声で口ずさんでおります。ビリー・エクスタインのロマンチックなバージョンを聞かせたら、これはニセモンだと主張しておりました。いや、この曲の吹き込みと言えば、これが定番なのですが。(2002.2.4)
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レッド・サン SOLEIL ROUGE [英語題:RED SUN] (1971)
音楽:モーリス・ジャール
監督:テレンス・ヤング
出演:チャールズ・ブロンソン、三船敏郎、アラン・ドロン、ウルスラ・アンドレス、キャプシーヌ、中村哲
CD/SLC/1995/SLCS-5048/S.P.P.A/\2,500
 時は明治初期、アメリカでは西部の時代、日米友好のために贈られた日本刀を奪ったブロンソンとドロンの強盗だが、ドロンが裏切って日本刀を横取りしてしまう。日本の使節の一員三船敏郎とブロンソンはドロンを追うが・・・。

 アメリカの原野の風景にサムライを置いてみようという単なる思いつきを強行したとしか思えない超異色西部劇。キワモノとしか言えない映画なのにキャストはご覧の通り当時の日米仏の大スター、制作はフランス・イタリア・スペイン合作という、国際色も豊かな冗談のような超大作。それなのに不思議と見せる映画になってまして、追う側の日米男性ホルモン対決コンビが国際文化衝突を調味料に男同士の友情を見せれば、逃げる側ドロンはフランス主体の制作ゆえ悪役を一手に背負って可哀想と言いつつも、実に楽しそうに色男の悪役を見せる見せる。二人の女優もお色気を添えて、クライマックスの3人の対峙する姿は圧巻の一言。日本文化の描き方もメチャクチャなところはほとんど見られなかった記憶がありますし、このキャスト3人がひとつのフレームに登場するだけで、「スター」だけでも映画は見せられることを証明している一作です。

[音楽とサントラ] この映画だと誰もが考えがちな日本的な音楽の雰囲気を無理に持ち込まず、西部劇のリズムの上にオカリナ(?)の牧歌的なメロディを乗せています。ここでジャールの持ち味の少々クサいメロディワークが功を奏し、奇妙な味わいのある傑作が出来上がりました。アクション曲ではジャールお得意の、打楽器を主体にした前衛音楽風の「正しい」アクション曲を書いていて、ここでも無理をしないジャールの姿勢に好感が持てます。アメリカでもイタリアでもない、さりとてフランスでもない無国籍ウェスタン音楽、ジャールの名作の一本です。日本で初CD化ながら、会社倒産のため現在廃盤。その後、海外でCDは出たのかしら?(2002/01/12)(2008年1月追記:2006年に海外でリイシューされています)
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太陽にかける橋・ペーパータイガー PAPER TIGER (1975)
音楽:ロイ・バッド
監督:ケン・アナキン
出演:デビッド・ニーブン、三船敏郎、ハーディ・クリューガー、安藤一人、イレーネ・トゥ
CD/1999/CASTLE(CINEPHILE)/CIN CD 012/PHILIPS/\1,890[輸入盤]
 東南アジアのある国で、日本大使の一人息子とその家庭教師が誘拐された。息子は教師を戦争の勇者だと信じ込んでいたが、実は・・・。タイトルの「張子の虎」から想像するに、勇気に目覚める家庭教師が云々という恐らく泣ける話なのでしょうが、デビッド・ニーブン好きの私なのに残念ながら未見。

[音楽とサントラ] 爽やかなファンファーレにつづくストリングス、そしてレイ・コニフ・シンガーズのコーラスがフィーチャーされるメインテーマがとにかく美しく、しかもベタベタせずに格調を保っているところも素晴らしい。このテーマの変奏が要所に配され、曲を聴いているだけで涙が出そうです。作曲者を知らずに聞いたらヘンリー・マンシーニと思ってしまいそうですが、ご心配なく、アクション曲はパーカッションが切れ味のいいリズムを刻むバッドお得意のパターン。他に、マイク・サマーズ・シンガーズのこれまた美しい挿入歌に、バッド自らピアノを弾いたラウンジ・ジャズが二曲、さらにメインテーマのリミックスが二曲収録された16曲50分のお得盤。美しい曲の好きなあなたは必携ですぞ。(2002.1.12)
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太陽を盗んだ男 THE MAN WHO STOLE THE SUN (1979)
音楽:井上堯之、星勝
監督:長谷川和彦
出演:沢田研ニ、菅原文太、池上希実子、北村和夫、神山繁、佐藤慶、伊藤雄之助、風間杜夫、小松方正、西田敏行、水谷豊
CD/2001/VAP/VPCD-81395/POLYDOR/\2,625
 興行収入はかんばしくありませんでしたが、その評価は高くカルト化した映画です。あまりに傑作の誉れ高く、その後長谷川和彦は映画が取れなくなってしまったというオマケまでついております。
 20年も前に一回見ただけの映画なので細かいところは憶えていませんが、サスペンス映画の体裁を取りながら、何とも言えぬどん詰まり感がみちみちた映画でありました。お手製の原爆でお国を相手に脅迫する、という着想そのものがまず素晴らしい。しかしこのくだりはサスペンスフルな犯罪映画なのに、その見返りを思いつかずに、結局要求したのは「巨人戦を最後まで放映せよ」。どう生きていったらいいかわからない若者の無常感を、無気力な中学教師に仮託して描いた不思議なアクション映画でした。DVDが発売されましたので、再見したらまたコメントしたいと思います。

[音楽とサントラ] よくぞCDを発売してくれました。「太陽」ファン待望、待ちに待ったリリースの1枚です。しかし、これほどの有名作、そして楽曲も水準が高いのに、マニアックなサントラ発売がウリのバップでしかリリースできないところに、レコード業界でのサントラの位置づけの弱さが見えて悲しいものです。
 このCDでは権利の関係上、オリジナルLPに収録されていた沢田研二も含めセリフが全てカットされ、特に沢田と池上希実子のセリフが全編かぶっていた「ゼロと誠」は一曲まるごとカットされました。残念ではありますが、個人的にはセリフのかぶった状態には興味がないので、音楽のみのトラックがまたいつかどこかに収録されることを祈りましょう。その代わりといってはなんですが、ボーナストラックとして、劇中で使われた高中正義の曲、カルメン・マキの曲が4曲追加収録されています。

 曲は、コンボ編成とオーケストラによる快適なフュージョン。犯罪ドラマに甘いフュージョンというい取り合わせが、逆に物語の無気味さを演出しています。特にクライマックスの、カーチェイスシーンにスローテンポのフュージョンをかぶせる音楽設計は、唸らざるを得ない素晴らしさ。もちろん、甘いだけかと言うとそんなことはなく、映画のメインテーマと言えるピアノによる不安な表現が要所に配置され、独特の陰影を醸し出している曲も聞かれます。暗さと明るさの対照が面白い作品です。(2002.1.12)
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太陽にほえろ!/ロス市警アジア特捜隊 (1972,1984)
音楽:大野克夫
制作・放映:日本テレビ、東宝
「ロス市警アジア特捜隊」監督:澤田幸弘/原作:ジミー・T・佐古田/出演:草刈正雄、竜雷太、名取裕子
CD/1993/POLYDOR/POCH-1191/POLYDOR/\2,000/\1,080[中古盤]
 「ロス市警アジア特捜隊」は、タイトル通りロサンゼルス市警に実在するアジア人関連犯罪専従班「アジア特捜隊」(ASIAN TASK FORCE)を描いた2時間スペシャルテレビドラマ。原作は、実際にこの特捜隊のメンバーで、三浦某のロス殺人疑惑で名を上げたジミー佐古田による長編ノンフィクション・ノベル。サブタイトルの "TO PROTECT AND TO SERVE"(アメリカの警察のスローガン。正確には "TO SERVE AND PROTECT" のような気がしますが)は確か原作の原題だったと思います。当時、原作を読んでいたので興味深く見たのですが、原作にはない日本から研修(だったかな?)にやってくる刑事(これが竜雷太)と、ちょっと性格が捻じ曲がっている特捜隊刑事(ハンサムで英語がネイティブにしゃべれるからキャスティングされたに違いない草刈正雄)の交流とか、妻(名取り)との関係に悩む草刈とか、どうして浪花節にしてしまうのか少々欲求不満が溜まった記憶があります。アジア特捜隊の活動をハードボイルドに描く方が、この素材である意味があったと思うのですが。もっとも、脚本が人情刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の小川英だからか・・・。

[音楽とサントラ] 「太陽にほえろ!」LP復刻シリーズのうちの一枚。ポリドールによる「大都会」等も含めた一連の日テレ系刑事ドラマの復刻はなんともエネルギッシュで、「太陽」だけで10数枚出ております。そのおかげで、こんなマイナーな2時間スペシャルの音楽が聴けるとは嬉しい限り。

 「ロス市警アジア特捜隊」の音楽は、「太陽」と同じく大野克夫。シャッフル気味のリズムにブルースのサックスが乗るメインテーマは、電子音のリズムの演出するファンキーさがどうしても軽く聞こえてしまい、少々惜しい。他の挿入曲も、「太陽にほえろ!」のバリエーションのような印象があるのがつらいところです。実際、後に「太陽」に流用されたとか。なお、ポリドールから出ている「太陽にほえろ!ORIGINAL SOUNDTRACK COLLECTION FINAL '72-86」に、「ロス市警」の楽曲がより完全な形で収録されているようです(私は持っていません)。
 カップリングの(と言うかこちらが本筋だ)「太陽にほえろ!」は、85年放映当時のマイコン刑事(石原慎太郎のドラ息子が演じる)関連の曲が中心。キャストに合わせたか、こちらの曲も少々軽め。メインテーマは未収録です。(2002.1.12)
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ライジング・サン RISING SUN (1993)
音楽:武満徹
監督・脚本:フィリップ・カウフマン/原作・脚本:マイケル・クライトン/製作総指揮:ショーン・コネリー
出演:ショーン・コネリー、ウェズリー・スナイプス、ハーベイ・カイテル、ケリー・ヒロユキ・タガワ、ケビン・アンダーソン、マコ
CD/1993/BMG VICTOR/BVCA-622/FOX/\2,500/\650[中古]
 日本企業でおきた猟奇殺人。事件を追う黒人刑事(スナイプス)は上司の命令で日本に詳しい元刑事(コネリー)と組むことになるが・・・。日本および日本人の描写が偏見に満ちているとして問題になった一作。少なくとも日本文化の描き方は1970年代のそれから進歩がなく、原作者と監督が差別的意図はないとしてるなら、これはもうただのバカという事でしょう。ミステリとしてのつくりも、冗長な描写でいまひとつ。そもそも、知日派の元刑事が、むかし英国諜報員時代に目に茶色のコンタクトを入れただけで日本人に変装できたと思ってるヤツですからねェ。胸毛をそれ胸毛を(「007は二度死ぬ」をご覧あれ)。

[音楽とサントラ] 映画音楽が、映画の表現を「効果」として助けるものであるなら、その突き詰めた形のひとつが本作と言えましょう。たなかせいいちによる太鼓パフォーマンス二曲と既成曲二曲(エリントン、ポーター)を除き、あとはリズムと不気味な音の表現ばかりで、たまにかすかにメロディが聞こえることもあるほとんど前衛音楽。聞き込むとなかなか得るものがあるのですが、最初に聞いたときは退屈きわまりないシロモノでした。

 大体、オープニングとエンディングにはジャパネスクな太鼓パフォーマンスが配されてるのですが、武満徹を採用する意図はどこにあったのでしょうか? 日本で高名な作曲家なのでオリエンタルな曲を期待してオファーしたら、あにはからんや真っ当なサスペンス曲が出来てきたのであわてて太鼓パフォーマンスを、なんてところではないかと勝手に推測してるのですが。日本的な「太鼓」と、武満作曲分のかみ合いの悪さが、そうでないと納得できません。(2002.1.12)
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