○腸管出血性大腸菌感染症に係る水道法第二一条に規定する健康診断の実施等について
(平成八年八月六日)
(衛水第二三七号)
(各都道府県水道行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課長通知)
伝染病予防法第一条第二項の規定に基づき、平成八年八月六日付け厚生省告示第一九九号により腸管出血性大腸菌感染症が同法により予防方法を施行すべき伝染病として指定されるとともに、同日付けで、厚生省令第四七号「腸管出血性大腸菌感染症について適用される伝染病予防法の規定等を定める省令」が公布、即日施行されることとなり、同日以降、本疾病には、伝染病予防法の一部の規定並びに伝染病予防法施行令及び伝染病予防法施行規則が適用されることとなった。
貴職におかれては、管下水道事業者に対し、腸管出血性大腸菌感染症が伝染病予防法により予防方法を施行すべき伝染病として指定されたことを周知するとともに、腸管出血性大腸菌について水道法第二一条に規定する臨時の健康診断を行うよう指導されたい。健康診断の実施に当たっては、別添一厚生省保健医療局長通知(平成八年八月六日付健医発第九四〇号)記第三の三の一及び別添二厚生省保健医療局エイズ結核感染症課長・生活衛生局食品保健課長通知(平成八年八月六日付健医感発第八二号・衛食第二〇九号)記第三の四の三に留意して行うこと。また、患者及び保菌者の就業制限については、別添一記第三の一及び別添二記第三の三に準ずること。
なお、腸管出血性大腸菌感染症に係る伝染病予防法の一部の適用に係る留意事項は別添一のとおりであり、貴職におかれては、同通知記第二の二の七及び第二の二の九の取扱いを御了知願うとともに、特に同法第一七条ノ二の規定による措置が円滑に実施されるよう、管下水道事業者に対し周知されたい。
(別添一)
腸管出血性大腸菌感染症の指定伝染病への指定及び「腸管出血性大腸菌感染症について適用される伝染病予防法の規定等を定める省令」の施行について
(平成八年八月六日 健医発第九四〇号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省保健医療局長通知)
伝染病予防法第一条第二項の規定に基づき、平成八年八月六日付け厚生省告示第一九九号により腸管出血性大腸菌感染症が同法により予防方法を施行すべき伝染病として指定されるとともに、同日付けで、厚生省令第四七号「腸管出血性大腸菌感染症について適用される伝染病予防法の規定等を定める省令」が公布、即日施行されることとなり、同日以降、本疾病には、伝染病予防法の一部の規定並びに伝染病予防法施行令及び伝染病予防法施行規則が適用されることとなった。
これら告示及び省令の要点、施行上の留意事項等は左記のとおりであるので、円滑な施行に万全を期されるよう御配意願うとともに、貴管下市町村、関係機関、関係団体に対する周知方よろしくお取り計らい願いたい。
第一 指定の趣旨
腸管出血性大腸菌感染症については、国際的にも例を見ない規模で全国で患者が発生しており、食中毒としてのみならず、感染症としての観点から、感染経路の究明と二次感染を防止することが急務であり、既に二次感染予防の徹底等につき各般の対策が取られているところであるが、同感染症の有する伝染性及び高い危険性並びにその予防対策の緊急性等に鑑み、伝染病予防法上の指定伝染病に指定し、その予防対策の強化を図ることとされたものであること。
また、今般の指定伝染病としての指定に当たっては、伝染病予防法の適用上患者等の人権に十分に配慮する必要があるとの公衆衛生審議会伝染病予防部会の意見を踏まえ、同法の規定のうちの患者の隔離、交通遮断等の規定については適用を除外し、一部の規定に限定した適用とされたものであること。
第二 告示及び省令の要点
一 伝染病予防法により予防方法を施行すべき伝染病を指定する告示について
伝染病予防法(以下「法」という。)第一条第二項の規定に基づき、腸管出血性大腸菌感染症が予防方法を施行すべき伝染病として指定されたこと。これにより、病原性大腸菌O―一五七を含め腸管出血性大腸菌による同感染症が対象となるものであること。
二 「腸管出血性大腸菌感染症について適用される伝染病予防法の規定等を定める省令」について
同省令は、腸管出血性大腸菌感染症について適用される法の規定を定めるとともに、同感染症に関する清潔方法及び消毒方法並びに患者の就業を制限する業務の範囲を定めるものであり、これにより具体的な法の適用は次のとおりとなること。
1 病原体保有者に対する法の適用
法第二条ノ二の規定により、病原体保有者に対しても法の適用が行われること。
2 病原体検査の請求
法第二条ノ三の規定により、病原体保有者又はその保護者は都道府県知事に対し病原体検査の請求ができること。
3 医師の届出
(一) 法第三条の規定により、医師に対し、患者又は病原体保有者と診断したとき等についての保健所長への届出の義務が課されることとなったこと。なお、法第三条のうち消毒方法の指示に係る部分については適用されないものであること。
(二) 医師の届出については、施行日(平成八年八月六日)以降に菌が検出されたものに限って適用があること。
(三) 法第四条の規定による世帯主の届出義務は適用されないこと。
4 消毒等の実施
(一) 法第一六条の規定により、都道府県知事の指示に従い市町村は清潔方法及び消毒方法等の予防上必要な措置を行わなければならないこと。
(二) 消毒を行うべき場合において薬物消毒の方法によるときは、アルコール系消毒剤、界面活性剤系消毒剤、ビグアニド系消毒剤、塩素系消毒剤又はフェノール系消毒剤を用いなければならないこと。
(三) 清潔方法及び消毒方法については、他の伝染病について既に施行規則において定められている清潔方法及び消毒方法に準拠すること。
(四) なお、この清潔方法及び消毒方法については、市町村が公共施設に対し行うものであり、法第五条の規定による家庭における清潔方法及び消毒方法の施行義務は適用されないこと。
5 就業制限
法第八条ノ二の規定により、患者及び病原体保有者は一定の業務に従事することができなくなること。また、腸管出血性大腸菌感染症について就業が制限される業務の範囲は、施行規則第三一条第一項第一号に定める業務とされたこと。ただし、就業制限の運用に当たっては、人権尊重の観点から限定的に運用されるべきであること。
6 家宅等への立入り
法第一四条の規定により、伝染病予防上必要と認めるときは当該吏員はその事由を管理人又は代理者等に告知して家宅、事業所等への立入りができること。これにより、例えば、食品の検査等を行うために必要な場合には立入りができるものであること。
7 都道府県知事が行う予防措置
法第一九条第一項第一号、第五号及び第七号の規定により、都道府県知事は伝染病の予防上必要があると認めるときは次の措置を行うことができること。
(一) 健康診断等
(二) 伝染病毒伝播の媒介となる飲食物の販売、授受の禁止等の処分
(三) 井戸、受水槽等の使用停止その他の措置
8 特別区又は保健所設置市の特例
法第一九条第二項の規定により、特別区又は保健所設置市においては、前記7の(一)から(三)に掲げる事項については、区長又は市長がこれを行うものとすること。
9 その他
(一) 法第一五条(市町村の伝染病予防委員)、第一八条ノ二(都道府県の防疫員)及び第一九条ノ三(他の都道府県の防疫員による応援)の規定の適用があること。
(二) 法第一七条ノ二の規定(市町村の家用水の供給義務)の適用があること。
(三) 法第二一条から第二五条までの規定(市町村、都道府県及び国の費用負担に関する規定)の適用があること。
(四) 法第二〇条(官立施設における予防措置の特例)、第二八条(大都市等の特例)及び第二八条ノ二(特別区の特例)の規定による予防措置を行う者の特例の適用があること。
(五) 法第二八条ノ三の規定による再審査請求の適用があること。
(六) 法第二九条から第三一条までの規定による罰則の適用があること。
第三 施行上の留意事項
今般の指定伝染病としての指定に当たっては、患者及び保菌者の人権への配慮から法の規定のうち必要な規定のみに限定した適用とされたものであること。また、適用される規定の運用に当たっても、患者及び保菌者の人権に十分配慮し、プライバシーの保護に努めるとともに、患者及び保菌者への偏見や差別が生じないよう、広く啓発・周知を図ること。
一 就業制限に当たっての留意事項
1 法第八条ノ二に規定する就業制限は、人権尊重の観点から、直接に食品に接触する業務で、かつ、他に感染させる可能性が高いものに限定するものとし、適用範囲がいたずらに拡大することのないよう留意すべきこと。
2 従って、同じ職場内であっても、直接食品に接触する業務以外の業務に従事することは差し支えないこと。
3 保菌者は自分が菌陰性であることを証明するためにいつでも病原体検査の請求をなしうる旨の了知を徹底されたいこと。その結果、陰性が確認された者については、就業制限の必要はないこと。
二 家宅等への立入に当たっての留意事項
1 法第一四条に規定する家宅等への立入は、伝染病予防上必要とされる場合に限って認められるものであること。
2 具体的には、感染源と疑われる食品の検査等を行うために必要な場合など、伝染病予防上必要な措置を行う目的で立入る場合に限って認められるものであり、必要のない施設に対してまで立入の権限を行使することのないよう、周知徹底されたいこと。
三 健康診断(検便)の実施に当たっての留意事項
1 検便の実施に当たっては、検査を受ける者の理解を十分得て行うこととし、検査を受ける者の人権を侵害することのないよう特に配慮すること。
2 二次感染を防止するため、次の事項を考慮して検便を行うこと。
(一) 食中毒が発生している地域においては、現に患者又は病原体保有者がいる家族を最優先し、次に感染源の広がりの状況を考慮した上で、食事・弁当等の提供施設や社会福祉施設、医療施設、学校等における調理担当職員を優先的に行うこと。
(二) その以外の地域においては、伝染病予防上必要と認めるときに状況に応じて行うこと。
3 なお、感染源の究明のため、施設等への立入に伴って関係者への検便を行う必要が生じた場合には、法第一九条第一項第一号の規定に基づいて検便を行うものであること。
4 検査の結果により陽性であった者に対しては、十分なインフォームド・コンセントのもとに、適切な医療措置を受けるべく勧奨を行い、二次感染防止への理解を求めること。
四 食品衛生所管部局と伝染病予防所管部局との連携
今回の指定伝染病への指定の趣旨に鑑み、食品衛生上の対策とあいまって、総合的な予防対策を講じることが必要であるので、食品衛生所管部局と伝染病予防所管部局とが密接な連携をとって対策を講ずべきであること。
(別添二)
腸管出血性大腸菌感染症防疫対策について
(平成八年八月六日 健医感発第八二号・衛食第二〇九号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局エイズ結核感染症課長・厚生省生活衛生局食品保健課長通知)
平成八年八月六日健医発第九四〇号をもって、腸管出血性大腸菌感染症の指定伝染病への指定及び「腸管出血性大腸菌感染症について適用される伝染病予防法の規定等を定める省令」の施行について保健医療局長から通知したところであるが、その運用に当たっては左記の事項について御配慮願うとともに、貴管下市町村、関係機関、関係団体に対する周知方よろしくお取り計らい願いたい。
第一 腸管出血性大腸菌感染症の指定の趣旨
腸管出血性大腸菌感染症は、主に飲食物を介して感染するが、感染経路を特定することが困難であり、かつ、二次感染を起こすため、単なる食品衛生上の対応だけでは、十分な総合的防疫対策を講じることができない。このため、今回、指定伝染病として指定し、食品衛生上の対策と相俟って、効果的な防疫対策を講じることとしたこと。
なお、指定にあたっては、人権上の配慮から、伝染病予防法の必要最少限度の規定を適用することとしたこと。
従って、腸管出血性大腸菌感染症の防疫対策は、防疫関係者、食品衛生関係者等の緊密なる連携の下に行わなければならないものであること。また、住民が無用の不安・偏見等にとらわれたり、患者等の人権が損なわれることのないように、正しい知識の啓発普及活動には十分に留意されたいこと。あわせて、患者等のプライバシーの保護についても万全の注意を払われたいこと。
第二 腸管出血性大腸菌感染症の範囲及び確認方法
腸管出血性大腸菌感染症の範囲は、O―一五七をはじめとするベロ(Vero)毒素産生性の腸管出血性大腸菌による感染症であり、現在、O―一五七以外の原因菌としては、O―二六、O―一一一などが報告されていること。ベロ毒素産生性か否かについては、菌型のみでは判断が困難であるので、ベロ毒素産生性を確認した上で、本症の確定を行うものとすること。
なお、集団発生事例に際しては、初期事例においてベロ毒素産生性が確認されている場合、同菌型による症例についてはベロ毒素産生性であるとみなして取り扱っても差し支えないこと。
第三 実施にあたっての留意点
一 普及啓発の徹底
国民への普及啓発については、平成八年七月二三日付け健康政策局計画課長、保健医療局エイズ結核感染症課長、生活衛生局食品保健課長連名通知「腸管出血性大腸菌による食中毒に係る二次感染予防の徹底について」(健政計第二八号、健医感発第七五号、衛食第一九七号)の日常生活の留意事項の周知を徹底すること。
また、あわせて、二次感染防止の観点から、食品関係者、福祉施設関係者、学校給食関係者等に対し、食品衛生、社会福祉及び教育関係部局との連携の下に、予防対策実施のための普及啓発に努めること。
二 病原体保有者の取扱いについて
1 病原体保有者は、伝染病予防法第二条ノ三により、都道府県知事等に菌検査を請求できることとされていることから、病原体保有者から保健所に対して菌検査の請求があった場合は、都道府県知事等に対する請求がされたものとして取扱い、保健所において直ちに検便を行うこと。
2 病原体保有者であった者が、一回の検便で病原体が検出されなかった場合は、病原体保有者でないと見做してよいこと。
3 なお、病原体保有者に対する医療については、別添の「一次、二次医療機関のためのO―一五七感染症治療のマニュアル」も参考とされたいこと。
三 就業制限について
1 就業制限のしくみ
伝染病予防法第八条ノ二の定める就業制限は、都道府県知事等の命令を必要とすることなく、患者又は病原体保有者となったという事実が発生した時点で、法律上当然に発生する制限であること。
2 就業制限の遵守についての指導
就業制限の遵守の状況については、大規模な二次感染の発生を予防する観点から、当面、社会福祉施設、医療施設、学校及び一日通例二五〇食以上食事・弁当等を提供する施設で確実に実施されるよう留意すること。
3 就業制限の期間
就業制限は、菌陰性となった時点で、当然に適用対象から除外されるものであること。具体的には、患者については、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の合併症が残っていても、二四時間以上の間隔を置いた連続二回(抗菌剤を投与した場合は、服薬中と服薬中止後四八時間以上経過した時点の連続二回)の検便によって、いずれも病原体が検出されなければ、菌陰性が確認されたものとして就業制限の対象からは除外されること。病原体保有者については、一回の菌検査で菌陰性が確認されれば、同様に就業制限の対象からは除外されること。
四 健康診断(検便)の実施について
検便の実施に当たっては、平成八年八月六日付け厚生省保健医療局長通知「腸管出血性大腸菌感染症の指定伝染病への指定及び「腸管出血性大腸菌感染症について適用される伝染病予防法の規定等を定める省令」の施行について」(健医発第九四〇号)第三の三によるほか次の点に留意すること。
1 前記局長通知第三の三の二の(一)にいう「食事・弁当等の提供施設」については、当面の間、一日通例二五〇食以上食事・弁当等を提供する施設とすること。
2 検便の実施については、保健所は、検便の対象となる施設との連絡を密にし、十分な協力の下、適切な手段で検体の回収等を行うこと。
3 検査の必要性が生じた直近の時点において、既に菌検査を受け、陰性の結果を得た者については、検便の必要はないこと。
4 患者等のプライバシーを保護する観点から、保健所による検便の結果については、必ず書面により、本人にのみ通知すること。
5 保健所長は、検便の結果陽性であった者で、飲食物に直接手を触れる業務に従事している者の就業については、基本的には、本人と事業主との間で処理されるべき問題であるが、必要な場合には、本人の意思を確認した上で、事業主に説明をするなど、本人に解雇等の不利益が生じないよう適切な指導・助言を行われたいこと。
五 食品衛生所管部局と伝染病予防所管部局との連携について
本症については、原因菌が判明するまでの間は専ら食中毒事件として取り扱われることとなるが、腸管出血性大腸菌感染症と判明した後であっても、従来、食品衛生上の対策として講じなければならない対策については従前のとおりとし、食中毒の原因食品等又はその疑いのある食品等、患者又は病原体保有者により汚染された食品等又はその疑いのある食品等を問わず、食品等については、食品衛生部門において、食品衛生上の報告徴収、臨検検査、収去、営業許可の取消等の権限を行使するとともに、必要な指導を行うこととしているので、緊密な連携と役割分担の下でとり行うこと。


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