輪状甲状筋

 輪状甲状筋は声帯の緊張に関係した筋肉である。高音を出すときには声帯の緊張が高まるが、これは輪状甲状筋が中心として働くからである。
 高音から始まる転句の場合、次の大山の高音が出しにくいことがある。これは、最初の高音部で輪状甲状筋を激しく使うために疲弊して、大山の時にはへばってしまうからである。転句の大山でなくても、結句の大山の高音も出しにくくなる。同じ理由である。
 筋肉には廃用性萎縮という現象がある。筋肉に限らず脳にもいえることだが、輪状甲状筋も同じように、使わなければ力が低下する。輪状甲状筋がへばって高音部が下がる人は練習不足を露呈しているのである。
 常に声を出して鍛えておかなければ、輪状甲状筋はすぐに衰えてしまう。だから輪状甲状筋を積極的に鍛えておかなければならない。
その方法として、裏声の練習を奨めている人がいる。裏声は、地声とは別の声帯の動き方のようで、輪状甲状筋がフルに働かなければならない。毎日数分、各母音について裏声の発声練習をすると、2、3週間でかなり良く出るようになるそうだ。裏声は、音域を上げる効果もある。
 低音は、声帯の長さによって規定されているので、訓練によって低音を出せるようにはならない。しかし、輪状甲状筋を鍛えることで声帯の緊張を高めればさらに高音を出すことが可能になるのである。
 関吟の鈴木永山先生は綺麗な高音(5本位か)の吟者であるが、元は1本しか出なかったそうである。自分の師範が女性であり、仕方なく高音を出しているうちに段々と声が高く出るようになったそうだ。これは本人から聞いた話である。
 私は、30年来、1本でやっていたが、愛成吟詩会で2本、3本の人を指導しているうちに、そのような声を部分的ではあるが出せるようになった。時には4本を出すこともある。輪状甲状筋が鍛えられた為だと思う。しかし、私の本来の声は1本だと思うので、舞台の吟詠は1本でやろうと思っている。
 とうに70歳を超えた私でも、訓練によって高音が出せるようになったのであるから、誰でも高音が出せないと諦めることは無い。しかし、それには、それなりの訓練、つまり絶え間ない練習が必要なのである。輪状甲状筋は正直である。熱心に練習していればそれに応えてくれるし、練習をさぼっていればそっぽを向いてしまう。