映画日記
ひらめ小僧が観た映画の感想などを綴ります。写真はイメージです。
2007年1月10日(水)
敬愛なるベートーヴェン
2006年 イギリス・ハンガリー合作 アニエスカ・ホランド監督
「第九」の初演を4日後に控えたベートーヴェン。頼んだ写譜師が女性だったことから、最初は怒った彼だったが、やがて師弟以上の愛情が芽生える。
エド・ハリスがベートーヴェンを熱演。女性にもてない、気むずかしい、それでいて無神経っぽいところも。
こんな人物だったのに、生まれてくる音楽は、実にシンプルで美しい。第九の初演をアンナと成功させる様は、なかなか感動。
第九の初演が山場だと思う。かなり感動したのだが、初演のシーンの後は、ちょっと寂しい。
ベートーヴェンアパートの階下に住むおばあさんが、妙に印象に残った。
ベートーヴェンが出掛けると、アパートが静かになる。部屋の空気を入れ換え、椅子で昼寝など。「今が幸せ」らしい。
「じゃあ、引っ越したら?」
というアンナの問いかけに、
「だって、ベートーヴェンの音楽を初演前に聴けるのよ」
と答える。そのためなら、ベートーヴェンの素行も我慢なのだ。なるほど。
2006年11月20日(月)
アンジェラ

2005年 フランス リュック・ベッソン監督
生きる希望を失ったアンドレ。橋から飛び降りようとした矢先、絶世の美女が現れ、アンドレより先に飛び降りてしまう。
嫌いな作品ではないけれど、やはり、「ベルリン・天使の歌」かな、と思ってしまう。あれの、男女が逆になったストーリー。ハッピー・エンドになるのも、「ベルリン・天使の歌」だなあ。
モノクロも悪くないし、リー・ラスムッセンも美しい。静かにストーリーが進んでいくし、すごくピュアでファンタジー。
アンドレが、どうしようもない男から、最後、人を愛するようになるまで変化していくのはいいし、新しい天使像も、わかるのだけれど、
「あなたは、内面はすごく美しい人だ」
という前半のアンジェラの言葉、???そうかな?やっぱりどうしようもない男に思える。
しかし、映像が遊んでいる感じなのは好き。橋の様子とか、トイレの内装とか。アンジェラの顔も、天使の時と、堕天使の時の顔、それぞれ良い。
2006年6月29日(木)
コーラス

2004年 フランス ジャック・ペラン監督
問題児が集まる寄宿学校に、音楽家崩れのマチュー先生が赴任してくる。子供達に合唱を教えることにより、問題児たちに、変化が現れる。
本年度(まだ半年しか経ってないが)NO.1の「美しい映画」と認識。
話としては、よくあるフランス映画っぽい気もするが、ストーリーよりも「映画」として、魅せてくれる。
子供達の表情や、ジェラール・ジュニョの「ハゲタコ」教師ぶり、そしてなにより映画の格となっていく子供達の合唱が映画を美しくしている。「美しいって、こういうことだなあ」と、素直に感動してしまった。モランジュも、ペピノも映画を見ている内に、どんどん愛おしくなってくるのだ。
問題児を集めた宿舎にしては、さっさと歌い始め、マチュー先生にすぐなついていくような疑問はあるが、奇跡の声を持つモランジュは、それだけで心に響く。人の声って、素晴らしい。
2006年6月29日(木)
二人の5つの分かれ道

2004年 フランス フランソワ・オゾン監督
1組の夫婦の、出逢いから別れまでの5つのエピソードを、時間を遡って描く。
最初に離婚成立の場面。そこから時間を遡っていく手法が「おもしろい」とは思ったものの、そこまで新鮮ではなかったような。
「あの時、自分はこんな気持ちだったのに」
という、いわゆる「すれ違い」のストーリーが5つ。多分、少しずつすれ違いが生じていたのが、最後に大きくなって「別れ」になったということかなとも思うし、エピソードにない部分を観客に想像させるというのは、いろいろな解釈を生むことになって興味深いのだけれど、結局この二人は、最初からしっくりこない夫婦だったのだろう。それでもダラダラと男と女の関係を続けることに、なんだかストレスっぽいものを感じてしまった。
フランソワ・オゾンの作品としては「まぼろし」や「スイミング・プール」の方が好き。
2006年5月31日(水)
間宮兄弟

2006年 日本 森田芳光監督
間宮兄弟の二人は、マンションで二人暮らし。いい大人なのに、休日も一緒にすごすという大の仲良し。ある日、この二人が、職場の女の子などを呼んで、カレーパーティを開こうということに。
こんな兄弟が実際いたら、うざったいかな、と思いながら、見ているとほのぼのと笑ってしまうシーンの連続で、最後「ありあり、こんなの!」という結論に。羨ましくさえ思えてくる。
まさにコメディなのだけれど、どこか身近に感じられて「こういうこと、あるよね」というリズム感。楽しいシーンも悲しいシーンも、同調できてしまうところが不思議だ。
ラストは良い方に解釈したけれど、この兄弟は、おじいちゃんになってもず〜っとこのまま仲良しでいてほしいな。
あと、間宮兄弟が住む本棚、とっても素敵。私も行って、本棚を見てみたい。
2006年4月20日(木)
西洋鏡

2000年 中国・アメリカ アン・フー監督
1900年代初頭に、映画をイギリスから持ち込んだ男と、それに魅入られ、手伝いながら技術を学んでいく中国人青年の話。
確かに「東洋のニュー・シネマ・パラダイス」である。初めての映写、中国人にはどう映ったのか?最初、半信半疑だった庶民たちが、皆で「動く写真」を見て盛り上がるところは、
「映画って、いいよね」
と思うシーン。いろいろな西洋の機械に興味を持って、他人を喜ばせようとする主人公の中国人青年の純粋な好奇心が、映画好きの心にぐっとくる。どこの世界にも、こういう青年はいるはず。
ストーリーは単純だが、人々の優しさがそこここに現れていて、とても幸せな映画。京劇の俳優さん、写真館の社長、皆大好きだ。
2006年4月14日(金)
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!

近々行われる「大きい野菜コンテスト」を前に、畑を荒らすうさぎ退治の仕事をしているウォレスとグルミット。ある日、捕ってきたうさぎの脳を「野菜嫌いにしよう」と、ウォレス自らの発明品をうさぎと自分の脳にセットしたところから、大変なことに・・・。
劇場で見たのは初めてだけれど、見て良かった。とてもクレイアニメとは思えないスリルとサスペンス。いや、これをクレイアニメにしたことでやはり価値があると見た。すげ〜!
やはりこの監督の映画「チキンラン」も数年前に見たけれど、あれよりノリがいいのは(あれもおもしろかったのだが)、多分監督がウォレス&グルミットのコンビを愛しているからだろう。この二人のキャラクターが、魅了させてくれるのだ。グルミットって、やっぱり格好いい。彼は、いつもなかなかハードボイルドなのだ。
このシリーズ、小さいキャラクターを団体さんにすることがままあるのだけれど、今回はそれが、ウサギだった。このウサギがクセモノ。なぜウサギなのに、豚鼻なのだ?「キャー、かわいい!」というより、愛嬌たっぷりでおかしい。映画グッズにウサギのぬいぐるみがあったら、映画後に買ったのに。
あと、吹き替え版を見たのだが、萩本欽一氏のウォレス、最高!字幕版よりおもしろい。
2006年4月3日(月)
えびボクサー

2002年 イギリス マーク・ロック監督
元はボクサーだったが、今は冴えない中年男のビル。友人アミッドにもちかけられ、一発賭けに出ることに。巨大化したエビをボクサーにし、人間と戦わせるという番組を作ろうというのだ。
「オバカな映画」と思いきや、すごくまともで、拍子抜け。この拍子抜けさ加減が、今までにない「オバカ」である。エビをのぞけば、ちょっとした青春の思い出だったり、人生の反省だったり、最後はなんだかしんみりとした終わり方。くどいようだが、変なのはエビだけ。そして、あまりお金をかけていないところもおかしい。おかしいのに、まわりの人間がすべてシリアスに話をしていくのが、なんともたまらない。
「彼は、エビを愛しているんだ」
と、アミッドが真面目に言うシーンは最高だ。
そして、あの俗悪なテレビ番組をまともに作り上げている人間達。あのチャンネルは、あんな俗悪番組ばかりを放映しているというではないか。是非見てみたい。
2006年3月27日(月)
バーバー吉野

2003年 日本 荻上直子監督
男の子は全員「吉野ガリ」という髪型にしなければならないという、不思議な田舎町に、「格好いい」転校生の男の子がやってきたことから、騒動が持ち上がる。
「もたいまさこ、万歳」である。この人なくては、この映画は成り立たなかっただろう。違う意味での「怪優」だと思う。
「すべてが同じ形」というのは、なんとまあ不気味で、しかしユーモラスなものか。また、転校生が来るまで「変」だということに気が付かない男の子たちも不思議だけれど、男の子ってこういうものか?この転校生だって、特に格好いいわけではない。違う髪型をしているというだけで、街に行けば、ごく普通の男の子だ。
映画の中では、この「みんな一緒ってことが、変」に気が付いた男の子達の奮闘と、もたいまさこ演じる「吉野のおばちゃん」の戦いが迫力の内に展開していく。この男の子たちの秘密基地や、淡い初恋など、小学生ならではの青春も思い起こされる。
にしても、最初から最後まで(そして見終わった後も)魅せてくれるのは、もたいまさこだ。私の意見では、校門前で、吉野ガリにしていない男の子を追いかける彼女の姿は、この映画一番の見所。
2006年3月13日(月)
かもめ食堂

2006年 日本 荻上直子監督
フィンランドで「かもめ食堂」を営むサチエ、目を閉じて地図上でエイっと指さしたところがフィンランドだったからやってきたミドリ、両親を亡くし、エアギター選手権を見て感心したからフィンランドへ来たマサコ。客の来ない食堂で、ドラマが始まる。
私の好きな「だからどうした」という映画である。何かが起こって解決する映画でもない。しかし幸せになれる。
それぞれの事情を抱えてヘルシンキの「かもめ食堂」に集まった3人。何があったか詳しくは語らないけれど、「そりゃみんな、なんかあるよね」という、「そんなこと聞いても仕方ないし」で、時は過ぎていく。丁寧に料理して、丁寧に人に接して、暖かくてゆっくりした空気を提供してくれる。
ここに出てくる肉じゃがやサーモンの塩焼き、卵焼きやおにぎり、シナモンロールはとても丁寧に作られていき、観る者を刺激してくれる。おいしそうで、ほんわかあったかい空気。匂いも漂ってきそう・・・。
役者が皆、ものすごく自然なのもいい。3人とも本当に「そういう人」みたいだ。もたいまさこに関しては、本当に今年のエアギター選手権に出演していそうな雰囲気すらある。
マルック・ペルトラは「過去のない男」で好演していた役者。この映画でも一癖ありそうな哀愁漂う「オヤジ」を演じていて嬉しかった。
もう一度見たいと思う映画。
2006年3月10日(金)
大いなる休暇

2003年 カナダ ジャン=フランソワ・プリオ監督
カナダ、ケベック州の小さな島サントマリ・ラモデルヌは、かつては漁師町で栄えていたが、今は鄙びてしまい、皆生活保護で暮らしている。そこへ、工場誘致の話が。条件は、医者がいること。島民は、一人の医者を島に惚れさせようと、一致団結。
ストーリーとしてはよくあるものだが、役者や演出で、すごく魅せている。
漁師といえば頑固者かと思えば、皆「働いて生活したい」という気持ちのもと、涙ぐましい努力で若い医者に近づく。漁師だけではなく、若いお母さんや子供達まで、一糸乱れぬ一致団結なのである。この統一感が、見事なリズムで描かれている。出演者たちは、漁師のおじさんたちだから一見地味なのだけれど、それがまた「がんばれ!」と観る者を応援団へと導いている感じ。
あと、この若い医者がとてもいい。クリケットにバカみたいにはしゃぎ、恋人に毎晩電話して盛り上がり、医者としての使命を考え始めたり、近づいてくる島のみんなとどんどん仲良くなっていく。すごくかわいい青年だと見受けた。もともと「いい人」なのだ、この人。
ラストはあっけない感じでもあったけれど、私はこのくらいあっさりした幕切れの方が良い。メインは、「島民達のドタバタ」なのだから。
とても幸せになれる映画。