・チャップリン事件 最高裁平21.10.08
・白痴他事件 東京地裁20.1.28
・暁の脱走他事件 東京地裁平21.6.17
・まねきTV本案事件 知財高裁平20.12.15
・ロクラク事件 東京地裁平20.5.28
・福の神仙台四郎事件 仙台地裁平19.10.2
・黒烏龍茶事件 東京地裁平20.12.26
・ソニーミュージック事件 東京地裁平19.1.19
・レストランカフェ事件 大阪地裁平19.1.30
・ライブドア裁判傍聴記事件 知財高裁平20.7.12
・羅生門他事件 東京地裁平19.9.14
・東京アウトサイダーズ事件 知財高裁平19.5.31
・サライ事件 東京地裁平19.5.30
・MYUTA事件 (MYUTA=マイウタ) 東京地裁平19.05.25
・シェーン事件 知財高裁平19.3.29
チャップリン事件
旧著作権法下に制作、公表された映画著作物について、自然人が著作者である旨が実名をもって表示され、著作物が公表されたときは、かりに団体の著作名義の表示があったとしても、旧著作権法3条が適用され同6条は適用されないとされた事例
最高裁平二〇(受)八八九、チャップリン事件、平二一・一〇・八判決、第一審東京地裁、平一九・八・二九判決、第二審知財高裁、平二〇・二・二八判決
(裁時一四九三・三、判時二〇六四・一二〇、判タ一三一四・一二七、三浦正広・ジュリ臨増一三九八・三〇六)
参照条文 旧著作権法三条・六条
事案の概要
「サニーサイド」等9本の劇場用映画(本件各映画)はいずれもチャ―ルズ・チャップリンが原作、脚本、制作ないし監督、演出、主演(本件映画3を除く)等を単独で行ったものであり、大正8年(1919年)6月から昭和27年(1952年)までの間に公表された。本件は、原告が本件各映画の著作権を有するとして、本件各映画を無断でDVDに複製して販売している被告に対して、著作権侵害を理由にDVDの販売差止め及び損害賠償を求めた事件である。原審は、本件各映画にはチャップリンの実名による著作者の公表があるから旧法3条が適用され旧法6条は適用されないとし、旧法3条の適用によれば本件各映画の著作権の存続期間は満了していないから、原告の請求は認容できるとした。そこで、被告が上告したのが本件である。
判決の要旨〔棄却〕
(2) 旧法の下において、独創性を有する映画の著作物の著作権の存続期間については、旧法三〜六条、九条の規定が適用される(旧法二二条ノ三)。
旧法三条は、著作者が自然人であることを前提として、当該著作者の死亡の時点を基準にその著作物の著作権の存続期間を定めることとしている。しかし、無名又は変名で公表された著作物については、著作者が何人であるかを一般世人が知り得ず、著作者の死亡の時点を基準にその著作権の存続期間を定めると、結局は存続期間が不分明となり、社会公共の利益、法的安定性を害するおそれがある。著作者が自然人であるのに団体の著作名義をもって公表されたため、著作者たる自然人が何人であるかを知り得ない著作物についても、同様である。そこで、旧法五条、六条は、社会公共の利益、法的安定性を確保する見地から、これらの著作物の著作権の存続期間については、例外的に発行又は興行の時を基準にこれを定めることとし、著作物の公表を基準として定められた存続期間内に著作者が実名で登録を受けたときは、著作者の死亡の時点を把握し得ることになることから、原則どおり、著作者の死亡の時点を基準にこれを定めることとしたもの(旧法五条ただし書参照)と解される。そうすると、著作者が自然人である著作物の旧法による著作権の存続期間については、当該自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され、当該著作物が公表された場合には、それにより当該著作者の死亡の時点を把握することができる以上、仮に団体の著作名義の表示があったとしても、旧法六条ではなく旧法三条が適用され、上記時点を基準に定められると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、本件各映画は、自然人であるチャップリンを著作者とする独創性を有する著作物であるところ、上記事実関係によれば、本件各映画には、それぞれチャップリンの原作に基づき同人が監督等をしたことが表示されているというのであるから、本件各映画は、自然人であるチャップリンが著作者である旨が実名をもって表示されて公表されたものとして、その旧法による著作権の存続期間については、旧法六条ではなく、旧法三条一項が適用されるというべきである。団体を著作者とする旨の登録がされていることや映画の映像上団体が著作権者である旨が表示されていることは、上記結論を左右しない。
解 説
本件各映画は旧著作権法下で制作、公表されており、旧著作権法の適用を受けます。その著作権の存続期間は、旧著作権法3条が適用になればチャップリンの死亡時(昭和52年(1977年)12月25日)から30年間に平成15年法律第85号附則、昭和45年法律第48号附則を適用して、本件映画1〜7は平成27年(2015年)12月31日まで、本件映画8.9は平成29年(2017年)12月31日までとなり、現在も存続中です。ところが、旧著作権法6条を適用すると、存続期間は公表から30年間ですから既に著作権は満了しています。そして、本判決は、自然人が著作者である著作物については、著作者の死亡時点を起算時とする3条が原則であり、6条は著作者を知りえない著作物についての例外規定であるとして、自然人が著作者である旨がその実名をもって表示され、著作物が公表された場合は、団体の著作名義の表示があったときも3条を適用するとしました。
白痴他事件
旧著作権法下で制作、公開された映画について、映画のポスターやオープニング部の表示から、黒澤明監督の実名著作物であって旧著作権法6条の団体著作物ではないとして、その保護期間はまだ満了していないとした事例
知財高裁平二〇(ネ)一〇〇二五、白痴他事件、平二一・一・二九判決、第一審東京地裁平一九(ワ)一六七七五、平二〇・一・二八判決
(判タ一三〇四・二八二)
参照条文 著作権法一一二条・一一三条・一一四条、旧著作権法三条・六条・五二条
事案の概要
松竹株式会社は、「醜聞(スキャンダル)」(本件作品1)及び「白痴」(本件作品2)の劇場用映画を制作し、それぞれ昭和25年4月26日、同26年6月1日に公開した。監督はいずれも黒澤明監督であり、同監督は平成10年9月6日に死亡している。本件は、原告松竹株式会社が、平成19年2月頃から本件作品1及び2を複製収録したDVD(被告商品1・2)を輸入、販売する被告に対して、著作権法112条に基づき、被告商品1・2の頒布の差し止め等を求めた事件である。
原審の東京地裁(東京地裁平19(ワ)第16775号、平成20・1・28判決)は、本件作品1及び2の著作権の存続期間は旧著作権法3条及び52条1項により著作者の死後38年間であるから、本件作品1及び2の著作権は存続中であり、被告の行為は著作権侵害行為に当たるとした。この判決に対して被告は控訴し、原告も付帯控訴して損害賠償請求を追加した。本件はこの控訴審判決である。
判決の要旨〔一部認容〕
証拠及び弁論の全趣旨によれば、昭和二五年四月二六日に公開された本件作品一及び昭和二六年六月一日に公開された本件作品二の公開態様は、次のようなものであったことが認められる。
ア 本件作品一
(ア) 本件作品一の冒頭において、映画の題名・関係者等を紹介するオープニングの部分では別紙(一)の一のとおり、順次、以下のとおりの表示がされている。
・「松竹映画」との表示
・「醜聞」を大きく表示し、その下に若干小さな文字で「スキャンダル」と表示した題名表示
・「企画 本木荘二郎」、「製作 小出孝」との表示。なお、「本木荘二郎」の氏名の横には若干小さな文字で「映画藝術協会」と記載がある。
・「脚本 黒澤明、菊島隆三」、「撮影 生方敏夫」との表示
・「調音 大村三郎」、「美術 M田辰雄」、「照明 加藤政雄」、「音樂 早坂文雄」との表示
・「編集 杉原よ志」ほかの表示
・「衣裳 鈴木文治郎」ほかの表示
・「出演者」の表示
・「三船敏郎、山口淑子」ほかの表示
・四枚の画面表示に「日守新一」ほかの表示
・「監督 黒澤明」の表示。なお氏名の横には若干小さな文字で「映画藝術協会」の記載がある。
(イ) 一方、本件作品一の劇場公開当時のポスターには、別紙(一)の二のとおり、主演の三船敏郎らの写真、映画の題名のほか、「黒沢・三船が大都会の仮面を暴く鮮烈巨弾!」「監督黒沢明・脚本黒沢明・菊島隆三」等が記載されている。
イ 本件作品二
(ア) 本件作品二の冒頭において、映画の題名・関係者等を紹介するオープニングの部分では、別紙(二)の一のとおり、順次、以下のとおりの表示がされている。
・「松竹映画 一九五一」との表示
・「白痴」との題名表示
・「製作 小出孝」、「企画 本木荘二郎」との表示。なお、「本木荘二郎」の氏名の横には若干小さな文字で「映画藝術協会」と記載がある。
・「ドストエフスキイ原作『白痴』より」とした上、「脚本 久板榮二郎、黒澤明」、「撮影 生方敏夫」との表示
・「美術 松山崇」、「録音 妹尾芳三郎」、「録音技術 佐々木秀孝」、「照明 田村晃雄」、「音樂 早坂文雄」との表示
・「装置 関根正平 古宮源藏」ほかの表示
・「結髪」「記録」担当者らの表示
・「後援 札幌觀光協會」等の表示
・「出演者」の表示
・「原節子、森雅之、三船敏郎、久我美子」の表示
・三枚の画面表示に「志村喬」ほか一八名の表示
・「監督 黒澤明」の表示。なお氏名の横には若干小さな文字で「映画藝術協会」の記載がある。
(イ) 一方、本件作品二の劇場公開当時のポスターには、別紙(二)の二のとおり、主演の原節子、森雅之、三船敏郎の写真、映画の題名のほか、「脚本 監督 黒沢明」と記載され、「松竹映画」との表記及び原節子ら出演者の氏名が記載されている。
また、本件作品二の劇場公開当時に発行された「松竹映画PRESS NO.170」(甲一五の添付O)には、「赤裸々な人生愛憎の姿を衝く黒沢明の野心巨弾!」との記載がある。
(3) 以上認定の事実によれば、本件作品一及び二を観賞した社会一般の者としては、いずれも著名な映画監督である黒澤明が監督を務めた映画であると受けとめ、「松竹映画」の部分はあくまで製作者ないし配給元を表示したにすぎないと認めるのが相当である。したがって、本件作品一及び二は、自然人たる黒澤明ほかの著作者を表示した実名著作物であって、旧著作権法六条にいう団体著作物ということはできないから、一審被告の当審における主張は採用することができない。
解 説
被告は、本件両作品にはいずれも制作者として「松竹株式会社」が表示されているから、旧著作権法6条の団体著作物であってその保護期間は公表後33年間であるから、本件作品1は昭和58年、本件作品2は昭和59年の経過によって著作権が消滅していると主張しました。これに対して原告は、本件両作品にはいずれも著作者名として黒澤明氏が表示されているから、旧著作権法3条の実名著作物であり、その保護期間は累次の法改正により最短でも平成48年までであると主張しました。本判決は、本件作品1及び2のオープニング部分の表示及びポスターの表示から、一般人は本件両作品を著名な映画監督の黒澤明氏が監督を務めた映画であると受け止め、「松竹映画」は制作者あるいは配給元の表示とみるから、本件両作品は黒澤明氏の実名著作物であって旧著作権法6条の団体著作物ではないとしました。羅生門他事件、チャップリン事件(知財高裁平20・2・28 判時2021・96)も同様にそれぞれ黒澤明監督、チャップリンの実名著作物としています。
暁の脱走他事件
旧著作権法下で制作、公開された映画について旧著作権法6条の団体著作物ではないとして、その保護期間はまだ満了していないとした事例
東京地裁平二〇(ワ)一一二二〇、暁の脱走他事件、平二一・六・一七判決
(判タ一三〇五・二四七)
参照条文 著作権法二条・一六条・二九条・五四条・附則四条・五条・七条、著作権法の一部を改正する法律(平一五法八五)附則三条、旧著作権法三条・四条・五条・六条・二二条の三・五二条
」
事案の概要
映画「暁の脱走」(本件映画1)は谷口干吉が監督を担当し、新東宝を映画製作者として昭和25年に公開され、映画「また逢う日まで」(本件映画2)は今井正が監督を担当し、東宝を映画製作者として昭和25年に公開され、映画「おかあさん」(本件映画3)は成瀬巳喜夫が監督を担当し、新東宝を映画製作者として昭和27年に公開された。谷口は平成19年10月29日に、今井は平成3年11月22日に、成瀬は昭和44年7月2日にそれぞれ死亡しているが、各監督は、遅くとも本件各映画が公開された頃までには、東宝または新東宝に対して本件各映画の著作権を譲渡したと推認することが相当とされており、さらに新東宝は東宝に対して本件各映画の著作権を譲渡したと認定されている。かかる事実関係において、原告東宝株式会社が、本件各映画を複製収録したDVDを輸入、販売する被告に対して、著作権法112条に基づきDVDの頒布の差し止め等を求めた事件が本件である。
判決の要旨〔一部容認〕
(2)本件各映画の著作者について
ア 本件各映画は、いずれも新著作権法が施行される前に創作された映画の著作物であり、同法付則四条によれば、映画の著作物の著作者に関する規定である同法一六条は適用されないから、本件各映画の著作者がだれかについては、旧著作権法によることになる。そして、旧著作権法においては、映画の著作物の著作者について直接定めた規定はないのみならず、そもそも著作物一般についての著作者の定義や著作物の定義を定める規定もない。
他方で、新著作権法では、著作物及び著作者の定義規定が設けられている(同法二条一項一号及び二号)が、その内容が旧著作権法における著作物及び著作者についての解釈と異なるのであれば(新著作権法が、旧著作権法における著作物及び著作者をすべて著作物及び著作者と定義した上で、更に著作物及び著作者の定義の範囲を拡張したような例外的場合でない限り)、従前は著作物及び著作者として認められていたものが、新著作権法の施行により著作物又は著作者と認められないことが生じ得るのであるから、何らかの経過措置が設けられるのが通常と考えられるところ、これに関する経過規定は設けられていない。また、旧著作権法の下で公表された著作物の著作権が、新著作権法の下でも存続することを前提とした規定(例えば、同法附則七条)もある。これらのことからすれば、新著作権法における著作物及び著作者の定義は、旧著作権法における著作物及び著作者の定義を変更したものではないと解するのが相当である。なお、旧著作権法の下における裁判例においても、著作物とは、「著作者の精神的所産たる思想内容の独創的表現たることを要す」(大審院昭和一一年(オ)第一二三四号同一二年一一月二〇日第三民事部判決・法律新聞四二〇号三頁参照)、「精神的労作の所産である思想又は感情の独創的表白であって、客観的存在を有し、しかも文芸、学術、美術の範囲に属するもの」(東京地裁昭和四〇年八月三一日判決・下民集一六巻八号一三七七頁参照)等と解されている。
したがって、旧著作権法における著作物とは、新著作権法と同様、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいい、また、旧著作権法における著作者とは、このような意味での著作物を創作する者をいうと解される。
そうして、思想又は感情を創作的に表現できるのは自然人のみであることからすると、旧著作権法においても、著作者となり得るのは、原則として自然人であると解すべきである。
イ このように、著作者となり得るのは、原則として自然人であることを前提として、制作、監督、演出、撮影、美術の担当者等多数の自然人の協同作業により製作されるという映画の著作物の製作実態を踏まえると、旧著作権法においても、新著作権法一六条と同様、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当して映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が、当該映画の著作物の著作者であると解するのが相当である。
なお、新著作権法附則四条は、同法一六条の規定は、同法の施行前に創作された著作物については、適用しない旨定めている。しかしながら、旧著作権法において、映画の著作物の著作者につき、新著作権法一六条と同様の解釈をすることを妨げるような事情があるとは認められないことからすれば、同法附則四条が同法一六条を適用しないこととしたのは、同条が新設規定であることに照らして、旧著作権法の下で公表された映画の著作物の著作者については旧著作権法における解釈に委ねる趣旨であって、旧著作権法において新著作権法一六条と同様の解釈をすることを積極的に排除する趣旨まで含むものではないと解される。現に、著作権法の所管省庁である文化庁において新著作権法の立案を担当していた者においても、同法附則四条につき、旧著作権法下における映画の著作物の著作者の意義の解釈が必ずしも確定しなかったために、旧著作権法による解釈に委ねる趣旨で設けられたものであると説明している。これらのことからすれば、新著作権法附則四条は、旧著作権法の下で公表された映画の著作物の著作者について、新著作権法一六条と同様の解釈をすることを妨げるものではないと解される。
ウ これを本件各映画についてみると、証拠並びに前記第二の1(2)アないしウによれば、本件各監督はそれぞれ本件各映画の監督を務めており、また、本件各映画は本件各監督による創作的な表現であると評価されていることが認められるから、本件各監督は、それぞれ本件各映画の全体的形成に創作的に寄与している者と推認され、これに反する証拠もない。
したがって、本件各監督は、他に著作者が存在するか否かはさておき、少なくとも本件各映画の著作者の一人であると認められる。
(3)本件各映画の著作名義について
ア 前記第二の1(3)のとおり、旧著作権法は、三条から九条まで著作権の存続期間に関する規定を置いているところ、三条一項は、発行又は興行した著作物の著作権の存続期間を著作者の生存する間及びその死後三〇年間と定め、四条は、著作者の死後に発行又は興行した著作物の著作権の存続期間を発行又は興行の時から三〇年間と定め、五条本文は、無名又は変名の著作物の著作権の存続期間を発行又は興行の時から三〇年間と定め、同条ただし書きで、その期間内に著作者の実名の登録を受けたときは三条の規定に従うこととし、六条は、団体の名義をもって発行又は興行した著作物の著作権の存続期間を発行又は興行の時から三〇年間と定めていた。
このような旧著作権法における著作権の存続期間に関する規定全体の構成に加え、前記(2)アのとおり、旧著作権法においては、著作者となり得る者は原則として自然人であると解されることにかんがみると、旧著作権法は、著作権の存続期間につき、原則として自然人である著作者の死亡の時を基準とすることを定めた上で、著作者又はその死亡時期が特定できないための基準によることができない無名又は変名の著作物及び創作行為を行った自然人を判別することができず、また、著作物の名義人の死亡時期を観念することができない団体名義の著作物については、五条又は六条で発行又は興行の時を基準とすることとしたものと解される。
そうすると、旧著作権法六条が定める団体名義の著作物とは、当該著作物の発行又は興行が団体名義でされたため、当該名義のみからは創作行為を行った者を判別できず、また、著作物の名義人の死亡時期を観念することができない著作物をいうと解するのが相当である。
イ これを本件についてみると、証拠、前記第二の1(2)の各事実及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(ア) 本件映画一は、新東宝が製作したものであるところ、そのオープニングでは、冒頭部分において、新東宝の標章とともに「新東宝映画」との表示がされ、その後、題名、製作スタッフ、出演者等の表示がされ、最後に「監督 A」との表示がされている。また、本件映画一のポスターにおいては、新東宝の標章及び「新東宝興業株式会社配給」との記載とともに、「監督・A」との記載がされている。
(イ) 本件映画二は、原告が製作したものであるところ、そのオープニングでは、冒頭部分において、原告の標章とともに「東宝株式会社」との表示がされ、その後、題名、製作スタッフ、出演者等の表示がされ、最後に「出演 B」との表示がされている。また、本件映画二のポスターにおいては、「東宝株式会社製作・配給」との記載とともに、「B監督作品」との記載がされている。
(ウ) 本件映画三は、新東宝が製作したものであるところ、そのオープニングでは、冒頭部分において、新東宝の標章とともに「新東宝映画」との表示がされ、その後、題名、製作スタッフ、出演者等の表示がされ、最後に「監督 C」との表示がされている。まら、本件映画三のポスターにおいては、新東宝の標章及び「新東宝の良心特作」との記載とともに、「監督C」との記載がされている。
ウ そして、前記(2)のとおり、本件各監督がそれぞれ本件各映画の著作者であると認められることからすれば、前記イの本件各映画のオープニングやポスターにおける本件各監督の名前の表示は、それぞれ本件各映画の著作者である本件各監督の実名を表示したものと認められる。
そうすると、本件各映画は、著作者の実名が表示されて公表された著作物であって、創作行為を行った者を判別できず、また、著作物の名義人の死亡時期を観念することができない著作物であるとはいえないから、本件映画一及び三に「新東宝映画」等の表示が、本件映画二に「東宝株式会社」等の表示があるからといって、旧著作権法六条が定める団体名義の著作物には当たらないというべきである。
そして、前記第二の1(2)の各事実からすれば、本件各映画は、それぞれ本件各監督の生存中に公開されたものと認められるから、その著作権の存続期間について適用される旧著作権法の規定は、同法三条、五二条一項であると解される。
解 説
本件各映画のポスターやオープニング部分には映画会社名が表示されていますので、これを旧著作権法6条の団体名義の著作物とすれば、発行又は興行した時である昭和25年ないし26年から30年間で著作権の存続期間が切れますが、これを旧著作権法3条の実名著作物とすれば、著作者の死後30年間は著作権の存続期間が及びます。そこで、原告である東宝は後者の見解にたって被告を訴え、被告は前者の見解にたって著作権の存続期間は満了していると主張しました。
判決は次のように認定しています。
@ 本件には旧著作権法が適用されるところ、旧著作権法には著作者や著作物の定義、映画著作物の著作者について定めた規定はない。他方、現行著作権法にはこれらの定義規定が設けられているが、その内容が旧著作権法と異なるのであれば何らかの経過措置が設けられるのが通常であるのに経過措置が設けられていないこと、また旧著作権法の下で公表された著作物の著作権が新著作権法下でも存続することを前提とする規定もあることからすれば、新著作権法における著作者や著作物の規定は旧著作権法下におけるそれらを変更したものではないと解するのが相当である。
A したがって、旧著作権法における著作物とは思想、感情の創作的表現物をいい、旧著作権法における著作者とはこのような著作物を創作する者をいう。そして、思想、感情を創作的に表現できる者は自然人のみであるから、旧著作権法において著作者となり得るのは原則として自然人である。そして、映画のように多数の自然人の共同作業により制作される著作物は、新著作権法16条同様に、全体的形成に創作的に寄与した者が著作者になると解せられる。なお、新著作権法附則4条は、新著作権法16条の規定は新著作権法施行前に創作された著作物には適用しない旨を定めているが、それは旧著作権法下で公表された映画著作物の著作者については旧著作権法の解釈にゆだねる趣旨であって、旧著作権法において新著作権法16条と同様の解釈をすることを積極的に排除する趣旨ではないから、旧著作権法下において公表された映画著作物の著作者について新著作権法16条と同様の解釈をすることは妨げられない。
B そこで、(本件各映画の著作者を新著作権法16条に基づいて決定すると)、本件各映画の監督は、それぞれ本件各映画の全体的形成に創作的に寄与している者であるから、他に著作者が存在するか否かはともかく少なくとも著作者の一人である。
C 旧著作権法における著作権の存続期間の定めは、3条で著作者の死後30年間までと定め、4条で著作者の死後に発行又は興行した著作物について、5条で無名又は変名の著作物について、6条で団体名義で発行又は公表した著作物についてはいずれも発行又は興行の時から30年間と定めている。このような規定全体の構成に旧著作権法においては著作者となり得る者は自然人に限られることに鑑みると、旧著作権法は、著作権の存続期間について、原則として自然人である著作者の死亡時を基準とすることを定めた上で、著作者又はその死亡時期が特定できないためこの基準により得ない無名又は変名著作物、創作行為をした自然人を判別できず、または著作物の名義人の死亡時期を観念できない団体名義の著作物については、5条又は6条で発行または興行の時を基準にしたものと解される。
D そうすると、旧著作権法6条が定める団体名義の著作物とは、著作物の発行又は興行が団体名義でなされたために、その名義のみによっては創作行為者を判別できず、また著作物の名義人の死亡時期を観念できない著作物をいう。しかるに、本件各映画のポスターやオープニングには少なくとも著作者の一人である監督の実名が表示されていて創作行為者を判別できるから、本件各映画は旧著作権法6条の団体名義の著作物ではない。
旧著作権法6条については現行著作権法15条に相当する団体著作を認めたものとする解釈もありますが、本判決は、旧著作権法において著作者は自然人のみであるとし、したがって3条が存続期間の原則的規定であり、6条は著作者又はその死亡時期を判別できないときのための規定であるとしました。したがって、本件の如く著作者である映画監督の死亡時期が分かっていて、著作権の存続期間が判別できるときは著作権法6条は適用されないとしました。
まねきTV本案事件
1対1の送信機能しか有しない装置は「自動公衆送信装置」にあたらない、「公衆によって直接受信される」は公衆が内容を覚知できるようになることをいうとして、日本のTV番組を海外で視聴できるようにしたサービスが放送各社の公衆送信権、送信可能化権の侵害に当たらないとされた事例
知財高裁平二〇(ネ)一〇〇五九、まねきTV本案事件、平二〇・一二・一五判決(判時二〇三八・一一〇)
参照条文 著作権法二条・二三条・九九条の二
事案の概要
控訴人XはNHKで、被控訴人Yは電気通信事業等を目的とする株式会社である。Xは、別紙放送目録記載の放送(本件放送)について送信可能化権等の著作隣接権を有している。Yは、「まねきTV」という名称で、利用者がインターネット回線を通じてTV番組を視聴できるようにするサービス(本件サービス)を提供している。本件サービスは、ソニー製の商品名「ロケーションフリーテレビ」の構成機器であるベースステーションを用い、インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコンを有する利用者が、インターネット回線を通じてTV番組を視聴できるものである。そこで、控訴人が、被控訴人に対して、本件サービスが本件放送にかかる控訴人の送信可能化権を侵害しているとして、本件サービスの停止を求める仮処分を申請したところ、裁判所はこれを却下した(まねきTV仮処分事件)。本件は同事件について控訴人が提起した本訴の控訴審判決であり、一審判決は、本件サービスにおいて被控訴人が行っている行為は送信可能化行為にも公衆送信行為にも当たらないとして控訴人の請求を棄却している(東京地裁平19(ワ)5765号 平20・6・20判決)。
判決の要旨〔棄却〕
本件サービスにおいては、利用者各自につきその所有に係る一台のベースステーションが存在し、各ベースステーションは、予め設定された単一のアドレス宛に送信する機能しか有しておらず、当該アドレスは、各ベースステーションを所有する利用者が別途設置している専用モニター又はパソコンに設定されていて、ベースステーションからの送信は、各利用者が発する指令により、当該利用者が設置している専用モニター又はパソコンに対してのみなされる(各ベースステーションにおいて、テレビアンテナを経て流入するアナログ放送波は、当該利用者の指令によりデジタルデータ化され、当該放送に係るデジタルデータが、各ベースステーションから当該利用者が設置している専用モニター又はパソコンに対してのみ送信される)ものである。すなわち、各ベースステーションが行ない得る送信は、当該ベースステーションから特定単一の専用モニター又はパソコンに対するもののみであり、ベースステーションいわば「一対一」の送信を行う機能しか有していないものである。そうすると、個々のベースステーションが、不特定又は特定多数の者によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置であるということはできないから、これをもって自動公衆送信装置にあたるということはできない(被控訴人事業所内のシステム全体が一つの自動公衆送信装置を構成しているのと主張については、後記(3)において検討する。)。
〔中略〕
著作権法二条一項七号の二に規定に係る「公衆によって直接受信されること」とは、公衆(不特定又は多数の者)に向けられた送信を受信した公衆の各構成員(公衆の各構成員が受信する時期が同時であるか否かは問わない)が、著作物を視聴等することによりその内容を覚知することができる状態になることをいうものと解するのが相当である(翻って、平成九年法律第八六号による改正前の著作権法二条一項八号の「放送」に係る定義規定、同項一七号の「有線送信」に係る定義規定、さらに、昭和六一年法律第六四号による改正前の著作権法二条一項一七号の「有線放送」に係る定義規定における、各「公衆によって直接受信されること」の意義も同様に解すべきである。また、有線テレビジョン放送法二条かっこ書きの「有線放送」の定義に係る「公衆によって直接受信されること」の意義も同様である。)。
なお、このような理解によると、著作権法二三条二項が、同条一項の公衆送信権についての規定を踏まえ、「公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利」(公衆伝達権)について定めていることは、公衆送信を受信した公衆の構成員が著作物の内容を覚知することができる状態となるまでが公衆送信権の対象となる範疇であり、そのような公衆の構成員が更に著作物を公に伝達する行為は、これを公衆伝達権の対象として、当該行為にまで著作者の排他権を及ぼし、もって、著作者の権利を著作物の伝達経路の末端にまで及ぼしたものと解することになる。
解 説
本件はまねきTV仮処分事件の本案事件の控訴審判決です。まねきTV事件は、仮処分事件も本案事件(第一審及び第二審)もいずれも著作隣接権の侵害を否定しており、その主たる理由はその使用する機器が自動公衆送信装置に当たらないとしたからですが、同時に利用主体は各利用者であってサービス提供業者ではないとも言っています。控訴審判決が本件サービスを著作隣接権侵害に当たらないとした理由は概ね次のとおりです。
1 送信可能化権侵害に当たらない理由
「送信可能化」とは、自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に情報を記録したり、自動公衆送信装置に情報を入力したりすること等をいいますから(著作2条T9の5)、自動公衆送信装置を使用する行為です。次に、「自動公衆送信装置」とは、公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(公衆送信用記録媒体)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいいますから(著作2条T9の5)、自動公衆送信を目的とする装置です。「自動公衆送信」とは、公衆送信のうち公衆からの求めに応じ自動的に行うものをいい(著作2条T9の4)、「公衆送信」とは公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信をおこなうことをいいますから(著作2条T7の2)、結局、自動公衆送信装置は公衆によって直接受信される無線通信又は有線電気通信の送信ができる装置でなくてはなりません。ところが、本件サービスにおいては、利用者各自が1台のベースステーションを所有し、そのベースステーションはその利用者が設置している専用モニター又はパソコンに設定されているアドレスに対してしか送信機能を有していません。このようにベースステーションは1対1の送信機能しか有していませんので、公衆によって直接受信される無線通信又は有線電気通信の送信ができる装置、すなわち自動公衆送信装置には当たらず、自動公衆送信装置を使用していないから送信可能化権の侵害に当たらないとしました。
これに対して、控訴人は、本件システム全体が1つの自動公衆送信装置を構成すると主張しましたが、判決では、ベースステーション相互間になんら有機的な関連性や結合関係はなく、個々のベースステーションからの送信は独立して行われるから、複数のベースステーションを一体として1つの装置とみることはできないとしました。
2 公衆送信権侵害に当たらない理由
このように、各ベースステーションからの送信は「自動公衆送信装置」を使用していない以上、その送信は公衆送信ではなく、したがって公衆送信権の侵害にも当たらないとしました。また、各ベースステーションから各利用者の専用モニター又はパソコンに対するデジタルデータの送信は完全に各利用者に依存しているから、各利用者を利用主体とみることもできないとしました。
ところが、控訴審において、控訴人らは、新規に、テレビアンテナからベースステーションへの送信が公衆送信にあたると主張しました。これに対して、控訴審は、次のとおり、「公衆によって直接受信される」とは公衆がその内容を覚知できる状態になることを意味するとして、その主張を退けました。
平成9年改正著作権法により、従来の「放送」及び「有線放送」とは別に公衆からの求めに応じて自動的に行う送信(インタラクティブ送信)である「自動公衆送信」を導入し、同時に「放送」「有線放送」「自動公衆送信」の上位概念として「公衆送信」を導入し、また自動公衆送信できる状態にする「送信可能化」を導入しました。
放送
公衆送信 有線放送
自動公衆送信―送信可能化
放送、有線放送、自動公衆送信はいずれも「公衆送信」ですから、公衆によって直接受信されることを目的としておこなわれるものであり(著作2条T7の2)、「公衆によって直接受信される」とは公衆が著作物を視聴等することによってその内容を覚知できる状態になることをいうと解するのが相当であるところ、アナログ放送波をテレビアンテナから有線電気通信回線を介して各ベースステーションまで送ることは、「有線電気通信の送信」(著作2条T9の2)に該当するものの、さらに専用モニター又はパソコンの指令に基づいてベースステーション内蔵のテレビチューナーによってアナログ放送波をデジタル化して出力しなくては内容を覚知できる状態にならないのだから、テレビアンテナから各ベースステーションへの有線電気通信の送信は公衆送信に該当しない。
ロクラク事件
日本国内に設置した親機にテレビ放送の放送波を入力し、海外に設置した子機を操作してその放送波をダウンロードして海外で視聴できるようにしたサービスを事業として行うことが、放送事業者の有する著作権または著作隣接権を侵害するとされた事例
東京地裁平一九(ワ)一七二七九、ロクラク事件、平二〇・五・二八判決
(判時二〇二九・一二五、判タ一二八九・二三四)
参照条文 著作権法二一条・九八条・一一二条・一一四条・一一四条の五、民法七〇九条
事案の概要
原告はNHK等の放送会社計9社であり、被告の行っているサービスが原告らの著作権及び著作隣接権を侵害するとして、差止め、損害賠償金の支払い等を求めて出訴したものである。被告の行っているサービス(本件対象サービス)は「ロクラクUビデオデッキレンタル」という名称で、ハードディスクレコーダーであるロクラクU(被告が製造し、販売・貸与を行っている、インターネット通信機能を有するハードディスクレコーダー)の親子機能を有する2台のロクラクU(親機ロクラク・子機ロクラク)をセットにして有償で貸与する(子機ロクラクは販売する場合もある)サービスであり、利用者は、同サービスを利用することによって、手元に設置した子機ロクラクを操作して、離れた場所に設置した親機ロクラクにおいて地上波アナログ放送を受信してテレビ番組を複製させ、複製した番組データを子機ロクラクに送信させ、子機ロクラクに接続したテレビ等のモニターに番組データを再生して、複製したテレビ番組を視聴することができる。
判決の要旨〔一部認容・一部棄却〕
親機ロクラクは、本件サービスを成り立たせる重要な意味を有する複製を行う機能を有する機器であるところ、Yは、日本国外の利用者に日本のテレビ番組の複製物を取得させるという本件サービスの目的に基づき、当初、親機ロクラクの設置場所を提供して管理支配することで、日本国外の利用者が格段に利用しやすい仕組みを構築し、いまだ、大多数の利用者の利用に係る親機ロクラクを、東京都内や静岡県内において管理支配しているものということができる。この場合、上記の、本件サービスにおいて親機ロクラクの果たす役割からすれば、Yは、別紙サービス目録記載の内容のサービス、すなわち、本件対象サービスを提供しているものということができ、本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を管理支配していると認めることができるとともに、それによる利益を得ているものと認められる(なお、Yは、登録料やレンタル料は、親機ロクラクの管理に係る利益とはいえない旨主張し、親機ロクラクの管理に係る賃料等を取得していない旨の報告書などを提出するところ、上記登録料等は、名目のいかんにかかわらず、Yが本件対象サービスを提供することによって得る経済的対価であるから、Yは、利益を得ているというべきであり、Yの主張は採用できない。)。
以上から、Yは、本件対象サービスを提供し、本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を行っているというべきであり、原告NHK及び東京局各社の本件番組についての複製権(著作権法二一条)及びXらの本件放送に係る音又は影像についての著作隣接権としての複製権(著作権法九八条)を侵害するものといえる。
Yは、本件サービスが、あくまでも利用者個人がその私的使用目的で賃借したロクラクUを利用する行為であって、その利用に関与するものではなく、利用者が賃貸機器を利用してテレビ番組を複製する行為の主体は、利用者本人であり、Yではあり得ない旨主張する。
しかしながら、Yは、上記判示のとおり、本件対象サービスにおいて、自らが本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を行っているのであり、このことと、本件サービスの利用者によるテレビ番組の録画が、私的使用目的で行われるか否か、あるいは、利用者の指示に基づいて複製されるテレビ番組が選択されるか否かとは、直接関連するものではないから、Yの上記主張は、失当といわなければならない。
解 説
本件はインターネットを利用した録画予約サービスの適法性が問題となりました。インターネットを利用した録画予約サービスは、@事業者が録画用パソコンやネットワーク機器等を設置してその保守管理をおこない、A利用者は、インターネットを介して事業者の設置した録画用パソコンにアクセスし、事業者の用意したソフトを利用してTV番組を録画用パソコンに録画し、それをダウンロードしてTV番組を視聴できるようにするサービスです。類似事件としては、本件同様に海外の利用者がインターネットを通じて国内の事業者事務所に設置されたテレビパソコンを操作して録画予約し、それを転送することにより海外でテレビ番組の視聴を可能としたサービスが著作隣接権の侵害とされた録画ネット事件、集合住宅向けにテレビ番組を録画可能とする自動録画装置を販売した行為が著作隣接権の侵害主体と同視できるとされた選撮目録事件、パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザーが携帯電話で楽曲を聴くことができるようにしたサービスが複製権及び公衆送信権の侵害とされたMYUTA事件があります。その他インターネットを利用した動画共有サイトの適法性が問題となった事件として音楽ファイル交換事件(1)(2)(3)があります。これらはいずれも、利用主体は利用者ではなくサービス提供業者であるとして、著作権ないし著作隣接権の侵害と認定されました。まねきTV事件では、その使用する機器が自動公衆送信装置に当たらないとして著作隣接権の侵害が否定されましたが、利用主体もサービス提供業者ではなく各利用者であるとされました。一連の録画予約サービスにおいて、利用者を利用主体とみれば、自宅でTV番組をDVDに録画するのと同様であって著作権法30条のプライベートユースに該当します。ところがサービス提供業者を利用主体とみれば、TV番組をパソコンに録画した時点で複製権の侵害となり、多数の利用者がダウンロードできるようにした時点で公衆送信権の侵害となります。そして、これまでの判例は、まねきTV仮処分事件以外はすべて事業者を利用主体であるとして、事業者の行為を著作権ないし著作隣接権の侵害としてきました。その理論的根拠を与えたのがクラブ・キャッツアイ事件に関する最高裁判例です。この事件は、飲食店におけるカラオケ伴奏の利用主体は誰であるかが争われた事件で、客は飲食店主が設置し操作したカラオケ装置やカラオケテープを用いて歌唱するのであるから、飲食店主の管理のもとに歌唱していると解され、それによって飲食店主は営業上の利益を得ているのだから、歌唱の主体は飲食店主であるとしました。このように管理性と利益の帰属をもって利用主体を決定する考え方は“カラオケ法理”といわれて定着し、録画予約サービスにも応用されたのです。
ところが、本事件の控訴審判決は、わが国の国内で放送されたテレビ番組の海外での視聴に対する需要が飛躍的に増大する中、技術の飛躍的進展によってそれが時間的にも経済的にも著しく容易になり、新しい商品やサービスが創生されることは技術革新の歴史を振り返れば明らかなことであるとして、本件サービスは適法な私的利用のための環境条件等の提供を図るものであって、利用者による複製をもって控訴人による複製と同視することはできないとして、本件サービスは適法であるとしています。
福の神仙台四郎事件
仙台地方で商売繁盛の福の神として周知されている「仙台四郎」の容姿を形状とする商品、「仙台四郎」の容姿を図柄の重要な構成要素とする商品が、応用美術であって、独立して美的鑑賞の対象となる美的特性を備えていないとして、著作物には当たらないとされた事例。
仙台地裁平一五(ワ)六八四、福の神仙台四郎事件、平一九・一〇・二判決
(判時二〇二九・一五三)
参考条文 商標法二六条、不正競争防止法二条、著作権法二条
事案の概要
本件は、民芸品・工芸品等を販売する株式会社である原告が、同じく民芸品・工芸品等を販売する株式会社とその代表取締役を被告として、商標法、不正競争防止法、著作権法を根拠として、被告商品の販売の差し止め、損害賠償の支払いを求めた事案である。仙台四郎は、江戸末期に仙台市に住んでいた実在の人物で、現代にいたるまで、複数回のブームを経て、商家を中心に商売繁盛等の福の神として周知され崇められてきた。原告は、巾着、湯のみ、のれん等を指定商品とする「福の神仙臺四郎」又は「商売繁盛仙臺四郎」の商標(原告商標)を計14件登録しており、原告商標を付して商品を販売している。原告商品は、仙台四郎の容姿を表現した形状を重要な構成要素とするか、仙台四郎の容姿を図柄の重要部分としており、そのデザインは仙台四郎の正座写真をもとに訴外人がデザインしたものである。被告は、「福の神仙臺四郎」「仙臺四郎 福の神 商売繁盛」等の標章(被告標章)を付して被告商品を販売している。被告商品は、仙台四郎の容姿を表現した形状を重要な構成要素とするか、仙台四郎の容姿を図柄の重要部分としている。
判決の要旨〔棄却〕
本件原告商品は、需要者に対し、福の神である仙台四郎が持つ商売繁盛等のご利益を想起させることによって、その購買意欲を惹起させるものと認められることからすれば、専ら鑑賞を目的とする純粋美術とは言い難く、実用に供されることを目的とする応用美術にあたるものというべきである。そして、本件原告商品が有する上記特性に鑑みると、それが独立して美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているとは認め難い。
そうすると、本件原告商品は、著作権法の保護の対象である著作物の保護の対象である著作物に当たるとは認め難い。
黒烏龍茶事件
サントリーの黒烏龍茶の容器デザインの著作物性が否定された事例
東京地裁平一九(ワ)一一八九九、黒烏龍茶事件、平二〇・一二・二六判決
判時二〇三二・一一、判タ一二九三・二五四
参照条文 不正競争防止法二条、商標法二条、民法七一九条、著作権法二条
事案の概要
本件は、原告サントリーが、被告らに対して、原告の製造販売する黒烏龍茶の類似品を製造販売したとして、不正競争防止法2条1項1号または2号を根拠に被告商品の製造、販売の差止め、損害賠償の支払い等を求めた事件で、判決は、原告商品表示の周知性を認め、被告商品表示との類似性については、同1は類似、同2は非類似として、無断使用による損害賠償金として合計約600万円の支払いを命じるとともに、差止請求については被告らが既に販売を中止しており、販売を再開するおそれもないとして棄却した。
原告は、さらに、被告らがWebで原被告の商品の比較広告した際に、原告の登録商標である「サントリー」「SUNTORY」の商標を付した原告商品の写真を表示した点を商標権侵害とし、原告商品のパッケージデザインを複製した点を著作権侵害であるとして、それぞれ損害賠償の支払いを求めたが、判決はいずれも棄却している。
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判決の要旨〔一部認容・一部棄却〕
ア 著作権法二条一項一号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し、さらに、同上二項は、「この法律にいう『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする。」と規定している。
これらの規定は、意匠法等の産業財産権制度との関係から、著作権法により著作物として保護されるのは、純粋な美術の領域に属するものや美術工芸品であって、実用に供され、あるいは、産業上利用されることが予定されている図案やひな型など、いわゆる応用美術の領域に属するものは、鑑賞の対象として絵画、彫刻等の純粋美術と同視し得る場合を除いて、これに含まれないことを示していると解される。
イ 〔証拠略〕によれば、本件デザインは、当初から、原告商品のペットボトル容器のパッケージデザインとして、同商品のコンセプトを示し、特定保健用食品の許可を受けた商品としての機能感、おいしさ、原告のブランドの信頼感等を原告商品の一般需要者に伝えることを目的として、作成されたものであると認められる。
そして、完成した本件デザイン自体も、別紙原告商品目録の写真のとおり、商品名、発売元、含有成分、特定保健用食品であること、機能等を文字で表現したものが中心で、黒、白及び金の三色が使われていたり、短冊の形状や大きさ、唐草模様の縁取り、文字の配置などに一定の工夫が認められるものの、それらを勘案しても、社会通念上、鑑賞の対象とされるものとまでは認められない。
したがって、本件デザインは、いわゆる応用美術の領域に属するものであって、かつ、純粋美術と同視し得るとまでは認められないから、その点において、著作物性を認めることができない。
ソニーミュージック事件
レコード会社が実演家及びレコード製作者の著作隣接権を含む一切の権利を譲受け、他方レコード売上による印税を実演家及びレコード製作者に支払うのが長年の音楽業界の慣行であるとして、著作権法改正によってレコード製作者の送信可能化権が創設される以前の契約であっても、レコード製作者の送信可能化権はレコード会社に譲渡されているとされた事案
東京地裁平一八(ワ)一七六九・一二六六二、ソニーミュージック事件、平一九・一・一九判決
(判時二〇〇三・一一一)
参照条文 著作権法二条・六一条・八九条・九六条の二・一〇三条、民法九一条
事案の概要
原告は音楽事務所であり、被告はレコード会社のソニーミュージックエンタテインメントである。平成9年前に原被告間で3つの共同制作原盤譲渡契約(第一契約、第二契約、第三契約)と1つの原盤独占譲渡契約(第四覚書)が締結され、第一契約、第二契約、第三契約に基づいて原被告が各2分の1の費用を負担してA音源を製作し、第四覚書に基づいて原告がその費用負担のもとにB音源を製作した。いずれの契約にも、原告が有する一切の権利をなんらの制限なく被告に譲渡する旨の条項があった。そして、その後の平成9年著作権法改正によってレコード製作者の送信可能化権が創設された。そこで、平成9年改正法によって創設された送信可能化権も被告に譲渡されているのか、それとも送信可能化権は契約当時存在しなかった権利であるから譲渡の対象となっていないかが争われた事案である。
判決の要旨〔棄却〕
ア 本件各契約の解釈
本件各契約における権利譲渡条項については、当該条項の文言自体及び本件各契約書中の他の条項のほか、契約当時の社会的な背景事情の下で、当事者の達しようとした経済的又は社会的目的及び業界における慣習等を総合的に考慮して、当事者の意思を探求し解釈すべきものである。
イ 条項の文言及び契約の内容
前記(2)アのとおり、第一契約、第二契約及び第三契約は共同制作原盤譲渡契約であり、第四覚書は原盤独占譲渡契約であるところ、本件各契約は、第一契約、第二契約及び第三契約の前文にあるとおり、本件アーティストの実演を収録して原盤を制作し、原告からSMEに対して「何ら制限なく独占的に」これを譲渡することに関して契約されたものである。そして、本件各契約の第三条(目的)及び第六条(権利の譲渡)は、いずれも、この前文を直接的に具体化した規定であり、第六条には、原告は、当該契約に基づく原盤に関し原告の有する「一切の権利(中略)を、何らの制限なく独占的に」SMFに譲渡すること及び上記権利には、「一切の複製・頒布(貸与・放送・有線放送・上映を含む。)権」等を包含することが規定されているのである。
他方、本件各契約のうち、第一契約、第二契約及び第三契約についての第八条(実演家印税)、第九条(原盤印税)、第一〇条(特別な場合)及び第一一条(印税計算・支払)、第四覚書の二項及び三項は、いずれも、印税の支払についての取決めであり、本件各契約の第六に従って、原盤に関する権利が原告からSMEに譲渡された後、レコード等の売上げに応じて、SMFから原告に対して原盤印税が支払われ、実演家印税もSMEから本件アーティストに対して原告を経由して支払われることを規定したものである。
本件各契約の第六条の文言は、前記一(4)イウエ認定のとおり、各柱書において、原盤に関して原告の有する権利(原告と本件アーティストの著作隣接権又は原告の著作権を含む)を「何らの制限なく独占的に」SMEに譲渡するものであり、そこには、原告の下に権利の一部を留保するような文言上の手掛かりはない。
なお、本件各契約の第六条@号の中で、柱書の権利の内容として、「一切の複製・頒布(貸与・放送・有線放送〔有線送信〕・上映〔等〕)権〔省略〕を包含する」と規定されているが、このうち、レコード製作者の著作隣接権に該当するのは、貸与権のみであり、放送権、有線放送権(有線送信権)は、実演作家の著作隣接権に関するものである。ここでの有線放送権あるいは有線送信権における解釈の如何は、著作権法上の排他的権利であるレコード製作者の著作隣接権の帰属に関しては、特段の意味を持たないものと考えられる。他方、同上A号では、いかなる国においても、随時、契約終了後も引き続いて自由の独占的に原盤を利用できることが言及されており、将来にわたって、本件各契約に基づく当事者間の基本的な権利関係が維持されることを内容としている。
ウ 当事者の目的
(ア) 著作権法一〇三条は、著作隣接権の譲渡について、同法六一条一項の規定を準用しているから、レコード製作者の著作隣接権についても、その全部又は一部を譲渡することが可能である。本件各契約の第六条は、その文言のとおり、このようなレコード製作者の著作隣接権を含む原盤に関する権利の一切、すなわち一部ではなくその全部をレコード会社であるSMEに譲渡したものである。
そして、原告のレコード製作者の地位に基づく権利の譲渡に対して、その譲渡の対価に相当するものが印税の支払であり、A音源及びB音源に係るレコードの売上に応じて、所定の計算方法によって算出された原盤印税が計算明細書を付して支払われることになる。
このように、本件アーティストの所属事務所である原告としては、レコード製作者として与えられた排他的権利である著作隣接権をレコード会社であるSMEに譲渡して、その行使を放棄する一方、経済的な観点から、SMEに対する原盤印税支払請求権という形に発展させて、実質的な権利行使を意図したものである。また、レコード会社であるSMEとしては、レコード製作者の著作隣接権のみならず、原盤の所有権や実演家の著作隣接権等も併せて譲り受けることにより、原盤に対する排他的な支配権を確保し、自由でかつ独占的な経済的利用が可能となる反面、その利用による売上に応じた収益を、印税の形で、レコード製作者たる原告や実演家たる本件アーティストに還元することを容認したものである。
(イ) 原告とSMEの双方が本件各契約において意図した内容は、前記(ア)のとおり、原告がレコード製作者としての著作隣接権を含む一切の権利を譲渡し、SMEが自由で独占的な経済的利用をする一方で、その収益を原告に還元することにある。
このような当事者の意図や目的において、本件各契約の締結当時、著作権法上、レコード製作者の著作隣接権として、具体的にいかなる権利が定められているかは問題とされず、SMEに当該レコード原盤の自由で独占的な経済的利用を可能ならしめるため、これに係る一切の権利を移転させ、その反面において、対価的な印税の支払を約束したものである。
(ウ) 著作権法は、改正の比較的頻繁な法分野であり、急速な技術の発達や利用環境の変化を背景にして、新しい権利関係や法的規制が創設されてきたものであり、平成九年改正による送信可能化権の創設についても、インターネットなどのネットワーク環境の下でのインタラクティブな送信形態の発達を背景としたものである。
本件各契約の第六条の文言と前記ウ(ア)のような当事者の意図を勘案すれば、契約当事者としては、SMEに当該レコード原盤に係る一切の権利を取得させ、原告に対し対価としての印税を与えるという基本的な関係を確保すべく、上記のような立法の背景の下、少なくともレコード製作者の地位に伴うものである限り、契約締結当時の具体的な権利関係に加え、将来的な立法にわたる部分についても、一律に包括的な譲渡の対象としたものと解するのが相当であり、これが本件各契約の第六条の趣旨であると考えられる。
エ 音楽業界における慣行
本件各契約のうち、第一契約及び第二契約の書面は、前記一(4)ア認定のとおり、レコード会社であるSMEが用意した印字された雛形の定型用紙の空欄に、原告名、本件アーティスト名、原盤製作費の持分比率、印税率等の数字、印税の振込先口座等を手書きで書き入れたものであった。
前記一(3)アイ認定のとおり、我が国のレコード音楽業界において、原盤に収録された音源に関し、レコード会社が実演家及びレコード製作者の著作隣接権を含む一切の権利の譲渡を受け、他方で原盤の利用に関して印税を支払うことは、長年にわたる慣行として確立しており、このような関係を前提として、今日まで、原盤ビジネスが展開されていることが窺える。
そして、この関係は、レコード原盤を基本単位として、レコード会社がコントロール権を保有し、実演家と所属事務所とが報酬請求権を保有するという図式でも説明されており、音楽業界の構成員である実演家、所属事務所及びレコード会社の三者間において、これまでに構築されてきた相互の役割や力関係を反映した特有の経済的な合理性の一つのあらわれと解することができる。
オ 音源配信と印税支払の対価性
なお、本件各契約の第六条の趣旨を前記ウ(ウ)のように解するとすれば、新たに譲渡の対象となる送信可能化権についても、その対価性が確保されていることが必要である。
この点、音源配信に係る印税支払については、前記一(5)認定のとおり、プロモート利用印税も含め、ダウンロード数に応じて、一定の算定式に従った印税が支払われており、その金額は、平成一三年七月から平成一七年一二月までの分として、合計一四三万六六四五円に及んでいる。原告は、この算定式自体に対して、不満を持ち、前記一(6)認定のとおり、適正な利益配分を求める申入れをしたものと窺えるが、音源の配信数に応じて支払われるものであることに変わりがなく、このような算定方法に依っていることは、従前のCD等の販売の枠組みとの整合性を保つ上で、やむを得ないところでもある。
そうすると、送信可能化権を譲渡対象とした場合においても、音源配信による比例的な対価の支払がされているから、従前のCD等の販売に準じて対価性がなお維持されているとみることができる。
(4)小括
以上のとおり、@本件各契約には、原盤に関し原告の有する「一切の権利」を「何らの制限なく独占的に」譲渡する旨の規定があること、Aそれにより、レコード会社であるSMEにおいて原盤に対する自由でかつ独占的な利用が可能となったこと、Bそこでは著作隣接権の内容が個々に問題にはならず、原盤に対する自由でかつ独占的な利用を可能ならしめるための一切の権利が問題になっていること、C他方、アーティストの所属事務所である原告は、レコード会社から収益を印税の形で受け取り、レコード製作者の権利の譲渡の対価を収受することができること、Dこのような関係は、音楽業界において長年にわたる慣行として確立していること、これらの事情を総合的に考慮すれば、本件各契約により、原盤に関して原告の有する一切の権利が何らかの制約なくSMEに譲渡されたものと解される。すなわち、平成九年法律第八六号により創設された送信可能化権についても、本件各契約の第六条の包括的な譲渡の対象となり、上記改正法が施行された平成一〇年一月一日の時点で、A音源の持分二分の一とB音源の全部について、いったん、レコード製作者たる原告の下に付与されたものが、同時に、本件各契約の第六条により、そのまま原告からSMEに譲渡され、後に被告に承継されたことになる。
なお、A音源の残りの持分二分の一については、本件の確認請求の対象とはなっていないが、レコード製作者たるSMEが送信可能化権を取得し、その後被告に承継されたものであり、その結果、A音源の全部についての送信可能化権が被告に帰属することとなったものである。
解 説
レコード製作者とは、「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう」(著作権法2TE)とあり、本件では、A音源は原被告が共同で2分の1づつ費用を負担して原盤を製作し、B音源は原告が原盤を製作しましたので、A音源については原被告が2分の1づつの割合で、B音源については原告がいずれも原始的にレコード製作者となりました。
しかるに契約によって原告の取得した権利の一切は被告に譲渡されることとされていますので、原告のレコード製作者たる権利も被告に譲渡されました。そして、契約後にレコード製作者の送信可能化権が創設されました。このレコード製作者の送信可能化権は契約時点ではなかった権利なのですから譲渡の対象となっていないと考えるのが通常ですが、判決ではこの送信可能化権も譲渡の対象になっていると判決しました。その理由は、レコード会社が実演家及びレコード製作者の著作隣接権を含む一切の権利を譲受け、他方レコード売上による印税を両者に支払うのが長年の音楽業界の慣行であり、本件の4契約もかかる慣行に反する文言はなくかかる慣行に則っていると考えられるから、著作隣接権の内容は個々には問題とならず一切含まれるとするものです。
レストランカフェ事件
管理著作物の無断演奏に対する店舗経営者の責任について
1 ピアノ演奏は、客から演奏鑑賞料を徴収せず且つ演奏者に演奏料を支払っていないとしても、ピアノ演奏を店舗の雰囲気作りに利用していると認められる以上は店舗経営者が利用主体であり、
2 演奏者主催のライブは、演奏者が利用許諾を得ているか否かを確認しないで演奏の場を提供し、著作権侵害行為の場を提供するものであるから、店舗経営者も演奏者と共同して利用主体となる、
3 結婚式の披露宴の二次会等の貸切営業における招待客の行う演奏は、店舗経営者は管理しておらず、店の雰囲気作りにも利用していないから、店舗経営者は利用主体ではない
と認定して、
1 管理著作物の使用禁止請求は認容、
2 ピアノの撤去請求は認容し、ピアノ以外の楽器及び音響装置の撤去請求は棄却、
3 ピアノ及び楽器の搬入禁止請求は認容し、音響装置の撤去請求は棄却した
事例
大阪地裁平17(ワ)10324、レストランカフェ事件、平19.1.30判決(判時2000・103)
事案の概要
原告Xは、著作権等管理事業法に基づき、文化庁長官の登録を受けた音楽著作権等管理事業者たるJASRACである。被告Yは、レストランカフェ「デサフィナード」の経営者であり、平成13年5月30日の開店後同17年2月末日までの間、本件店舗の営業時間中に、Xの許諾を得ることなく、Xの管理楽曲についてピアノリクエスト、ピアノBGM、ピアノ弾き語りなどの備え付けピアノによる演奏(ピアノ演奏)や、ライブを開催して歌手及び楽器奏者を出演させ、マイク、アンプ、ミキサー等の音響装置を用いて、歌唱や、備え付けの楽器又は楽器奏者が持ち込む楽器による演奏を行わせ、あるいは結婚披露宴の二次会やパーティーのための貸し切り営業を行う際に、来店した客に対し、歌唱や備え付けの楽器又は楽器奏者が持ち込む楽器による演奏を行わせている。そこで、Xは、Yに対して、管理著作物の著作権(演奏権)の侵害を理由に、管理著作物の使用の差止め、楽器、音響装置の撤去、店舗内への搬入禁止を求めて出訴した。
判決の要旨〔一部認容・一部棄却〕
3 争点3(被告は本件店舗で演奏される管理著作物の利用主体か否か。)について
(1)ピアノ演奏について
前記2(1)イ(ア)において認定したとおり、本件において損害賠償請求又は不当利得返還の対象となっているピアノ演奏は、通常のレストラン営業の傍らで定期的に行なわれるものであって、被告が本件店舗に設置したピアノを用いて行われ、スタッフと呼ばれている複数の演奏者が定期的に演奏を行っていたものであり、ウェブサイトにおいても「毎火・金・土曜日にはピアノの生演奏がBGMです。」と宣伝していることからして、ピアノ演奏は、本件店舗の経営者である被告が企画し、本件店舗で食事をする客に聴かせることを目的としており、かつ本件店舗の「音楽を楽しめるレストラン」としての雰囲気作りの一環として行われているもと認められる。そうすると、ピアノ演奏は、被告が管理し、かつこれにより利益を上げることを意図し、現にこれによる利益を享受しているものということができるのであって、被告の主張するように、これをレストラン営業とは無関係にアマチュアの練習に場所を提供しただけであると見ることはできない。
被告は、客から演奏鑑賞料を徴収していないし、演奏者に演奏料を支払ってもいないとも主張するが、そうであるとしても、被告がピアノ演奏を利用して本件店舗の雰囲気作りをしていると認められる以上、それによって醸成された雰囲気を好む客の来集を図り、現にそれによる利益を得ているものと評価できるから、被告の主観的意図がいかなるものであれ、客観的にみれば、被告がピアノ演奏により利益を上げることを意図し、かつ、その利益を享受していると認められることに変わりはないというべきである。
以上によれば、本件店舗でのピアノ演奏の主体は、本件店舗の経営者である被告であるというべきである。
(2)ライブ演奏について
ア 本件店舗が主催するライブについては、前記2(1)イ(イ)bのとおり、本件店舗が最終的に企画し、客からライブチャージを徴収した上で、演奏者等に演奏料を支払うのであるから、その演奏は本件店舗の管理の下に行われるものと評価でき、またそれによる損益は本件店舗に帰属するものであったといえる。したがって、この形態のライブ演奏の主体は、本件店舗の経営者である被告であることが明らかである。
イ 演奏者等が主催するライブについて
(中略)
(イ)しかしながら、本件店舗においてライブを開催させるというのは、本件店舗の基本的な営業方針であり、演奏者側が本件店舗にライブ開催を申し込むのも、このような本件店舗の営業方針があってこそのことであると考えられるのであって、本件店舗においてライブが開催されるに当たっては、本件店舗のこのような営業方針が不可欠の要素となっているものといえる。そして、また実際にも、本件店舗は、ちらしを作成してライブの開催を宣伝するほか、チケットの販売、予約の受付等の事務を行い、求めがあった場合の楽器の提供を行うなど、ライブが順調に開催されるための種々の支援も行っているのであって、ライブ開催に対する被告の関与は決して小さなものではないというべきである。
また、被告は後記6(1)のとおり、平成13年6月末までには本件店舗において管理著作物を演奏するには、原告との音楽著作物利用許諾契約を締結する必要があることを認識していたのであるから、(平成17年2月までは、被告がライブ主催者に、原告から管理著作物の利用許諾を得ていたか否かを確認していた形跡がないことによれば、本件店舗のように生演奏を営業政策の一環として取り入れている飲食店においては、むしろ飲食店において音楽著作物利用許諾契約を締結するのが通常であるものと推認される。)、ライブ主催者が原告と音楽著作物利用許諾契約を締結していない場合は、自ら同契約を締結しない限り無許諾で管理著作物の演奏がなされることになり、管理著作物の著作権が侵害されることとなることを認識していたものである。したがって、被告ないし本件店舗は、事前に主催者である演奏者等に対し、演奏曲目が管理著作物である場合には、原告からの利用許諾を得ているか否かを確認することが期待し得たものであり、確認した結果によっては、本件店舗でのライブの開催を断ることができるという意味では、著作権侵害行為を予防し得る立場にあったものである。
加えて、本件店舗はライブ開催時には、メニューは簡素なものであるが客に有料で飲食物を提供しており、この売上げは本件店舗の営業収入となるから、ライブ演奏をそのレストラン営業の一部として取り込んでいるものといえる。また、本件店舗は、ライブを開催することによって、「音楽を楽しめるレストラン」という本件店舗のイメージを定着させるのに役立っているということもできる。
(ウ)以上のような演奏者等の第三者が主催するライブにおける被告の関与の状況及び営業上の利益の帰属状況等にかんがみれば、被告がライブ主催者に対して、原告からの管理著作物の利用許諾を得たか否かを確認もせずに、本件店舗で原告からの管理著作物の利用許諾を得ないままライブを行うことを黙認して、著作権侵害行為をする場を提供することは、いわば、ライブ主催者による著作権侵害行為を利用して、自らの営業上の利益を得ることを図るものであるから、著作権法の規律の観点からは、ライブ主催者である演奏者等と共同して管理著作物の著作権を侵害する行為に該当するというべきである。また、主催者である演奏者等と共同して管理著作物の著作権侵害行為を行うことについて過失も認められる。
よって、この形態のライブ演奏については、本件店舗の経営者である被告も演奏の主体であると評価するのが相当である。
(3)貸切営業における演奏について
前記2(1)イ(ウ)において認定したとおり、貸切営業において、被告は、場所及び楽器、音響装置及び照明装置を提供しており、本件店舗における演奏を勧誘しているのであるが、結婚披露宴や結婚披露宴の二次会、各種パーティ等において、招待客や参加者が本件店舗内において管理著作物をピアノで演奏したり歌唱したとしても、そもそも演奏するか否か、さらにいかなる楽曲を演奏するか、備付けの楽器を使用するか否か、音響装置及び照明装置の操作等について上記招待客等の自由に委ねられているものであり、その演奏形態は一様ではないといえる。
また、前記認定事実のとおり、本件店舗にウェブサイトには、貸切営業の際に通常営業も行うこともできるとの記載があるが、本件において提出された証拠によっては、貸切営業が実際にいかなる場合に通常営業と並行して行なわれているのかは明らかではなく、むしろ多くの場合、貸切営業においては本件店舗を訪れる不特定多数の客ではなく、専ら当該結婚披露宴の二次会などの招待客に聴かせることを目的とするものであることが認められる。これらの事情にかんがみれば、貸切営業における招待客や参加者が行う演奏行為は、被告によって管理されているとは認めることはできず、むしろ被告とは無関係に行われる場合が多いと認められ、また、被告がその演奏自体を不特定多数の客が来訪する店の雰囲気作りに利用するなどして、これによる収益を得ているとは認められない。
したがって、貸切営業における演奏については、管理著作物の利用主体は本件店舗の経営者たる被告であると認めることはできない。
(中略)
(3)請求の趣旨第2項の差止請求に関する差止めの必要性について
〔証拠略〕によれば、本件店舗のおけるピアノ演奏で演奏された楽曲のほとんどは管理著作物であったことが認められるから、本件店舗に備え置かれたピアノは、主として原告の演奏権を侵害する管理著作物の無断演奏に使用されていたと認められる。もちろん、ピアノは、本来、管理著作物以外の楽曲の演奏の用にも供し得るものではあるが、現実の使用態様が主として管理著作物の無断演奏に供されるもので、その状態が今後も継続するおそれがある場合に、原告がその撤去を求めることは、本件店舗における被告による演奏権の侵害を停止又は予防するために必要な行為に該当する(著作権法112条2項)。
前記(1)のとおり、たとえ被告が現時点においてはピアノリクエスト、ピアノ弾き語り及びピアノBGMを中止していたとしても、今後、これらの演奏が再会されれば管理著作物が無断で演奏されるおそれがあることは否定できない。よって、ピアノについては、請求の趣旨第2項の差止請求を認める必要がある。
他方、原告が撤去を求めるその他の楽器、すなわちウッドベース、ドラムセット、ギター、パーカッション、ベースについては、ライブ奏者であれば自ら使用する楽器を持参する場合も多いと推認され、これらの楽器が貸切営業においても使用される可能性が否定できず、専ら著作権侵害の行為に供された機械又は器具であるとまで認めることができない。
ミキサー、アンプ、マイクなどの音響装置などについては、ピアノ演奏、ライブ、貸切営業のいずれかの演奏態様においても用いることがあるものである。そして、貸切営業の営業日数は、月によっては一か月に7日ある場合もあり、営業日数全体に占める割合がごくわずかであるとまでいうことはできない。また、上記のとおりピアノの撤去請求が認められ、かつ、後記のとおりピアノを含むその他の楽器の搬入禁止請求が認められる(ただし、貸切営業を除く。)ことによれば、ライブの出席者がこれらの楽器を持ち込むことも禁止されるのであるから、被告による著作権の侵害行為の予防の観点からも、被告による管理著作物の利用行為に当たらない貸切営業にも使用され得る音響装置の撤去まで命じる必要はないというべきである。
よって、請求の趣旨第2項のうち、本件店舗からピアノの撤去を求める部分は理由がある。
(4)請求の趣旨第3項の差止請求に関する差止めの必要性について
前記(1)のとおり、被告は、原告が再三にわたって音楽著作物利用許諾契約の締結を促しても、これに応じなかったばかりか、自ら本件店舗においては管理著作物は演奏しないという方針を明らかにした後も、管理著作物の演奏を継続してきたものである。このような経緯に照らせば、被告が判決により管理著作物の使用を差止められても、これに従わず、また、ピアノを撤去されても、ピアノその他の楽器を搬入して、管理著作物の使用を継続するおそれが高いものといわざるを得ない。
ただし、マイク等の音響装置の搬入禁止を求める部分は、上記(3)のとおりマイク等の音響装置の撤去を禁じていない以上、搬入禁止を命じる必要はないというべきである。
よって、請求の趣旨第3項のうち、本件店舗に「ピアノリクエスト・ピアノ弾き語り・ピアノBGM」における演奏、入場料を徴収する「ライブ」における演奏において、ピアノその他の楽器の搬入禁止(ただし、貸切営業を除く。)を求める部分は理由がある。
解 説
1 ピアノ演奏、ライブ演奏、貸切営業のそれぞれについて、判決は、Yの関与形態及び利用主体性について次のように判断して、ピアノ演奏、ライブ演奏についてはYの利用主体性を認め、貸切営業については被告の利用主体性を否定しています。
| |
被告の関与 |
被告の利用主体性 |
| ピアノ演奏 |
Yが店舗に設置したピアノを用いて、スタッフと呼ばれる複数の演奏者が定期的に演奏していた。Yのウェブには「毎週火・金・土曜日はピアノの生演奏がBGMです」と記載。 |
客から演奏鑑賞料を徴収しておらず、演奏者に演奏料を支払っていないとしても、被告が企画し、「音楽を楽しめるレストラン」の雰囲気作りの一環として行われ、それによって客を来集して被告が利益を得ているのだから、演奏主体は被告。 |
| ライブ演奏 |
【店舗主題のライブ】
店舗が最終的に企画し、客からライブチャージを徴収した上で、演奏者等に演奏料を支払う。
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店舗の管理下に演奏され、損益は店舗に帰属するものであったといえるから、演奏主体は店舗経営者たる被告である。
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【演奏者等が主催するライブ】
演奏者は、自らチケットやチラシを作成して店舗以外でも配布し、ライブチャージを全額取得している。店舗は客を招聘せず、曲目の選定に関与しないが、チラシを作成してライブの開催を宣伝するほか、チケット販売、予約受
付等の事務を行い、求めがあった場合に楽器の提供を行う。ライブ開催時に客に簡素な飲食物を提供し、その売り上げを取得している。 |
Yは、ライブ主催者が管理著作物の利用許諾を得たか否かの確認もしないで、ライブ主催者が著作権侵害行為を行う場を提供することは、ライブ主催者による著作権侵害行為を利用して営業上の利益を得ることを図るものであるから、ライブ主催者と共同して管理著作物の著作権を侵害する行為に該当する。 |
| 貸切営業 |
Yは、結婚披露宴の二次会、ピアノ発表会、パーティ等のための貸切営業を行なっており、貸切営業において楽曲演奏が行われる場合には必要に応じて店舗に置いてある楽器、音響装置等を提供し、必要に応じてその操作を従業員に当たらせている、被告のウェブには「お客様もプロ顔負けのステージ練習を楽しむことができますよ!」と記載されている。ピアノ発表会のときは会場使用料を請求している。 |
招待客が店舗で管理著作物をピアノで演奏したり歌唱したとしても、演奏するか否か、曲目の選定、備え付けの楽器を使用するか否か、音響装置や照明器具の操作等について招待客の自由にゆだねられているものであるから、貸切営業における招待客の行う演奏はYによって管理されておらず、Yがその演奏自体を不特定多数の客が来訪する店の雰囲気作りに利用して収益を上げているとは認められず、利用主体はYではない。 |
2 原告の各種請求について判決は次のように認定しました。
| 管理著作物の使用禁止請求 |
認める。 |
| 撤去請求 |
@備え付けピアノの撤去請求
ピアノは、本来は管理著作物以外の演奏にも使用できるが、演奏された楽曲のほとんどは管理著作物であったから現実的には主として無断演奏に使用されていたと認められる。Yは現在はピアノリクエスト、ピアノ弾き語り、ピアノBGMを中止しているが、将来再開されるおそれがあるからピアノの撤去請求は認容。
A楽器の撤去請求
ウッドベース、ドラム、ギター等の楽器は、ライブ奏者が自らの楽器を持ち込んで使用することも多いし、Yによる著作権侵害とは認められない貸切営業に利用されることも多いし、専ら著作権侵害に利用されたとはいえないから、楽器の撤去請求は棄却。
Bミキサー、アンプ、マイクなどの音響装置の撤去請求
音響装置はYによる著作権侵害とは認められない貸切営業に利用されることも多いし、ピアノの撤去請求及びピアノを含む楽器の撤去請求が認められる(ただし貸切営業以外)のだから、音響装置の撤去までは不要。 |
| 搬入禁止請求 |
@ピアノ、楽器の搬入禁止請求
Xが再三著作物利用許諾契約の締結を求めても応ぜず、管理著作物の無断演奏を継続してきた経緯に照らせば、ピアノを撤去されても、ピアノや楽器を搬入して無断演奏を再開するおそれは高いから、ピアノ、楽器の搬入禁止請求は認容。ただし、被告による著作権侵害とは認められない貸切営業のために搬入する部分はのぞく。
A音響装置の搬入禁止請求
音響装置の撤去請求が認められないのだから、搬入禁止請求も認められない。
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ライブドア裁判傍聴記事件
裁判所の証人尋問の傍聴記の著作物性が否定された事例
知財高裁平20(ネ)1009、ライブドア裁判傍聴記事件、平20・7・17判決
(判時2011・137、判タ1274・246)
参照条文 著作権法2条・10条
事案の概要
原告Xは、Aに対する証券取引法違反被告事件に関する、東京地方裁判所の公判期日において行われた証人尋問を傍聴した結果をまとめた傍聴記(原告傍聴記)をインターネットを通じて公開した。ところが、第三者が被告Y(ヤフー株式会社)の管理・運営する「Yahoo!ブログ」のうちの「Yahoo!ブログ・ライブドア被害者日記」と題するブログに、Xに無断で証人尋問に関する記事(本件ブログ記事)を掲載した。そこで、Xが、Yに対して、プロバイダ責任制限法4条1項に基づいて、本件ブログ記事の発信者情報の開示を求めるとともに、著作権法112条2項に基づいて本件ブログ記事の削除を求めた。第一審判決は、X傍聴記は著作物に該当しないとの理由で、プロバイダ責任制限法4条1項及び著作権法112条2項の適用はないと判決したので、Xが控訴したのが本件である。
判決の要旨〔棄却〕
ア 原告傍聴記における証言内容を記述した部分(例えば、「○ライブドアの平成16(2004)年9月期の最初の予算である」「○各事業部や子会社の予算案から作成されている」)は、証人が実際に証言した内容を原告が傍取したとおり記述したか、又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから、原告の個性が表れている部分はなく、創作性も認めることはできない。
イ 原告傍聴記には、冒頭部分において、証言内容を分かりやすくするために、大項目(例えば、「『株式交換で20億円計上』ライブドア事件証人・B氏への検察側による主尋問」)及び中項目(例えば、「証人のパソコンのファイルについて」)等の短い表記を付加している、しかし、このような付加的表記は、大項目については、証言内容のまとめとして、ごくありふれた方法でされたものであって、格別な工夫が凝らされているとはいえず、また、中項目については、いずれも極めて短く、表現方法に選択の余地が乏しいといえるから、原告の個性が発揮されている表現部分はなく、創作性を認めることはできない。
ウ この点について、原告は原告傍聴記は本件ノートに基づいて作成したものであり、本件ノートと対比すればその「分類」と「構成」に創意工夫されているから、原告傍聴記に創作性が認められるべきであると主張する。そして、具体的には、@原告傍聴記2の証人の経歴に関する部分は主尋問と反対尋問から抽出していること、A原告傍聴記1の「○クラサワコミュニケーションズとの株式交換も計上していることを口頭で説明した」、「■A被告は何も言わなかったが、分からないときは質問するので、説明を理解していたと思う」の記述及び原告傍聴記2の「○大学卒業後、未来証券に新卒入社」、「■個人投資家からの株式売買受託やベンチャー企業の資金調達に携わる」、「■1年半弱で退社」の記述は、実際に証言された順序ではなく、時系列にしたがって順序を入れ替えたこと、B原告傍聴記2において固有名詞を省略したこと等を創意工夫として例示する。
しかし、原告の主張する創意工夫については、経歴部分の表現は事実の伝達にすぎず、表現の選択の幅が狭いので創作性が認められないのは前記のとおりであるし、実際の証言の順序を入れ替えたり、固有名詞を省略したことが、原告の個性の発揮と評価できるほどの選択又は配列上の工夫ということはできない。原告の主張は採用できない。
解 説
裁判所が著作物性を否定した理由は次のようです。
| 全般 |
証言内容をXが録取したとおりに記述したか、ありふれた方法で要約したものであり、創作性がない。 |
| 大項目の表記の付加(例・「株式交換で20億円計上」ライブドア事件証人・B氏への検察側による主尋問) |
証言内容のまとめとして、ごくありふれた方法でなされたもの。 |
| 中項目の表記の付加(例・証人のパソコンのファイルについて) |
極めて短く、表現方法に選択の余地が乏しいから、創作性がない。 |
| 証人の経歴に関する部分は主尋問と反対尋問から抽出している |
経歴部分の表現は事実の伝達にすぎない。 |
| 時系列に従って順序を入れ替えた部分 |
Xの個性の発揮と評価できるほどの選択又は配列上の工夫とはいえない。 |
| 固有名詞を省略した部分 |
羅生門他事件
旧著作権法下において、映画の著作物の著作者は映画の全体的形成に創作的に関与したものであり、映画のスクリーンの表題部に続いて「監督黒澤明」と著作者の表示がある以上は、その保護期間は黒澤監督の死後38年間であるとされた事例
東京地裁 平一九(ワ)一一五三五、羅生門他事件、平一九・九・一四判決
(判時一九九六・一二三)
参照条文 著作権法一六条・二九条・一一二条・一一三条・附則七条
事案の概要
大映株式会社(旧大映)は昭和24年に映画「静かなる決闘」(本件映画1)を、昭和25年に映画「羅生門」(本件映画2)を製作、公表した。監督はいずれも黒澤明監督であり、同監督は平成10年に死亡した。本件は、原告(角川映画)が、本件映画1及び2の著作権者であると主張し、本件映画1及び2を複製したDVD商品を輸入、販売する被告の行為が原告の著作権の侵害に当たるとして、当該商品の輸入、販売等の差止を求めたのに対して、被告が本件映画1及び2の著作権は存続期間満了によって消滅したと主張したものである。本件映画1及び2の著作権が黒澤明監督から旧大映に譲渡されたこと、旧大映から新大映に、新大映から原告にそれぞれ譲渡された点については特に争いがなく、もっぱら著作権の保護期間について争われた。
判決の要旨〔認容〕
(1) 著作者
前提事実(2)のとおり、本件映画は独創性(旧著作権法二二条の三第二項)を有する映画の著作物であり、黒澤監督がその映画監督であり、本件映画の冒頭部分に「監督黒沢明」と表示されているところ、〔証拠略〕により認められる本件映画の内容を併せ考慮すれば、黒沢監督は、少なくとも本件映画の著作者の一人であることが認められる。
(2) 被告の主張に対する判断
ア 撮影等を担当した者
被告の主張が、撮影等を担当した者が著作者であると主張するものだとしても、上記(1)の認定は、黒澤監督は少なくとも本件映画の著作者の一人であるとするものであり、他に著作者がいる可能性を否定しているものではないところ、上記認定を左右するに足りる証拠はない。
イ 旧大映
(ア) 次に、被告の主張が、旧大映が著作者であると主張するものであるとして判断する。なお、被告の主張は、新著作権法一五条の職務著作に相当するものを主張するものではない。
(イ) 確かに、映画の著作物は、映画製作者が、企業活動として、当初から映画の著作物を商品として流通させる目的で企画し、多額の製作費を投入して製作するものであり、その製作には脚本、音楽、制作、監督、演出、俳優、撮影、美術、録音、編集の担当者など多数の者が関与しており、その関与の範囲や程度も様々であるという特殊性を有する。しかし、著作者とは元来著作物を創作する者をいうから、映画利用の円滑化を図るために、映画製作者に著作権を帰属させる必要があるとしても、そのことから直ちに映画製作者が映画の著作物の著作者となると解することはできず、映画の著作物の著作者は、新著作権法一六条と同様に、映画の制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に関与した者であると解するのが相当である。
(中略)
(1) 旧著作権法の昭和六年改正に関与した小林尋次が「現行著作権法の立法理由と解釈―著作権法全文改正の資料として―」おいて、旧著作権法六条の規定が設けられた趣旨につき、「団体には自然の如く生死を考え得られないから、この場合も法律は、発行又は興行した時から三〇年間と言う短期保護期間を適用することにしている(著作権法第六条)。団体にも自然人の死に相当する解散ということが考えられるが、もし法人が解散しなければ保護期間は永久ということになって不合理であるから、上記の如き建前とせざるを得ないのである。」と説明しているとおり(争いのない事実)、旧著作権法六条は、団体名義で公表した場合には、自然人の生死を標準として存続期間を計算することができないために設けられた規定であることが認められる。
(2) 本件映画は、旧大映の社章と共に「大映株式會社製作」と表示され(前提事実(2)エ)、その専用系列映画館で旧大映製作の作品として公開されたものであることは、当事者間に争いがない。
しかしながら、前提事実(2)エのとおり、本件映画の冒頭部分には、表題に続き、「監督 黒澤明」と表示されているから、著作者の実名で公表されたものであり、本件映画は、旧著作権法六条にいう団体名義の著作物に当たらない。
したがって、本件映画の著作権の存続期限については、旧著作権法三条を適用すべきである。
これに反する被告の主張は、到底採用することができない。
(3) 以上によれば、黒澤監督の死亡期は平成一〇年であるから(前提事実(2)オ)、旧著作権法三条、九条、五二条一項によると、本件映画の著作権は、少なくとも著作者の一人である黒澤監督の死亡した翌年である平成一一年から起算して三八年間存続するので、新著作権法附則七条、平成一五年改正附則三条により、旧著作権法の規定が適用され、本件映画の著作権は、少なくとも、平成四八年一二月三一日まで存続する。
解 説
1 旧著作権法における著作権の保護期間
著作権の保護期間に関して、旧著作権法は、三条一項で「発行または興行したる著作物の著作権は著作者の生存間及びその死後三〇年間継続す」と規定し、さらに六条で「官公衛学校社寺協会会社その他団体に於て著作の名義を以て発行又は興行したる著作物の著作権は発行又は興行のときより三〇年間継続す」と定めています。つまり、団体名義で発行又は興行されなかった著作物は著作者の死後三〇年間、団体名義で発行又は興行した著作物は公表から三〇年間が保護期間とされています。旧六条の趣旨については、団体にも自然人の死に相当する解散がありうるが、保護期間を解散から30年間とすると団体が解散されなかったときは保護期間は永久ということになって不合理であるから、団体名義で発行又は興行された著作物については一律に発行又は興行のときより三〇年間としたと説明されています。
2 旧著作権法における映画の著作物の著作者
現行著作権法では、映画の著作物の著作者は制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とし(一六条)、ただし、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、著作権は当該映画製作者に帰属する。としています(二九条)。ところが、旧著作権法では、映画の著作物の著作者、著作権者についてなんの定めもしていません。そこで、映画の著作物の著作者、著作権者が誰であるかが問題になり、映画製作者であるとする見解と、映画の製作に創作的に関与した者であるとする見解が対立していました。本判決は、現行著作権法の規定と同じように映画の製作に創作的に関与した者が著作者だとして、少なくとも黒澤明監督は本件映画の著作者の一人であるとしました。
3 本件映画は「団体に於いて著作の名義を以って発行又は興行した著作物」(旧法六条)
少なくとも黒澤監督が著作者の一人であるとしても、本件映画が旧大映名義で公開されたのであればその保護期間は旧著作権法六条の規定により公開後三〇年間となり、すでに存続期間が満了しています。本件映画は、冒頭に表題に続いて、「監督 黒澤明」と表示され、次に旧大映の社章とともに「大映株式會社」と表示されていました。そして、本判決は、「監督 黒澤明」と表示されたのだから著作者の実名で公表されたものであり、団体名義で公表された著作物には当たらないとしました。その結果、著作権の保護期間に関しては旧三条が適用になり、黒澤監督の死後三〇年間が保護期間であるところ、黒澤氏は平成一〇年に死亡したのだから本件映画はいまだ保護期間内にあるとしました。
東京アウトサイダーズ事件
妻が夫を撮影したスナップ写真の著作物性が肯定された事例
知財高裁平一九(ネ)一〇〇〇三・一〇〇一一、東京アウトサイダーズ事件、平一九・五・三一判決、第一審東京地裁、平一八・一二・二一判決
(判時一九七七・一四四)
参照条文 著作権法一〇条・一九条・二〇条・三二条
事案の概要
被告Y1はジャーナリストであり、Aを含む外国人の日本における活動を評伝風に描いたノンフィクションを完成して、「東京アウトサイダーズ」の題号でY2出版社から出版した(本件書籍)。出版に際して、本件書籍に、Y1がAの友人から入手したAのスナップ写真(Aとその息子であるBが写っている・本件写真)が掲載された。ところが、そのスナップ写真はAの元妻Xが撮影したものであったために、XがYlY2を被告として、本件書籍の頒布の禁止、損害の賠償等を求めて出訴した。原審(東京地判平一八・一二・二一)は、本件書籍に本件写真を掲載した行為はXの著作権及び著作者人格権を侵害する行為であるとして、Y1らに対して、本件書籍の出版の禁止及び損害の賠償を命じた。これに対してY1らが控訴し、Xが付帯控訴したのが本件である。
判決の要旨〔棄却〕
本件書籍には、本件写真のうち訴外Aの上半身部分が、そのまま掲載されているから、本件書籍には、本件写真の著作物性がある部分(シャッターチャンスの捉え方等)が再現されていることは明らかである。
Yl・Y2及び角川グループ訴訟引受人は、本件写真は本件書籍にB・Aの風貌を読者に伝える目的で掲載されていること、本件書籍における本件写真の掲載の大きさは、本件書籍一においては縦四.七センチメートル、横三.五センチメートル、本件書籍二においては縦五.三センチメートル、横四センチメートルであること、本件写真のうち訴外Aの風貌がわかる部分のみを切り取って掲載していること、本件書籍における本件写真の掲載は、口絵の一頁の一部への掲載であることを主張するが、そのような事実は、本件書籍に、本件写真の著作物性がある部分が再現されている旨の上記判断を何ら左右するものではない。
解 説
写真著作物に関しては、素人が馬鹿チョンカメラで撮った写真でも著作物と認められるかという論点があります。文献には、「各種報道写真の他、スナップショットのようなものにも著作物性を認めて差し支えない」(田村・著作権法概説九七頁)、「素人が普通のEEカメラで、パチッとシャッターを押せば、風景写真であろうと人物写真であろうと通常は著作物としての保護を受けると言わざるを得ません」(加戸・著作権法逐条講義九五頁)等あり、素人が撮った写真であっても著作物性を肯定する見解が一般的と言えると思います。特に本件では、本件書籍「東京アウトサイダーズ」は、裏表紙に「一攫千金を夢見るアウトサイダーズたちが世界中から集まる街・東京。天才詐欺師、・・・政治家を手玉にとるロビイスト、世界各国の諜報部員・・・・夜の東京に暗躍するアウトローたちに、日本の闇社会はビッグ・チャンスと失望を与えてきた。」と記載され、口絵に掲載された本件写真には、「元CIAのB・Aは・・・」と紹介されており、元妻が写真の掲載を望まない事案であることも、写真の著作物性を肯定する方向で作用していると思います。
サライ事件
写真をデジタルデータ化してCD―ROMに保存する行為が、複製利用の目的がなくても複製権の侵害に該当するとされた事例
東京地裁平一七(ワ)二四九二九、サライ事件、平一九・五・三〇判決(判タ一二五五・三二八)
参照条文 著作権法二一条・二三条・民法七〇九条
事案の概要
原告は多数の雑誌等に写真を提供しているフリーランスの写真家であり、被告は大手出版社である。原告は、平成10年頃から同15年6月頃まで、被告が発行する雑誌「サライ」に掲載するための写真を撮影して、そのうち何枚かを選別してポジフィルムの形で被告に交付した。被告は、原告から交付を受けたポジフィルムを印刷に回し、印刷会社から返還後、少なくともポジフィルムをフィルム・スキャナーでデジタル化して、ハードディスクのサーバに蓄積保存した。原告は、被告がポジフィルムをサーバに蓄積保存することによって1000人近い社員が見ることのできる状態においた行為は複製権及び公衆送信権の侵害となり、また被告は保管していた写真を紛失したから所有権の侵害となるとして、被告に対して損害の賠償を求めた。これに対して、被告は、@複製権等の侵害に関しては、劣化や紛失を防ぐためにポジフィルムに写された写真をデジタルデータ化して社内のデータベースに保管したものであって、複製利用目的もないから複製権侵害には該当しない、Aポジフィルムの所有権は被告に帰属しているから所有権侵害には該当しないと主張した。ここでは@を扱うが、本件判決は@、Aともに被告の主張を棄却し、結論として被告に対して328万円の賠償を命じた。
判決の要旨〔一部認容〕
Yが、本件交付ポジフィルム写真の一部について、デジタルデータ化し、サーバに蓄積する過程で、CD−ROMに保存した事実は、当事者間に争いがなく、これによれば、デジタルデータ化の作業を行って、その結果得られた本件デジタルデータをハードディスクその他の記憶媒体に保存したこと、更にCD−ROMにも保存したことは、いずれも上記ポジフィルム写真に係る複製権を侵害するものであると認められる。
Yは、写真の劣化や紛失を防ぐためにポジフィルムに写された写真をデジタルデータ化し、社内のデータベースに保管していることは、複製利用目的もなく、当該ポジフィルムの著作権者の複製権を侵害する行為には該当しない旨主張するが、複製物の利用目的がない複製行為であっても、複製権の侵害となり得る場合があることは明らかであるから、被告の主張は失当といわなければならない。
解 説
本判決は、写真をデジタルデータ化すれば他への利用目的がなくても複製権の侵害になるとしました。著作権は複製等専有権と観念されていて、利用の如何を問わず無断で複製等する行為それ自体が著作権侵害であるとして構成されていますので、本判決の結論はやむを得ないと思います。実質的に考えても、複製物が存在すれば、それを見たり参考にしたりできるようになるし、将来他目的に利用する者が出現する可能性もあるのですから、現時点で他目的に利用する意図がなかったとしても複製権侵害を免れることはできません。この点については、複製機器の利用に伴って必然的に生ずるRAM等への一時的蓄積が複製権侵害に当たるかという問題がありますが、本件のような事例は複製権侵害に該当することに異論はないと思います。
MYUTA事件 (MYUTA=マイウタ)
パソコン及び携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象としてCD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことができるようにするサービスが、楽曲をサーバ内に複製する行為及び楽曲をユーザの携帯電話に送信する行為の主体はいずれもユーザではなくサービス提供者であるとして、サービス提供者が複製権及び公衆送信権の侵害者であるとされた事例
東京地裁平一八(ワ)一〇一六六、MYUTA事件、平一九・五・二五判決
(判時一九七九・一〇〇、判タ一二五一・三一九)
参照条文 著作権法二条・二一条・二三条
事案の概要
原告は、パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として、「MYUTA」の名称により、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聞くことのできるサービス(本件サービス)を提供しようとして、平成17年11月、プレスリリースを経て無料による試用を開始した。これに対して、日本音楽著作権協会(JASRAC)が原告に対して本件サービスの中止を要請したので、原告がJASRACを被告として、差止請求権の不存在の確認を求めたのが本件である。
本件サービスは、「MYUTA専用MUSIC UPLOADER」(本件ユーザソフト)を用いて、ユーザが楽曲の音源データを自己のパソコンで携帯電話用ファイルに圧縮し、インターネットを経由して原告の運営する「MYUTAサーバ」(本件サーバ)のストレージ(外部保存媒体。具体的にはストレージサーバ内の大容量のハードディスク)にアップロードして蔵置し、これを任意の時期に自己の携帯電話にダウンロードできるようにするものであり、これにより、ユーザにおいて、携帯電話で楽曲を自由に再生することができる。本件サービスにおいて、楽曲の音源データは、別紙「本件サービスにおける音楽著作物の利用」記載のとおり、データファイルとして形式が変換され、蔵置され、インターネットで送信されて利用される。
判決の要旨〔棄却〕
二.争点(1)ア(複製権その一)について
(1)本件サービスの説明図Cにおいて複製が行われることは争いがないので、以下、前記認定の事実を前提に、その複製行為の主体について判断する。
ア 目的
本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や、ストレージでの保存に必要な条件は、原告によって予めシステム設計で決定されるところ、本件サーバのストレージに複製された3G2ファイルは、ユーザが携帯電話にこれをダウンロードすることを予定して蔵置されたものである。すなわち、本件サーバにおける複製は、音源データのバックアップなどとして、ファイルを単に保存すること自体に意味があるのではなく、原告の提供する本件サービスの手順の一環として、最終的な携帯電話での音源データの利用に向けたものであり、本件サーバのストレージがユーザのパソコンと携帯電話とをいわば中継する役割を果たしている。
また、ユーザが個人レベルで本件サービスと同様にCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することを試みる場合、前記一(1)認定のとおり、本件ユーザソフトを用いなくても、フリーソフト等を使って3G2ファイル化することまでは可能であるが、これを再生可能な形で携帯電話に取り込むことに関しては、技術的に相当程度困難である。
したがって、携帯電話にダウンロードが可能な形のサイト(本件サーバのストレージ)に音源データをアップロードし、本件サーバでこれを蔵置する複製行為は、本件サービスにおいて、極めて重要なプロセスと位置付けられる。
イ 行為の内容
説明図Cにおいて本件サーバに管理著作物が複製されることは、当事者間に争いがいない。
本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為は、ユーザのパソコンからインターネット回線でアップロードされ、蔵置されて行われるものである。すなわち、前記一(5)認定のとおり、ユーザのパソコンの本件ユーザソフトと本件サーバ(ストレージサーバ)内の本件ストレージソフトとがインターネットを経由して連動し、ストレージサーバのOSの機能によって、音源データのファイル保存が完了する。
なお、このアップロードに際し、前記一(4)認定のとおり、本件ユーザソフトは、本件サーバとインターネット回線を介して連動している状態において、本件サーバの認証を受けらければ作動しないようになっており、ユーザは、利用登録時に発行されたアクセスキーによる認証を経て、本件サーバのシステムに接続され、音源データは、紐付けされた特定のストレージ領域に蔵置される。
ウ 本件サーバの役割
前記一(1)認定のとおり、原告は、WEBサーバ、データベースサーバ及びストレージサーバで構成される本件サーバ等の装置一式を所有するとともに、これを原告のグループ会社のサービスセンターに設置して、常時作動するように監視し、故障に対応する態勢を整えるなど、本件サーバを管理してきた。
本件サーバは、ユーザに対する本件サービスの提供に当たって、システムの中核を構成し、前記一(2)ないし(4)認定のとおり、原告の定めたシステム設計に従って処理され、稼働するものである。原告の作成に係る本件ユーザソフトは、ユーザのパソコン内で起動され、本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネットを介して連動した状態で機能するが、ユーザは、本件サービスの利用に際し、前記一(3)認定のとおり、個別に利用の条件や使用の設定を変えることはできず、すべて、原告の設計したシステムに従って、これを利用するかしないかの選択しかできない。
そして、本件サーバのストレージでは、ユーザの携帯電話にダウンロードするために音源データを蔵置することが必要不可欠であるところ、本件サービスの目的はユーザの携帯電話における音楽の楽曲の再生であり、原告によるシステム設計として、サーバ内で音源データが複製されることを当然の前提にしている。
本件サーバは、本件サービスにおけるこのような目的を実現するため、原告が所有し、管理して、維持運営する専用サーバであって、それ以外の役割を担うものではない。
エ ユーザの役割
他方、本件サービスにおいて、本件サーバと一体となったシステムの利用上、前記一(4)及び(6)認定のとおり、ユーザが本件サーバにどの楽曲を複製するか等の操作の端緒となる関与を行うことが予定されている。
しかしながら、前記一(2)ないし(4)認定のとおり、本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や、ストレージでの保存に必要な条件は、原告によって予めシステム設計で決定されたものである。そして、本件サーバにおける3G2ファイルの蔵置は、こうした本件ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され、本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネットを介して連動した状態で機能するように仕組まれている。
そうすると、個々の3G2ファイルの蔵置について、その操作の端緒として、インターネットを経由したユーザの行為が観念できるとしても、ここでの蔵置による複製行為は、専ら、原告の管理下にある本件サーバにおいて、行われるものである。
オ 有償性
原告の提供する本件サービスは、前記一(1)認定のとおり、ベータ版での試用では、月額料金が当面無料とされているが、当初から、有料化と機能の拡張が予定されていた。
カ 小括
以上の諸事情、すなわち、@原告の提供しようとする本件サービスは、パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことができるようにするものであり、本件サービスの説明図Cの過程において、複製行為が不可避的であって、本件サーバに3G2ファイルを蔵置する複製行為は、本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置づけられること、A本件サービスにおいて、3G2ファイルの蔵置及び携帯電話への送信等中心的役割を果たす本件サーバは、原告がこれを所有し、その支配下に設置して管理してきたこと、B原告は、本件サービスを利用するに必要不可欠な本件ユーザソフトを作成して提供し、本件ユーザソフトは、本件サーバとインターネット回線を介して連動している状態において、本件サーバの認証を受けなければ作動しないようになっていること、C本件サーバにおける3G2ファイルの複製は、上記のような本件ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され、本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネットがユーザのパソコン内で起動され、本件サーバ内のストレージソフトとインターネット回線を介して連動した状態で機能するように、原告によってシステム設計されたものであること、Dユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは、技術的に相当程度困難であり、本件サービスにおける本件サーバのストレージのような携帯電話にダウンロードが可能な形のサイトに音源データを蔵置する複製行為により、初めて可能になること、Eユーザは、本件サーバどの楽曲を複製するか等の操作の端緒となる関与をおこなうものではあるが、本件サーバにおける音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様や、ストレージでの保存に必要な条件は、原告によって予めシステム設計で決定され、その複製行為は、専ら、原告の管理下にある本件サーバにおいて行われるものであることに照らせば、本件サーバにおける3G2ファイルの複製行為の主体は、原告というべきであり、ユーザということはできない。
(1) 次に、本件事案の性質に鑑み、前記二の判断に加え、説明図CからDの過程における自動公衆送信権侵害の有無について判断する。
説明図CからDの過程に関し、本件サーバからユーザの携帯電話に向けた3G2ファイルの送信(ダウンロード)について、送信行為の主体が誰かにつき検討すると、前記二と同様に、@原告の提供しようとする本件サービスは、パソコンと携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象として、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聞くことができるようにするものであり、本件サービスの説明図CからDの過程において、音源データの送信行為が不可避的であって、本件サーバから3G2ファイルを送信する行為は、本件サービスにおいて不可欠の最終的なプロセスと位置付けられること、A本件サービスにおいて、3G2ファイルの蔵置及び携帯電話への送信等中心的役割を果たす本件サーバは、原告がこれを所有し、その支配下に設置して管理してきたこと、B本件サーバによる3G2ファイルの送信は、インターネット回線を介して、ユーザの携帯電話と本件サーバ内の本件ストレージソフトが連動して機能するように、原告によってシステム設計されたものであること、C本件サーバからの送信行為は、本件サーバでの複製行為を前提とするものであり、ユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは、技術的に相当程度困難であること、Dユーザは、本件サーバにどの楽曲をダウンロードするか等の操作の端緒となる関与を行うものではあるが、本件サーバによる音源データの送信に係る仕様や条件は、原告によって予めシステム設計で決定され、その送信行為は、専ら、原告の管理下にある本件サーバにおいて行われるものであることに照らせば、本件サーバによる3G2ファイルの送信行為の主体は、原告というべきであり、ユーザということはできない。
(2) 自動公衆送信行為の該当性について
本件サービスを担う本件サーバは、前記一(2)ないし(6)認定のとおり、ユーザの携帯電話からの求めに応じて、自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。
そして、本件サービスは、前記一(1)認定のとおり、インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話(ただし、当面はau WIN端末のみ)を有するユーザが所定の会員登録を済ませれば、誰でも利用することができるものであり、原告がインターネットで会員登録をするユーザを予め選別したり、選択したりすることはない。「公衆」とは、不特定の者又は特定多数の者をいうものであるところ(著作権法二条五項参照)、ユーザは、その意味において、本件サーバを設置する原告にとって不特定の者というべきである。よって、本件サーバからユーザの携帯電話に向けての音源データの3G2ファイルの送信は、公衆たるユーザからの求めに応じ、ユーザによって直接受信されることを目的として自動的に行われるものであり、自動公衆送信(同法二条一項九号の四)ということができる。
このように、本件サーバは、自動公衆送信のための装置に該当し、説明図CからDの過程における本件サーバからユーザの携帯電話に向けた3G2ファイルの送信(ダウンロード)について、自動公衆送信行為がされたということが出来る。
解 説
1 本件サーバへの音楽著作物の複製(別紙「本件サービスにおける音楽著作物の利用」中のC)の主体は誰か
本件サービスは、パソコン及び携帯電話のインターネット接続環境を有するユーザを対象に、楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできるようにするサービスです。ユーザが楽曲を携帯電話で聴くことができるようにするためには、本件サーバのストレージのような携帯電話にダウンロード可能な形のサイト(3G2ファイル)に音源データを蔵置する複製行為(別紙「本件サービスにおける音楽著作物の利用」中のC)が必要不可欠であり、本件ではこの複製行為の主体が原告であるかユーザであるかが問題となっています。複製主体がユーザであれば私的複製(著作権法30条)であって著作権侵害とはなりませんが、後者であれば著作権侵害となります。そして、本判決は、本件サーバにおける3G2ファイルの複製は、本件ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され、本件サーバ内の本件ストレージソフトとインターネット回線を介して連動した状態で機能するように原告においてシステム設計されていること、3G2ファイルの蔵置の中心的役割を果たす本件サーバは原告が所有し、原告の支配下に設置して管理していること、本件ユーザソフトを提供するのも原告であり、本件ユーザソフトは原告の認証を受けなくては作動しないこと、ユーザは楽曲の選定をするものの、選定した楽曲の音源データの蔵置に不可欠な本件ユーザソフトの仕様やストレージの保存に必要な条件は原告によってシステム設計されており、その複製は原告の管理下にある本件サーバによって行われること等から、3G2ファイルの蔵置行為の主体は原告であるとしました。妥当な判決と思います。
2 本件サーバからユーザの携帯電話に向けた3G2ファイルの送信(ダウンロード)(別紙「本件サービスにおける音楽著作物の利用」中のCからD)の主体は誰か
本件サーバにおける3G2ファイルの送信は、ユーザの携帯電話と本件サーバ内の本件ストレージソフトがインターネット回線を介して連動した状態で機能するように原告においてシステム設計されていること、3G2ファイルの送信の中心的役割を果たす本件サーバは原告が所有し、原告の支配下に設置して管理していること、ユーザは楽曲の選定をするものの、選定した楽曲の音源データの送信にかかる仕様や条件は原告によってシステム設計されており、送信は原告の管理下にある本件サーバによって行われること等から、3G2ファイルの送信行為の主体も原告であるとしました。妥当な判決と思います。
さらに、インターネット接続環境を有するパソコン及び携帯電話を利用する者であれば誰でも会員登録をして利用できるのであるから、ユーザは「公衆」(著作権法2条5項)に該当するとして、原告を公衆送信権の侵害者と認めました。
シェーン事件
昭和二八年に公表された映画の著作物は、平成一五年一二月三一日にその保護期間が満了するから、平成一六年一月一日に現に存在する映画の著作物について保護期間を七〇年に延長する改正著作権法の適用はないとされた事例
知財高裁平一八(ネ)一〇〇七八、シェーン事件、平一九・三・二九判決、第一審東京地裁、平一八・一〇・六判決
(判時一九九〇・一二二)
参照条文 著作権法五四条、民法一四〇条・一四一条・一四三条
事案の概要
本件は、「ローマの休日」等激安DVD事件と同様、昭和二八年に公表された映画の著作物に対して、映画著作物の著作権の存続期間を公表後七〇年に延長する改正法附則二条が適用になるかという問題(一九五三年問題)である。本件については、第一審判決(東京地裁平一八・一〇・六)及び控訴審判決もともに、「ローマの休日」等激安DVD事件と同様、映画著作権の存続期間は平成一五年一二月三一日をもって満了しており、改正法附則二条の適用はないとした。
判決の要旨〔棄却〕
(2)本件映画の著作権の存続期間
本件映画は、上記(1)のとおり、昭和二八年に公表されたものであるから、その著作権は、公表の翌年である昭和二九年から起算して五〇年後の末日である平成一五年一二月三一日が終了するまでの間存続する、すなわち、本件映画の著作権は、同日の終了をもって、存続期間の満了により消滅するものであり、このことは、原判決(二〇頁二三行目ないし二一頁二四行目)に記載のとおりであるから、これを引用する(なお、このことは控訴人らも争わない。)。
(3)改正著作権法五四条一項の適用の有無
本件改正法は、平成一六年一月一日から施行されたが(本件改正法附則一条)、改正著作権法五四条一項は、「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七〇年(・・・)を経過するまでの間、存続する。」と規定して、映画の著作物の著作権の保護期間を五〇年から七〇年に延長した。そして、本件改正法附則二条は、「改正後の著作権法・・・第五四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による。」と規定して、その施行日である平成一六年一月一日において、改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について改正著作権法五四条一項の規定を適用し、改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、従前の例による、すなわち、改正著作権法五四条一項の規定を適用しないものとした。
本件映画の著作権は、上記(2)のとり、平成一五年一二月三一日の終了をもって、存続期間の満了により消滅する。そうすると、本件改正法が施行された平成一六年一月一日においては、改正前の著作権法による本件映画の著作権は既に消滅しているから、本件改正法附則二条の規定により、改正著作権法五四条一項の規定は適用されない。
(4)控訴人らの主張について
ア 控訴人らは、改正前の著作権法による本件映画の著作権の存続期間の満了点である平成一五年一二月三一日午後一二時は、本件改正法が施行された平成一六年一月一日午前零時と同時刻であるから、本件映画の著作権は本件改正法が施行された際現に存続していたのであり、改正著作権法五四条一項が適用されて、本件映画の著作権は、公表後七〇年を経過するまでの間、すなわち、公表の翌年である昭和二九年から起算して七〇年後の末日である平成三五年一二月三一日が終了するまでの間存続すると主張する。
しかしながら、改正前の著作権法五四条一項及び五七条は、映画の著作物の著作権の存続期間を年によって定めたものであって(民法一四〇条)、この場合には、期間は、その末日の終了をもって満了するから(民法一四一条)、日を単位としているものである。そして、本件改正法附則一条は、本件改正法の施行の時点を日を単位として定めたものである。そうすると、両者はいずれも日を単位とするものであるから、本件改正法が平成一六年一月一日から施行され、この日が午前零時から始まるものであるとしても、平成一五年一二月三一日の終了をもって存続期間が満了する本件映画の著作権がのそ翌日である平成一六年一月一日に存続していたということはできない。
解 説
旧著作権法は、映画著作物の保護期間を三〇年間としていましたが、その後暫定的な延長措置により三三年間とされ、さらに昭和四五年に全面改正されて(昭和四六年一月一日から施行)、保護期間は公表後五〇年(同法五四条1項)、「公表後五〇年の期間の終期を計算するときは、著作物が公表され・・・た日のそれぞれ属する年の翌年から起算する」(同法五七条)と規定されました。その後平成一五年著作権法改正(平成一六年一月一日から施行)により、保護期間は公表後七〇年間とされ(同法五四条一項)、経過措置として「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による」(附則二条)と規定され、平成一六年一月一日時点で著作権が存続する映画著作物のみ公表後七〇年間の保護期間が与えられることとされました。
本件映画は昭和二八年五月に米国において公表されたと認定されており、そうすると昭和四五年改正著作権法により、保護期間は昭和二九年一月一日から起算して五〇年間です。期間の計算は民法によります。民法では「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」(民法一四〇条)と規定しており、この場合は午前零時から期間が始まりますので昭和二九年一月一日を参入して五〇年後の平成一六年一月一日が応当日となり、その前日である平成一五年一二月三一日が末日となります(民法一四三条一項)。そして期間は末日の終了をもって満了しますので(民法141条)、平成一五年一二月三一日の午後一二時に保護期間が満了します。ところが、平成一五年一二月三一日の午後一二時というのは平成一六年一月一日の午前零時のことですから、控訴人は、平成一六年一月一日時点で著作権が存続している著作物として改正法の五四条一項の保護を受けられると主張しました。本判決は控訴人の主張を否定していますが、常識的にも妥当です。