Blue Selection
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| 2002/11/20発売 1 飾りじゃないのよ涙は 2 鍵の数 3 ダンスはうまく踊れない 4 カナリア 5 嘘つきダイヤモンド 6 Final Love Song 7 ワカンナイ 8 灰色の指先 9 海へ来なさい 10 最後のニュース |
2002年後半戦のツアー中から、それまでの弾き語りコーナーに代え、Jazzyなアレンジの曲を演っていて、ファンの間でも話題になっていたが、同年7月の久々のオリジナルアルバム「カシス」発売から僅か4ヶ月弱で、全編Jazzyアレンジとなったこのアルバムが発売されるとは、ファンにとっては嬉しい誤算だ。このアルバムに入っている曲は、聴き馴染みのあるナンバーばかりだが、Jazzyなアレンジが施され、息の合ったツアーのサポートメンバーをバックに、意図的に抑え気味になっている氏のボーカルが、オトナの落ち着きを感じさせる、Jazzyな「セルフカバーアルバム」。聞けば、陽水氏はプライベートでもJazzを良く聴き、自身のやや硬質で伸びのある「綺麗」な声より、ある種「枯れ」ていて、その声だけで雰囲気のある声が好きらしい。自身の声自体は、50代半ばとは言え、その伸びや張りに衰えは見られず、依然として日本のミュージックシーンの中でも「上手い」シンガーであることに変わりはないため、抑えめに歌うことでJazzyな雰囲気を出そうとしているという。
中森明菜への提供曲で、陽水自身も「9.5カラット」で歌っていた「飾りじゃないのよ涙」は、そのどちらの雰囲気とも異なるJazzyなアレンジに変貌しており、それにまず驚かされる。スピード感のある山木氏のブラシワークが印象的で、Haha・・という部分の力の抜けたボーカルが特にいい。ゆるやかなピアノに導かれるように緩やかに流れる「鍵の数」は、オリジナルの「UNDER
THE SUN」よりキーを落として、ボーカルにもゆとりを感じさせる。これもオリジナルの「9.5カラット」のそれより、力みのないボーカルと軽やかなリズムが上手くマッチした「ダンスはうまく踊れない」と続く。
「映画へ行こう」のオリジナルは、78年のシングル「青い闇の警告」のB面で、元々Jazzyなナンバーであった(実際にはブルースコード。ただ曲の途中で転調させる遊びを入れている)が、オリジナルにあった重苦しさが緩和されて、一人で暗い映画館の中に居る雰囲気を上手く醸し出している。「LION
& PELICAN」のオリジナルから「ガイドのいない夜」で劇的な変化を遂げた「カナリア」は、今堀氏のアコギが印象的な静かなアレンジになっており、それに今氏のEギターが儚さを強めている佳作。J.Birkinとのデュエットアルバム「ランデ・ヴー」にも取り上げられており、東京バージョンではこのアレンジが元になっている(同じかも?)。
このアルバムの中で、私がお勧めしたいのは「嘘つきダイヤモンド」。HEYx3のエンディングテーマとしてシングル発売された、「若者」を意識したロック色の強いオリジナルとは趣をがらっと変え、ウッドベースのイントロから始まっている。バックのミュージシャン一人一人のパワーと、このアルバムではやや強めに歌う陽水のボーカルが、これほど完璧に融合した曲はない、正に素晴らしいJazzyな「セッション」だ。ライブで何度か聴いたが、毎回鳥肌が立つ程の感動を覚えたことも付け加えておきたい。あまりJazzyとは言い難い?「Final
Love Song」だが、「カシス」のそれより深みが増している。それにしても「ワカンナイ」のJazzyなアレンジとのハマリ具合がこれほどいいとは・・・。「LION
& PELICAN」のオリジナルより遥かに抑えたボーカルが、この曲のメッセージ性を際立たせている秀作だ。
オリジナルが氏の曲の中で最もJazzyで、ライブアルバム「クラムチャウダー」でもその色を強めていた「灰色の指先」は、元々あった絶望的なまでの哀しさが、今回のアレンジと抑えめのボーカルではやや弱まっており、この曲が暗すぎて苦手だとする一部のファンにとって受け入れ易いものになっているのではなかろうか。元々「スニーカーダンサー」中のオリジナル曲が個人的に好きで、「ガイドのいない夜」でサビの部分から始める格好で更に進化した「海へ来なさい」だが、今回のアレンジ、演奏、ボーカルは、それらを更に上回るベストテイク。人の持つ「優しさ」が滲み出てくるような作品に仕上がっている。「最後のニュース」は、ライブのエンディングに良く歌われ、圧倒的な迫力で迫ってくる名曲だが、これも「ワカンナイ」同様、Jazzyなアレンジと抑えたボーカルが、却ってそのメッセージ性を聴く者の胸に刻み込むような気がする。
私はこのアルバムに、「Golden Best Super」のDisc3に収録されている、「どまどうペリカン」、「青空、ひとりきり」、「L-O-V-E」、「ミス・コンテスト」、それに「カシス」の中の「都会の雨」、「You
Are The Top」を加え、オリジナルの「Blue Selection (special)」として楽しんでいる。ライブで聴いた「クレイジー・ラブ」のJazzyバージョンが加われば最高なのだが・・・。