Author: Yasuaki Kobashi(小橋康章), All Rights Reserved
Date : 2001/07/28 (last modified); 2000/08/17 (created)

長坂寿久著「オランダモデル」を読む

A Reader's Note to Nagasaka's "Dutch Model"(2000)


ジェトロのアムステルダム事務所長を経て現在は2000年4月新設の拓殖大学国際開発学部[Updated 26 July 2001] の教授をなさっている長坂寿久氏の「オランダモデル:制度疲労なき成熟社会」(日本経済新聞社,2000)は,日本の社会・経済システムの構築を主導してきたアメリカモデルに対して,オランダモデルという対案を示しています.

わたしもかつてオランダで見てきた身のまわりのさまざまな小さな事実が,この本によって新しい意味を与えられるのを感じました.いま目の前に見えるものを越えて,オランダ社会がどのように成り立っているのかを知りたい人にはためらいなく推薦できる好著です.

ただ著者があとがきに「最初の原稿枚数は、本書の三倍以上あった。削除してもなお多く、」最後は出版社の編集者がこのような形にしてくれたとあるように,この本を出発点にもっと深く広く知りたい読者が必要とするかもしれない,索引や,参考文献や,さまざまな固有名詞,略語,概念のオランダ語の原語の紹介といったものが,この本にはありません.わたし自身,この本を読みながら,これオランダ語ではどういうんだろうと気になったところがあったものですから,少しづつ調べている途中経過のメモがこのページです.


長坂寿久著「オランダモデル」目次

  1. オランダの奇跡は「パートタイム革命」から, p.13
    1. 「オランダ病」から「EUの優等生」へ, p.14
    2. 夫婦で「一・五人」前の働き方, p.18
    3. 政労使の合意形成, p.24
    4. パートタイム経済の誕生, p.30
    5. 再生は決して「奇跡」ではない, p.49
  2. 「よいコンセンサス社会」の強み, p.63
    1. 「協議」し「合意」し「統合」する, p.64
    2. 治水の歴史が生んだアイデンティティ, p.69
    3. 多様なグループが交わらず共存, p.75
    4. 「異質」を統合させる, p.82
  3. 高齢者が元気で過ごしやすい国, p.93
    1. 民間の高齢者組織が行政を動かす, p.94
    2. 日本の介護保険はオランダ経由, p.109
  4. 社会悪は根絶せず「制御」する, p.117
    1. 犯罪は完全になくならない, p.118
    2. 麻薬と売春は黙認して管理する, p.122
    3. 「安楽死」とは「尊厳死」, p.137
  5. NGOは政府のパートナー, p.145
    1. 0DA代行機関としてのNGO, p.146
    2. 地域のNGOは自治体の肩代わり, p.157
    3. 子どもを社会に参加させる教育, p.163
    4. 「支援するに足る」NGOを評価する, p.174
  6. 環境対策は法規制より「紳士協定」で, p.183
    1. 産業界と政府の「紳士協定」, p.184
    2. 投資戦略と環境対策を一体化する, p.196
  7. インフラ立国の高い競争力, p.203
    1. 空港・港湾・情報通信, p.204
    2. 人工的な自然と都市のネットワーク, p.216
  8. 二一世紀の世界システムモデル, p.225
    1. 「国家」だけが主役ではない, p.226
    2. 政府・企業・NGOの対等な関係を目指して, p.234

読書ノート

  1. オランダの奇跡は「パートタイム革命」から, p.13

    1. 「オランダ病」から「EUの優等生」へ, p.14
      • 労働市場の改革に成功し,「オランダ病」(70年代後半から80年代:一次産品ブーム(エネルギー資源)の逆効果により,実質為替レートが過剰上昇,製造業の国際競争力を阻害.社会保障制度が充実したものの,失業者が増大,大不況へ)から「オランダの奇跡」へ.
      • 「奇跡」をもたらした改革のモデルをポルダーモデルダッチモデルなどと呼ぶ.その結果,
        1. 高い経済成長率
        2. 失業率の低下
        3. 労使関係の安定
        4. ワークシェアリング
        が現在のオランダ経済の特色とされている(p.18).
    2. 夫婦で「一・五人」前の働き方, p.18
    3. 政労使の合意形成, p.24
    4. パートタイム経済の誕生, p.30
      • パートタイム労働の差別の禁止:96年11月差別禁止法の中で労働時間差差別を明示する改正措置, p.41
      • 労働形態の三区分, p.44
        1. フルタイム労働
        2. パートタイム労働→ deeltijdarbeid
          1. 大(定着型)パートタイム→ de grote deeltijdbaan
          2. ハーフタイム
          3. 短時間パートタイム
        3. フレキシブル労働
      • 年金制度:
        1. 国民老齢年金(OAB)
        2. 企業年金基金
        3. 個人年金基金
    5. 再生は決して「奇跡」ではない, p.49
      • 社会保障制度は切り下げず,民営化で効率の改善を図った.
      • 96年4月,労働疾病休暇制度の民営化, p.49
      • 政府の公共職業紹介サービスの民営化:CBA: Centraal Bestuur voor de Arbeidsvoorziening
      • 隠された失業者, p.53

  2. 「よいコンセンサス社会」の強み, p.63

    1. 「協議」し「合意」し「統合」する, p.64
    2. 治水の歴史が生んだアイデンティティ, p.69
      • 「オランダには、いまも一二世紀に始まる『ウォーターボード(水域管理局)』という組織がある。ウォーターボードは堤防を保全し、水位を規定し、管理するための組織である(p.70)」→waterschap のこと.
      • オランダ王国憲法の第一三三条では、ウォーターボードを地方自治体と同じ位置付けに規定している(p.72)。」

    3. 多様なグループが交わらず共存, p.75
      • オランダ社会にかつて見られたverzuiling(列柱構造,著者は「柱状社会」としている)の解説.
      • 参照されているレイプハルトの「多元社会のデモクラシー」(内山秀夫訳,三一書房,1979)を注文したが,絶版らしい.
    4. 「異質」を統合させる, p.82

  3. 高齢者が元気で過ごしやすい国, p.93

    1. 民間の高齢者組織が行政を動かす, p.94
      • 「オランダの西方、ドイツ国境近くにリヒテンフォールトという市がある(p.97)」→オランダの東部の間違い.ヘルダーラント州(Provincie Gelderland)のリヒテンフォールデ(Lichtenvoorde) のこと.
      • KBO(カトリック系高齢者組織)→ Katholieke Bond voor Ouderen
    2. 日本の介護保険はオランダ経由, p.109

  4. 社会悪は根絶せず「制御」する, p.117

    1. 犯罪は完全になくならない, p.118
    2. 麻薬売春は黙認して管理する, p.122
    3. 安楽死」とは「尊厳死」, p.137

  5. NGOは政府のパートナー, p.145

    1. 0DA代行機関としてのNGO, p.146
    2. 地域のNGOは自治体の肩代わり, p.157
    3. 子どもを社会に参加させる教育, p.163
    4. 「支援するに足る」NGOを評価する, p.174
      • 「NGO・NPOなどの公益団体が募金を募ったり、寄付を受けるに足るだけの財政管理や活動の監視ができているかどうかについて、公的に評価するシステムが確立されている。
         その評価機関がCBF(募金中央委員会)である(p.174)。」→ Centraal Bureau Fondsenwerving
      • 「募集団体がCBFの求める基準にあう場合には、基準が合致していることを証明する『宣言書』を交付する。NGOはこの『宣言書』を活用して募金活動ができるのである(p.176)。」宣言書→ Verklaring van Steunwaardigheid
      • Verklaringを3年以上取得していると「『品質保証シール』をCBFから取得することができる(p.177)。」品質保証シール→ CBF-Keur, CBF-Keurmerk (KEMA が出しているKEMA-Keurに似ている)

  6. 環境対策は法規制より「紳士協定」で, p.183

    1. 産業界と政府の「紳士協定」, p.184
    2. 投資戦略と環境対策を一体化する, p.196

  7. インフラ立国の高い競争力, p.203

    1. 空港・港湾・情報通信, p.204
    2. 人工的な自然と都市のネットワーク, p.216

  8. 二一世紀の世界システムモデル, p.225

    1. 「国家」だけが主役ではない, p.226
    2. 政府・企業・NGOの対等な関係を目指して, p.234

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