![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
|
| 危険地帯 | ||
|
1997年作品 No.1 めざせ毎日更新 1998年作品 No.29 1998年の祝賀 1999年作品 No.60 1999年の祝賀 2000年作品 No.76 2000年の祝賀 2001年作品 No.85 2001年の祝賀 2002年作品 2003年作品 |
77.ライバル同士 私の「イトーヨーカドー好き」は一部において有名な話となっており、現在の住み処を決める際、近くにイトーヨーカドーがあるという理由が比較的重大な要因であったことを考えると、それは計り知れないものがある。しかも、現在の私の住み処である北千住に設置されているイトーヨーカドーといえば、全国各地に展開しているイトーヨーカドーの第1号店、つまりはじめてのイトーヨーカドーであるわけだ。そう考えると、私が北千住という地を選んだのは偶然などではなく、必然であったというか、定説でそうなってしまったようである。そういうわけで北千住イトーヨーカドーといえばマニアの間では聖地同様であり、イトーヨーカドーマニアは北千住方面に足を向けて寝てはいけないのである。 ところが、そんな北千住イトーヨーカドー(正確にはイトーヨーカドー千住店)には強大かつ強靭かつ強力かつ強烈かつ強固かつ強まった最強のライバルが存在しているのである。そのライバルの名は、トポス北千住店である。トポスとはダイエー資本のディスカウントストアであり、安さを売りにしているスーパーだ。実際、同じ物であれば間違いなくイトーヨーカドーよりトポスの方が安いであろう。だが、トポスはその安さが災いしてるのか、夕方に買い物に赴くと、暴徒が現われてトポスを襲ったのかと思うくらい、棚に商品が陳列されて無いことがある。つまり売り切れているのである。これは憂慮すべき重大な問題だ。こちらとしては夕食のメニューをすでに考えて買い物に来ているのであり、すでに胃はチャーハンを欲しがっているのである。だが、売り場には目的であるタマゴが無いのである。目的物の売り切れという緊急動議に胃は大層な不平不満を申し上げている。もう俺はチャーハンしか受け付けぬと、タマゴが無ければどこか他の店に買いにいけと。私が胃に、タマゴくらい無くてもいいじゃないか、と進言しても、タマゴの入っていないチャーハンなど、クリープの入っていないコーヒーのようなものだ。そんなものはチャーハンと言わぬ、と断固拒絶される。そういうことで、仕方なくトポスを後にしてイトーヨーカドーまでタマゴを買いにいくのである。イトーヨーカドーではそういう事はまずないので、食糧の安定供給と言った意味ではイトーヨーカドーに軍配が上がる。私もそうした理由でイトーヨーカドーを愛し続けてきた。我が家からの距離を考えると、イトーヨーカドーの方が遠い。それなのに近くにあるトポスに行かず、イトーヨーカドーに通い続けるのは、安定供給されているという事もそうだが、今までお世話になってきたイトーヨーカドーへの感謝の意もあるかも知れぬ。 だが、最近はトポスもその辺考えたのか、閉店間際に行っても品物が残っていることが多くなった。以前のような棚丸ごと品物が無い、という状態が減ったように思う。そうなると、もうイトーヨーカドーに魅力を感じなくなったのである。先述のようにトポスの方が安いし、閉店直後の割引率もいい。そんな主婦みたいなことを言っている私はまだ独身。とても所帯じみてしまった。 そういったわけで、いままで愛し続けてきたイトーヨーカドーと私はあっさり離別した。さらばイトーヨーカドー。いままでどうもありがとう。蛍の光窓の雪と頭にはメロディーが流れる。しかし、イトーヨーカドーでしか売っていないものもあるから、完全に縁を切ったわけではない。ときどき思い出したようにイトーヨーカドーに赴くこともある。そのトポスで売っていないものを買いにイトーヨーカドーに行った時、事件は起こった。 確か、毛布を友達と一緒に買いに行った時だ。トポスには布団系は売っていないので、イトーヨーカドーに出向いたのだ。だが欲すべき毛布が無かったので、ついでに欲しかった風呂場に敷くマットを買って帰ることとなった。どれがいいのやらと品定めをしていると、いくつかのマットにおいて値札がついていないことに気がつくのであった。値段の表示もどこにも無い。これは店側の致命的なミスであり、しかるべき処置を取ってもらわぬと困る。だが、店員にいちいち「これなんぼ?」と尋問するのも面倒くさい。よって値札のついているマットを買おうかなどと友達と話していた時、同じことで悩まれているマダムがおった。私達とそのマダムは「これ一体いくらなんでしょうねぇ」などと談話しながら目の前の問題に真剣に取り組んでいた。もしかしたら、値段表示を見落としているのかも知れぬ。もしかしたら、どこかに値札がついているのかも知れぬ。私達とマダムは、そのマットの値段を知るべく試行錯誤した。だがどうしてもそのマットの値段は分からぬ。そうしたらマダムは、若い女の店員を連れて来て、「このマット一体いくらなの?」と苦言を呈した。その店員は値段表示を探すべく、そのマットの周りをちょろちょろと探し始めた。だが、それがマダムの逆鱗に触れてしまったようだ。 マダムは「もうそのあたりは捜したわよ!! 無かったからあなたを呼んだのよ!! 一体イトーヨーカドーはどうなっているのよ!! 昔はこんな不親切なこと無かったじゃない!! まったくもう、これだからお客をトポスに取られるのよ!! 見てご覧なさい、がらがらでしょう!! みーんなトポスへ行っちゃってるのよ!!」などと、ものすごい勢いでまくしたてはじめたではないか。予想外の出来事に私達は唖然とした。マダムよ、なにもそこまで責めることはないではないか。このバイトらしき子にそんな事言ってもどうにもならんじゃないか。 その女の子は泣きそうになりながら、かさばる風呂マットを1つ抱えて、関係者以外立ち入り禁止の売り場の奥へと行こうとしたが、マダムは容赦無かった。「これもよ!! これもっ!! これも値段分からないんだからっっ!!」と、他にも値段のわからない風呂マットを強引に持っていかせる。かさばる風呂マットを2つかかえ、しおしおと売り場の奥に向かう女の子。ああ、哀れ。女の子も悪い客に当たったものである。 ところで私達は、この鬼のようなマダムの親戚かなにかだと思われたのだろうか。女の子よ、それは違うぞ。私はただマットの値段が明らかになればそれでいいのである。マダムのようにイトーヨーカドーの体質改善についてまで深く掘り下げるつもりは全く無いのである。たしかに私達とマダムはマットの値段を知りたいという同じ目的を持った一種の仲間であるには変わりないが、その他に共通するものなど一切無いのである。親戚でも何でもないのである。一緒にはされたくないのである。女の子よ、そこを勘違いしないでもらいたい。 マダムは私達に「これだからトポスにみんな客が流れちゃうのよ。仕方が無いわよね」などとまだ文句をたれている始末。そんなに言うのであればこのマダムもイトーヨーカドーに来なければいいじゃないかと思うのだが、イトーヨーカドーを利用せねばならぬやむを得ない事情があるんだろう。私も「いやぁ、実は私、トポスの方が近いんですよねー、ははは」と適当にお茶を濁すしかなかった。 そうこうしているうちに、店の奥から女の子が登場となった。申し訳ございません、どちらも1000円です。と頭を下げると、マダムは「あらそうなの。じゃあ丈夫そうなこっちね」と目的のマットを手中に納め、さっさとその場を後にした。立つ鳥跡を濁さず、というやつだろうか。去り方の手際の良さは見事であった。あれだけ文句言ってたのだから、あともう2つ3つ嫌味でも言うものだと思って密かに期待していたのだが、それはなかった。女の子もきっとまだなんか言われるだろうと心の準備をしていたのかもしれないのに残念だ。 結局私達もマダムが選んだものと同じ物を選び、その場を後にした。残された女の子は、そのマットに1000円の値札を一生懸命貼っていたが、なんともその様子が哀れであった。君が悪いわけではないだろうに。 イトーヨーカドー千住店とトポス北千住店はライバル同士、これからも切磋琢磨を繰り返していくことであろう。 |
|
![]() |
||