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| 危険地帯 | ||
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1997年作品 No.1 めざせ毎日更新 1998年作品 No.29 1998年の祝賀 1999年作品 No.60 1999年の祝賀 2000年作品 No.76 2000年の祝賀 2001年作品 No.85 2001年の祝賀 2002年作品 2003年作品 |
88.いっしょうけんめい走るよ 東京都足立区千住旭町42-1にそびえ立つ北千住駅。この駅における朝ラッシュは試練といって過言ではなかろう。 この駅は、JR常磐線から日比谷線に乗り換える人たちや、東武伊勢崎線からJR常磐線に乗り換える人たちなどでごった返す。北千住駅西口から日比谷線に乗ることを日課としている私は、まず西口の階段前で足立区役所前行きの都営バスを待つ客と駅から出てくる大量の女子高生に行く手を阻まれ、常磐線の改札前で常磐線から下車してきた千葉県民や茨城県民に揉まれつつ、東武線からやってきた埼玉県民や栃木県民に蹂躙され、ようやく日比谷線の改札口に到着と相成る。ここで本日の体力の4分の1は間違いなく消費する。もともと体力の少ない虚弱体質である私なんぞは、ここで体力を4分の1も削がれてしまっては滅亡してしまう恐れもある。 このように駅西口から日比谷線に乗る場合は、一度JRのコンコースを通らなければならないのだが、ここが常磐新線の工事のため通常より狭まっているから困ったもの。両方向からの人の大群が押し寄せると、とたんに飽和してしまい客の流れが非常に悪くなってしまうのだ。いわば人の大渋滞である。 しかし、これはほんの序章に過ぎない。日比谷線の改札を抜け、そのホームに向うときに最大の試練かつ、本日の山場が訪れるのである。朝っぱらにいきなり佳境がやってくるほどの、恐ろしいものなのだ。こんなところで佳境を迎えてしまうほど、私の一日はつまらないものである。 その山場の到来を告げるのが、改札をくぐった瞬間にどこからともなく聞こえてくる「ドドドド…」という地響きだ。この、聞いた瞬間に憂鬱になる恐怖の重低音…。間違いない、奴らがやってきてしまったのだ。 奴らとは、東武の準急利用者である。準急電車は北千住の1階ホームに到着し、日比谷線は3階ホームから発車するので、少しでも早い電車に乗ろうとする輩がズドドドド…と凄まじい轟音を上げて一斉に階段を駆け上がる。特に圧巻なのが、10両の準急北千住止まりが到着したときである。この10両に満載された客は全員北千住でレリーズされるわけなので、その後の北千住は日比谷線ホームへ辿り着くための熾烈な競争が繰り広げられる。この競争に出遅れると、一瞬にして日比谷線ホームは人で埋め尽くされ、エスカレーターが止まり階段にまで人があふれ、電車に乗るどころか、日比谷線ホームにすら辿り着けなくなる。 このエスカレーターがまたなかなかスリリングなのだ。 極限までホームが混雑すると、人の壁によりエスカレーターを降りてもまったく先に進めなくなることがある。するとどうなるかというと、エスカレーターは相変わらず好評稼動中であるわけだから、人がどんどんと運搬されてくる。ところが、その人たちの降りる場所が無い。これすなわちピンチである。エスカレーターから降りる直前の人は最大級の危険に晒されているので、自分の降りる場所を確保しようと必死になって前の人を押すわけだが、押された方すなわちエスカレーターの降り口そばの人たちは、前から電車が迫ってきており、これ以上前に進んだらホームから落ちて死滅してしまうので、意地でもその場に留まろうと頑張る。もはや収拾がつかないが、お互いに生死がかかっているので必死である。この駆け引きは、はたから見ている分には「おお、今日もやっとるねー」と愉快なのだが、巻き込まれているほうはたまったもんではあるまい。結局誰かが非常停止ボタンを押してエスカレーターが止まるのだが、エスカレーターに乗っていていきなり止まると体が前につんのめって驚くので、止めるぞーとかの一言が前もって欲しいところだ。 こんなことが日常茶飯事繰り広げられているのに、死者が出ないのは奇跡である。エスカレーターで臨死体験ができるのは、日本広しといえども北千住くらいじゃなかろうか。北千住駅は毎日コミケのような混雑であり、コミケを知っている人は北千住駅はかなりゲンナリといえよう。そもそも、日比谷線は8両編成なのに対し、やってくる東武の車両は10両(6両のときもあり)なのだから、どう考えても入りきるわけが無い。実際はJRや千代田線にも客は流れるので乗客全員が日比谷線に乗るとは思っていないが、日比谷線の容量不足感は否めない。その点は皆様承知のようなので、少ないパイを確保すべく競争が激化しているのであろう。 とまあ、この競争が準急電車ご利用の方だけで繰り広げられる分にはまったく問題が無いのだが、これに私のような北千住駅から乗る人間まで巻き込まれてしまうのだからたまったもんではない。朝は基本的にボケーッというか、ダラーッというか、ボケーッとダラーッが混在した状態でフワフワ〜と歩いている私なんぞは、日比谷線ホームに向かうのに階段ではかったりぃので、エスカレーターで立ち止まってのほほーんと身を任せ、なすがままにされているのだが、日比谷ダッシュに巻き込まれると後ろから猛烈な勢いで走ってくる群衆に押されるので、立ち止まることが不可能となる。ゆえに走りたくもねぇのに走らされてしまうのである。 しかし、これはまだいい方だ。不本意ながら日比谷ダッシュ組の先頭に立てるので、電車にはすぐ乗れる。最もダメなパターンは、改札に入ったら既に日比谷ダッシュの火蓋が切られており、日比谷ダッシュ組の中に混ざってホームに向かう羽目になったときである。ましてや、エスカレーターが止まっていたときなんぞは、電車には乗れないは、乗っても「うぐぅ」とため息混じりに言い放ちたくなる程ぎゅうぎゅう詰め状態だわで、これだけで今日一日の活力が削がれる。 ゆえにこういうことが起こらないように、準急が到着しない時間にあわせて駅に向かっているつもりなのだが、なぜか毎日、私の到着に合わせて準急も到着してしまい、必ず混雑に巻き込まれてしまう。どういうことなのか。東武の嫌がらせであろうか。それとも、東武と私で波動が一致しているのであろうか。はー、どうしよう。 などとつまらんダジャレで今回も終了するところであった。 ところで、あくまでも個人的希望を含んだ要望ということで東武準急をご利用の皆様にご提案したいのが、とりあえず混むのは仕方がないにしても、もう少し余裕を持った通勤をしてはいかがであろうか、というものである。余計なお世話かもしれんが、毎日あんな凄まじい勢いで階段を駆け上がるのは辛くないのだろうか。私は準急にあまり乗ったことがないので、もしかしたらやむを得ず毎日駆け上がらなければならない何らかの理由が準急にはあるのかもしれない。したがって部外者である私はあまり偉そうなことは言えないし、口を出せないのだけれども、5分早く家を出れば毎日階段を駆け上がらなくても済むと思うのだが、いかがなものだろう。 と、このようなことをいつも考えていたのだが、最近ひとつの結論を出すに至った。 なにゆえ、5分早く家を出れば走らなくても済むものを、それを決行せずにわざわざ走るのか・・・ そこで急浮上するのが「東武利用者名雪説」である。 きっと、朝起きれないのである。「朝は眠いよー。」遅刻寸前ギリギリまで寝る。 そして北千住駅では「いっしょうけんめい走るよ。」 走るのが苦にならないのは「走るのが好きだから。」きっと学生の人は陸上部で、会社員の人は元陸上部なんだろう。 妄想は膨らむ。 きっとこの人たちは、昼食には必ずAランチ。帰りには必ずイチゴサンデーを食っているに違いない。 東武北千住駅のコンコースに「雪」と「イチゴ」という重要キーワードが入った「雪苺娘(ゆきいちご)」なるイチゴの入ったお菓子を売っているのもそのためだ。さらに、イチゴジャムパンもなぜかコンコースの焼きそば屋にて販売中である。山盛り紅しょうがは、この焼きそば屋で堪能できよう。 それよりなにより、名雪の制服の色と同じ「あずき色」の帯の入った東武の電車はまさに名雪を象徴しているではないか。 名雪であるのなら、北千住で階段を駆け上がるのは仕方がない。でも、できることであれば私を巻き込まない形でお願いしたい。そう嘆願する私は、はたして自己中なのであろうか。
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