【真夜中の親子】


 疲れてたり、睡眠不足で夜中に車を運転していると、ときどき妙なものを目撃することがある。たいていは目の錯覚なのだが、どう考えても異界との通路が開いてしまったとしか思えないようなものと出会うことも、たまにあるのだ。


 その夜は、ライブとその反省会を兼ねた打ち上げの帰りだった。睡眠不足とライブの疲れとで、早く家に帰って眠りたかった。


 時刻は午前2時を過ぎた頃。雨もそぼ降っていて、車の運転には注意しながら私は急いでいた。


 道は福岡から久留米方面へ向かう、交通量の多い県道。夜中でもそれなりに車は多いが、昼間と違い流れているので、時速70キロぐらいで走れる。


 とある交差点にさしかかった。信号は青だ。すると交差点の横断歩道のところに、なにやら白い物体がヘッドライトに照らされて浮かび上がった。


 白い服を着た親子連れだ。


 近づくうちに、父親と赤ん坊のようだとわかった。路面に溜まった水を跳ねないように減速する。へんだな、やけにふたりとも顔が青黒いぞ。赤ん坊は左手がおかしな具合に伸びているし。父親の服だって、白い着物のようだ。おまけに雨だっていうのに、傘もさしてないじゃないか。


 私は本能的に何かを感じ、目を合わさないようにしてその親子の前を通り過ぎた。顔の表情はわからなかった。顔全体に黒い紗幕がかかっているようで、ただ異様な目つきだけはうかがい知れた。赤ん坊は、まるでタクシーや車を停めるような格好で、左手だけを、くるまった産着からやけに長く突き出していたのだ。


 もちろん私は、車を停めることなく、その親子の前を通り過ぎたのだった。

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