【ある一軒家でのできごと】

やはり大学時代、京都での話。

私の友人のS君が引っ越した。それまで住んでいた古い学生下宿から、街中の2DKの一軒家へである。仲介した不動産屋が遠縁にあたるとかで、築10年も経ってなく、家賃もそんなに高くはないという。部屋は2階。1階はガレージになっていて、不動産屋は他の人にそこを貸していた。

引っ越してしばらく経ったある日のこと。S君はふたつの部屋の間にある鴨居の真ん中あたりに、染みが浮いてきているのを見つけた。なんだか血のようで気味が悪い。日が経つにつれて、染みはだんだんと広がってきている。

気になるので、S君は知合いの医大生に頼んで、その染みのついた壁の一部を削って、調べてもらった。

何日かして、検査の結果が出た。血だという。ただし、人間のものではなく、なにか小動物のものだそうだ。

染みの浮き出ている辺りを調べてみても、小動物の死体などが埋め込まれているような形跡はなかった。目に入るとイヤだから、鴨居にはポスターのパネルを貼って、目隠しにした。

それからまたしばらく経ったある晩のこと。懐かしい友人が訪ねてきて、そのまま泊まっていくことになった。夜更けまで飲んで話し込み、やっと眠りについた時だ。

突然、部屋の中で生木が裂けるような音が鳴り始めた。S君と友人は身体を動かそうと思ったが、どうにも言うことをきいてくれない。金縛りだ。

怪しい音はさらに激しくなる。ふと目をやると、押入れの上の天袋の戸が、誰かが内側から押しているようにするすると開いていくではないか。思わず目をつぶったその瞬間、台所の方で何かが割れるような大きな音が。

その音で動けるようになった二人が飛び起きて、音のした方へ行ってみると、なんとクリスタルガラスでできた大きな灰皿が真っ二つに裂けていたのだ。二人はそのまま、まんじりともせずに朝がくるのを待っていたという。

その友人とは、あいにく私ではないが、鴨居の染みと裂けた灰皿は見せてもらった。それでもS君は、1年近くその部屋に住み、やがて次の物件を紹介してもらって、再び引っ越していった。

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