【地獄を見てきた話】

私の知合いには、かなりの霊能を持つ人が多い。私自身は、単になにかの存在を感じたりちょっと不思議なものが見えたりという程度だが、なぜだか凄い人がけっこう身近にいるのだ。

Mさんもそんな一人だ。本職はイラストレーターなのだが、ちょっとした霊視やお祓いなどは簡単にやってのけるほど。いろいろと驚かされたことも数々で、これはそんな彼女から聞いた話である。

ある時、彼女の伯父さんが事故で亡くなった。かなり大きな事故で、他に亡くなった人も数名出たほど。彼女は伯父さんのことが気になって、ちゃんと成仏できているかと、幽体離脱して冥界を訪ねてみようとしたのだ。

詳しい方法などは当然教えてくれなかったが、部屋を静かで落ち着いた状態にし、ゆっくりと意識を飛ばしていくらしい。彼女は、自身の守護霊の力を借りながら、いろんなところを訪ねていったという。

その事故の原因に責任のある伯父さんは、とある家に半ば幽閉された状態だったという。この家は、霊魂が行き先が決まるまで留められている、言わば霊界における未決囚の留置所のようなところなんだとか。彼は、事故の責任を痛感し後悔しつつ、残してきた家族のことを大変心配していたという。そして、家族へのメーセージを彼女に託したそうだ。

さて、冥界への旅の大きな目的を達したMさんは、守護霊の指導もあって他にも冥界のあちこちを覗いてみることにした。

この冥界というのが、昔から言い伝えられてきたいわゆる地獄のことになるらしい。で、地獄というと血の池だの灼熱だの針の山だのをイメージしてしまうが、それは中世の仏教説話や仏教画(いわゆる地獄絵)からもたらされたもので、現実の地獄はそれこそ日々アップデートされているのだそうな。

たとえばサーキット地獄。

これは暴走族など車を飛ばしていて事故で死んだ人がいるところ。ぐるぐる回るサーキットのコースで、みなトップを目指して走り続ける。しかし、ゴールしたと思ったらもう次の瞬間には再びスタート地点に立たされていて、永遠に走り続けなければならないらしい。

他にもいろいろ興味深い冥界の様子を聞いたのだが、ずいぶん前のことなので、詳しいことは忘れてしまった。

ただ、こういった地獄から抜け出すには、そこに落ちている本人の意識が、なんて自分はバカなことをやってるんだと心から悔い改めないと駄目らしい。また、俗にいう“鬼”などは居なくて、ただ何らかの形で管理する立場の存在はいるらしい。

あと、地獄・冥界とは違うが、この世と冥界の狭間にハマってどこへも行けない人の存在がかなりあったとも聞いた。たとえば自殺した人なんかは、冥界にも行けなくて、自分が死んだ場所で冥界との狭間で、ずっと自分の死の瞬間を繰り返しているのだそうだ。

飛び降りた人はその落ちる場面を、薬を飲んだ人はその苦しむ様を、まるで再現フィルムのように延々と繰り返し、そこから抜け出すことがなかなか出来ないでいるという。その狭間の光景が、時々なにかの拍子に見える人がいたり、写真に写ったりすることも、もちろんあるそうな。

あちらの様子を見てきた彼女曰く、とにかく冥界に留まってしまった人=霊魂は自分のことが客体視できず、ずっと欲望や怒りや恐れや哀しみに凝り固まって抜け出せないでいる。その人たちにとっての地獄とは、実はその人自身の中にあって生み出されているものなので、気づくことさえできれば、地獄からの脱出は簡単なのだが、、、。ということだった。

う〜ん、自分が死んだら、いろんな物事への執着心を捨て去ることができるだろうか。いささか心もとないというのが、今の私の現実のようだ。

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