【提灯にしがみつく猿】
Cさんから聞いた話。
Cさんの従妹のご主人はちょっとした物を集めるのが好きで、どこか旅行へ行くとよくその土地の提灯を買ってくるそうな。
提灯といっても大きな物ではなく、部屋の鴨居に飾れるくらいの小さな物で、どれも20センチくらいの高さの、絵柄や地名が入って土産物屋で売っているようなものだ。
彼がある所へ旅行に行き、いつものようにお土産の提灯を眺めて、どの絵柄にするか迷っていると、だっこちゃん人形のように提灯にしがみついている小猿を見つけたのだそうな。店で飼っているのかと思ったが、どうやら他の人には小猿が見えていないらしい。
彼は霊感の強い人で、歩いていてもよく動物霊なんかを見てしまう体質だそうで、またいつものことだと気づいて、しばらく小猿の様子をうかがっていたが、人に危害を加える気配はなさそうだ。
ただ提灯にしがみついて、周りをキョロキョロ見渡すばかり。そこで、なぜか彼は、その小猿のしがみついている提灯を買い求め、お土産にしてしまったのだ。
自宅に飾っていても、相変わらず小猿はキョロキョロするばかりで、動こうともせず、声を発するわけでもなく、ただただずっと提灯にしがみついていたそうな。
しばらくたったある日のこと。
彼の同僚が転勤することになり、餞別になにかという話になった。するとその同僚は、彼のコレクションの提灯が欲しいと言い出したのだ。
そこで好きなものを選ばせると、なんと同僚は小猿のしがみついた提灯を所望するではないか。
さすがに彼も気が引けたが、特に親しい仲でもなく、むしろ少々気が合わなくてうざったく思っていたので、そのまま小猿がしがみついたその提灯を、同僚にあげてしまったそうな。
彼は
「別に悪さもせんし、ああ、おるなというくらいやったし、あいつ(同僚)あんまり好きじゃなかったけん」
「今でもあいつの部屋におると思うよ」
とあっけらかんと語ったそうな。