【小さい人を見た3つの話】
その1:道でばったり
Y君から聞いた話。
彼が生まれ育ったのは、九州の田舎町のさらに陸の孤島と呼ばれていた所で、彼が小学校に上がる頃になってようやくバスが通るようになったという。それでも日に3本ほどなので、彼の家から数キロ離れた小学校や、同じく数キロ離れた駄菓子屋兼よろず屋に行くときは、たいて歩くか、乗れるようになってからは自転車で通っていた。
ある日彼が、その舗装されてなく埃っぽい田舎道を自転車に乗って遊びに行っていると、道の向こうからおじいさんがこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
陽射しを浴びて辺りにはゆらゆらと陽炎が立ち、道は曲がりくねって背の高い雑草に見え隠れしながら、おじいさんは近づいてくる。
(見たことのないおじいさんだ)
Y君はゆっくりと自転車を漕いでいく。最初は随分遠くにいると見えたのに、思いのほかおじいさんは近くに来ているようだ。
土手で行く手が隠れた曲がり角を曲がった。
いた。
目の前におじいさんはいた。
Y君の自転車の前輪に、今にも轢かれそうになって、おじいさんはなにやら文句を言っていた。
Y君は心底驚いた。おじいさんを轢きそうになったことではない。それ以上に、おじいさんの背の丈が24インチの自転車の車輪よりも小さかったことにだ。
おじいさんはどこの言葉か分からない喋り口で、Y君を罵っているようだ。Y君は慌てて、ごめんなさいと大声で叫びながら、絶対後ろを振り向かないようにして猛スピードで自転車を漕いで逃げたという。
その2:影から声が
誰に聞いたか忘れたが、ある人が家庭に心配事があり、氏神様にあたる神社にお百度参りをしていたそうだ。
毎朝自宅で水垢離をし、その足でそう遠くない氏神様に通う。そろそろ百日目も近づいたある日のこと。
入口の鳥居と神殿の間の参道を何度も行き来していると、なにやらぶつぶつ言う声が聞こえる。
はて、ここには神主さんはいないし、こんな朝早くから他の氏子が参ってきている様子もない。空耳だろうとお百度を続ける。しかし、ぶつぶつ言う声はまだ続いている。
どうにも気になって足を止め、声のする方向を目で探していると、なんと鳥居の上に昔話に出てくるような白っぽい衣装を着た髭面の小男が座っているではないか。
驚いて動けないでいると、その小男は
「わかったわかった、お前の願いは聞き届けてやるから」
と言って消えていったそうだ。
その後、その人の心配事が解決したかどうかは聞き漏らしてしまった。
その3:木に鈴なり
Jちゃんに聞いた話。
ある年の12月、クリスマスも近づいたある晩のこと、Jちゃんは大学の友人たちと郊外のカフェ・レストランへ食事に出かけた。
楽しく会話も弾み、店の閉店時間も迫ってきたので、みんなは店を出て駐車場に向かっていた。
中のひとりが、駐車場の傍らの大きな木を見ながら
「この店、毎年この時期にはこの木に飾り付けしてクリスマスツリーにするのに、今年はまだなのね」
と言った。
Jちゃんは、あれ、あんなにキラキラ輝いているのに、飾り付けがまだだなんておかしなことをいう子だと思いながら、もう一度その木をはっきり見てみた。
なんとその木の枝という枝には、綺麗な輝く半透明の羽根と衣装を着た数10センチくらいの背格好の女性たちが、鈴なりになって腰掛けているではないか。
Jちゃんはあまりのことに立ち尽くしてしまったが、友人たちは誰も気づかずに車に乗り込み、早く来いとJちゃんを呼ぶ。
誰にもこのことを言えなかったJちゃんは、次の夜にもBFを誘ってその店に行ってみたが、今度はなにも見えなかったという。
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