【インスタントラーメン】
山好きのKさんが学生だったころの話。
登山部には所属していなかったが、一年に何回も信州や中国地方の山に登っていたKさんが、珍しく学生アパートの自室にいた。
季節はようやく冬が終わり、春へ向かおうという頃。
同じ山好きの友人たちはみな、どこかの山へ行っていたので、一人自室で食事をし、軽く飲んでその夜は眠りについた。
真夜中を少し過ぎたあたりだったという。
どこか人の気配がするので目が醒めたKさんは、喉の乾きを覚えて起き上がり流しへ立った。
すると、部屋の中に友人のB君がいるではないか。
B、どうしたと聞くと、腹が減ったのでラーメンでも喰わせろという。
Kさんは食器棚からカップ麺を一個出してやり、コンロで湯を沸かし、注いでやった。
俺は眠いから寝るけど、勝手に喰って好きにしてくれというと、B君は頷いた。
次の日の朝、大家さんの激しいノックの音でKさんは起された。
アパートに緊急電話が掛かっているというのだ。
寝ぼけ眼で電話口に出ると、昨夜、B君が山で遭難したという。
え、今朝がた部屋に現れたのにあれは夢だったか、そういえば山に行くと言ってたなあと訝りながら自室に戻ると、食べ終わったインスタントラーメンのカップがきちんと流しに置かれていたという。