炬燵猫的日常
医学翻訳者炬燵猫、すなわち蔵主の日常です。
1日の大半は翻訳その他のためにパソコンの前に座っていますが、
一応、妻とか母親とか飼い主という役も割り付けられているので、
翻訳と関係のない日常の話も混じります。
先入れ先出し方式ですので、NEXTで過去の駄文に進みます。
更新は適宜。ウチナーグチで言えばテーゲーです、多分。


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【Mさんと冠婚葬祭】

 Mさんは蔵主とその相方の大学の先輩である。10数年にわたり石垣島で牧場の管理をしていたが、牧場が閉鎖されて現在無職である。牧場近くに6000坪の土地を買い(坪単価1500円だったらしい)、そこに夫婦だけで家を建てるそうだ。思わず3匹の子豚の家を想像しそれはやめてくれと頼んだが、多分、やめないだろう。

 さて、このMさん、常識をいうものを持たない。従って、やることなすことすべてが変である。特に冠婚葬祭では変の本領発揮である。

 蔵主の結婚式のときは、Mさんは靴を忘れてきた。新郎である相方が靴を貸して事なきを得たが、その靴を何の疑問も持たずに持って帰り、Mさん自身の結婚式ではいていた。数年後に石垣島を訪ねたときには、弟さんがその靴をはいていた。靴も冥利に尽きるというものである。

 Mさんの後輩である友人Nの結婚式のときには、祝儀袋の中身を忘れ、新郎であるNに借りている。返したかどうかは定かではない。
 
 恩師K先生のご葬儀のときには、新幹線の洗面台に礼服の上着を載せたところ、センサーが働いて上着が洗剤だらけに。仕方がないので水洗いして、べちゃべちゃのまま着用して出席。時は冬である。

 そして先日のT先生告別式のときには、シャツと靴下を忘れてきた。アンダーウェアの上にネクタイをし、これでおかしくないよねー、などと言う。しかし、何か疑問を感じたらしく、鏡を見てやはりおかしいと気付いたらしい(それだけでも進歩である)。結局、
友人Nがシャツと靴下を貸し、どうせ戻ってこないだろうと話していたところ、式後の食事会の席上においていきなりシャツと靴下を脱いでNに返す。汚くなっちゃったけどねー、と言われてシャツを見れば、ほんの数時間着用しただけなのに遠目でもはっきりとわかる汚れの首輪。というより、汚れが垂れている。シャワーあびるけど、体洗わないもんねー、だそうだ。Nはあきれて、こんなもんいらんわ、と投げ返す。すかさずMさんの幼い娘さんがシャツをはおって飛び回る。

 毎回、どのような落ちがつくか予想がつかない。これだけ非常識を繰り返しても眉を顰められないのはMさんの人柄か、つきあう側の諦めか。Mさんは一生素のままのMさんである。



 

【シャコーとかジャビーとか】

 「ちょっとシャコー行ってくるわ」「え? ああ、自動車学校か」とか、「自動車学校から電話あったよ」「シャハイだろ」「えーと、車の手配?」とか、「今日はハンカツだから」「ああ、班活動」(高専では部活動のことを班活動と言う)という、日本語日本語間自己通訳は、息子との会話では日常茶飯事である。

 先日は「俺、ジャビーの大学に行くわ、就職いいみたいやし」と言われた。これはわからなかった。技術者ナンタラカンタラと言われたので調べてみたら、日本技術者教育認定機構(JABEE : Japan Accreditation Board for Engineering Education)とあった。この機構の認定を受けた教育プログラムのある大学に行きたいと、まあ、そういうことらしい。工業系の大学や高専がこの種のプログラムに積極的に取り組んでいるようである。

 英会話学校に通い、TOEICの準備も始めた息子。将来はとりあえず外資企業に入り、転職を繰り返して、最終的には海外で暮らしたいそうだ。親に似て集団行動が苦手で頑固な彼にとっては、そういう生き方のほうがいいのかもしれない。着々と巣立ちの準備をしている。

 昨日はネクタイの結び方を教えてやった。あと、何を教えられるだろうか。


 

【ペーパー翻訳者】

 息子高専生春休中が自動車学校に通っている。恐れていた一言、「車はどうなるんだ」がとうとう出た。買う余裕はないとつっぱねると、それではペーパードライバーになってしまうと文句を言うにとどまらず、あろうことか「お母さんはペーパー翻訳者だし」などととんでもない発言をした。こればかりはなけなしのプライドが許さない。どういうことだと問い詰めると、翻訳者のくせに英会話が下手糞だからだと言う。息子高専生春休中は英語でのコミュニケーションが実に上手で、本人もそれを自負しているのである。

 翻訳者は訳せりゃいいんだ、流暢に話せなくても通じりゃいいんだ、だいたい翻訳者には資格なんぞいらないからペーパーもへったくれもないんだとまくしたてたら、「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」とへらへら逃げた。

 まったくもって腹立たしいが、図星である。しかし、日本語で話すもの苦手なのだから、こればかりはしょうがない。もちろん言い訳である。いつか息子を超えてやる。とうとう親子逆転現象が生じてしまった。喜ぶべきなのであろうが、いかんせん、負けん気だけは無駄に健在である。

 誓って言うが、蔵主はプロの翻訳者であり、ペーパー水質関係第1種公害防止管理者である。


 

【無愛想同士】

 蔵主のかかりつけ医である高井先生(仮名)はおそらく40代後半、腹は出ているが優男である。匙加減は絶妙で、無駄な投薬はせず、指示も的確である。問診は精密をきわめ、カルテは蚤のごとく小さな字で埋め尽くされる。誠実である。整体や鍼は非科学的なので信じないと言われた時には、思わずこちらの頬が緩んでしまったほどの正直者である。モダンで気の利いた造りのクリニックで、点滴しながらケーブルTVだって見せてもらえる。看護師さんも受付の人も大変に気持ちが良い。なんといっても待ち時間が少ないので助かるが、それはつまり...流行っていないのである。

 なぜ流行らないか。それは、おそらく高井先生(仮名)の言葉使いがきわめてぞんざいなためだと推測される。「どうしましたか」は「なんや?」。「〜しましたか」は「〜したんか?」。これを仏頂面で吐き捨てるようにおっしゃる。表情の変化を見たことがない。これでは患者がつかないわなあと思う。

 蔵主が高井先生(仮名)に初めて診てもらった時は、食べ物がのどを通らず、飢餓状態でへろへろであった。その後、いろいろな合併症や随伴症を少しずつ克服していく過程をずっと見てもらっていた。その間、優しい言葉など一切なかったが、全身症状をじっくりと観察し、毎回詳しく問診するという治療姿勢を信頼するに至った。職人医師である。従って、蔵主との相性はかなり良い。

 それにしても、もう少し言葉を柔らかくするだけでずっと繁盛すると思うんですんがね、高井先生(仮名)。すでに常連になっている患者にとっては、サブイボものかもしれませんが。


 

【生活時間】

 蔵主は完全な昼型である。朝7時前に起き、9時始業、5時終業、晩酌終わったらさっさと寝床に入る、が基本である。家族の生活に合わせているということもあるが、この時間に生活していないとゴミを出せない。夜明け前のゴミ出しはご法度で、きっかり朝9時に収集される。月曜は隔週で燃やさないゴミとプラスチックゴミ、火曜と金曜が燃やすゴミ、水曜は資源ゴミ(週によって種類が違う)で、各家庭に割り付けられた固有の番号を町名と共に半透明袋に書かなければならない。従って、ルール違反した家庭はすぐバレる。ルール違反のため回収されなかったゴミ袋の数を当番がカウントして町別、月別に集計し、回覧される。これがエスカレートすれば個人名が発表され、村八分という可能性もある。住民基本台帳よりも恐ろしいではないか。

 ゴミ出しのない木曜は生協の配達があるため、この日も寝ていられない。宅急便も頻繁に来る。そもそも、翻訳会社の営業時間が昼間であるため、寝ていたら仕事を取りそこなうしトラブルにも対応できない。

 翻訳者には夜型の人も多いが、そのあたりをどうやってクリアしているのだろうか。家族がフォローしてくれるのだろうか。ゴミを夜出す地域なのだろうか。ゴミ出しが生活パターンを決めるというのも夢のない話ではあるが、これが現実である。昼過ぎに起き、ゆっくり風呂につかり、そろそろとエンジンをかけ、夜中、コーヒーをすすりながら仕事をする生活などできやしないのである。従って、生活パターンだけは健康的である。他の面がいたって不健康であるため、厳しいゴミ出しルールに感謝せねばなるまい、と思うことにする。



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