翻訳一語一会:炬燵猫的検索術
翻訳蔵用語集の付録にしていた「翻訳一語一会」を独立させ、訳語決定に至った経緯を記録することにしました。Googleでの検索が主体となるので副題を付けました。

検索の説明は、Googleの基本的な使用法を理解していることを前提とします。
検索のキーワードを【 】内に示します。

なお、Googleの検索機能は適宜変更されますので、同じキーワードを使用しても同じ結果が出るとは限りません。検索を実施した日付を併記しておきました。

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●"ad hoc"
特別の、臨時の、その場限りの、といった意味合いであるが、臨機応変に、という意味もある。ad hoc supportは「臨機応変の支援」であるが、要は「柔軟な支援」ということだろう。


●"food-maintained behavior"
アカゲザルなどを用いた動物実験で、サルにカテーテルを留置し、レバーを押せばコカインが注入されること(コカイン自己投与)を学習させる。このようなサルに、たとえばニコチンを投与し、コカイン自己投与(レバー押し行動)に影響が出るか調べる場合、その影響をeffects on cocaine-maintained behaviorと言う。レバーを押せば餌が出ることを学習させたサルについて同様の影響を調べる場合、その影響をeffects on food-maintained behaviorという。と、ここまで何とか英文サイトの内容で理解できた。

「餌の自己投与」とは言えないため、「摂餌レバー押し行動」としたが、満足できる訳ではない。


 

●"plus disease"
網膜症で見られる所見。retinopathy with plus diseaseなどと表現される。内容はretinal vessel dilation and tortosityということ。定訳は見当たらず、「血管の拡張・屈折・蛇行(plus disease)」という形で処理した。


●"inhalants"
コカイン、マリファナなどと同列でこの単語が出てきた場合、いわゆるシンナー遊びに使用される揮発性溶媒を指す。トルエン等が含まれる。volatile inhalantsと表記される場合もあるが、単にinhalantsと言うほうが多いようだ。


●"local"
簡単なようで要注意の単語。localの反対語が何であるのか確認する必要がある。これまでの知識の範囲内でまとめてみた。
* systematicあるいはgeneralized(全身)に対するlocalは「局所」の意。これは間違う可能性はほとんどなし。
* internationalあるいはglobalに対するlocalは「それぞれの国の」「国内の」という意味。訳語は臨機応変に考える必要があり、訳出しない場合もある。たとえば文脈によってはlocal water supply codeは単に「水道法」となる。
* 自国を中心とする場合には、自国がcenterとなるのでlocalは「外国」となる。従って、local regulationは「該当国の規則」、local managementは「現地法人の経営陣」の意。
* 国内だけの話では、centralないしnationalに対するlocalは「地方」となる。local governmentは「(地方)自治体」。
* 治験の場合、central(中央ラボなど)に対するlocalには「各試験施設」という意味合いがある。local SOPは「施設SOP(標準操作手順)」。
* wholeに対するlocalは、「部分的」の意味。local ventilationは「部分的」という意味で「局所換気」となる。
* corporate(全社)に対するlocalは「部門」。たとえば、管理体制を説明する場合や苦情の提出先を説明する場合などに、corporate level と local levelが対比される。


●"abluminal/subluminal"
この2語は、ステント留置部位の血管の形態計測を説明する箇所にあった。

【abluminal】の日本語サイト検索では有用な情報なし。全サイト検索で、"luminal and abluminal"という使い方が多いことがわかる。ab=away fromであるから、管腔側とその反対ということはわかるが、用語がわからない。

【管腔側】、【腔側】で検索し「反管腔側」という語を見つけるが、一組のauthersによるものだけであった。そこで【腔側と】で検索し、「管腔側と管外側」という表現を見つける。【"管外側" 血管】で検索するが、確証は得られず。

【subluminal】で検索をかけると、superluminal(超光速)と共に「亜光速」の意味で使われていることが圧倒的に多いことがわかる。luminal<lumenには"light"と"opening"の二つの意味があるため、ややこしい。

【subluminal blood-vessel】で、次の情報を得た。
"various endometrial compartments (including luminal and glandular epithelium; perivascular, periglandular or subluminal epithelial stroma; intravascular or tissue breakdown sites)"
(さまざまな内膜構成要素[管腔上皮、腺上皮、血管周囲結合組織、腺周囲結合組織、subluminal epithelial stroma、血管内または組織の崩壊部位])
【epithelial-stroma 】で検索し、"sub epithelial stroma"という言葉を見つける。これは「上皮下結合組織」であることを確認。

ここで、【subluminal subepithelial】で検索し、この2語の違いを調べた。
"subluminal basement membrane"と"subepithelial basement membrane"が同義(上皮下基底膜)で用いられている例があり、また "Transepithelial hypertonic gradients in the subluminal to luminal direction" (管腔側から上皮をはさんでsubluminal側への高張勾配)という表現を見つけた。従って、subluminalもsubepithelialも「上皮下」であり、前者は方向を、後者は位置を表すものと解釈した。

さて、以上の情報から選択した最終的な訳語は、ステント(のストラット)の「外側面(abluminal aspect)」と「内側面(subluminal aspect)」である。情報を図にまとめた上で、形態計測上これが最も誤解を生まない訳語だと考えた。明確な裏付けはないので、フィードバックで追加情報が得られれば、追記する予定。
(検索日:2004年6月28日)


●"Stock Exchange Announcement"
証券取引所公示とも株式取引通知とも解釈できるが、治験に関する新データが得られたことを製薬会社が投資家に知らせる文書の題名であったため、前者は却下、後者もピンとこない。

全文を訳し終えてもこの語だけ納得がいかない。一晩寝かせた後、ふと「投資家の皆様へ」という訳語を思いつく。この語をGoogleで検索し、内容に問題がなかったので決定。完全な意訳である。
(検索日:2004年6月26日)


●"Ruth"
Adverse event which may be secondary to complicated angioplasty procedure Ruth post procedure likely from contract allergy という文脈。まず、Ruthが手技を指すのか何を指すのかさっぱりわからない。【angioplasty Ruth】で検索しても、Ruthという人名しか出てこない。Ruth法というものがあるのかと思い、【Ruth-procedure】、【Ruth-method】などて検索するが、情報なし。

もしかすると固有名詞ではなく略語ではないかと思いつき、【Ruth abbreviations】で検索。略語の検索ではabbreviationsをキーワードに追加するとフルスペルがわかる可能性が高い。

rutheniumの略語としてRuthが使用されることがあるとわかる。文脈からおそらく造影剤だろうと見当をつけ、【ルテニウム 造影剤】で検索し確認。上記の文章自体わかりにくいが、「合併症は、血管形成手技の合併症、おそらくは手技後のルテニウム造影剤アレルギーにより生じた可能性がある」とした。
(検索日:2004年6月15日)


●"MEM's caps"
文脈から、治験において退院時に患者に半年分の薬剤を渡す際に使用される容器のキャップで、容器を開けた回数をモニターできるものだと推測した。

【MEM's-cap】ないし【MEM's-caps】では有用な情報なし。
【MEM-caps】で以下の情報が得られる。

"Glaxo has looked at patients who stopped and started their abacavir (based on studies and using memcaps) and has not seen any cases of late hypersensitivity." (Glaxoは、abacavirの服用を中断した後に開始した患者数を、memcapを使用した試験に基づいて評価しているが、遅発性過敏症が生じた症例は認められていない。)
"For example, confirmatory study of medication nonadherence might assess pill counts or
MEMcaps data over time. " (たとえば、服用遵守確認試験では、長期間にわたる錠剤使用数かMEMcapのデータについて評価が行われることがある。)

訳語は確認できなかったが、上記の推測を支持する情報と思われる。「MEMキャップ」と訳すことにした。
(検索日:2004年6月15日)



●"exsanguination"
辞書には「失血、瀉血、放出、全採血」とあるが、「初期の失血(blood loss)に起因する凝固障害(coagulopathy)のために、治療を実施したにもかかわらずexsanguinationに至る」という場合、blood lossとexsanguinationを区別しなければならない。

【exsanguination blood-loss】で全サイト検索すると、以下の情報が得られる。
"exsanguination (massive blood loss)"
従って、「大量失血」と訳せる。

【大量失血 外傷】で日本語サイト検索して確認した上で、この訳語に決定。
(検索日:2004年6月13日)


●"clinical burden"
【clinical-burden】では日本語サイトのヒットなし。
【burden 臨床】で検索。以下の情報が得られる。
「(6)Burden of illness study (BOI study) の実施
欧米ではしばしば薬剤経済学的分析と並行してBurden of illness study (BOI study) が実施されます。薬剤経済学的分析はある疾病に対する治療プログラムの費用対効果を明らかにしますが、疾病自体の社会的インパクトを定性的・定量的に明らかにすることにより、その治療プログラムの相対的価値を高めることが期待できるからです。弊社では最適なキーワードによるデータベース検索により最新の疫学情報を収集し、現在その疾病が持つ社会的な重要性を明らかにします。」
この「社会的インパクト」は直訳すればsocial impactであるが、social burdenとも考えられる。

また、次の情報も得られた。
「わが国におけるDisease Burden(発症率、罹病率、致命率、死亡者数)が大きい疾病・病態に関するものであること。 」

そこで【disease-burden】で日本語サイト検索。以下の情報が得られる。
「予防接種対象疾患の感染症として人に与える影響(disease burden)に関する調査研究、 及び今後の我が国における予防接種の有用性に関する総合的研究を行っている。」
「わが国の疾病負荷(disease burden)」「疾患の負担―Disease burden 」

以上のことから、clinical burdenは意味としては「臨床的な影響、インパクト」であり、訳語としては臨床的負荷か臨床的負担を使えると考えた。確認のために【臨床的負荷】と【臨床的負担】で検索するが、有用な情報なし。次に【臨床 社会的負荷】で検索し、以下の情報を得る。 
「COPDの臨床と社会的負荷(Clinical and Social Burden of COPD)」

これに従って、「臨床的負荷」を訳語として選択した。  
(検索日:2004年6月11日)

●jargons?
医薬品製造工程の説明で、jargonと思われる用語にいくつか遭遇。以下に示した"bottle factor"もそのひとつであろう。辞書でも検索でも調べ様がなく、文脈から推定した用語を挙げてみる。

heel:この一語だけがポンとあり、文中には説明なし。ML(mother liquor、母液)、rework(再生液)、oversize(↓下記参照)と並べてリストされていた。辞書的には「尾部, 末端, 下端」ということになり、調製タンクの底液であると思われる。塔底液という用語も散見。

Be':Baume(ボーメ度)。液の比重を表す。なぜこういう略し方になるのかわからない。

oversize:顆粒のふるい分け(shifting)工程で粒径が大きいためにロットに含められなかったもの。次のバッチで母液に再溶解して再生する。「網上」という訳語もあり、意味はその通りであるが、これは採鉱用語なのでここで使うには適さないと考えた。「過大粒」と訳したが、疑問が残る。

salt:酸塩基反応でリン酸塩を生成する工程で、ろ過するまではsaltの形成を防止し、その後冷却してsaltを形成させ(salting)、遠心分離・乾燥して造粒する。従って、「塩」ではない。「固形物」と訳した。

part drum:1バッチで1ロットを構成するとき、複数のバッチを混合しないようにpart drumは作業区域外に運び出さなければならない。一定重量ごとに包装する際に半端となった量の製品を入れたドラムであると思われる。「ロット外ドラム」と訳した。これについても疑問が残る。

vac-u-max:もともとVac-U-Maxという商標であるが、小文字で記載された場合、吸引式空気輸送装置一般を指しているものと思われる。staplerをホッチキスと言うようなものか。

silver DDC method:ジエチルジチオカルバミン酸銀法。ヒ素試験法のひとつであるが、日本語では銀DDCないしDDC銀という略し方は少なくとも一般的ではないようである。


●"convolutely wound"
辞書では「回旋状に曲げた」「巻き込んで曲げた」という意味しか出てこない。
これはファイバードラムの側面の説明にあるもので、上記の表現ではピンとこない。

【convolutely-wound】で検索すると、かなりよく使われている表現であることがわかる。感覚的に最もわかりやすかったのは、"Current Laminated Tubing is made of thermosetting resins (phenolic, epoxy, silicone or melamine) combined with various base materials such as paper, cotton cloth or glass cloth. Convolutely wound under high pressure and heat, the resulting product is a dense homogeneous material that can be machined, polished, painted and printed on. ("http://www.currentcomposites.com/html/laminated_tubing.html)という表現。[現在では、積層管は熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂)を紙、綿布、ガラスクロス等の種々のベース材と組み合わせて作られる。高圧・高熱下でcouvolutely woundして作られた製品は密で均質であり、機械加工、研磨、塗装、印刷を行える。]

この表現から考えて、平たい材料を「丸く曲げて」または「丸くたわめて」、円形の製品(管やドラム)に成形することであると考えた。日本の「曲げ物」にもこの表現が使えそうである。
(検索日:2004 年6月6日)


●"bottle factor"
【bottle-factor】で検索しても、有用な情報なし。文脈から考えることにする。
"Every volume must be multiplied by the bottlw factor to convert it to mL of 1.0 N"という文なので、意味は「(滴定試験で得られた)溶液の量(mL)を(規定度が正確に)1.0Nである溶液の量(mL)に換算するには、bottle factorを掛けなければならない」ということ。

ということは、「規定度係数」を意味することになる。規定度係数は通常"normality factor"であり、"bottle factor"はおそらくjargonではないかと思われる。文章の中で使われていたから良かったものの、項目としてこの用語だけ出てきたら見当がつかなかったと思う。
(検索日:2004年6月5日)


 

●"clean databese"
臨床試験における提出物のひとつとしてリストされていたもの。日本語検索では、「データベースを空にする」の意味しか出てこない。空のデータベースを提出しても意味がない。

そこで、【clean-database-is】で全サイトを検索してみる。用語の定義を知りたい時には、その用語の後に【-is】や【-is-defined-as】を付けて検索すると、有用な情報が得られることがある。その結果、healthy databese、well-performing database、efficient databeseなどが対応することがわかった。つまり、すぐに解析できる無駄のない有効なデータベースということだと目星をつける。

決定的な情報は、The end deliverable is a "clean database" that will be analyzed according to protocol and the statistical analysis plan. A "clean databese" will allow conclusions and interpretations similar to those derived from an error-free database. In other words: a "clean databese" is a correct representation of the investigator's observations and of the actual treatment of subjects in the clinical trial and ensure consistency, accuracy and completeness. というもの。
(最終提出物は、プロトコールと統計解析計画に従って解析される"clean database"である。"clean database"を使用すれば、エラーのないデータベースから導かれるものと同等の結論や解釈が得られる。言い換えれば、"clean database"とは、臨床試験における治験担当医師の所見と被験者に対して実際に行われた治療を適正に表し、一貫性があり正確で漏れのないデータを確実に提供するものである。)これは、Temple University School of Pharmacyのサイトで得られた。(http://www.temple.edu/pharmacy_QARA/genyn__2_Whatis_cdmanagement.pdf)

内容はわかったものの、訳語は特定できなかった。とりあえず「クリーンデータベース」と訳し、訳注として上記内容と、「クリーンアップしたデータベース」「浄化データベース」等の代替訳語候補を挙げておいた。(検索日:2004年6月4日)


●"vein grafts for LDA, circumflex, RCA and R"
「LDA(左前下行枝)、回旋枝、RCA(右冠動脈)およびRへの静脈グラフト」であるが、この最後の"R"がわからない。一字の略語というのは検索が非常に困難。
 
まず、【RCA R 冠動脈】で検索するが有用な情報なし。次に【RCA-and-R coronary】 で検索すると"Revascularization of LAD, right coronary artery(RCA) and R.marg."という文章が見つかる。文脈から見てR=R.marg.と考えるのが適当と判断し、次に【R-marg】で検索。日本語では関連サイトはヒットせず、全サイトではヒット数が多すぎる。

marg.はおそらくmarginal arteryであろうと見当をつけ、【marginal-artery】で日本語検索。有用な情報が得られないのでarteryをbranchに変え【marginal-branch】で日本語検索。「辺縁枝」であることを確認し、次に【右辺縁枝】で日本語検索するがヒットなし。

そこでもう一度英語に戻って【right-marginal-branch】で日本語検索すると「Ramus marginalis dexter、右縁枝(鋭角(縁)枝)、Right marginal branch (Acute marginal branch , AM)」とある。確認のため【右縁枝】で検索するが、一般に「鋭縁枝」が使用されていることがわかる。【鋭縁枝 冠動脈】で検索し、各サイトの内容を確認した上で「鋭縁枝」に決定。
(検索日:2004年5月26日)


●lows
こんな基本的な語でつまずくこともある。diabetes関連のパワーポイント文書であったが、箇条書きでいきなりこの語が出てきたので、見当がつかなかった。読み進むにつれ、治療中の糖尿病患者においてその発生を予防すべき状態であるということがわかり、ならば低血糖ではないか、と気付いた。"hypoglycemia, or blood sugar lows" という表現をGoogle検索で見つけて一件落着。

●definitive care
救急医療においてtransfer to definitive careと言えば、医療機関への引渡しを意味する。
definitive careとは、救急患者に必要なすべての治療を行うこと、あるいはその治療を提供する施設(施設のネットワーク)を指す。また、患者が転院した場合、最終的に退院する病院を指してdefinitive careと言う場合もある。

「『重症だから直近病院対応』 ではなく、『今の傷病者の受傷形態や重傷度では搬送時間がかかっても definitive care のできる病院に運ぶべき』 という判断」(http://www1.odn.ne.jp/~cbh92600/kyukyuseminar12.html)という表現が、最もわかりやすいと思う。

「決定的な治療」(http://www.geocities.co.jp/Beautycare/1690/archive/thoracic.txt)、「一定レベルの救命治療」(http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/uts/j3uts1.html)という訳も見受けられたが、定訳は見当たらず、これらの訳語では納得できなかった。

結局、「このシステムは、『北米型ER』であり、その本質はtriageにあり、助かる命を助けるために、最終治療ができる医療機関へ、最短最速に運ぶ、21世紀型救急を目的とし、ER型救急医療は、最適で、最終の医療を、最速に判断して実施されるのであります」(http://www.kondo-atsuki.com/news.htm)との記述に従って「最終治療」という訳語を使用することにした。time to definitive careないしdelay between initial injury and defenitive managementという表現は、「受傷から最終治療開始までの時間」と訳した。

なお、triageとは救急患者のpriorityを判断することで、トリアージと表記される。血友病患者が出血のためERを受診する際にtriageが低く判断されるという問題について訳したことがある。

●damage control surgery
外傷救急医療におけるdamage controlという用語は、海軍用語からの転用である(http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/99/jbisi.htm#m2)。「応急手術」という訳語では、「止血による生命維持を第一義にし,機能修復は二期的手術に託すという考え方」が反映されないと思われる。原語表記とするか、「ダメージコントロール手術」とカタカナにしたほうが誤解を招かないと考えた。

●hematology
血液学のことであるが、hematology specialistと言えば血液(疾患)専門医となる。hematologyだけで血液疾患を指すことがあると思われる。

●matoriska
matryoshkaと同義。ロシアの入れ子人形。matoriska websiteと言えば、入れ子構造のウェブサイトのこと。

●tenase complex
第X因子を活性化する複合体(活性型第IX因子と活性型第VIII因子の複合体)。Xase(X=ten)。

●hemostatic coverage
手術中などに止血を目的として行われる支援療法を指すと思われる。

●procode
FDAの製品コード。ProCode.

●six knots
縫合糸の結び方。おそらく、一端を引っ張ると容易に解ける6通りのexploding knotsことだと思われるが、確認に至らず。

●growth factor
吻合の際に縫合糸に "growth factor" を残すという表現があった。「成長因子」では意味が通らない。おそらく、吻合後の組織増殖を見込んで縫合糸に「ゆとり」を残すという意味であると思われるが、確認は取れていない。

●midperiphery
中心視野と周辺視野の中間域(not in the middle or the periphery but half way between)。
定訳は見当たらない。

●eccentric fixation
中心外固視、偏心固視、すなわち周辺視。

●achromatic stimuli
輝度刺激。色刺激(chromatic stimuli)に対抗する概念。

●protan defect/deutan defect
protan defect = red perception difficulty (赤色覚障害)
deutan defect = green perception difficulty(緑色覚障害)

●disk shedding
網膜のrod outer segment disk(杆体細胞外節内の円板)には感光色素が含まれている。杆体は暗所で機能する光受容体細胞。光が照射されると、杆体外節の先端から円板が離脱する(disk shedding)。それに対応して外節の基部に円板が合成され、10日ほどで外節円板全体が再生される。

●stent jail
冠動脈の分岐部にステントを留置(stenting)することにより、側枝にアクセスできななり、側枝に対する intervention を行えなくなった状態。今のところ定訳はないようで、原語表記されている。

Bifurcation stenoses offer significant challenge because of concern over sidebranch occlusion from stent jail during PCI of the parent vessel.

●Jeff-of-all-trades
"Jack-of-all-trades" の変形。「何でも屋」。Amazon com. の CEO である Jeff Bezos 氏の名を取って、同社の何でも屋ぶりを揶揄(badmouth)した文章で出会った。


●A&O X4/X3/X2/X1
"A&O" は alert and oriented の略。
意識のある患者の認知度(人、場所、時間、日付)。

A&O x4:alert and oriented to person place time and date
A&O x3:alert and oriented to person place and date
A&O x2:alert and oriented to person and place
A&O x1:can only tell you their name


●coding
カルテ等に coding と記載されている場合、以下のような病院の緊急コードが発令されたことを示すことがある。

Code Red:Fire or smoke discovered
Code Orange:Evacuation procedure when instructed to do so
Code Grey:Patient violence
Code Blue:Cardiac arrest / Medical emergency
Code Yellow:Internal emergency e.g. explosion/gas leak/trapped person/chemical spill
Code Brown:External emergency
Code Purple:Bomb threat
Code Black:Police assistance
Code Green:Correctional Health, Prison break- Police assistance

追記:状況によっては"Call code"や"Code was called" という表現でだけでコードブルーが出されたとを意味するようです。
意外にも、糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」の過去ログで見つけました。
http://www.1101.com/philadelphia/1999-05-16.html
http://www.1101.com/philadelphia/1999-05-23.html


●papoose
"papoose" は Native American baby or small child のことであり、"papoose board" といえば papoose をくくりつけて背負う板のことを指すが、"papoose the child" というように動詞として使用される例がある。病院で用いられる場合、抑制器具 Papoose Board で拘束することを意味する。Papoose Board は Olympic Medical Corp.の製品で、患者の体に巻き付けて処置中に患者が急に動かないようにするもの。

We usually do allow the parent to remain in the room throughout the procedure to reassure their child, and we will papoose children up to the age of about 4 or 5 years of age. After that, it may not be necessary to papoose the child, but in all cases, we require an assistant to restrain the child at the arms, and a second assistant who will restrain the child at the head.
(http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/02/transcripts/3875T2.htm)



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