ですからこれ以後イギリスの絵とか文学、あるいは文化一般にこのピクチャレスクという言葉がしょっちゅう使われるようになります。皆さんもときどきそういう言葉に出くわすことがあると思いますが、間違ってもこのピクチャレスクを、いわゆる絵のようなとか絵画的という、ありきたりの意味にはおとりにならないでいただきたい。私たちが日本語で絵のようなとか絵画的なとか、そういうふうな意味で感じているのとはまるで違う、むしろ正反対なものですね。(25頁)
ゴシック建築というのは十八世紀の人にとっては、廃墟を意味したわけですね。その廃墟がすなわちランドスケープ、つまり美しい自然の風景というふうになってくる。そういう結びつきから、このゴシック建築に対する興味、あるいはそういう廃墟に対する興味、そういうものを美しいと考える美意識が十八世紀のイギリスのなかに強く育ってきたのです。当時のイギリス人にとっての美とか崇高とかいったものの持つ意味合いがわかってくると、自宅として時代錯誤のゴシック建築の建物を作ったホレス・ウォルポールの動機が少しは分かるような気がしてくる。なるほどねえ。彼(を含むごく一部の人たち)が妙な好みの持ち主だったというわけじゃなかったのか。(58頁)
ゴシック小説を漠然と「西洋の怪談みたいなもの」と感じていたときには、推理小説の源流がここにあるといわれてもピンと来なかったのだけれど、こうやってちゃんと説明してもらうと、よくわかる(気がする)。
「ゴシック小説とはなにか」がわかるようになる本であり、絵画などの写真(図)が28点と、ゴシック小説関連年表(1747-1869)はあるけれど、「数多くの作品についてその粗筋や作者の生涯などについてくわしく説明した本」というわけではないから、そういう文学事典的な資料のようなものを期待すると、がっかりするかもしれない。(『オトラント城』と『ユードルフォの謎』と『ヴァテック』と『
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