三月のとある木曜の午後、イングランド中部ダービーシャー州の町、バクストンでは、しとどに雨がふりつづいていた。低く流れ、意気阻喪させる灰色の雲に町は覆われている。スチュワート・グラットンは、書店の明るく照らされた窓辺に置かれた小さなテーブルをまえにして座っていた。通りに背を向けていたが、ときどき、振り返ると、のろのろ動く自家用車やトラック、傘を深くさし、顔をそむけて水を撥ね飛ばしながら足早に通りすぎていく歩行者が見えた。(冒頭)
歴史ノンフィクション作家のグラットンは、著書のサイン会(客の出足が悪くて手持ち無沙汰)にやってきた初対面の女性から、「自分の父は、あなたが次の著作の対象とすべく情報を求めていらっしゃる人物と名前と経歴が一致する。その父が書いた手記があるのだが」と資料を手渡された。以後、おそらくはその手記と思われる文書と、グラットンの過去の著作からの抜粋や、彼がネット検索して集めたさまざまな情報の断片らしきものが交互に示される。
かのように見える。
いわゆるミステリ小説なら、設定を紹介しても who , why, how の肝心要の部分を隠しさえすればネタばらしには(たぶん)ならないのだが、この本は「こういうタイプの本です」「こういう感想を持ちました」と紹介すること自体がネタばらしになってしまいかねない話だ。
「戦争に翻弄される双生児」が出てくる「不思議な話」だという噂を聞いて(読んで)いたから、読み始める前には「『悪童日記』みたいなのかな?」と思っていた。
そうだったか、違ったか、う〜ん、その感想も差し控えさせていただきます〜。
『双生児』

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