同じ冬の風に吹かれても、肌に感じるその寒さは違うのだ。守ってくれるものの、あるなしで。
それでも風に転ばぬよう、足を踏ん張って立つしかない。独りぼっちの自分を、病みがちの我が身を、己自身でただひたすら哀れんでしまったら、後は恨みの気持ちに頭の上まで埋まって、他は何も見えなくなる……。(ぬしさまへ)
「なんだか茶碗蒸しの具にでもなった気分だよ」日本の最高温度を一気に二箇所で更新した今年(2007年)、もし若だんなが生きていたら、夏ばてになる前に死んじゃってたかも〜。
若だんながそうぼやき続けた、江戸の猛暑がやんで一月ばかり。
日本橋の大店、廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の跡取り一太郎は、離れの自室に夏ばてで寝込んでいた。いつもながらの虚弱ゆえに、若だんなのばてようは半端ではない。
「この調子じゃあ私もいよいよ、あの世にいくのかね」(仁吉の思い人)
体の弱いのだけが欠点で、頭はいいし、気立てはいいし、人の扱い方も心得ているし、薬種問屋の主人としてちゃんと薬にも詳しい一太郎、がんばれー。
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