ぬしさまへ

ぬしさまへ (新潮文庫)
畠中恵
しゃべけシリーズ第二弾
 同じ冬の風に吹かれても、肌に感じるその寒さは違うのだ。守ってくれるものの、あるなしで。
 それでも風に転ばぬよう、足を踏ん張って立つしかない。独りぼっちの自分を、病みがちの我が身を、己自身でただひたすら哀れんでしまったら、後は恨みの気持ちに頭の上まで埋まって、他は何も見えなくなる……。
(ぬしさまへ)

 必死に商売を軌道に乗せ店を大きくしてきたがために、癇癪もちとして家族からも使用人からも恐れられ、敬愛の念はいっさい抱いてもらえない主人がいる。悲しいね。
 可愛い顔でにっこり笑いながら人の心を踏みにじることで、玉の輿を狙う娘がいる。自分の家が儲かるからと大火を喜ぶ娘がいる。人の心に鬼がすむというけれど、魔がさすと言うけれど、いちばん恐ろしいのはやっぱり人間なのかもしれない。

ぬしさまへ

  いい男の仁吉は女にもてる。寝込んで暇だった若だんなは、仁吉がもらった付文を暇つぶしに読んでいた。

栄吉の菓子

  若だんなの幼なじみの栄吉は菓子屋のせがれ。菓子作りは好きだが、腕が悪い。その栄吉の菓子を食べた老人が死んだという。

空のビードロ

  松之助の奉公先である桶屋東屋では、犬猫殺しが続いていた。

四布の布団

  若だんなのために新調したふとんから、女の泣き声が聞こえてくる。

仁吉の思い人

  仁吉がその思い人と出会ったのは千年ほど前のことだった。

虹を見し事

解説 藤田香織

「なんだか茶碗蒸しの具にでもなった気分だよ」
 若だんながそうぼやき続けた、江戸の猛暑がやんで一月ばかり。
 日本橋の大店、廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の跡取り一太郎は、離れの自室に夏ばてで寝込んでいた。いつもながらの虚弱ゆえに、若だんなのばてようは半端ではない。
「この調子じゃあ私もいよいよ、あの世にいくのかね」
(仁吉の思い人)
 日本の最高温度を一気に二箇所で更新した今年(2007年)、もし若だんなが生きていたら、夏ばてになる前に死んじゃってたかも〜。

 体の弱いのだけが欠点で、頭はいいし、気立てはいいし、人の扱い方も心得ているし、薬種問屋の主人としてちゃんと薬にも詳しい一太郎、がんばれー。

ぬしさまへ (新潮文庫)
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しゃばけ SUNNY SIDE

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