
翻訳の話あれこれ(1)はこちらから

読みたいタイトルをクリックしてください。
|

2009年10月2日 超初心者のための医学翻訳のヒント
その1 中央神経システム? |
| これから数回にわたって、初心者向け医学翻訳コラムを掲載しようと思います。これは10年以上前に書いた文章を大幅に改定したものです。医学分野に限らず、少し専門的な分野の翻訳をやりたいと考えていらっしゃる方にとって、多少なりとも役立つ情報になるといいんですが。 |
|
医学的文章を翻訳するとき、初心者が犯しやすい過ちのひとつは、良く知っている(と自分では思っている)単語の誤訳です。もしzygapophysis(関節突起)とかleukoencephalopathy(白質脳症)なんて単語に出くわしたら、たいていの人が辞書を引くでしょう。そして適切な辞書さえ持っていれば、おそらく誰もが同じ訳語にたどりつきます。だからこういう単語は見かけはいかめしいけど、あまりこわくありません。

ところがpotentialとかattackなんて単語になると、お馴染みの語であるだけに失敗しやすいんです。Action potentialを「行動潜在能力」なんて訳したら、まずいことになります。神経細胞などでみられる「活動電位」のことです。The attack abates.という文も医学的文章ならたぶん「攻撃が弱まる」ではなく、「発作が和らぐ」となるでしょう。
こうした間違いを減らすには、内容をある程度理解しておくしかありません。神経の話のなかでaction potentialと出てきてそれを誤訳してしまうのは、神経の生理をまったく知らないから。生理学の教科書とまではいかなくとも、百科事典くらいは読んで概要をつかんでいれば、訳語の選択もしやすいし、自分で誤訳に気づくこともあります。といっても、なじみのない分野の内容を付け焼刃で勉強するのってむずかしいんですよね(実感)。

最初はどうしても頻繁に辞書をひかなければならず、それが結構時間を食い、つい勝手に訳してしまいがちですが、それはこれから翻訳の仕事をしようとする人にとって命取り。こいつ、何も知らないし、勉強もしてないなと思われてしまいます。簡単な単語が3つ並んでいるcentral nervous systemを中央神経システムと訳すか、中心神経機構と訳すか迷うよりは、辞書を引くこと。普通の英和辞典にもこれくらいなら「中枢神経系」と出ていますから、手間を惜しまないようにしたいものです。辞書を引く回数は増えますが、どれを選んだらよいか迷う時問が少ない分、実は楽なのかもしれません。

| 2009年8月8日 ナントカと翻訳ソフトは使いよう |
少し前のことになりますが、翻訳を職業としているわけではない友人に「翻訳ソフトってどうなの?」ときかれました。そこで「長所も短所もあるから、つまりは、使いようだと思う」と答えたら、「使いようっていい言葉だね」と言われました。いいところは活かすという考え方がいい、という意味だとわたしは勝手に解釈して、いいこと言うなあ、ものは「言いよう」だなあ、としみじみ思ったしだいです。

本題からずれてしまいましたが、翻訳ソフト、本当に使いようなんです。使ったことがある方ならご存知でしょうが、英語→日本語のソフトによる翻訳はそのままでは使い物になりません。でも、ソフトくんは馬鹿正直ですから、ぜったいに訳抜けはしないし、数字の間違いもしない。だから、ひとりで翻訳する場合のチェック機構としての利用価値は十分あるのです。

それから、ソフトの翻訳に笑うのも、ささやかな楽しみ。たとえば、
wee hour 草木も眠る丑三つ時
stop eating 箸を置いた
なんて、翻訳されてくると思わずふき出しちゃいます。だって、登場人物は金髪碧眼の欧米人だったりするわけですよ。そういう人物が、突然、黒い頬かむりをしたネズミ小僧に変身したみたい。それを想像するとおかしくてひとりで笑ってしまいます。
rearing horseっていうのにも「飼育馬」って訳がついてきて、うっかりそのまま使ったらたいへんなことになるなと思ったことがあります。使ってもあまり違和感がないだけにヤバイのです。辞書にはrearing animal飼育動物と出てますが、実際の文脈では、後ろ脚だけで立っている馬という意味だったんです。なので、ソフトくんを全面的に信用することはせず、マメに辞書を引くことはおこたらず、上手に使うのがよろしいかと思います。要するに、使いようなんですね!

**
|