2009年10月09日更新

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ルリカケス・クワズイモ(09.mar.11)奄美大島龍郷

1977(S52)年9月11日、奄美大島で一人の画家が人知れず生涯を閉じました。田中一村、
中央画壇に背を向け、50歳になって千葉の家を処分して「もう、売るための絵は描かない」と言って
奄美へ移りました。そこで見た奄美の自然は亜熱帯のエネルギーにあふれ、動物も植物も驚くほど
新鮮でした。以後19年間、奄美の自然だけをモチーフとして描き続けてきたのです。その死の枕元
には一村の死を看取るかのように未完のルリカケスの絵が立てかけられていました。一村はこの絵
の中央に描いたルリカケスの飛び立つポーズが決まらないと知人に語り、ルリカケスに出会う度に
スケッチを重ねていました。着手して3年、2羽のルリカケスの絵は完成することなく描き手を失って
しまいました。遺品を整理する段で名も知られていない画家の未完の絵には誰も興味が無かった
のでしょう雑に丸めて廃棄の場所に置かれていました。しかし、東京から駆けつけた知人は一村が
最後までこの絵に向き会って完成に努めた絶筆であることを遺族に告げ、廃棄は免れました。

現在、未完の絵「ルリカケス」は田中一村記念美術館に収蔵され、画集にも掲載されて重要な
作品と評価されています。

【写真と文:伊藤 啓さん】
【参考:田中一村作品集 黒潮の画譜 日本放送出版協会 / 絵の中の魂 湯原かの子 新潮社】


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