撮影できる天体と惑星の画像処理例。今回はマニアック。 |
| ビデオの良さは,何といっても望遠鏡で見た生の天体の姿に近い映像が得られることでしょう。家庭用のビデオカメラでも月や二重星,明るい惑星などは,よい撮影対象となります。 デジタルビデオは,カメラ同様,進歩が著しい製品です。最近は,100万画素を超すCCDを使った機種が店頭に出回ってきました。これまでもHi8のビデオカメラで天体を撮影したことはありましたが,映像を比べてみるとデジタルビデオカメラの方が圧倒的に解像度が高く,ノイズ少なくなっていて,目で見た天体の姿に近づきつつあるという印象を受けます。 私が現在使っているデジタルビデオカメラは家庭用の普及機であるSONYのDigital Handycam TRV20です。色の再現という観点からすると,光の3原色を,3枚のCCDで独立して撮影するタイプの方がいいのですが,この機種を選んだ理由は,値段が安かったことやNightshotが使えることなどからです。 Nightshot(スローシャッター付き)による撮影は,色の情報は失われるものの,これまで写りにくかったタイタン以外の土星の衛星や,明るめの散光星雲なども写すことができ,なかなか楽しめます。
|
最近のデジタルビデオカメラは,静止画の撮影も可能です。この機種ではメモリースティックを使うと,最大で1152×864ドットの画像を0.5秒間に4コマ(640×480ドットでは16コマ)連写撮影といったデジタルカメラに似た使い方もできます。 望遠鏡を使った撮影の手順は,前回のデジタルカメラと同様です(右の画像)。注意する点として,ズームを引き気味にしてカメラの位置や角度を調整しながら全体の明るさが均等になるようにすることです。反射望遠鏡の場合,画面全体が明るいと,副鏡の影が出てしまいますが,対象をずらしたり,ズーム比を変えながら,影響が最小限のポジションを捜します。最近,よく撮影する対象は木星,土星といった惑星です。静止したものならば写真やデジタルカメラの方がきめ細かで美しい画像が撮れるのですが,空気の温度差などによるゆらぎの影響が多い日本では,大きな望遠鏡の能力を引き出したシャープな画像が撮れることはめったにありません。 その点,1秒間に30フレームの映像が撮れるビデオでは,ある程度のレベルの画像を比較的コンスタントに撮影することが可能です。 以下に撮影した映像をパソコンに取り込みデジタル処理をしていく過程を紹介します。まだ試行錯誤の段階で,とりあえず1つの例と思っていただければありがたく思います。 なお,4以降の処理については,月惑星研究会関西支部の伊賀祐一氏より詳しい情報を教えていただきました。まだまだ伊賀さんの足元にも及びませんが,ここに厚く感謝いたします。 |
| ステライメージ3とフォトショップを使ったデジタル処理の例 | |
![]() |
1.ビデオ画像をパソコンに取り込む ビデオとパソコン(SONY PCV-R73K)をi.LINK(IEEE1394)端子でつなぎ,「DVgate Still」というソフトで静止画を取り込みます。ソフトに明るさやコントラストの調整機能がないので,モニターで見る画像は左のように暗いものになってしまいます。そこで,明るさを調整したビデオカラメラのモニターを見ながら,比較的大気の状態が安定した数秒の間をコマ送りしながら20〜25フレーム前後取り込みます。 1フレームは640×480ドットの大きさで,BMPで保存すると900Kほどのファイルサイズになります。全体に占める木星の大きさが小さくてもこの段階でトリミングは行いません。 |
![]() |
2.コンポジットするフレームを選ぶ ステライメージ3で各フレームを開き,「階調-自動レベル調整」を行ったのが左の画像です。自動レベル調整値は,以前に作成した画像から取得しておきます。 それぞれの画像を比較しながら,ボケているもの,変形しているもの,他にはない模様があるものなどを削除して,12〜15フレームほどに絞り込みます。 |
![]() |
3.コンポジット処理を行う ステライメージ3の「バッヂ-コンポジット処理」を行います。位置合わせは「画像の重心」合成方法は「加算平均」です。できた画像を再び各フレームと比較して,さらに8〜10フレームほどに絞り込み,もう一度コンポジットを行ったのが左の画像です。画像の荒れが平均され,眼視に近い木星像になります。さらに,高度が低い時に撮影されたものは,大気の屈折率の違いにより色ずれを起こしています。「RGB合成」で赤青を移動させながら,縁の部分に色がはみ出さないように調整してファイルに保存します。 |
![]() |
4.画像の明度情報を取り出す 画像復元を効率よく行うため,明るさの情報のみ取り出します。フォトショップでファイルを開き,「イメージ−モード」を「Labカラー」にして,「チャンネル」で「明度(L)」を選びます。これが明るさの情報(左画像)です。「選択範囲−すべてを選択−編集−コピー」でクリップボードに送ります。 |
![]() |
5.画像復元(最大エントロピー法)を行う 再びステライメージ3で「編集−新規貼り付け」を行い画像を表示させます。次に「画像復元-最大エントロピー法」を行います。パラメーターの数値設定が難しいのですが,現在使用しているのは「PSF半径3.1 ノイズ0.026 最大繰り返し回数20(いつも7回ほどで終了する)」前後です。適切な値は背景のコントラストや画像サイズ,荒れ具合で著しく変化するので,前の段階で明るさ,コントラスト,ガウスぼかしなどを使って調整することがあります。処理後は左の画像のように,模様がシャープになります。この画像を「すべて選択−コピー」でクリップボードに送ります。 |
![]() |
6.色調の調整を行う その時の透明度や高度の違いにより,同じ対象でも日によって色調が異なります。自動調整の機能はばらつきの少ないフォトショップを使っています。4の段階の画像でチャンネルをRGBカラーに変え,「イメージ−色調補正−自動レベル調整」を行ったのが左の画像です。コントラストが強く,中央がつぶれてしまっていますが,次に進みます。 |
![]() |
7.明度情報を戻す 再びチャンネルを明度(L)に変え,5でクリップボードに送ってあった明度情報の画像を 「編集-ペースト」で張り付けます。チャンネルをLabに戻したのが左の画像です。中央のつぶれがなくなり,中央の模様の様子もわかるようになりました。 |
![]() |
8.画像の最終調整を行う 最後に模様の濃淡を際立たせます。「フィルター-シャープ」でアンシャープマスクを選択します。パラメータ値を大きくすることによって,濃淡がはっきりしますが,平板になるとともにノイズまで強調されるようになります。最後は好みの問題ですが私は「適用量30% 半径8.0 しきい値0」を使用しています。この他,彩度や明るさ,コントラストを調整した最終的な画像が左のものです。なお,トリミングは調整後に行っています。 |
| *左上画像は,容量等の関係で1/2に縮小,トリミングしてあります。(2000年9月15日撮影
他のデータはこちらへ) **以上が,現在行っているデジタル処理です。ここで気をつけたいのは,強調するあまり,実際にはない模様出ないようにすることです。そのためには,元の画像や違う時間帯に撮影した画像,あるいは違う方の撮影された画像と比較しながら適切な処理の仕方を模索していく必要があります。また,当然のことですが,撮影した時の条件が良くなければ効果もあがりません。天候や気流の状態を見極める経験も必要でしょう。 |
|
|
トップページに戻る |