華厳教海INDEX

 
 

 華厳の階位説 ─ 十地の思想 ─



 
1.序説
 
 十地品 ── 十地経Da1abh[mika_s[tra
 bh[mi = 地 = 菩薩の依って立つ処
 他化自在天
 金剛蔵菩薩 Vajragarbha 金剛の母胎・金剛の胎児
 十波羅蜜 ── 唯識派の世親(天親)バスバンドゥに帰される『十地経論』の解釈以来、十地は十波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧・方便・願・力・智の十の実践)の完成に対応するとされる。
 
 
2.菩薩の階位
 
 菩薩が初めに菩提心を発してから、修行の功を積み、仏果に至るまでの階位について、ゥ経論の所説は一様ではない。法身などの十住の説は、古くは単独にそれだけで菩薩の全階位を示したもののようである。しかし、後にはこれを地前三賢位(十住・十行・十廻向)の初位に当てているように、階位説には歴史的な発展が認められる。古来、『菩薩瓔珞本業経』の五十二位説が名義も整い、位次も欠けていないとして、広く用いられている。
 
「五十二位」
 
 十信(十信心)
  @信心・A念心・B精進心・C慧心・D定心・E不退心・F廻向心・G護心・H戒心・I願心
 
 十住(十心住/十解)
  @発心住・A治地心住・B修行心住・C生貴心住・D方便心住・E正心住・F不退心住・
G童真心住・H法王子心住・I灌頂心住
 
 十行(十行心)
  @歓喜心行・A饒益心行・B無瞋恨心行(無違逆行)・C無尽心行(無屈撓行)・D離癡乱心行・
E善現心行・F無著心行・G尊重心行(難得行)・H善法心行・I真実心行
 
 十廻向(十廻向心)  ※
  @救護一切衆生離相廻向心・A不壊廻向心・B等一切仏廻向心・C至一切処廻向心・
  D無尽功徳蔵廻向心・E随順平等根廻向心・F随順等観一切衆生廻向心・G如相廻向心・
  H無縛解脱廻向心・I法界無量廻向心
 
 十地(十地心)
  @歓喜地(四無量心)・A離垢地(十善心)・B発光地(明光心)・C焔慧地(焔慧心)・
  D難勝地(大勝心)・E現前地(現前地)・F遠行地(無生心)・G不動地(不思議心)・
  H善慧地(慧光心)・I法雲地(受位心)
 
 等覚  ※華厳経では等覚を立てない。
  入法界心
 
 妙覚
  寂滅心
 
華厳の階位説
 
 華厳では、経に等覚位が説かれず、さらに十信は単なる行であって位地ではないと見ることから、四十一位説をとる。また、五教に応じて階位の立て方が異なると説く。
 
・大乗始教の中の廻心教
  小乗の位地(四双八輩)を準用、または三乗共の十地(乾慧地〜仏地)による。
 
・大乗始教の中の直進教
  十信を階位に含めて五十一位を立て、十廻向以上を不退位とする。また、機根の別により不退位に入る段階が異なるともして、上根は第七住、中根は十廻向、下根は初地でようやく不退位に入るともいう。
 
・終教
  十信はいまだ不退位を得ていないから、単に行であるとして位と認めず(十信を十梵行という)、四十一位を立てて、初住を不退とする。
 
・頓教
  一念不生即仏であるから位次を立てない。
 
・円教
  同教一乗では特別の位次を立てずに前四教の階位に摂め、別教一乗では、行布門としては階位の次第を立てるが、円融門として一位に一切位を具えるとして、しかも十信満位に成仏する(信満成仏)ことを説く。
 
 
 
3.大品般若経に説かれる十地
 
 華厳学では、三乗と共通のものである為これを「三乗共の十地」「共地」という。
 天台ではこれを「通教の十地」という。
 なお、『大智度論』では十地がみな助け合って仏果に到らせると説く。
 
(1) 乾慧地(浄観地)── 声聞の三賢位
(2) 性地(種地)── 声聞の四善根位
(3) 八人地(第八地)── 声聞の見道十五心の須陀?向
(4) 見地(具見地)── 声聞の四果中の初果=須陀?果
(5) 薄地(柔軟地)── 須陀?果または斯陀含果
(6) 離欲地(離貪地)── 阿那含果
(7) 已作地(已弁地)── 阿羅漢果
(8) 辟支佛地 ────── 因縁の法を観じて成道したもの
(9) 菩薩地 ────── 菩薩としての最初から成道の直前までの位をいう
(10)佛地 ────── 一切種智などの諸仏の法が完全に具備した位
 
 
 
4.華厳経に説かれる十地
 
 『六十華厳』では巻23以下、『八十華厳』では巻34以下に説かれ、菩薩が修行の過程において経ねばならない五十二位中(十信・十住・十行・十廻向・十地・等覚・妙覚)の最終段階にあたる階梯。この位にある菩薩を「地上の菩薩」といい、このなか初位の菩薩を「登位の菩薩」といい、それ以前の菩薩を「地前の菩薩」という。十住・十行・十廻向を「地前の三十心」という。
 
(1) 歓喜地
 初めて聖者となり、大いに歓びの起こる位。── あらゆる誓願が成就する。
 
(2) 離垢地
 過ち・破戒・煩悩を増す心を離れた位。── 十善道を行じることで心の垢が無くなる。
 第二地を得ようとすれば、次の十種の直心を生じさせるべきである。
  @柔軟心 A調和心 B堪受心 C不放逸心 D寂滅心 E真心 F不雑心 G無貪吝心 H勝心 I大心
 経典自身には此の十心について詳しい説明はない。しかし、それらが、全体として菩薩の実践の根幹となる正しく清らかな心の在り方の諸側面を表わしていることは明らかであろう。
 
(3) 発光地
 禅定により智慧の光明を得て、三慧(聞思修)にしたがいつつ真理が明かされる位。
 ── 真理の現前を体得する。
 第三地を得ようとすれば、次の十種の深心を生じさせるべき。
  @浄心 A猛利心 B厭心 C離欲心 D不退心 E堅心 F明盛心 G無足心 H勝心 I大心
 誡めの実践を通じて広め深められた心。聞法が特徴的。真実の教えを聴くことを佛道の根本と規定、ひたすらな追及による佛法の体得を宣揚。
 
(4)焔慧地
 既に輝き始めた智慧の光が明るさを増す境地。
 智慧の光が煩悩の薪を焼いて炎となり、智慧の本体が体得される位。
 ── 三十七菩提分法に導く修行道を体得する。
 
(5)難勝地
 確かな智を得て、それ以上に進むことが困難とされる位。また出世間の智を得て、自由自在に方便を得て救い者を救う位。
 
(6) 現前地
 般若波羅蜜を聴いて大智が目の当たりに現れる位。智慧の実現。
「妨げの無い究極の智慧が光を現前する」と表現される。
「三界虚妄、唯是心作」=唯心
── 様々な条件により条件づけれられて生成するという最も奥深い真理(すなわち縁起)の種々なる道を体得する。
 
(7) 遠行地
 菩薩の認識と実践の在り方(十妙行)を説く。無相行を修し、心の働きが世間を超えて離れる位。
 ── 現れる仏の不可思議な存在が今ここに現前する。
 方便の智慧によって十の妙なる行をあらわす。その十の行いとは次の如し。
  @前の第六地で得た空・無相・無願の三種の瞑想の実践をよく修めながら、しかも慈悲の心をもって衆生の中にある。
  A諸仏の平等の教えに従いながら、しかも諸仏を供養し続ける。
  B常に空の智慧を深めながら、しかも広く衆生を幸せにする力を学び取っていく。
  C迷いの世界から離れながら、しかも迷いの世界を荘厳する。
  D諸々の煩悩を完全に滅しつつ、しかも衆生のために貪瞋癡の煩悩を起こす。
  E諸々の法にしたがって、それらの法が幻の如く、夢の如く、水上に浮かぶ月の如く、すべてが不二であることを体得しながら、しかも分別して種種の煩悩を起こし、行いの報いを受ける。
  F諸仏の世界は虚空のように形相を離れていると知りつつ、しかも国土を浄める行いを起こす。
  G諸仏の法身は無身であると知りつつ、しかも色身三十二相八十種好を起こして自ら荘厳する。
  H諸仏の説法の音声は不可説であって静まりかえっていることを知りつつ、しかもそれに従って仏の音声を荘厳する。
  I諸仏は一念中において三世に通達していると知りつつ、しかも様々な相、時、劫を知り、悟りを得て衆生の信解にしたがう。
 
(8) 不動地
 無相の智慧が絶え間なく起こって、決して煩悩に動かされない位。
 ── あらゆる存在は生じないことを悟る。
「人が夢の中で深い淵を渉ろうとして努力し、偉大な手段を用いるが、まだ渉りきらないうちに目が覚めて、それらの手だてを捨ててしまうように、菩薩は初めから精進努力し、様々な修行を行ってきたが、この不動地に至って全てを捨てて、あれこれと思うことは無く、あらゆる想念が現れなくなってしまう。
 空のさとりを完成。
 この境地に入った菩薩は「深行の菩薩」と称される。
 菩薩道の発展の最後の転換点に当たる。
 
(9)善慧地
 菩薩が障りの無い力で説法して、利他行を完成し、智慧のはたらきが自在になる位。
 ── 四種の無礙自在な説法力をはたらかせ、仏法のエッセンス(陀羅尼)を体得して説法する。
 
(10)法雲地
 大法師を得て自在力を具える位。
 ── 一切智者の勝れた智を悟るであろうとの灌頂を授ける三昧が現前し、無量無辺なことについての智がいよいよ円満になる。
 菩薩究極の境地。仏の一歩前。
 
 『探玄記』巻9には、十地を解釈して、根本から云えば果海不可説の性質のものであり、悟られる内容から云えば離垢真如であり、悟る智から云えば、根本智・後得智・加行智の三智であり、断つものから云えば、二障を離れるものであり、修される行から云えば、修願行ないし受位行であり、何を修め成ずるかと云えば、初地には信楽行、二地には戒行、三地には定行、四地以上は慧行であり、位から云えば証位と阿含位であり、乗から云えば初・二・三地は人天乗、四・五・六地は三乗、八地以上が一乗に相当するという。
 
 
5.十地の構成内容の基本的特相
 
 十地の構成の基本は、小乗・大乗における諸種の行目や徳目が戒定慧の三学のような実践過程に違逆することなく、区分による配分という原則のもとに注意深く安立せられているという点にある。
 
第1地
発心し、十大願を起こして十浄地法を生ずる。
第2地
戒(十善業道)に安住し、諸他をも安住せしめる。
第3地
世間の施設の名数を捨てて静慮ないし等至(四禅・四無色定・四無量心・五神通)に善巧となる。
第4地
仏陀に対する不壊の浄信によって三十七菩提分法を成ずる。
第5地
方便・神通(四摂事など)によって、世間に行ずる作用(衆生利益)を成就する世間智を成ずる。
第6地
縁起を観察し、三解脱門を生じ、般若波羅蜜の住を現前する。
第7地
実際の住に住し、方便・般若の智力の任持を得て、覚慧による思択に善巧となる。
第8地
無功用の法性たる寂静なる解脱の住に到り、菩薩の自在性によって大荘厳の成就を示現する。
第9地
甚深の解脱・世間行に通達して定限を失わない大法師の行分(衆生行の生滅を観察する智を現行し、所聞の法についての智たる四無礙智を以て説法すること)を具える。
第10地
如来と不異なる力・無畏・不共仏法・智を得る。



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