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「尻別川の未来を考えるオビラメの会」は、北海道尻別川に生息する「南限のイトウ」保護に取り組むNGOです。

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「北海道イトウ保護フォーラム in ニセコ」(2002年10月13日、ニセコ町民センター)におけるパネルディスカッションの記録です。「イトウ保護連絡協議会」設立会に参加した団体の代表たちが各地の現状を報告し、研究者や一般参加者とともに議論を交わしました。

●パネリスト(順不同)
梁田徳雄氏(猿払村商工会青年部部長)
中南裕行氏(朱鞠内湖淡水漁業協同組合副組合長)
浪坂洋一氏(南富良野町商工観光課)
ビル・ウァーリン氏(パタゴニア日本支社長)
川村洋司氏(北海道立水産孵化場)
江戸謙顕氏(学術振興会科学技術特別研究員)
草島清作氏(尻別川の未来を考える オビラメの会代表)
森高志氏(斜里川を考える会、ゲスト)

コーディネイター・平田剛士(尻別川の未来を考える オビラメの会)
パネリストの名前をクリックすると各氏の報告にジャンプします。

コーディネイター 先にご報告しましたように、きのうイトウ保護連絡協議会を設立しましたが、きょうはこの協議会にご参加いただいた団体やグループの代表のみなさんにパネリストとしてご登壇いただきました。ここまで川村洋司さん、江戸謙顕さんの研究報告から、同じ北海道内でも生息地によってイトウの置かれている状況がいろいろ違っていること、保護対策もそれぞれの状況に応じて進めていかなければならないことが分かってきました。ここで改めて、パネリストのみなさんに各地での状況や取り組みなどをご紹介いただきたいと思います。

参考リンク

イトウ保護連絡協議会

川村洋司さん講演録

江戸謙顕さん講演録

梁田徳雄氏(猿払村商工会青年部部長)
 初めまして。北海道最北端の猿払村からやってきました梁田と申します。このような機会を与えていただき心から感謝いたします。私たちの村は、稚内からオホーツク海沿いに約60km南下したところにあります。主な産業は漁業と酪農で、ホタテに関しては日本有数の水揚げを誇っています。猿払村では今まで環境に目を向けられることはほとんどなく、ましてイトウの保護など全く考えられてきませんでした。

猿払村商工会

猿払村役場

梁田徳雄氏 イトウのことを何も知らなかった私たちが、故人となられた道立水産孵化場の鈴木さんを講師に招いて勉強会を重ね、「イトウの里づくり」事業を開始したのが平成11年(1999年)のことです。当初は「釣り人が来るからゴミが増えるんだ」「害魚のイトウを守ってどうするんだ」とか、商工会の中には建設業の方もいて、「(イトウを保護するために河川工事などの)仕事がなくなったらどうするんだ」といった反発もいろいろありました。行政のほうからも「商工会青年部はイトウの保護などやらないで商工業者のためになることをやりなさい」という意見が出されました。けれど、自然を壊してきた商工業者だからこそ、自然の再生を目指すためにイトウを保護しなければと改めて認識しあい、この活動に取り組んできました。
 主な活動は、勉強会の開催、行政への働きかけと、釣り人へのキャッチ&リリースのお願いをふくめた啓発運動、年に5〜6回程度の河川のゴミ拾いなどをおこなっています。

 平成11年9月、川村洋司先生をお招きして第1回イトウシンポジウムを開催し、以降12年、13年にもシンポジウムを開いて、釣り人との共存を目指したイトウ保護活動に取り組んできました。ただ村内からの参加者がわずかだったため、いったんシンポジウムは休み、まず地元で少しでも理解を深めてもらおうと先月9月29日、川村先生をお招きして町民に向けた勉強会を開きました。青年部員を含め30人ほどの参加でしたが、村長をはじめ役場関係者が初めて出席してくれるなど、成果があったと思っています。

 猿払村役場は昨年ごろからようやく、われわれの「イトウの里づくり」に理解を示してくれるようになり、河川の視察などに積極的に参加していただき、きょうのフォーラムにも将来のイトウ保護の勉強のためにと職員を派遣してもらっています。

 猿払村を流れる河川には比較的工作物が少ないのですが、ある区間に落差工があってイトウが遡上できない河川が一つあります。この川は猿払村が管理していて、落差工に魚道の設置をお願いしてきましたが、今年になってようやく落差工の改修許可が下りました。着工予定は平成15年1月からですが、予算が少ないため1回の工事でイトウが遡上できるようにはならないと思います。工事に当たっては、専門家もボランティアで協力してくれることになり、徐々にですが、イトウが遡上できる改修を進めていきたいと思っています。作業日程や工法はなるべくお金のかからない方法でやりたいと思っています。

 またシンポジウムで議題になるイトウの保護について、環境保護をふくめた禁漁期間・禁漁区間を含めた条例など、何らかの規制を設けるよう、猿払村に働きかけています。

 次に私たちの抱えている課題をお話しします。(イトウの資源量をモニタリングするために)産卵床の調査をやりたいのですが、勉強不足のためになかなか産卵床がどこにあるのか、見つけることが出来ません。一緒に調査してもらえるようなイトウ研究者が近くに住んでいないことも悩みのひとつです。また、イトウ保護というとイトウそのものだけがクローズアップされるてしまって、イトウ保護は環境全体の保護につながるんだということが地域の人になかなか理解してもらえないこと、商工会であるために工事の見直しなどを行政に直接お願いしていくのが難しいこともあります。

 わたしたち商工会青年部だけでは解決できない問題も多々ありますが、今回ご参加のみなさんのご協力も得ながら、「いつまでも天然のイトウが釣れる川を残そう」というわれわれのテーマを目指して、今後も活動を続けていきたいと思っています。

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中南裕行氏(朱鞠内湖淡水漁業協同組合副組合長)
 朱鞠内湖淡水漁業協同組合の中南です。まず、ウチの湖と漁業の概要について少し説明します。ウチのダムは石狩川水系雨竜川の上流に治水対策と電源対策のために昭和18年(1943年)にせき止められた人造湖です。面積は24平方km、周囲は約40kmで、現在のところ日本一の人造湖です。湖には大小16河川が流れ込んでいて、うち6河川ほどにイトウが遡上できるんではなかろうかと考えられています。

中南裕行氏 湖はあくまでも北電(北海道電力)のものであり、漁協は昭和29年(1954年)に北電と協定を交わして、共同漁業権を取得しました。年間の遊漁者数は昨年度で約1万3000人、マスとかイトウ釣りの人が4000〜5000人、残りの8000〜9000人がワカサギとかコイ釣りの人です。

 私たちは漁師なもんですから、イトウの専門的なことはここにおられる先生方のほうが詳しいと思いますけど、漁師の受ける印象では、ここ10年20年くらい、イトウの獲れる量は変わっていないと思います。ただ、前はバラバラの大きさのイトウが獲れたんです。定置網で、それこそ30cmから80、90cmまでサイズがバラバラのイトウがかかってました。でも近年はある一定の大きさのやつばかりが入るようになってます。たとえば40cmのやつが何本か入って、あとは80cmのが2、3本とかで、中間のサイズがいないんです。シロウトなりに考えるに、雨の関係ではないかと。さきほど河川環境の話もいろいろありましたが、朱鞠内では、どうも雨の多い年は稚魚のいる小さな溜まりが大水によって流されたり、山からの泥水などの影響で抵抗力のない稚魚が成魚になる前に死んでしまう。だから、雨の多い年生まれのイトウは少なく、雨の少ない年生まれのイトウは比較的多いのではないかと思うんです。それで平成4年(1992年)に池を造りまして、だいたい60cmから80cmの親魚を15匹くらい、池に入れました。平成8年(1996年)に初めて1000粒ほど卵を絞ったんですけど、発眼には至りませんで、平成9年に3500粒くらいが発眼しました。半分を(河川に)埋没放流、残り半分を飼育したわけですけど、稚魚にはなったんですが、河川の水温のせいなのか、全滅しました。翌年は約4万粒が発眼しまして、半分を埋没放流、残りは3等分してそれぞれ別の川の水で飼育しました。ある河川ではほぼ100%が稚魚になりました。この稚魚は今も順調に育っています。このデータをもとにしてこの5月は1万粒くらい絞って、5〜6cmに育てた稚魚だいたい4000〜5000匹を秋の早い時期に放流しました。

 イトウの遡上できる河川が6本あるとお話ししましたが、このうちイトウ密度の高い川が2本、低いのが2河川、残り2本は以前はイトウが上っていたんですが、現在は途絶えています。私たちが稚魚を放流しているのは、この最後の「イトウが今確認されていない川」です。
 共同漁業権を持っていますから、私たちは(増殖のための)放流をやっていかなければならないですし、この資源を守っていただくよう遊漁者にもお願いしています。でも、養殖はいろいろやってるんですけど、(稚魚を)どれだけ放したら資源がこうなるというデータは一切ありません。いま稚魚を放流している2河川で、イトウがこのあとどのくらい戻ってくるのか、あるいは放流したイトウが成長した後、ヤマベ資源がどうなるのかとか、これらも合わせて調査していかなければならないと考えています。

 さいわい、(湖への流入)河川は大部分が北海道大学の演習林の中にあって守られていますけれど、以前は密漁者がたいへん多かったです。林道の鍵を壊して入ったり。朝6時から夕方まで、毎日毎日監視して、中に入って、密漁者を見つけては注意して、また見つけては注意して、半年くらいでやっと少なくなってきました。

 イトウの資源は、私らも守らなければならないし、守っていこうと思ってます。ただ、どんなイトウでもいればいいというものではない。たとえば、猿払のイトウなら猿払のイトウ、金山湖のイトウなら金山湖のイトウ、その地域のイトウを守ることが、その地域の環境を守っていくバロメータになるのではないかと思うんです。だから(減ったからといって)安易に(よその)魚を放流するのではなくて、まず(減少した)原因を調査しながら、地域の住民と話しながら、保護と増殖を進めていったらいいと思ってます。

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浪坂洋一氏(南富良野町商工観光課)
 南富良野町からまいりました浪坂です。わたくしは昭和56年(1981年)から、金山湖を含む上流域の川村さんの調査をお手伝いしています。町立の孵化場が昭和55年にできて、孵化事業をおこなっているのですが、この面でも川村さんの指導を受けながら現在に至っています。増殖に関しては、さきほどの報告にありましたように、金山湖のイトウは雄と雌の成熟年齢に差があるせいなのか、受精率があまりよくないなどの改善点もあります。

浪坂洋一氏 かなやま人工湖ができたのは昭和42年(1966年)なんですけど、調査当初の時代から、イトウの産卵河川にかなりの釣り人が来てました。特に雌は大きくて、湖のほうでは釣れなくても、産卵河川では容易に釣り上げることが出来るんで、狙われやすかったと思います。わたしが来た当時には刺し網などを使う密漁者もおりました。その後、川村さんや江戸さんの研究の功績が認められて、平成11年(1999年)から内水面漁場管理委員会指示によってイトウ産卵時期の釣り規制がおこなわれています。これによって、この時期の釣り人は激減しました。川村さんや江戸さんの報告にあった、近年イトウ稚魚が増えているというのは、多少はこの効果もあったんではないかと思っています。

 ところがいま、この委員会指示をいつまで続けるのかと、委員会のほうから指摘されているところです。委員会指示はいったん出たら永久に続くというものではなく、単年度更新なんです。だからそのたびにデータを出して「今年もよろしくお願いします」と言っていますが、今後どうすべきなのかということを考えているところです。

 金山湖で得られたデータを今後、ほかの河川にも応用してもらえるように、モデル的に提供していきたいと思ってがんばっていますので、どうぞよろしくお願いします。

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草島清作氏(尻別川の未来を考える オビラメの会代表)
 「オビラメの会」会長の草島です。私らの会では「オビラメ復活30年計画」というのを立てまして、なんとか30年以内に保護をしたいと考えています。

 1997年に親魚5匹を捕獲しました。その後、釣られた魚も入れて延べ9本のイトウを飼育しましたが、採卵する間際になると病気が出やすくて、どうしても採卵できないまま現在に至っています。いま生き残っているたった一匹の雌が、これ愛称をノリカっていうんですが(会場笑)、これが間もなく抱卵するんではないかという期待をかけています。また保護主体の確立に向けて、各方面への働きかけを1996年からおこなっていますが、川に関心を向けてくれるところはなかなかないですね。

 イトウ釣りの制限もなかなか思うようにいきません。仮に採卵できて稚魚がとれて放流する段階になりましても、放流する場所がないんですね、現在の河川では。下流域には辛うじて残っているんですけど、上流域にはほとんどありません。尻別川をオビラメの放流できる川に戻したいなと思って、ただいま努力をしております。今後も行政などに働きかけて尽力していきたいと思っています。

 2010年からの10年間は、イトウ・フィッシング・ルールの確立を目指してやっていきたいと思っています。2020年からの10年間は「イトウのすめる尻別川」「昔の尻別川」にしたいなと考えていますが、果たしてうまくいきますかどうか。(会場爆笑)

 イトウを釣らせながら保護するっていうのはなかなか難しいことです。正しいキャッチ&リリースのしかたなど、釣り人に教えなければなりません。私らの若いころは師匠という人がいまして、その師匠について3年くらい、みっちり釣りの道徳とか、ルール・マナーを学んだものです。ところがいま先生ばかりで生徒がいないんです。(会場笑)

 今後のわれわれの活動にかかってると思いますが、なかなか理解してくれる釣り人も少なくて、理解してくれる行政も少ないです。かなやまダムさんや朱鞠内ダムさんの発表を聞いて、非常にうらやましいと思ってんです。こういうふうに規制ができれば一番いいんですが、釣らせないということは(尻別川では)なかなか難しいんです。一部禁漁にしてしまえばいいという声もありますけれど、そうしたら恐らく釣り人の協力は得られないでしょう。その折り合いがなかなか難しいんです。

 若い会員の人たちにこれから「師匠」になってもらって、釣り人を再教育する方向に持っていったほうがいいんでないかと思ってます。

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コーディネイター どうもありがとうございました。きょうパネリストとしてはご登壇いただけませんでしたが、「イトウ保護連絡協議会」のきのうの設立会に参加された「斜里川を考える会」の森高志さんに報告をお願いしたいと思います。
森高志氏(斜里川を考える会)
 斜里から来ました森高志です。「斜里川を考える会」はまだできたばかりで、こういう場所に出てくるのもちょっと引け目を感じるのですけれども、私たちの会の紹介をさせていただきます。

 斜里川は知床半島のつけ根を流れていて、そんなに大きな川ではないんですけど、さまざまな問題が凝縮されている川です。行政区は斜里町と清里町、管理者は北海道、流域で灌漑施設整備をするのは開発局、砂防ダムを作るのは林野庁、というふうにいろんな役所が関わっているのですが、たとえば川で遊ぶ人とか、できるだけいろんな立場の人たちが川を考え、また提言していこうことでつくったのが「斜里川を考える会」です。

 イトウの現状についてですが、さきほどの江戸さんや川村さんの発表にあった通り、危機的な状況でして、今年見つけた産卵床の数からすると、親魚はおそらく雄雌合わせて10匹程度ではないかと推定されます。下流から上流に向けて河川改修がどんどん進んでいて、下流で捕れる稚魚を見ると、かなりエラの異常が認められて、これは水質が悪いせいではないかとみてます。

 上流ではかろうじてイトウの産卵は確認されてはいるんですけど、産みつけられた卵の調査を標津の「野生鮭研究所」の小宮山先生と共同でおこなったんですけど、1つの産卵床については卵が全部、完全に死んでいて、もう1つの産卵床についても半分近くの卵が死んでいました。原因はたぶん上から流れてきたシルトのせいだろうということで、道東のほとんどの川で起こってる問題が、斜里川でも同じ経緯で進んでいっているんじゃないかなという心配をしています。

 産卵床より上流域では、灌漑事業でダムが造られ、頭首工もいくつか出来つつあります。取水のための施設ですが、イトウが卵を産んだ後の時期に取水されるので、影響があるんじゃないかと心配しています。

 まだできてほんの数カ月なので、これから調査とか保護活動をしていきたいと思いますので、みなさんのご協力をどうぞよろしくお願いします。

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コーディネイター さて、各地それぞれの悩みなどもお聞かせいただきましたが、きょうはビル・ウァーリンさんにお越しいただいています。アメリカでも同じようなケースはあるかと思うのですが、保護を考えるグループがどんなふうに活動すればうまくいくのか、参考になるような例があればご紹介いただけるでしょうか。

ビル・ウァーリン氏(パタゴニア日本支社長)
ビル・ワーリン氏 きょう100人以上の方がこの会場にお集まりだと思いますが、このこと自体、私たちが危機的な状況に直面しているということを物語っていると思います。しかしこんなに晴れた日曜日、このようにたくさんみなさんが集まってこられたのですから、イトウがまた戻ってくる日は近いと確信しています。

 アメリカの例を2つお話ししましょう。最初はオレゴン州のティシュツ川のことです。小さな町を流れる川なんですが、中学生たちがあるとき、この川が汚れているのに心を痛めて、運動を始めました。清掃活動は彼らが高校生になっても続き、最終的には魚が川に戻ってきて、美しい川になりました。

 もうひとつはパタゴニア本社のすぐそばを流れるベンチュラ川です。残念なことですが、役所のルールブックには「ダムを造らなければいけない」と書いてあるんではないでしょうかね。(会場笑)アメリカ政府もきっとそれを読んでいたんだと思います。ベンチュラ川はカリフォルニア州のちょうど真ん中を流れる美しい川で、20世紀の初めにはサーモンがのぼってきていました。しかし1930年代にダムが造られたのです。1973年になって、「ベンチュラ川の友だち」という地元の環境団体がパタゴニア本社に援助を求めてきたので、本社は社屋内に彼らの事務所のスペースを提供しました。この団体の会員は最初は4、5人だったと思います。でも25年経った1998年、活動が実ってダムは撤去され、川には魚が戻りました。

 みんなの力を合わせれば必ず成功する、ということを申し上げたいと思います。今回のフォーラムを企画されたみなさんにお礼を申し上げたいと思います。

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コーディネイター 成功例をうかがうと勇気がわいてきますね。またパタゴニアさんのような企業がもっとたくさん出てきてくれればと思います。さて、これまでパネリストのみなさんにご報告をいただきましたが、イトウを資源として利用しているところもあれば、絶滅寸前でもうあきらめかけているところもあり、各地さまざまな状況です。ここでもう一度、全道のイトウのおかれている状況を整理して場合分けをしていただきたいと思います。

川村洋司氏(北海道立水産孵化場)
 各地によって個体群のおかれている状況が違うので、具体的にどのように保護を進めていくかという段階で、考え方もそれぞれ違ってきます。やはり一定のカテゴリー分けをする必要があると思います。(イトウ)資源の状況によってカテゴリーを分けて、それぞれの保護手段というものを考えていったほうがやりやすいだろうということで、今回こういう提案したいと思います。

カテゴリー
具体的要件
1 絶滅危機個体群
再生産が確認されないかもしくは個体群全体で確認される産卵床数が10未満
2 希少個体群
個体群全体で確認される産卵床数が30未満で、かつ1〜2本の支流に限定される
3 留意個体群
個体群全体で確認される産卵床数が60未満で、数本の支流に限定される
4 安定個体群
個体群全体で確認される産卵床数が60以上で、多くの支流で産卵が行われる

 「絶滅危機個体群」から、当面は絶滅の心配のない「安定個体群」まで、カテゴリーは4つです。このカテゴリーごとに違った保護の対策を講じたらいいと思います。

 基本になる保護戦略ですが、さきほどの江戸さんの話にもあったように、その河川の個体群を使って増やしていったり保護したりするというのが根本です。資源がほとんどないところでは再生産拠点そのものから作っていかなくてはなりませんし、安定しているところではそれをどうやって維持していくかという戦略になります。

 次にそれぞれの戦略に合わせてどんな保護手段があるのかというのを書いたのがこれです。この中で再生産拠点の保護とか環境対策が本当は一番重要なんですけど、とりあえず今すぐ始める対策としては、なかなか環境自体の対策は簡単にいきませんし、行政も動いてくれない。当面の対策として各地でいま考えられているのは、ほとんど「遊漁対策」だけなんですね。

 しかし、こうしたカテゴリーごとに、それぞれに合った手段を使って、いろんな形で保護対策を具体的にとっていかないと時間切れになってしまうという段階です。今回、イトウ保護連絡協議会ができましたが、こうした組織も活用しながら、とにかく早急に対策をとっていかなければならないと思います。

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コーディネイター みなさんの中には、ご自分のイトウ釣り場を思い浮かべて、これらカテゴリーのどのへんにあたるのかなあ、と思ってらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。さて、では法律的にはどういう対策をとりうるのか、またどんな法律が足りないのか、という点について江戸さんにお話しいただきたいと思います。

江戸謙顕氏(学術振興会科学技術特別研究員
 イトウは絶滅危惧種であり、緊急的な保護措置が必要であることはいうまでもありません。ところがそのための法整備はどうかというと、ほとんど進んでいないのが現状です。

 唯一、例外的に法的な保護対策がとられているのが空知川上流域で、産卵期の捕獲が禁止されています。これは北海道内水面漁場管理委員会指示によるのですが、これによって実際、産卵期に釣りに来る人がかなり減ったので、効果はあったと思います。それまでは産卵場所に釣り人がずらっと並ぶような状況でしたが、委員会指示が出されてガクンといなくなったんです。

 ただ、罰則規定はありません。(違反している)釣り人を発見しても、ただ注意することしかできないんです。また委員会指示は1年ごとに更新されるのですが、このために毎年資料を出して、「効果があるから禁漁にしてください」といちいち頼まなくちゃならないんです。メンドクサイし、いつかは指示を解除しなくちゃならない。もし解除したらどうなるか。いま「金山湖上流域は禁漁」とバーンと地図まで出して禁漁にしていて、逆にいうと「ここにイトウがいる」とみんな分かってる。いま指示が解除されたら、空知川上流でイトウ解禁だっていうことになって、増えたイトウが全部釣られてしまうでしょう。

 そもそも委員会指示では釣り人の規制しかできません。イトウ保護のために生息環境を守ることはできません。空知川は唯一の例外で、これ以外の生息地で保護のための法規制は何もないんです。これでイトウを保護できるでしょうか。

 ではどんな法律が求められるのか。まず開発行為の制限ですが、イトウが減少した最も大きな原因は生息地の破壊と分断化であると考えられます。ダム、堰堤、河川改修、森林伐採などですが、これをなんとか制限できればイトウはあるていど、保全できるのではないか。どういう開発をするか事前に情報公開して、第三者機関を置いてアセスメントし、もしイトウに影響がありそうだとすれば開発行為を制限する、こんな法律があればかなり効果が期待できます。

 ふたつめは、捕獲・移植放流の制限です。たとえば猿払なんか、釣り人がかなり増えていて、キャッチ&リリースする人も多いですけれど、効果はよく分かりません。猿払の個体群は比較的安定しているのでまだいいのですが、たとえば親魚が4匹しかいないと考えられる十勝川なんかで、たまたまそこで釣り人がバタバタと2本くらい釣ってしまったら、それでもうイトウが半分いなくなってしまうわけで、これはやはり規制しなくてはならないでしょう。

 移植放流も問題で、たとえば尻別川の「オビラメの会」は尻別産のイトウを使って本来の尻別イトウを増やしたいと活動しているわけですが、「尻別にイトウいなくなっちまったから猿払からイトウを持ってきてやれ」と、わーっと持ってきてわーっと放流されてしまうと、尻別産と猿払産が混ざってしまって、本来の尻別産のものが失われてしまいます。遺伝的多様性が失われてしまうということです。こうしたことをあらかじめ規制できれば、イトウ保護は一歩前進すると思います。

 3番目は、すでに個体群が崩壊した支流もしくは水系、これに対しては開発規制・釣り人の規制をしてもどうしようもない。復元をしていく必要があり、このための制度が求められます。

イトウの保護に利用可能な法律
法律名
対象地域・個体群
内容
問題点
北海道希少種保護条例 絶滅危機個体群(尻別、釧路、斜里等) 開発行為・移植放流の制限、増殖事業 指定が困難、全面禁漁
町村、流域自治体条例 道内全域 個体群の状況に対応して制定 制定が困難、自治体の協力
河川法 道内全域 開発行為の制限、生息環境の復元 意見反映の程度が不明
内水面漁業調整規則 道内全域、各地域 産卵期の禁漁、有害物遺棄等禁止 制定が困難
漁業法 朱鞠内 捕獲・開発行為等の制限、増殖事業 漁業権をもつ水域のみ

 さて、では現状どんな法律の適用が考えられるでしょうか。一つずつ見ていきましょう。まず北海道希少種保護条例です。指定した種に対して保護管理事業をおこなえる仕組みで、保護管理事業では、解釈の仕方によっては、ちょっと強引に(笑)開発規制もできるのではないか、さきほど述べた内容のかなりの部分をこの条例でできると思います。そう思うのですが問題点もありまして、まず指定種は捕獲禁止、釣りができなくなっちゃいます。あるていど安定しているイトウ個体群に対しては、釣りを認めながら維持管理していくという手法のほうがよいと思うのです。釣りを通してイトウの価値を一番よく知ってますし。人とイトウとの関係を遮断してしまうのは問題だと思います。もうひとつ、この条例はなかなかいい条例なのですが、指定を受けるのが非常に困難なのです。現在指定されているのは一部の高山植物で、生息地が非常に限定されているものです。イトウのように生息域の広い動物が指定されるかどうか。イトウを指定すれば流域全部を指定することになりますからね。当然抵抗勢力が出てくるでしょう。ただ「絶滅危機個体群」については、指定されればかなり効果的だと思います。

 次に市町村条例を挙げました。地域個体群の状態に合わせて中身はかなり自由に制定できるはずです。たとえば猿払村で、釣りを認めながらイトウ保護管理を進めていきたいという条例を作ることもできるでしょう。そういう進んだ条例ができれば画期的なことです。問題点としては、自治体の協力が必要だということ。地元のやる気が不可欠です。開発行為の制限など、あまりに厳しい内容にすると抵抗勢力に潰されますし、緩すぎては効果が出ない。妥協点を模索するのが難しいかもしれません。

 河川法です。1997年の改正で河川環境保護が目的に加わりました。河川計画の立て方も変わって、地元や学識経験者の意見を聞くようにもなっています。環境保全のために河川法は有効になったのではと期待が持てるのですが、どのくらい意見が反映されるのかはまだ不明です。ホントに意見を採り入れてイトウ生息環境の保護につながるかどうか、これはやってみなければ分かりません。住民の側もそうとう具体的な内容をもって提案していかなければ、方向を変えることはできないわけです。やり方によっては有効だけれども、半端にやってしまっては全然効果はないでしょう。

 次は北海道内水面漁業調整規則です。道内全域、もしくは地域を指定して捕獲を制限することができます。産卵期禁漁も可能です。ただ、そもそもイトウを水産資源といえるのかどうか。イトウをこの法律にぶち込んでどうこうすることができるかどうかが問題です。
 次が漁業法。保護増殖のためにいろいろ制限できるんですが、漁業権が設定されている場所でのみ有効ですので、いまのところ朱鞠内湖淡水漁協さんで可能です。

 こうした状況下で何ができるか、考えてみます。まず河川法に基づいて情報収集をして、イトウ保護のための意見をどんどん言っていくことは可能です。今回、イトウ保護連絡協議会ができましたが、各地域でどんどん意見を言うことです。次は漁業調整規則による産卵期の禁漁措置。せめて産卵くらいちゃんとさせてあげようよ、と思うのです。これはぜひ実現させたいです。これも連絡協議会で意見を申し入れたりできるはずです。

 猿払のような比較的安定した個体群の地域では、釣りも認めながら保護管理をおこなうイトウ保護条例をぜひ実現してい欲しい、猿払さんにはぜひがんばって欲しいなと思います。朱鞠内さんや金山湖でもこういうことはできると思います。

 次が尻別・十勝・斜里など絶滅危機個体群における条例の制定です。こうした生息地では何かアクションを起こさなければどうしようもない状況です。全面禁漁しなくてはなりません。

 5番目が釧路における希少種保護条例地域指定。この条例は種指定が非常に困難だと先ほど言いましたが、釧路は比較的やりやすいと思うのです。釧路湿原保全の気運は高まっていますし、流域面積のかなりの部分をこの湿原が占めているので効果も期待できる。

 そして最後が、イトウの管理主体を明記した新しい法律の制定。イトウも含め、日本の法律では野生生物は「無主物」として扱われていて、管理主体が存在しない状態です。絶滅しようがなにしようがだれも責任を負わない。釣ったら釣った人のもの。こうしたことは時代にそぐわないでしょう。イトウを国民の共有財産であるということを明記して、この共有財産を保護する責任主体を明らかにする法律を作るんです。行政がその任を負うことになるでしょうが、もしイトウが絶滅しそうになっているのを分かっていながら対策を何もしなかったら、そういう行政の怠慢を住民が訴えたりだとか、アメリカでは実際にそういう訴訟が起きています。現行法をムリクリ拡大解釈して利用するより、そんな概念の新しい保護法をつくることが必要で、そんな法律を提案していくことにも首を突っ込んでいかなくてはならないのではないかと思っています。

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パネルディスカッション「だれが、どのようにイトウを守るのか」質疑応答編に続きます。

(C)尻別川の未来を考える オビラメの会 1999-2008