イトウが道内各地で激減していると言われ続けて久しい。レッドデータブックにも絶滅危惧種として記載され、絶滅が憂慮されている。しかし、「実際に今現在、北海道内にどのくらいの数のイトウが生息しているのか?」、「どの程度絶滅の危険性が高まっているのか?」という問いに対して、明快に答えることのできる定量的なデータはほとんど集められてこなかった。また、減少しつづけるイトウを絶滅から救うための基礎となる、イトウに関する生態学的知見についても、これまでに十分な研究がなされてきたとは言いがたい。
演者は道立水産孵化場の川村洋司氏らと共同でこれまで延べ9年間に渡り、おもに空知川水系を中心にイトウの生態研究を続けてきた。そして、そこで得られた知見をもとに、道東や道北等のイトウ生息水系においても、生息状況等について調査を行なってきた。本報告においては、生態学的調査研究が、本種の効果的な保全策を講じるうえで不可欠であることを示すと同時に、今我々が為すべきこと、我々にできることとは何なのか、について皆で考えていきたい。報告はおもに以下の内容に沿って行われる予定である。
| 0. 希少種の保全生物学的研究の必要性つくりだされる希少種 |
1. 希少種イトウ
イトウとはどんな魚か?/イトウの生活史/イトウ保全の意義/保護の指標となる種/指標種としてのイトウ/イトウをとりまく現状 |
2. 生息数の定量化
全道スケールでのイトウ生息水系の把握/イトウの繁殖が確認された水系/イトウ生息水系における繁殖河川の特定
(空知川水系/雨竜川水系/十勝川水系/釧路川水系/尻別川水系)
イトウ生息水系における個体数の推定/産卵床数と推定メス数/道内各水系における推定親魚数 |
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3. イトウ個体群の空間構造と絶滅プロセス
産卵遡上親魚の再捕獲率/母川回帰性の検定/母川回帰によるメタ個体群構造/母川回帰による絶滅プロセス/隣接する産卵河川と絶滅河川
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4. イトウ繁殖集団の齢構成と個体群動態
雌雄で重複しない齢構成と体サイズ/卓越年級群の存在による繁殖集団の動態予測
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5. イトウ稚魚の生活史と氾濫原
稚魚期の高い死亡率/稚魚の長距離流下分散/稚魚の生息場所としての氾濫原/氾濫原の保全 |
6. 個体群の復元
なぜ移植放流はいけないのか?/イトウ個体群復元計画
個体群復元の試み(1)・・・尻別川
個体群復元の試み(2)・・・十勝川 |