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「尻別川の未来を考えるオビラメの会」は、北海道尻別川に生息する「南限のイトウ」保護に取り組むNGOです。

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江戸謙顕(えど かねあき)
1970年、東京都に生まれる。2001年、北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了。2002年1月から学術振興会科学技術特別研究員。北海道環境科学研究センター(札幌市)に在籍。専門は保全生物学。著書に『生物と環境』(共著、三共出版、2002年)がある。「尻別川の未来を考える オビラメの会」会員。edo@hokkaido-ies.go.jp

絶滅から救うために何ができるのか

 イトウが道内各地で激減していると言われ続けて久しい。レッドデータブックにも絶滅危惧種として記載され、絶滅が憂慮されている。しかし、「実際に今現在、北海道内にどのくらいの数のイトウが生息しているのか?」、「どの程度絶滅の危険性が高まっているのか?」という問いに対して、明快に答えることのできる定量的なデータはほとんど集められてこなかった。また、減少しつづけるイトウを絶滅から救うための基礎となる、イトウに関する生態学的知見についても、これまでに十分な研究がなされてきたとは言いがたい。
 演者は道立水産孵化場の川村洋司氏らと共同でこれまで延べ9年間に渡り、おもに空知川水系を中心にイトウの生態研究を続けてきた。そして、そこで得られた知見をもとに、道東や道北等のイトウ生息水系においても、生息状況等について調査を行なってきた。本報告においては、生態学的調査研究が、本種の効果的な保全策を講じるうえで不可欠であることを示すと同時に、今我々が為すべきこと、我々にできることとは何なのか、について皆で考えていきたい。報告はおもに以下の内容に沿って行われる予定である。

0. 希少種の保全生物学的研究の必要性つくりだされる希少種
1. 希少種イトウ
イトウとはどんな魚か?/イトウの生活史/イトウ保全の意義/保護の指標となる種/指標種としてのイトウ/イトウをとりまく現状
2. 生息数の定量化
全道スケールでのイトウ生息水系の把握/イトウの繁殖が確認された水系/イトウ生息水系における繁殖河川の特定
  (空知川水系/雨竜川水系/十勝川水系/釧路川水系/尻別川水系)
イトウ生息水系における個体数の推定/産卵床数と推定メス数/道内各水系における推定親魚数

3. イトウ個体群の空間構造と絶滅プロセス
産卵遡上親魚の再捕獲率/母川回帰性の検定/母川回帰によるメタ個体群構造/母川回帰による絶滅プロセス/隣接する産卵河川と絶滅河川

4. イトウ繁殖集団の齢構成と個体群動態
雌雄で重複しない齢構成と体サイズ/卓越年級群の存在による繁殖集団の動態予測
5. イトウ稚魚の生活史と氾濫原
稚魚期の高い死亡率/稚魚の長距離流下分散/稚魚の生息場所としての氾濫原/氾濫原の保全
6. 個体群の復元
なぜ移植放流はいけないのか?/イトウ個体群復元計画
  個体群復元の試み(1)・・・尻別川
  個体群復元の試み(2)・・・十勝川
イトウの保護に利用可能な法律
法律名
対象地域・個体群
内容
問題点
北海道希少種保護条例 絶滅危機個体群(尻別、釧路、斜里等) 開発行為・移植放流の制限、増殖事業 指定が困難、全面禁漁
町村、流域自治体条例 道内全域 個体群の状況に対応して制定 制定が困難、自治体の協力
河川法 道内全域 開発行為の制限、生息環境の復元 意見反映の程度が不明
内水面漁業調整規則 道内全域、各地域 産卵期の禁漁、有害物遺棄等禁止 制定が困難
漁業法 朱鞠内 捕獲・開発行為等の制限、増殖事業 漁業権をもつ水域のみ
(C)尻別川の未来を考える オビラメの会 1999-2008