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にしきぎ

平成3年4月6日発行

 久しぶりに父が自費出版した歌集「にしきぎ」を手にとりました。 わたしが生まれる少し前に突然の心筋梗塞により63歳の若さでこの世を去った祖父の歌をまとめた本です。
 信州の松本平を眼下にながめ、北アルプスを遠くに仰ぐ山の中腹にある田舎で育った祖父は、60歳で教職を退くまで初等教育に尽力していたそうです。
 歌集「にしきぎ」は、祖父が土蔵に棚を作り保存してあった短歌雑誌「アララギ」に載った祖父が詠んだ歌を、父が年巻号順にすべて拾い出して収めたものです。

 父も祖父と同じく教職に就いておりました。 しかし興味の対象が祖父とは全く異なっていたようで、残念ながら歌心を持ち合わせていません。 そのため、特に選ぶことなくただ順番に拾い出し載せたそうです。
 わたしも父同様歌心は全く無いため、学校の宿題では「あの山の向こうに何があるのかな」(季語が抜けてました・・・)と歌った人です。 そんなわたしですが、歌集「にしきぎ」から気に入っている歌を載せていきたいと思いこのページを作り始めました。
 祖父が育った地と同じ山辺の地で、のんびりと生まれ、のんびりと育ちました。 歌の善し悪しは全くわかりませんが、のどかな情景がうかんでくるような歌を選び、季節に合わせて載せていきたいと思っています。

祖父60歳 退職後の一句
 冬の日の暖かくさす家の縁乗鞍の嶺を遠くながめつゝ

大正十五年

 棚にたるる長き短き葡萄のふさ
   見つつ唾はくまだ食うに早し

 窓下の葡萄の棚に雨はふり
   葉がくれに見ゆる房の濡色

昭和十五年

 枝のままの柿も吊るしつ大豆殻(まめがら)や
   木炭などをそなへ年ほがむとす

 耕せる畠の土のしろくまふ
   雪あらぬ冬の風は乾ける

昭和十三年

 夕ぐるる和知場峠にわが掘りし
   白根葵の根土にほへり

 白根葵の花ひらく谷暮れゆけば
   土やはらかく踏みてくだれる

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