注意!メニュー食事療法の基本CD食食品(表)「まんぞく君」リンクレシピ募集等

1. クローン病食(CD食)

 

  1. 腸管安静保持のため、低脂肪・低残渣を基本とし、段階は1度〜6度に分け、形態は流動、三分、五分、全粥、米飯としています。
     
  2. クローン病では脂肪吸収障害が存在し、また脂肪による腸管刺激を防止すべく低脂肪を原則としています。脂肪を油脂として使用する際には、胆汁や膵酵素の作用がなくても小腸で吸収しやすい中鎖脂肪酸か、抗炎症作用があるしそ油を使用します。
     
  3. 繊維については野菜・海藻類など非水溶性繊維の多い食品を厳しく制限し、ビタミン、ミネラルの摂取不足は野菜ジュース、スポーツ飲料で補うようにします。食物繊維の中でもペクチンは便中の過量な水分を吸収し胆汁酸を吸着する作用があり、腸管への刺激も少ないので、腸管狭窄のない患者に対しては、この食事箋ではペクチンを多く含む食品を多用します。
     
  4. タンパク質については食事性抗原として炎症の発現や増強に関与している n-6系脂肪酸を多く含む肉類などを減らし、逆に腸管病変部の炎症を抑える作用を有する n-3系脂肪酸を多く含むいわしなどに代表される青魚を中心としています。
     
  5. 個々の患者においては、病変の部位、範囲、腸管狭窄や瘻孔の有無、消化吸収能が異なり、膨満感、腹痛、下痢を誘発する食品もさまざまであるため、すべて個人対応食としています。さらに栄養士がベッドサイドを訪問し、患者の食習慣を把握したうえで、CD食の内容と食事のすすめ方、食品選択と調理法などを説明し、食事に理解と興味を持ってもらうようにしています。また調査表に残菜および症状の記録欄を作り、これを参考にして成分栄養剤 ED と経口食の摂取カロリー比率や食事のすすめ方などを検討しています。社会保険中央総合病院の外来では食事への理解を深めるため、定期的に料理講習会を開いています。

2. 脂肪


 
すべての生物は糖質、タンパク質から飽和脂肪酸を体内で合成することができます。しかし、リノール酸とα-リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸は植物ではつくられますが、動物体内ではつくれません。このような体内で合成できない必須脂肪酸は、経口で体内に摂り入れなければなりません。
 成分栄養剤 ED のエレンタールは、非常に低脂肪で、腸への刺激が少なくクローン病においてはいちばん有効ですが、逆に必須脂肪酸が欠乏してしまうことが落とし穴といえます。
 リノール酸の必要量は体重 60kg の人で1日1〜2g といわれ、リノール酸として油で摂取しなくても、ごはん、パン、肉、鶏肉などに含まれていますので、この量は十分にまかなえます。成分栄養剤 ED と経口食との併用はこの必須脂肪酸の欠乏を防止できる利点も持っています。
 動物性脂肪や n-6系のリノール酸を多く摂るとアラキドン酸がつくられ、そのアラキドン酸からプロスタグランディン、ロイコトリエンなどのエイコサノイドがつくられ、これらが腸粘膜の炎症を亢進させるといわれています。特にロイコトリエンB4は、活性酸素の活性化を高め、また有害酵素を出し悪影響を及ぼしています。これを抑える作用を有するのが n-3系のα-リノレン酸、EPA、DHAです。

 【まとめ】

  1. 腸管の安静保持のため、油の総摂取量を減らします。
  2. 動物性脂肪(飽和・一価不飽和脂肪酸)と、リノール酸系の脂肪を減らします。
    ・肉類は脂肪の少ない柔らかい部位を選びます。
    ・バター、ラードなどの使用は控えます。
    ・リノール酸系の多い食用油、マヨネーズ、ドレッシング類の使用は控えます。
  3. EPA、DHA などの n-3系の脂肪酸を多く含む魚を積極的に摂取するようにします。
  4. n-3系の脂肪酸を多く含む、しそ油、えごま油を使用します。n-3系のしそ油、えごま油の効果を有効に発揮させるためにはn-6系のリノール酸の油と混ぜないこと、リノール酸系の使用量を減らすことが大切です。しそ油やえごま油など多価不飽和脂肪酸系の油には酸化防止剤としてビタミンC、ビタミンEが入っていますが、空気にふれたり、光に当たると過酸化しやすく変化しやすいので、次に示すように扱い方に注意しなければなりません。
    ・封を切ったらなるべく早く使い切ること。
    ・貯蔵中は空気にふれないよう密封しておくこと。
    ・温度が低く、また光の当たらない所に貯蔵すること。
    ・加熱した油の残りはきれいにこして冷蔵庫で保管すること。

3. 魚の栄養価


 栄養学的に優れている点は、含まれている EPA や DHA がクローン病においては炎症を抑える作用を有していることが第一にあげられます。
 DHA には他に、脳や神経の機能を高く保つ働きがあるのでぼけを防止したり、学習能力を高めるといわれています。
 他には皮膚や目を健康にしたり、癌の発生を抑える効果があるといわれるビタミンA、肥満やニキビの予防、消化液の分泌の促進、食欲増進、神経の調節作用があるビタミンB1、皮膚炎、口内炎などの予防になるビタミンB2、Caの吸収をよくして骨を丈夫にするビタミンD、甲状腺ホルモンであるサイロキシンの重要な構成成分であるヨウ素などを含んでいます。
 魚のタンパク質は、栄養学的には完全なものが大部分で、米や小麦に含まれるタンパク質の欠点を補ううえで役立っています。

4. 調理と EPA、DHA


 EPA、DHA を多く含むからといって、同じ魚ばかりを食べる必要はありません。旬の魚を食べてほしいのです。日本人は昔から旬の野菜や果物、魚を味わうことで四季の移り変わりを楽しんできました。四季の区別がはっきりしている日本ならではの食文化です。旬の野菜や果物はみずみずしく、魚もうま味成分であるグルタミン酸が増え、脂ものり、おいしくなります。
 また EPA、DHA に関しても旬の時期に含有量が多くなります。また EPA、DHA は調理加工した食品からも摂れることが証明されています。
 ・生のいわしの油に含まれている EPA の割合・・・約 13%
 ・缶詰の場合、乾物の場合・・・約 13%
このように割合は変化しません。手作りの料理がいちばん望ましいのですが、忙しくて料理できない、一人暮らしでなかなか・・・という人はこういった加工食品を利用しましょう。
 調理方法と EPA の割合では以下のような実験結果があります。
 ・煮る、蒸す・・・生と変わらず。
 ・焼く・・・油がしたたり落ちて約 20%の減少。
 ・油で揚げる・・・揚げるのに使用した油の脂肪酸がいわしの肉の中に入り、それと同時にいわしの油が溶け出す。油の全体量は生のものより1.6倍も増え、EPA の量は少なくなってしまう。
 EPA を効率よく吸収するためには、調理方法を選択する必要があります。いろいろ工夫しておいしく食べましょう。
 魚の過酸化脂質については、新鮮なものを新鮮なうちに食べるのがいちばんです。しかし万一、油が酸化していたとしても、においや味が悪くなり、人間には鼻や舌で見分ける能力が備わっていますので、問題ないものと思われます。

5. 食物繊維


 食物繊維は水に対する親和性から水溶性と難水溶性に分けられます。植物細胞壁の主構成成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンは難水溶性です。植物体の貯蔵物質や分泌物質は水に溶けて粘性を示すものが多く、ペクチン、植物ガム、粘質物などは水溶性です。
 ペクチンなど水溶性食物繊維は、保水性・ゲル形成能などの特性を持っているため、便中の水分を吸収し、便を有形化し、下痢を軽減させます。また胆汁酸を吸着する働きがあるので下痢は少なくなります。
 そのほか、食物繊維は腸内細菌叢にも影響を与え、乳酸菌などの有機酸を産生する菌を増加させ腐敗菌を減少させますので、変異性物質の生成を抑制する働きがあります。今まで食物繊維にはカロリーがないとされていましたが、大腸で細菌に分解され、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸と二酸化炭素とメタン、水素などのガスを産出します。その大腸でつくられた短鎖脂肪酸の 80%以上が吸収されます。吸収されると短鎖脂肪酸は1g 当たり 3.5 kcal と極めて有効なエネルギー源となります。ペクチンのように微生物に分解されやすいものは、ほとんどがエネルギーとして吸収され、これが腸の栄養となって腸管の微繊毛の再成を促すようになります。
 以上のことより、クローン病に対し水溶性繊維のペクチンが有効と考えられています。ペクチンを多く含む食品例として、りんご、バナナ、ペクシー、フルーチェなどがあげられます。

6. 乳酸菌


 
乳酸菌やビフィズス菌はビタミンを合成し、消化吸収を補助する働きがあり、また腸内で酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を多量につくり、腸のエネルギー源となります。また腸内の pH を低下させ、病原菌や有害菌の増殖を抑制し、腸内細菌叢を整える働きがあります。
 クローン病患者の腸内細菌は、嫌気性菌の顕著な減少が認められていますので、乳酸菌などの入ったヨーグルト類は比較的安全です。
 オリゴ糖は酵素によって分解されずに消化管下部に到着し、乳酸菌、ビフィズス菌を増殖させ、逆に有害菌を減少させることが認められますので、ヨーグルト類とともに摂取すると特に効果があります。しかしオリゴ糖は難消化性糖質であるため、一度に多量摂取すると下痢をすることもありますので、量の加減が必要です。

7. カルシウム


 クローン病患者においては Ca やビタミンDの吸収が低下するため、長管骨を中心とした骨粗鬆症に陥りやすいのです。一般に骨粗鬆症の治療に、牛乳が推奨されていますが、クローン病患者では牛乳により腸管病変部が悪化するといわれてきました。しかし乳糖負荷試験と脂肪負荷試験を行い、これらを検討した結果、クローン病においては乳糖不耐症は意外に少ないことがわかり、牛乳で下痢・腹痛を起こすのはむしろ、広範囲な回腸病変による乳脂肪の消化吸収能の低下が原因と考えられます。牛乳の脂肪酸はパルミチン酸、ステアリン酸などの n-6系であるため、Ca 源として乳製品はできるだけ低脂肪のスキムミルク、ローファット牛乳を推奨しています。
 Ca は乳製品、小魚、大豆製品、藻類などに多く含まれていますが、そのうち乳製品がいちばん吸収がよいといわれています。これは乳製品にはCPP(カゼインフォスフォペプチド)とよばれる Ca 吸収促進蛋白が含まれているからです。Ca の吸収を促進させるビタミンDは、食品ではいわし、かつお、あじなどの血あい肉や干ししいたけなどに多量に含まれています。ビタミンDは食品からだけでなく、日光に当たることによって皮膚の下で合成されるので、Ca を効率よく吸収するには日光浴と適当な運動が奨められます。
 逆に Ca の吸収を抑制するのがリン(P)で、Pが血液中に増えると骨に蓄積されている Ca を引き出してしまう働きがあります。つまり、ポリリン酸を多く含むインスタント食品、清涼飲料水などの摂取は控えなければなりません。ポリリン酸は食品添加物で、変色防止剤、鮮度保持剤、風味改良剤として使用されています。
 乳製品がどうしても苦手な人は機能性食品を利用してもよいのです。卵の殻や貝の殻を粉末にして食品に入れたものが多く、ジャネフの Ca 卵ボーロ、旭化成のカルソフトクッキー、大塚製薬のザ・カルシウム、森下のヘルッシュ Ca などがあります。

8. 鉄


 鉄の1日の必要量は 10mg ですが、女性や貧血・出血がある人はもう少し付加する必要があります。鉄分は、レバー、赤身の肉、魚、緑黄色野菜などに多く含まれます。同一の鉄含有量でも食品により鉄の吸収が異なり、一般に植物性のものより動物性の方が吸収がよいといわれています。特にレバーは鉄分やビタミン類を豊富に含んだ食品です。しかし肝臓はその動物の解毒器官でもあるので飼料などに含まれている抗生物質、ホルモン剤などの薬物残留の問題点があります。このレバーを料理する際には流水で 30〜40 分血抜きし、一度下ゆでしてから調理すると不安要因はかなり防げるといわれています。
 またレバーは味覚においても嫌う人が多いので、吸収のよいヘムを含む機能性食品を推奨しています。鉄は、緑黄色野菜やかんきつ類に含まれるビタミンCとともに摂取すると吸収がよいという性質を持っています。

9. 食事の献立例


 最後に主な食品に関する注意点と献立の具体例をあげておきます。分量はすべて1人分です。

 電子レンジで作るスクランブルエッグ 

 いわしのトマトソース煮 

 呉汁 

 かぶら蒸 

 塩焼豆腐 


(上記の献立例はメニューページより紹介させていただいております)
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以上、「炎症性腸疾患ケアマニュアル」より転載
高添正和 前川厚子:医学書院 p.153-166,1997

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