BACK NEXT U  P HOME

はじめに
フェンダーがグリースバケットトーン(Grease bucket tone)ってのを出しているのを最近知って、 ”フェンダー”の単語をネットで探していたら、G&L時代のFenderの特許が出ていて、ふと思い出したので最近のフェンダー社のトーン回路とG&L時代のレオフェンダーのトーン回路を一緒に並べてみました。

今回の話はCable ケーブルで音が変わるか?Passive Tone Control前回の話が元になっているので、一度読んでみて下さい。m(__)m


グリースバケットトーン(Grease bucket tone)(Fender TM)
「グリースバケツの音色」、なんだか訳の分からないネーミングですね。なんつーか、やっぱりFATをイメージさせる言葉なんでしょうか?(^◇^;)
最近のフェンダーの比較的高級機種で採用されている回路のようで、このネーミングはフェンダーの商標のようです。
Grease Bucket
CT10.1μF
RT1250kΩ A
CT20.02μF
RT24.7kΩ
RV250kΩ A

つまみがMAX付近ではCT1、RT1が支配的で従来型のトーンコントロールと同様な動作をしているけど、つまみを絞っていくと、CT2、RT2が効いてきて最終的にはCT2、RT2の直列回路になります。
私を含めて、多くの人はフェンダー系ギターのトーンコントロールなんてこんなもんだと思って、ほとんどMAX近辺で使っていたわけですが、動かせるエリアを広くするようにした発想だと思います。
CT1が従来のフェンダーより大きい値をとっているところも気になりますが、私も機会があったら試してみようと思います。

PTB(Passive Treble Bass)(G&L TM)
Leo Fenderの足跡とトーンまわりの回路を見ているとLeoが当時何を考えていたのかある程度推測が付きます。
Leoはフェンダー退社後、Music Manでギターを作てっいます。この時期はベースはブーストのみでカット方向にする必要はないと思っていたようです。(生涯、セールスよりクリアーでブライトなトーンを追求したLeo Fenderのギターとしては意外な事ですが…)。
Music Manが経営まわりでゴタゴタが起こり、大好きな”開発”を気楽に行えなくなったLeoはさっさとMusic Manを去り、G&Lと言う会社を興し、新たなギターを開発します。(たぶん、ピックアップ、ブリッジとネックの開発が好きだったんじゃないかって気がします。)
で、G&Lの時期にはMusic Manの頃とはうってかわって、カットしかできないベースコントロールを装備します。
回路としては特に珍しくもないトーンコントロールですが、レスポールのレコーディングモデルみたいな特殊なギター以外ではあんまり見ません。
パッシブが前提のギターの場合、出力電圧の大きさが勝負の所もあるので、普通はそれを嫌ってだと思いますが、あんまり有効な使い方が見つかっていないのもその要因だと思います。(個人的にはテレキャスター式のボリュームコントロールでも十分な気もします…)
PTB(Passive Treble Bass)
CR0.001μF
CT0.022μF
RT500kΩ A
CB0.0022μF
RB1MΩ A
RV250kΩ
CH200pF

さすがに、こんな回路では特許は取れないでしょうから、こっちもPTB(Passive Treble Bass)って商標をG&Lがとってます。

SPLITTER SW(PAT.4319510)
実は、今回のコンテンツで一番紹介したかったのはこの回路です。
SPLIT SW
C0.1μF

この回路はLEOがG&L在籍時に取ったパテントです。
Leoの特許って、大手メーカーが独占をねらいに言ってギチギチに固めた特許と違って、「良いアイディア思いついたからちょっと役場に残してくる。」って感じが良いです。
たぶん、この時代既に、こういうネタは出ていたと思うんですが、エレキギターのムーブメントを作ってきた男だから価値が出てくる特許です。(自分で流行を作って、その権利を保護する感じでしょうか…)




閑話休題
いろんな意味で、当時のLeoが目指していた物がどんな物だったか想像できる面白い回路なので、 ピックアップまわりの回路は、うちではあまり扱っていないのですが、書きます。

この回路はON-ON-ONの3PDTスイッチを使った、ピックアップのモード切替スイッチで、 図はセンターを選択している時の場合です。

UP時とDOWN時は他にも類例が沢山あるので、特に説明はしません。
CENTER時の動作に絞って説明します。
  1. コンデンサは低い周波数は通さないけど高い周波数は通しやすい性質があります。
  2. ここで、Cのリアクタンスが100Hzにおいて充分低くなると仮定します。
  3. ピックアップで拾った100Hz以上の信号は上のコイル(ピックアップ)->C->GNDと流れます。
  4. この事から、100Hz以上の信号にかかるLは上のピックアップの分だけになります。
    その結果、ギターが出てくる音はシングルコイル時と同様の、高い周波数にピークを持ったブライトな音になります。
  5. 次に100Hz以下をピックアップが拾った場合は、Cのリアクタンスが充分大きいので電流が流れず、上のコイル(ピックアップ)->下のコイル(ピックアップ)->GNDと流れます。
  6. このことから、100Hz以下の信号に対しては通常のハムバッカーの動作と同様に、両方のピックアップのLを足し合わせる事になります。(2Lで形成されるピークより100Hzはずっと低いので関係ありません。)
  7. ただし、上のコイルで発生した電圧と下のコイルで発生した電圧は直列接続されていますから、 ハムバッカーと同様に上のコイルと下のコイルで発生した電圧を合わせた物になります。
  8. 上のコイルと下のコイルが同じ程度の出力だった場合は、シングルコイル時に発生する電圧の2倍になります。(約6dB UP)
  9. ここで、通常のハムノイズは50Hz or 60Hzが支配的の場合が多いですが、どちらも100Hz以下なので、Cはつながっていないのと同様なので、ハムバッカー同様にハムキャンセルされます。
あくまでも、私の想像ですが、シングルコイルピックアップの音でハムキャンセルしようとしたら、ついでにBassブーストもついて来ちゃったって感じじゃないでしょうか?(^◇^;)

実際の所、C=0.1μFですから、上のような話はそんなにうまく動かなくて、聴感で決めた感じがします。
聴感で決めたと私が思っている理由をちょっと書きます。('10/3/2)
  1. PUのインダクタンスが3H(シングルにしてはちょっと大きめ)と仮定して、100Hz時のインダクタンスを計算すると
  2. Zl=2πωL=2*π*100*3≒1.8kΩ
  3. 実際のG&Lのギターに付いているCはC=0.1μFですから、インダクタンスを求めると
  4. Zc=1/(2πωC)=1/(2*π*100*0.1*10^(-6))≒16kΩ
  5. 上の様になるので、ピックアップの代わりにCに電流が流れるようには成りません。
  6. Leoの言う事が成り立つ為には、少なくともCは100倍のC=10μF位は必要という計算になります。

おわりに
Leo FenderはMusic Man時代に「BassのCutは不要、Boost方向で充分」と考えているようでした。
しかし、G&L時代に手のひらを返したように、Bass Cutしか出来ないコントロールを採用しています。
なんつーか、Leoにしては、方向性の見えない事をやっているなーと思っていたのですが、SPLITTER SWの回路を見てから、「Bassが欲しい人にはこれで対応していたんだな。」と納得がいきました。

なんつーか、Fender時代の天敵、ハムバッカーをMusic Man時代に採用しつつも、ブライトな音を追求し、G&L時代に再びシングルコイルでブライトな音を好むユーザーをつかみつつ、Jazz系のまろやかな音を好むユーザー層も取り込もうと戦ってきた、職人エンジニアの心意気を見た気がします。


BACK NEXT U  P HOME


Last Up Date '10/03/02
Original '10/02/28