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はじめに
今回は、最近のフェイザーには必ずついているツマミ”レゾナンス”の効果を 伝達関数を使って、解明しようと思います。


RESONANCE、REGEN、FEED BACK
70年代位までの普及フェイザーにツマミ(Knob)は大抵SPEED(LFOのSPEED)とDEPTH(LFOの振幅)の2個でした。
その頃は、軽い”しゅわしゅわ”した、乾いたいかにもフェイザーな音 が良く使われていました。(Univebeみたいな例外はありますが、)
80年代のフュージョンブームの到来により、リーリトナーが使っていた ミュートロン(Mu-tron)のバイフェイズ(Bi-Phase)やスタッフのエリックゲイルのギター、リチャードティーのエレピなんかで有名なエレクトロハーモニクス(Electro Harmonix)のスモールストーン(Small Stone)の大ヒットにより、もっとウェットな感じのするコクの深いまろやかな音が流行しだします。

その頃からフェイザーに必須になったツマミが

で、どれも位相器の帰還回路に細工してフィルターの効果を加えた効果でした。(名前は違うけど同じ効果だった。)

帰還をかけた位相器
帰還をかけた位相器(All Pass Filter)がどんな伝達関数になるか計算してみましょう。



上の左の図で、位相器(APF)の部分はフェイザーの伝達関数の時に求めた、伝達関数が使えるので、H(s)と仮定して、
伝達関数H(s)に負帰還をかけると、全体の伝達関数がどうなるか計算してみましょう。


まず、加算器(○に+マークが付いている)の出力に着目します。下から入っている線の小さい "-"マークは減算を意味する印です。
ですから、加算器の出力は(Vi-βVo)です。
その出力にH(s)をかけた物がVoですから、一段目の式が成り立ちます。
二段目の式以降は上の式を解いていく手順ですから、順序よく解いていけば理解できると思います。

ここで、上の式にフェイザーの伝達関数の時に求めた、 二段接続された位相器(APF)の伝達関数を代入します。
それ以降の最後の行まで、気合いで解いていった(^◇^;)過程です。
ただ、最後の行で(1+β)を外に出しているのは、sの部分の見通しを良くするために良く使うテクニックですので、憶えておいて損はないと思います。


前回同様、1/(1+β)以外の部分を吟味してみましょう。
sVo/Vi解き方意味
01s=0を代入ω=0の時、1
ω0-(1+β)/(1-β)(jω0/ω0)^2=-1なのでsの項だけ残る
ω=ω0の時、βの関数。
(下の吟味参照)
1分子、分母をs^2で割ってs=∞を代入ω=∞の時、1
周波数が高いとき

ωが0でも∞でも1ですから、ω0周辺以外の部分はフラットのようです。
ではω0周辺はβにより変化しているので、ω0時のβについて吟味してみましょう。
β専用のアンプをつけていない場合、一般的にβは
0≦β≦1
ですから、この間で考えます。

βVo/Vi意味
0-1β=0で帰還無しの時と同じ式になっているので、この計算はたぶん間違っていないだろうという予想がつきます。(^◇^;)
二段の位相器(APF)と全く同じ周波数特性になります。
0≦β<1-(1+β)/(1-β)
|Vo/Vi|=(1+β)/(1-β)>1ですから、上に凸のグラフになり、BPFになります。
1
全帰還
-∞β=0でVo/Vi=-∞ですから、たぶん電源のレールで制限された矩形波で発振します。
これより、β=0でAPF、0<β<1でBPFになることが解ります。

FEED BACK付きフェイザー
上で求めた、帰還付きの位相器(APF)に原音を加えてフェイザーを構成したときの伝達関数を計算してみましょう。


上で求めた伝達関数をF(s)として、原音を加えます。


フェイザーの伝達関数の■フェイザーの伝達関数と同様に、原音を加えるのは1を加えることと一緒です。
あとは、ひたすら代入計算を整理するだけです。

sに依存しない項を左に寄せることが出来たので、右側のsの式だけ吟味してみましょう。
sVo/Vi解き方意味
01s=0を代入ω=0の時、1
ω0-(β(1+β))
/((1-β)(2+β))
(jω0/ω0)^2=-1なのでsの項だけ残る
ω=ω0の時、βの関数。(下の吟味参照)
1分子、分母をs^2で割ってs=∞を代入ω=∞の時、1
周波数が高いとき

ωが0でも∞でも1ですから、ω0周辺以外の部分はフラットのようです。
ではω0周辺はβにより変化しているので、ω0時のβについて吟味してみましょう。

ここで、Q(β)=-(β(1+β))/((1-β)(2+β))として、特異になりそうな点を考えると、 β=0,-1,1,-2が特異になりそうな点です。
しかし0≦β≦1
ですから、対象はβ=0,1だけです。

また、伝達関数として考えると分子=分母となるβを求めると、 左になります。

以上から、β=0,0<β<(-1+√5)/2,β=(-1+√5)/2,(-1+√5)/2<β<1,β=1の五つの場合について検討します。


βVo/Vi意味
β=00β=0で帰還無しの時と同じ式になっているので、この計算はたぶん間違っていないだろうという予想がつきます。(^◇^;)
二段のフェイザーと全く同じ周波数特性になります。
0<β<(-1+√5)/2-((β)/(2+β))/((1-β)/(1+β))試しに0.5を代入すると
|Vo/Vi|=|-((0.5)/(1+0.5))/((1-0.5)/(1+0.5))|
=|-2/5|<1
ですから、下に凸の形になりNF(Notch Fileter)、BEF(Band Elimination Filter)になります。
β=(-1+√5)/2-1ちなみに
Vo/Vi
=(s^2-2(√5-2)s+1)/(s^2+2(√5-2)s+1)
になり、|Vo/Vi|はフラットなAPF(All Pass Filter)になります。
(-1+√5)/2<β<1-((β)/(1+β))/((1-β)/(1+β))試しに0.7を代入すると
|Vo/Vi|>1
ですから上に凸の形になり、BPF(Band Pass Filter)になります。
β=1
全帰還
-∞β=0でVo/Vi=-∞ですから、たぶん電源のレールで制限された矩形波で発振します。

以上のことから、βを0から増やしていくと NF(Notch Fileter)からAPF(All Pass Filter)を経由してBPF(Band Pass Filter)になる。

下に凸の形から、フラットを経由して上に凸になる。

ことがわかったと思います。

時代背景
位相器(phase shifter)に帰還(Feed Back)をかけるというアイディアは、回路屋としては特殊な部類に属するエフェクターの回路屋としては、それほど突拍子のないアイディアではないと思います。
しかし実際には、ミュートロン(Mu-tron)のバイフェイズ(Bi-phase)、それに続く、エレクトロ・ハーモニクス(Electro Harmonix)のスモールストーン(Small Stone)が大ヒットするまでは、 ジェット・フェイザー(Jet phaser)なんかでしか見ない、特殊なツマミだったような気がします。

可変抵抗素子は、当時こんな感じで棲み分けをしていました。
可変抵抗の素子代表的な機種特徴
FET 普及機の多く 電池駆動可能。FETがダイオードとして動作してしまってどうしても、歪みっぽくなる。しかし、それがギター用フェイザーの隠し味として作用して、名器のあの音の秘密だったりした。
Photo Coupler Mu-tron Bi-phase、Univox UNI-VIBE 消費電力が多いため、AC駆動が必須だった。方式的に高速動作は苦手。フェイザー用としてはAC駆動にすればダイナミックレンジ等の色々な面で有利になり、クリアーな音が出せた。
OTAElectro Harmonix Small StoneOTAはOperational Transconductance Amplifierの略。特殊なOP-AMPであるため、IC化されたのは後発で、RCAのCA3080で実用化されて徐々にエフェクターでも使えるようになってくる。原理的にPhoto Couplerより高速動作が出来るけど、ダイナミックレンジは劣る。ギター用のフェイザーとしてはFET式よりダイナミックレンジが広く取れ、Photo Coupler式よりは消費電力が低くできる所が魅力だった。


これと相まって、FET入力のOP-AMPの普及と相まって、エフェクターのようなコンパクトな回路でもLFO(Low Frequency Oscillator)の発振周波数を下げることが可能になってきます。

その為、じわじわした音色変化を表現することが可能になり、フュージョンにマッチした結果、必須な機能として定着しました。

もし、フェイザーとしてFET式しか無かったら、どうしても歪みっぽくなり、ジェットフェイザーの様な色物ペダルの専用ツマミとして影が薄いままだったかも知れません。

実装されて使い方が見つかってこその技術なんだと思います。


最後に
今回も、式を書くのに苦労しました。orz
さらに√を代入する式が沢山あったので、計算に手間取り、頭から火が出るかと思いました。(・_・、)

書き終わった今だからの感想ですが、

ということで、NFB masonの重要な素養を示すことが出来て満足できる内容になったと感じています。


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'12/01/21