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はじめに

バッハに”Well-Tempered Clavier”(平均率ピアノ曲集)と言う名曲があります。また、これに対応したプリペアードピアノ(弦に消しゴムとか挟んで変な音がするようにしたピアノ)の作り方を記載したウェル・プリペアード・ピアノと言う名著があります。
これらの名作にあやかって我々の目指す”Well Tempered Stomp Box”とはどんな物か考えてみましょう。


設計編

エフェクター設計時に気を付けておきたい事柄など。

スペック
不特定多数のユーザーを相手にしているメーカーと違い、きわめて限定された相手用に製作すれば良いのですから、必要以上に高性能、高機能を目指す必要はありません。(メーカーの場合、スペック競争と言う非常にむなしい戦いを強いられます。)これらを追求するにはそれなりの技術が要求されますから、それよりは使い方を限定して使った方が良い結果になる場合があります。

スイッチ
SWTCH TIPS(スイッチの使い方) に概ねの趣旨は書きましたが、ちゃんと設計された電子スイッチは機械的なスイッチよりはるかに優れた性能を示します。
しかし、うちのコンテンツが対象としている読者のみなさん(私を含めて)の技量からすると、機械的なスイッチを使用した方が、信頼性の向上等のメリットが高いように思われます。
(基板が故障してもバイパス側にすれば、とりあえず音は出るので、緊急脱出SWと兼用できる。)
(これ見よがしにTrue Bypassとうたっているメーカーほど技量的に怪しいのが多いので、あえて書きましたが…(^^;))

電池の寿命
エフェクターの電池としては9Vの積層型電池(通称006P)が使用されます。電池の寿命は電流と時間の積を目安にする事が出来ます。

9V電池の寿命
名前放電容量備考1備考2
マンガン電池 積層9V350mAh 9V/620Ω*24hr 620Ω負荷で9Vから5.4Vまで低下するまでの時間
アルカリ電池 積層9V480mAh 9V/620Ω*33hr
例えば、アルカリ電池を使って5.4Vまで低下しても動作するように設計した場合、消費電流が1mAで480時間動作する事が見込めます。(480時間=1日8時間使ったとして60日使える)

参考文献
CQ出版社 トランジスタ技術誌1999年12月号P191-P195

電池の内部抵抗
計測条件が寿命の時と異なりますが、積層9V電池を毎日2時間ずつ1ヶ月程度通電させ内部抵抗を測定したことがあります。
(この時は電圧が7V程度に落ちた時点で測定を終了しました。)

程度の出力インピーダンスでした。

これは1石ブースターのような電池の内部抵抗の影響を受けやすいような回路の場合

アルカリ乾電池の凄さがわかったと思います。
この電源の内部抵抗のエフェクトに最初目を付けたのは、たぶんブギーのレクチファイヤーだと思います。
同様にZ.VEXのFUZZ FACTORYはこの内部抵抗の差をシミュレートしようとして、たまたまつまみをつけたら発振器になってしまい、それを逆手にとって売り出した物と私は想像します。

プラグ、ジャック
最近あまり気にならなく(国内製プラグジャックが外国製に近づいた?)なりましたが、イタリア製時代のVOX、JEN等は同じフォンプラグでも他と比較して少し太いようです。
大概外国製の方が国内製よりプラグもジャックも太いようです。たぶんインチ系?とmm系の違いと思われます。
これらを混在して使う場合、ジャックからプラグが抜けにくくなったり、プラグががたついたりします。このような事が起こらないように、使う場所を充分認識した上で部品を選定しましょう。

ジャック
多くのエフェクターは入出力どちらかのジャックを電源スイッチと共用します。
モノラル入力、ステレオ出力の物は結構多いので入力ジャックを電源スイッチと共用する場合が多いようです。(オレンジスクイーザみたいな例外もありますが…)
これらを統一しておけばプラグの指しっぱなしによる電池の無駄な消耗を避けられるます。
さらに入力ジャックと電源を共用すればデバッグが簡単になるメリットもあります。
(外部音源から常時入力しておき信号経路を順に当たっていく事ができる。)

プラグ、シールド線
他にあまり書く機会がないのでここに記入しますが、私はメッキをしていないブラス製のプラグを持っていますが、これはあまり良くなかったです。
頑丈な所は良いのですが、ちょっと使わないでおくと表面が酸化してしまい接触不良を起こします。悪いことに、ちょっとくらい磨いても全然改善しません。


また最近のギター用のシールド線であれば、ほとんど問題にならないと思いますが、ちょっと昔のシールド線にはマイクロフォニックノイズというノイズを発生する物があります。(ケーブルをこするとボソボソ音がする。)

シールド線を変えても音は変わらない。(-。-)
なんてうそぶいてないで、マイクロフォニック対策(絶縁体とシールドの間に導電性の帯電防止層)の入ったシールド線を使いましょう。
参考モガミ電線の電子機器用ワイヤ・ケーブル概論

DCジャック
私の制作するコンテンツでは当面DCアダプターについては語らないつもりです。
ただもし実装するのであれば、BOSS、YAMAHA等の大手メーカに合わせてEIAJ RC-5320Aのセンターマイナスのジャックに統一するのが良いと思います。

対接地電位
タイトルだけでは何の事だかさっぱりですが(^^;)
PNPトランジスタを多数使用している場合でも電池は必ずマイナス側がグランドになるように設計しましょう。
大昔に設計された物を除いて大概のエフェクターは電池のマイナス側がグランドになるように設計されています。
これらを混在した上で同一電源を使用すると結果的にショートした形になるからです。
PNPトランジスタを使って電池のマイナス側をグランドにする方法がわからない人は 定本 トランジスタ回路の設計のP38を参考にしてください。

帯域制限
普通のデバイスを普通に使用すると現在の高性能な部品の場合、必要以上に帯域が広がってしまいます。これらは様々な雑音、トラブルの元ですから、使用する条件をよく考えた上で帯域を設定します。


基板設計編


実際にプリント基板を起こさなくても、ユニバーサル基板上での部品配置等考慮しておきたいこと。

電源供給
電源は回路ブロック後段から供給するようにします。これは、前段に電源の共通インピーダンスを持つと、後段の電源の揺れが共通インピーダンスによって前段に供給され、発振する可能性があるためです。
また増幅回路が連続する場合は二段ごとに電源のバイパスコンデンサを入れると発振に対して強くなります。(位相の回転が180°以下に抑えられるから)

帰還回路の小型化
帰還回路は大きな面積を取らないように配置します。またサミングポイントと呼ばれる部分と増幅回路本体の距離はなるべく離れないように配置します。
これも発振を防止し、雑音を必要以上に増加させない工夫です。

フォロア
エミッター(ソース)フォロア、ボルテージフォロアは頻繁に使用される回路ですが、部品配置や部品の型名によっては容易に発振します。(寄生発振と言う。)これらの発振対策をするための細工を前もって入れておきます。
フォロアを使用せずに利得を持たせてるのも回避する良い方法だと思います。
詳細な話はトランジスタ技術SPECIAL〔増刊〕OPアンプによる実用回路設計のP106-118発振の原因と対策、P286-P287 コラム エミッタ・フォロワの発振の理由と対策を参考にして下さい。

バイパスコンデンサ
帯域制限の所でも書きましたが、最近のデバイスはどれも高性能ですから、周波数特性の良いコンデンサをニアバイアースで接続し発振を防止するクセを付けておきます。


配置、配線編


ケース等に実装するときに気を付けておきたいことなど。

ハンダ
骨董エフェクターにはハンダのフラックスに含まれる塩素によってリード線が半分ちぎれかかっている物が多くあります。自慢の愛機がこうならないためにも、無洗浄(RMA)のフラックス入りハンダ(ハロゲンレスが最高)を使用しましょう。

環境に優しい無鉛ハンダもありますが、初心者には融点の比較的低い鉛入りの共晶ハンダが使いやすいと思います。

線材
音がどうのこうのと言いたい所ですが、初心者に限って断言するとケース内を引き回す配線は単線を使いましょう。
ハンダ付けのテクニックが未熟な場合、より線の中身の1本1本が他の部分にショートしているのに関わらず気がつかない初心者の方が多いからです。
また長時間コテをあてても収縮をおこさない耐熱ビニールで被覆した物がお勧めです。

束線
入力線と出力線は必ず離して配置します。これは出力線から入力線への回り込みを防ぎ発振させないための必要事項です。同様にクロストークを少なくさせるためエフェクト側の出力線とバイパス側の出力線も離します。
もしこれらの線を束ねる必要があるならば、必ずシールド線を使用します。
同様にLFO等の制御信号が通る信号もこれらの信号線から離します。これらが近接する可能性のあるパネル等の配線は同様にシールド線を使用すると良い場合があると思います。(制御信号のノイズが外に飛び出る前にグランドでシールドする。)
何でこんなばかばかしい話をわざわざ書いているかというと自作系のエフェクターでご丁寧に入出力線をバインドしている物があった物で…(^^;)

シャーシアース
金属ケースを使用した場合、ケースを利用したシールド効果を期待出来ます。

以上より入力ジャックは非絶縁ジャックを使用し、ケースとシャーシアースを取り、出力ジャックは絶縁ジャックを使用しケースから浮かす(後述の1点アース参照)。のが良いと思います。

余談ですが昔のエフェクターにアース線は全く張らずに、すべてケースを通じてアース接続を行っている豪快な物がありました。(^^;)
このような機器はネジがゆるむと正常に動作しなくなる可能性があるので避けたい例です。

一点アース
多くのエフェクターの場合、電池を電源としてしており、且つ小型であるため、あまり重要ではありませんが、要素技術の習得をかねて一点アースを実行してみましょう。
アースについての詳細は情熱の真空管アンプの第12章アース回路をを参考にしてください。


メンテナンス
自作のメリットは製作者自身が一番良くその機械を知っていることです。
使っているうちに可変抵抗の可変範囲が広すぎることに気がついたり、使わないスイッチがある事に気がついた場合は積極的に固定抵抗等に変更していきます。こうすることによってより使いやすく信頼性の高い高性能な機器に変化することが期待できます。


最後に
ちょっと勉強すれば、世界で一番気心が知れているミュージシャン、信頼の置けるテクニシャン、求めることが完璧に伝わるエンジニア、これらすべてが同居するあなたにとって、ロジャーメイヤーやピートコーニッシュも手に届く位置にいるかもしれません。


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Last Up Date '05/05/07