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はじめに
今回は前々から非常に興味のあった踏んづけ(Stomp Box)、踏んづけ史上、 最も初期に現れただろうと思われるディアルモンドのトレモロの事を紹介をされているコンテンツを 見つけたので、トレモロ関係を中心にTremolo,Vibrato、トレモロ、ビブラートの話を補っていこうと思います。

ディアルモンド トレムトロール(DeArmond Trem-Trol)
まずこちらを見て下さい。 DeArmond Tremolo またサウンドサンプルも聞いてみて下さい。
1940年代からこんないい音を出す踏んづけ(Stomp Box)があったんですよ。ちょっと感動ではないですか?
前の話で光結合によるトレモロ(Tremolo)について結構早い時期に出来たと書いたのですが、小型化に貢献すると思われるCdsセル(Cadmium sulfide cells)は1960年初頭頃?(年代についてはかなり当てずっぽうです。m(__)m)一気に広まった感じで、それ以前は光電管と言う真空管を使用した光結合の物や、真空管のバイアスを可変してバリμ管のように動作させるか、本当のバリμ管を使用して増幅率を可変する方法がとられていました。
どちらにしろ真空管は必須ですから小型化するのは難しかったのだと思われます。(真空管のミニチュア管ですら1950年代の産物です。)

そんな状況のなか、ディアルモンド トレムトロール(DeArmond Trem-Trol)は現在から思うといささか トリッキーな方法で小型装置でトレモロ効果を得ていたようです。
上記コンテンツによると

実はこのトレモロ、オレンジ・スクイーザーやクリスタル・ギターで有名なダン・アームストロング(Dan Armstrong)氏が水銀を入れてあるって信じていて、いろんな所でふれ回った物だから、ほとんどの人が水銀が入っているって信じていたのですが…(メディアの力って怖いですね。(^^;))
ガラスクリーナーとはちょっと驚きでしたね。

最近ブティークエフェクターで骨董エフェクターのリメイクが流行っていますが、こういう機械的な仕掛けはなかなかリメイクされないでしょうね。自作するのが一番の近道そうです。(^^;)
いつまでリンクがあるかわからないけど、ちょっと気になるyoutubeのリンクを2点
Savage Audio: Rare DeArmond Tremelo into Macht 12xディアルモンド トレムトロール(DeArmond Trem-Trol)の動作風景。
Unusual Schaller TremoloフォトカップラーでVCAを構成してメカニカルにLFOをかけたSchallerのトレモロ

フェンダーアンプのビブラート(Fender's Vibrato)
前回の話フェンダー(Fender)のアンプに付いているビブラートはほとんど振幅しか変化しませんと何となく歯切れの悪い書き方をしていますが、何でこんな歯切れの悪い書き方になったかというと実はフェンダーのビブラートにも何種類かあって物によってはちゃんとビブラートがかかっている物があります。また最も成功したアンプの一つツインリバーブ(Twin Reverb)等で使われているフォトカップラーを利用したトレモロ(Tremolo)にはほんのちょびっとだけビブラート(Vibrato)がかかっています。
そんなわけで、話の進行上フェンダーのアンプで使用されているトレモロ(Tremolo)、ビブラート(Vibrato)の分類をしてみようと思います。(フェンダーのアンプについてはムックやネットで情報が充実しているため、私より詳しい方が沢山いらっしゃると思います。コメント等ありましたら是非とも掲示板等でご指導お願いします。m(__)m)


まず、思いつくのがTREMOLUX、VIBROLUX、VIBRASONICの3種類ですが、私の感覚では特定の回路形式を指す名前ではなく商標の様で、回路形式とは関係ないような気がします。("Harmonic Vibrato"って言葉も有名ですが、私には普通のP-K分割による位相反転段のバイアス可変トレモロに見えます。)

私としては以下の5種類に大別出来ると思っています。

  1. シングル段のバイアスを可変する回路
    真空管のグリッドやカソードにLFOの出力を重畳させてバイアス電圧を可変させ、真空管の増幅率μを可変する事によりトレモロ効果を得る方法
    この方法はバイアスにLFOの信号を重畳しているのでどうしても、LFOの信号が漏れる。と言う欠点があります。その為、LFOの信号の高調波が可聴帯に入ってきてプチプチ言ったり、トランスやスピーカーがLFOで振られて鳴ったり、動いたり、周波数特性が変わったりする可能性があります。
    その対策として低域のカットオフ周波数を急峻にすると、入力信号の低域も一緒に削れてしまうため、弊害としてアンプ全体のトーンがソリッドな感じに仕上がったりします。

  2. プッシュプル段のバイアスを可変する回路
    大音量を得るためにギターアンプにもプッシュプル構成が使われはじめます。この事はトレモロ(Tremolo)回路に恩恵をもたらしました。
    増幅回路をプッシュプル構成にしたため、バイアス電圧の変化の漏れがプッシュプル合成をする過程で相殺され、理論的にはバイアス電圧の変化が漏れなくなりました。
    シングル段のバイアス可変する回路と比較して性能は明らかに向上しましたが、実際にはプッシュプルのアンバランスにより、バイアス電圧の変化が漏れや、 LFOによる混変調は少なくなった物の依然残っていました。
    前述の"Harmonic Vibrato"もP-K分割を使った位相反転段=シングル段でのバイアス可変トレモロですが、後段がプッシュプル構成のためプッシュップルの場合とほぼ同様な効果が期待できます。
    この特許ですかね?US.PAT 02817708(Jan 16, 1956)トレモロ付きアンプ。

  3. Bandmaster、Concert式
    このコンテンツ作成に当たってフェンダーのアンプの回路図を色々調べるまで私も知らなかった回路です。(回路は知ってたけどフェンダーがやっているとは知らなかった。)
    US.PAT 02973681(Jun 8, 1959)トレモロ効果を生じる装置。
    信号をLPFとHPFで分割して、逆相のLFOで真空管のグリッドにバイアス変調をかけてミックスしてトレモロ信号を得る方法。
    基本的にLPFとHPFで位相が約90°開くので前の話のウーリツァービブラート(Wurlitzer Vibrato)と同様にビブラート(Vibrato)がかかりますが、同時にトーンまで変化してしまうので、これはグロール(Growl)です。
    この回路もバイアス漏れを逆相でキャンセルする効果が期待できます。
    どんな音がするか私は聴いた事がありませんが、後続するアンプで使われていない事からすると、 コストがかかる割に人気が出なかったのかも知れません。
    ちょっとどんな音がするか興味はあるので今後ネタにするかも知れません。

  4. フォトカップラーによる回路
    Cdsセル(Cadmium sulfide cells)の普及により実現され、ツインリバーブ(Twin Reverb)が業界標準として普及すると共に多くのコピーが作られたため、チューブアンプの付属品として最も普通に見られたタイプです。
    最大の特徴はバイアスの漏れから解放されたこと。また真空管のバイアスを可変する事によって増幅率を変える方法と比較して、Cdsセル(Cadmium sulfide cells)による方法は歪みも少なくフラットな特性なので、混変調の問題からも解放されました。

    設計によっては純粋なトレモロ(Tremolo)効果を得ることが出来るのですが、副次的にほんのちょびっとだけビブラート(Vibrato)をかけることが可能です。
    そうすると、純粋なトレモロ(Tremolo)と比較すると若干マイルドな感じがする。後述のなんちゃってビブラート(Fake Vibrato)をかけることが可能になります。

  5. 上記以外
    DimensionIVなんかはOil Can Delayを利用したちゃんとしたビブラートです。(機会があったらコンテンツ作成します。m(__)m)
    VibratoneなんかはLeslieのパテントを使ったLeslieその物なのでビブラート、トレモロが渾然一体となって発生します。
    Cyberシリーズなんかを見ているとDSP使ってるので最近は何でもありですね。

なんちゃってビブラート(Fake Vibrato)
Tremolo Circuit
左ににフォトカップラー式のトレモロの原理図を示します。
ここで、R1:は主に前段の出力インピーダンス、R2:はCdsセル(Cadmium sulfide cells)等のフォトカップラーを使って光によって抵抗値が変わるようにした抵抗です。C1は結合コンデンサーです。
この回路の前段と後段には増幅回路を配置します。

ここで、この回路の特性を示します。
Tremolo,Fake Vibarato
まず最初に黒線の方から説明します。
上はゲインの図で下は位相の図を示します。

ω=1/(2πC1(R1+R2))とすると。
ゲインの周波数特性はω以上の時、R2/(R1+R2)で一定になります。(この式がこの回路で一番重要な部分です。)
それ以下の周波数の時は-6dB/Octでだらだら下がりです。
次に位相特性に注目すると、10ωあたりからほとんど入力と同位相ですが、ωで位相が45°進み、1/10ωでは90°進みます。(位相単独での進み、遅れは聴感で、区別できません。)


次に赤線を説明します。
赤線はR2が(黒線の時より)小さく、ω'=1/(2πC1(R1+R2))が10ωになる場合のR'2の場合を示しています。
ここでω'(10ωに相当)より高い周波数でゲインはR'2/(R1+R’2)で一定となり、それ以下の周波数では-6dB/Octでだらだら下がりです。
(R'2はR2より小さいので黒線の時より下に位置します。)
また、位相特性を見ると、10ω'(100ωに相当)以上は入力と同相ですが、1ω'(10ω相当)では45°、1/10ω(1ω相当)で90°位相が進みます。

ここで、


”なんちゃってビブラート(Fake Vibarato)”でビブラート(Vibrato)を得る方法を説明しましたが、結局
となり、実質的にトレモロ(Tremolo)効果が主で、その味付け程度にビブラート(Vibrato)が かかっている事を理論的に証明していると思います。

まあC1とR1の諸元を変えるだけで、性能重視の”トレモロ(Trmolo)”から”なんちゃってビブラート(Fake Vibarato)”まで調整出来る点は 見逃せませんね。

その後のトレモロ
たぶん、ツインリバーブ(Twin Reverb)あたりで絶頂期を極めたトレモロですが、かげりを見せ始めます。
まず、一方でコンシューマ向けのアンプはトランジスタ化がもの凄い勢いで進行しました。(と言うか、コンシューマー向けアンプの普及にトランジスタ化が一役買っているような気がします。)その過程でトレモロ(Tremolo)もトランジスタ化されていきます。
その過程で、たぶんVOX-THOMASあたりがLFOの回路に掃引発振回路を利用し変調波形が矩形波に近い物が増えました。(1990年代?くらいからかなマシンガントレモロって言われて復活したあの音です。)
矩形波変調の音は刺激的で効いている感じを出すのには良いのでしょうが、マイルドな”びょよょよょ〜ん”って 感じを求めている従来のトレモロ(Tremolo)愛好者にとっては使えない音と感じさせたのだと思います。
Bo Diddleyなんかが1950年代からやってるリズムを無視したトレモロ(Tremolo)を深くかける様な芸風だったらあんまり問題にならなかったんだと思いますが…

それ以前のトレモロは位相発振器を使用した正弦波の変調波形を使用していました。真空管のバイアスを可変して増幅率を変えるような方法では、正弦波以外の波形を使うと変調波形の高調波が出力に漏れてしまい使えなかったためです。また、その名残で正弦波が使われてきたのだと思います。
また、もう一方では当時のビッグネームがこぞってマーシャル等のハイゲイン系アンプを使い出してから、ギターアンプは「歪ましてなんぼ」の世界に突入します。
ご存じのようにハイゲイン系アンプの多くはトレモロ(Tremolo)が載っていません。
多くのトランジスタアンプも当初はFUZZを内蔵して対応していたのですが、真空管の歪みの方が良いという発言をミュージシャンが音楽関係の雑誌、本にさかんに発言したため、市場の動向は再び真空管に向かいます。(価格よりも音が優先できる程、市場が豊かになってきたのです。)その過程で2Vol方式が開発され、3Vol方式がブギーによって普及します。(BOSSのOver DriveやMAXONのTube Screamerなんて名前は当時のそんな葛藤の名残ですね。)

そのおかげで、アンプのパネルからトレモロ(Tremolo)は追い出され、クリーン音重視のアンプでは、ミュジックマン(Music Man)のフェイザー(Phaser)、ローランド(Roland)のコーラス(Chorus)の様にトレモロ(Tremolo)と同じ揺れ物でありながらもっと使いでのあるエフェクトに取って代わられます。
同様に歪み音重視のアンプではゲインやマスターボリュームにその場を明け渡してしまいます。


そして、踏んづけエフェクターの形になって再び姿を現すまではトレモロ(Tremolo)はすっかりマイナーなエフェクトになっていました。

なんちゃってエコー(その1)(Fake Echo No.1)
マシンガントレモロ(Machine Gun Tremolo)でちょっと思い出したんだけど、昔どこかで矩形波のトレモロor立ち下がり鋸歯状波トレモロ(マンドリン効果)をエコー(Echo)って売っていたメーカーがあるらしく、今でもマシンガントレモロをエコー(Echo)と思いこんでいる人がいます。(情報の流通の早い日本ではなく外国の場合です。)
確かに白玉流し風に”ジャーン”って音をマシンガントレモロ(Machine Gun Tremolo)をかけて”バッバッバッ”と分断すると、ちょっとパーカッシブに弾いた音にエコー(Echo)をかけた音にちょっと似ていますが…
今だったら不正競争防止法で訴えられそうですね(^◇^;)

なんちゃってエコー(その2)(Fake Echo No.2)
ついでに思い出したトレモロ(Tremolo)のアプリケーションの一つ
Fake Echo No2.
こんなタイプのなんちゃってエコーも昔はありました。(大概リバーブとトレモロorビブラートの機能と同居しています。)(^^;)

音を引き延ばすためにスプリングリバーブ(Spring Reverb)使って、リバーブ(Reverb)信号のみにトレモロ(Tremolo)をかけてエコー(Echo)っぽさを強調しています。
信号を遅延させるためにスプリングリバーブ(Spring Reverb)使っているだけでも”なんちゃってエコー(その1)(Fake Echo No.1)”より良心的ですし、質は兎も角としてアンプに外付けで リバーブとトレモロがついているわけですからそれなりの使い道はありました。

まあ、あざといようですが、当時はそれだけテープエコー(Tape Echo)はあこがれの装置で、値段も高く、そんな簡単に買える装置ではなかったのです。(ちょっとしたアンプが買える値段だった気がします。)
当時はインチキな装置と思っていたのですが、最近マルチのプリセットを含めて、こんな感じのトポロジーの装置って今は無いでしょうから、簡単な工作の割に他では得られない効果が得られる自作向きの装置のような気がします。p(^^)q

この手のなんちゃってエコー(Fake Echo)はBBDによるアナログ・ディレイ(Analog Delay)の普及により消えていきました。(^^;)

ギターアンプのトレモロ
なんちゃってエコー(その2)(Fake Echo No.2)で更に思い出したので、ちょっと
そもそも

装置ですから、それぞれの組み合わせは
Tremolo & Reverb Combination(Normal)
↑のような感じになるはずです。
Tremolo & Reverb Combination(Guitar Amp. Style)
しかし、ギターアンプの場合は↑のようなトポロジーになっている物が多くあります。
これは、真空管のバイアス可変によってトレモロを得ていた時代に、 その為、実装上このトポロジーを使っていたら、ある程度の評価を得てしまった為この形を維持しているのだと思います。


最後に
まあ、”なんちゃってビブラート(Fake Vibrato)”に始まって”なんちゃってエコー(Fake Echo)”とかその周辺の話をしたわけですが、どちらも時間軸方向の制御を当時普及していたトレモロ(Tremolo)の技術で代替した物です。
当時の技術者達がビブラート(Vibrato)を得るためにどんなに苦労したか、かいま見たような気がしませんか?

もっとも同じ時間軸の制御でもピッチシフト(Pitch shift)に至っては実用化したのは、 ディジタル技術の進歩とメモリーの大容量、低価格化が進んだつい最近の事ですから。
それに比べると歴史上の様々なアプローチを比較出来て面白いです。
製品化したピッチシフト(Pitch shift)マシンを比較するにはもっとアルゴリズムよりの比較になってくると思います。


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Last Up Date '08/09/14