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Vol.2●陽気な朝の儀式

一日の始まりは軽快にはじめたいと誰もが願う。気分の悪い朝は一日を不快にさせるからだ。私は、毎朝仕事に来るとき、必ずと言っていいほど缶コーヒーを飲む。もうこれは日課のようなものだ。事務所にたどり着けばコーヒーがあるのに、どうしてわざわざ自販機で買うのか…という疑問も何のその、これは一日の儀式みたいなものだ。買って飲まないとその日が始まらないのである。買うのはジョージアと決まっている。その昔はキリンのジャイブだったが、ジャイブなき今は、何故かジョージアを買うのだ。フィギアプレゼントというキャンペーンをやっていたのだが、その時は知らなかった。

いつも同じ自販機でいつも通りコインを入れてジョージアが落ちてくる朝。それは実に爽快な朝だ。いつもならそこでステップを踏みながら、部長に文句ゆうたった〜〜と踊りながら歩くのだが(嘘に決まってる)その時だけはちょっと勝手が違っていた。手に取って驚いた。いつもと違うのだ。不細工な位に背丈の長いジョージアが出てきた。こ、こんなもんを押した覚えはないぞ〜〜と慌てて自販機を見ると、間違いはなかった。するとその自販機にキャンペーンの告知があってフィギアプレゼントとあった。どうもフィギアが当たったようだ。よくみるとジョージアの上にプラスチックのカバーがあってその中に入っているようだった。

大抵の場合は運が良い…と思うに違いない。だが私にとっては一日が始まらないきっかけとなったのだ。この上にのったプラスチックカバーがどうしても外れない。手で必死に掴んで回そうが引こうが、カバーは全く動じないのである。かなりむかついた。カバーを外さないと缶コーヒーの飲み口をあけるリングが見えない。自慢じゃないが、私は握力がいまいち弱いのだ。どんなに掴んで回そうとしても手がすべるだけだった。

自販機から事務所までは数分ある。その間、途中のガードレールの角でこじあけたら飲めるんじゃないかと思ったが、滑ってだめだった。電柱に向かってプラスチック部分を何度も叩き付けたが、行きかう人に不審な目で見られて止めた。

とがったものを見つけたら引っかけてあけようと試みるがどうしてもあかない。俺は何の為に缶コーヒーを買ったんだ。コカコーラボトリングを呪いながら、忌まわしい遠い昔を思い出した。まだ今みたいにアルミ缶ではなく、スチールだった頃、取っ手を引っ張ってシュパッっと開けようと思ったら、指を入れたリングだけがちぎれて肝心の部分がスチール缶に残ってしまって飲めなくなった事があった。何度思い出しても腹の立つ瞬間だった。堅く分厚い部屋の鍵を上に乗っけて石ころで叩いたら穴があくんじゃないかと思って、手を打ち付けた苦い思いでもある。

暑い時、我慢できずにペットボトルのコーラを買って来て事務所でみんなで飲もうと思ってキャップを回そうとしたら、手が滑って、全然回らなくて、仕方がないのでペットボトルを両脚に挟んで、両手で根性と気合を入れて回そうと思うのだが、やっぱり手が滑って回らなかった。見るに見かねたアシスタントの女の子が、私がやってみましょうか…と言いつつ、こういうのってなかなか開かない時があるんですよね…と言いつつ、思い切り力を込めて回そうとしたら、いとも簡単にクルっと回ってしまった拍子抜けした事があった。あはは、そんなに堅くないですよ〜〜と笑いながら、その瞳の奥底は、この根性なし〜〜〜となじっていたのを思い出した。

その朝はそれに匹敵するかのような仕打ちだった。事務所はどんどん近づいてくる。何度も何度も歩きながらガードレールを叩いた。ポケットからハンカチを取り出し手を拭い、これが最後の勝負だ…とばかりに、両膝で缶コーヒーを押さえつけ、血管も切れよとばかりに力を込めてひねりながら回したら、半分開きかかったので、このチャンスを逃すまいと最後の力を振り絞りながらプラスチックのカバーを取り外した時には息も絶え絶えになっていた。

やっと念願の取手のリングが遅巻きながら、その姿を私の前に晒した。そして、プシュッと開けてコーヒーを喉にグビグビと押し込んで飲み終わらないうちに事務所に到着した。む、むごい。あまりにむごい仕打ちだった。一年の計は元旦にありと言う。私の仕事の一日はジョージアにあるのだ。一体どうしてくれる。

青いプラスチックカバーの中からは小指ほどの佐藤エリカ人形のキーホルダー出てきた。それは今思い出しても腹の立つ一日だった。今ではフィギアプレゼントがDVDプレーヤーに変わってるらしい。

だが、これだけ毎日ジョージアを買うのに、未だにDVDプレーヤーが自販機からゴトンと落ちて来ないのはなんでだろうか…。(当たり前や)

2003.12.25(ふゆき)

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