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Vol.12●タバコ依存症

人は誰しも病気を抱えている。弱ければ単なる傾向で、強ければ病気というらしいが、まあ、似たようなもんだ。自分の例で言えばタバコ依存症である。これって病気か?人によっては病気と言うに違いない。肥満も病気、近眼は病気か?とにかく危機感を煽るようなテレビや雑誌の記事をみる。あなたは危険に冒されているという訳だ。かくして健康ブームとやらが加速する。細かな成分までをうるさく言う世の中になった。子供の頃にチクロやサッカリンの入ったお菓子を食って大きくなった私には健康を云々する人が健康依存症に思えてしまう。健康の為なら命さえも惜しくはないぞ!ってことなのだろうか。

タバコ依存症の私の場合は、タバコがないと生きていけない。電車待ちの時間であってもタバコの為に平気で電車をやり過ごす。ホームでは最近どんどん片身の狭い思いをしなければならなくなり、ベンチの横に灰皿があったのにどんどん撤去され、ホームの端の端に移動されていく。ベンチもない。前なら電車がきたら必死で吸い込んでからもみ消して、近くのドアに飛び乗ったものだが、ここ最近では電車の止まる位置に灰皿がない。吸って消したら、電車の入口まで走らないと乗れなくなったのだ。そこまでされたら意地でも絶対にやめるもんか…と思ってしまう。余計に依存に拍車をかけるようなものだ。

タバコを吸っていたら横でワシの方が若い、いやワシの方やと言い争う声がした。それは数年前に検査入院と称して病院に一日だけ入院して検査を行った時の事だ。人間ドックで不審な結果が出たから精密検査を受けた方が良いと言われて受けることになったものだ。当たり前だが、病院では病室でタバコが吸えない。4階から1階に降りて、ロビーの端っこの外に喫煙室があってそこまで足を運んでタバコを吸わないといけない。そこまでして吸うか?と言うなかれ。喫煙者にとっては吸える事が出来るならば多少の労は厭わないものだ。言い争っている主は50代も半ばをとっくに過ぎていると思われる痩せた中年二人だった。当時44才だった自分よりは一回り以上、はるか年上にみえた。じっと耳を澄ませていると、醜い言い争いだった。

あんたは病気のせいかしらんけど、えらい老けとるな…、何ゆうてんや、あんたこそ老けとるがな!よーいうわ。どーみてもわしはあんたよりは若いで。そら病気のせいで痩せたけどな。いや、絶対にあんたの方が老けてる!
そんな会話だった。どっちでもえーやんけ…と思いつつタバコの煙をくゆらしていた。18才が30才にみえるならともかく、たいがい人生費やしてから少し位、老けてみえようが若くみえようが何やっちゅうねん…という気持ちだった。もしかしたらお前の方が病気の症状が悪いぞと言い争いしていたのかもしれない。それでも人のもめるのは面白いものである。じっと聞いていた。

あんた何年生まれや、わしな昭和28年生まれや!それを聞いて驚いた。自分と二歳しか変わらない。(末期ガンにでもなっとんのか!えらい老けとるなあ…)というのが率直な所だった。片方が勝ち誇ったように答えた。ワシは昭和29年生まれや。ワシのほうがひとつ若いやないか。(殆ど変わらない位老けとる…あんたも末期ガンか)あんたがワシより若いクセに老けてみえるのは何でや!負けじと片方がやりかえす。突然横にいた私に二人は声をかけてきた。

な、兄ちゃん…あんたな、二人のどっちが老けてみえる?

当時、私は髪型のせいや、どうみてもサラリーマンにはみえない風貌なので何歳かは若く見られる事もあった。しかし、正直な所私が若くみえるというよりも、あんたら二人の方が老けすぎとんやん…という感想だったが、聞かれて、指さしてこっちと答える事も出来ない。実際、大同小異だった。いやあ…そんなんわかりませんわ…と答えるしかなかった。

どっちが老けてみえるかの勝負の決着は付かない。しばらく言い争った後、ところで兄ちゃん何年生まれや?…と唐突に聞いてきた。何歳か聞かないところが中年の微妙な心理の揺れがある。計算が働くには何年に生まれたかが重要なのだろう。ああ、ボクは昭和30年生まれですわ…と答えてやった。

二人とも無言になった…。


あの二人が病気が治って元に戻って今はほんとに年令相応になったのか、二度と年を取らない運命になったのかは知らない。健康っちゅうのは確かに大事だ。なんだかんだ言っても人間は身体が資本なのだ。

タバコやめてみようかな…。

2004.6.6(ふゆき)

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