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Vol.21●空気の色

男らしく、女らしくという言葉が最近では消えているそうだ。何故…らしくしなければならないのか、という事らしい。世の流れには逆らえないが、そういう教育を受けて育った者だと、もう手遅れである。価値観は変化しない。世の中の価値観が劇的に変わるにはひと世代いるのだろう。

デザインの仕事をしていると、分かりにくいものはその判別の為に色で分けたり、形で分けたりする。AとBは明らかに違うんだよ…と分かってもらう必要があるからだ。身近な例では男は青で女は赤というのも似たようなものだろう。トイレのマークだって形と色で分けてある。家族の歯ブラシの色や柔道や空手の黒帯も同じ理屈だ。外見ではっきり区別出来ないと困るからだ。

ところが区別出来てしまうが故に困る事だってある。私の卒業した高校は学年別に体操服が色分けされていた。緑、青、赤の3色だ。その色をずっと3年間踏襲していくのである。私の学年は赤だった。だから体操服を着てさえいれば先輩後輩が明確に分かったのである。

それは、高校の卒業を間近に控えた頃の話だ。私は学校をサボりまくっていた。体育は週になんと4時間もあった。朝1時間目と、最後の6時間目なんて授業に来るな…と言ってるようなものだ。ああた、夏なんて朝1時間目から水泳なんて耐えられますか?ドライヤーもないし、髪の毛乾かす事もでけへん。冬の寒い日に柔道なんて耐えられますか?畳は冷たいわ、柔道着は半分凍ったように冷たいわ、おまけにセーター着て柔道する訳じゃない。下は裸である。受け身を取ったら手が折れるんじゃないかと思う位に畳が硬い。やっぱりサボった。

3年も終わりに近くなると卒業生は高校に行かなくても良くなる。その時、高校から突然呼び出しがかかった。体育の出席日数が思い切り足りないという訳だ。友人と二人だけだった。さんざんお説教くらった後、許してもらえるかと思いきや、場の空気を読めない者がいるのは世の常である。今から下級生と一緒に体育を受けて足りない分を埋めないと留年だ言い放たれた。まあまあ、ここは二人の卒業してからの進路も決まっている事だし、穏便にすませてはどうか…との他の教師の助言も何のその、体育教師の中の1人だけが頑として譲らなかった。

こんな奴らを社会に出したらろくな事はない。世の中の厳しさを徹底的にわからせてやる…と主張した。この主張が如何に正しかったかは、私のその後を見れば明らかだ。(何でや)

まずは1年1組と2組の女子と一緒に縄跳びだ。

非情なる声で連行された。もう休みでいない筈の赤い体操服を着た二人は違う色に混じって体育を受ける事になったのである。しかもいちいち、この二人は授業をサボって出席日数の足りなくなったバカ者共だ…と紹介してくれる。箸が転げても笑う年代の女に混じって縄跳びをする屈辱を受ける事になった。座っていると刺すような視線を覚える。振り返ると一年生の女の子がぷぷぷ〜〜〜と吹き出すように笑う。反対側からはクスクスと笑う声が聞こえる。さらし者といって良かった。

この時代の1才2才の違いは実に重い。ましてや私のいた高校は男よりも女の方が圧倒的に多かったのだ。跳び箱、バスケットと続いて針のむしろのような時間を過ごした後、柔道となった。こう見えて3ヶ月ほど柔道部に在籍していた事があったので、多少は出来た。1年生との柔道なんて何と楽しい事か。小さくて弱そうな奴を見つけては、来い来いと手招きをすると、まるで幽霊をみたかの如くに首を横に振りつつ後ずさりする。それを掴んでは投げ、投げては掴んだ。唯一至福の時だった。

だが、場の空気を読めない者がいるのは世の常である。場の空気には色がついてないから判別がつかないのであろう。黒帯をした身体のでかい1年生が、先輩!よろしくお願いします!といって礼儀正しく頭を下げてやってくる。お前とはやらないと逃げて廻るのだが、今度は場の空気の読めない体育教師もいる。さあ、みんなに見本をみせようと言いつつ、何段だか忘れたが、柔道の顧問を務める教師に掴んでは投げられ、投げられては掴まれた。

当時は洒落にならなかったが、今となってはとっても良い思い出だ。

経験値をその後の人生に活かさなくては何の経験だろうか。そんな訳で、最近では女性を見たらすぐ色を付けている。あ、あの子はピンクだな。げ、あれはブルーだ。おお、情熱の赤だ…という具合である。え、それはお前の下心の色だろうって?な、なんでわかるねん。わかっても口に出してはいけない事もあるのがわからんか〜。お約束ちゅうもんやろ。

人間はいろいろ。場の空気の色を読めない人は実に困ったものだ。

2004.8.27(ふゆき)

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