|
時間を掛けて積み上げたものが一瞬にして崩壊する事がある。地震も同じで、多大なる時間を掛けて人間が構築したものがなくなってしまう。その胸中はいかばかりか…と思う。
10月30日に、実に個人的な事ではあるが、自分の仕事で使っているファイルサーバーのハードディスクが飛んで消えた。デジタルな仕事をされている方なら、その持つ意味がどの程度のものかは想像つく筈だ。自分の仕事の痕跡が跡形もなく消えてなくなるのである。ハードディスクは消耗品なので、当然故障することもあるのは当然の事だ。リスク回避の為に仕事の内容を5つに分類して5つのハードディスクに分散して保存していた。つまりはどれかが故障しても2割の被害ですむという話だ。さらに相互に定期的にバックアップを取っていたので、万が一消えてなくなってもある程度は復活出来るようにしていた。
だけど、悪い事は重なるものだ。まさか同時に二つとも飛ぶなんて考えてもいなかった。消えたディスクのバックアップも一緒に消えたのだ。こんな事ってあるのか!神も仏もいないのか!何の予兆もなくある日突然にやってくるハードディスクのクラッシュ。予兆があったと言えば、そのニ、三日前に電車の中でカバンのベルトが切れた位の事だ。下駄の鼻緒と同じような現象だ。こんなもん予兆と言えるかい!何万ファイルというデータが一瞬にして無くなり、何かすごろくのふりだしに戻ったような気分だった。かなりめげた。
遠い昔の事を思い出した。それは自分の部屋に彼女を呼んだ時の事だ。手も握るのさえまともに握れない関係だったが、部屋に呼んだ時にそれなりに男として期するものが無かったと言えば嘘になる。下心を持って肩を抱きながら、話をするふりしながら彼女のセーターを上に引き上げようとした。スカートでしっかりとはさまれて押さえられたセーターは簡単には上にたくし上げられない。…かといって力づくで引っ張って押し倒す訳にもいかない。嫌われたくもなかったので、徐々に引っ張っていった。ある程度察したかもしれない。そこで少しでも抵抗されたらやめようと思っていた。
特に抵抗する様子はなかった。もしかしたら早く押し倒して頂戴と思っていたのかもしれない。話をしながら頭の中は全てセーターに集中していた。そして、時間を掛けて遂にセーターがスカートから外れ待望のセーターの中に手を入れる準備が整ったその瞬間の事だった。
電話がなった。それもしつこい位に鳴った。電話が鳴ってるよ…と言われた。電話は部屋の外にあった。ほおってきたかったが仕方なく電話に出た。当然しょうもない電話だった。怒り心頭に達して慌てて元の場所に戻った時には、あれだけ根性出してたくしあげたセーターは再びスカートの中にしっかりと収まっていた。そのまま卒倒したい気分になった。よくよく考えてみれば当たり前の事だ。スカートからセーターがはみ出たまま、早く私のセーターの中に手を入れて頂戴というまぬけなままの格好で電話が終わるのを待つ奴はいない。分かっていても、まるですごろくのふりだしに戻ったような気分だった。
一度やった事をもう一度やる事ほど情けない事はない。サイの河原じゃないちゅうねん。壊れたハードディスクを前に呆然と立ちつくし、そんな事を思い出しながらめげた。そして、まだ立ち直っていない…。神様というものがいるならば、こう言いたい。どうして、どうして胸まで触らせてくれへんかったんや〜〜…って、ちゃうちゃう。じゃなくて、ひとつなら諦めもつく。だけど、どうしてふたつ同時に壊さないとあかんかったんや〜〜。あほんだら〜〜。
悪い事は津波のように繰り返し襲ってくるものだ。今年はずっと災難ばかり降りかかってきていた。まだあるかもしれんな…と思いながら、まだ立ち直っていない。
2004.11.04(ふゆき)

|