ルノー出身のカルロスゴーン率いる日産自動車。かつてはフェアレディZやスカGで一斉を風靡した、あの企業がもがいている。頑張れニッサン! さて、昨年家族で宝塚に行った時の事だ。急激な坂をのぼる事になった。宝塚はどちらかと言えば山である。坂の手前で止まって車をやり過ごし、道路に出ようとしたのだが、8年も経った全く手入れをしていない三菱自動車の車には、その坂はあまりの過酷だったのか、馬力が足りずに前に進まない。後ろに一旦下がって勢いを付けてあがるか…と思い少しだけバックしたら、後ろから車が来た。かくなる上は一気に上り詰めて、道路に出なければいけない。その時に車が来たらどうするんだ…と思わなくもなかったが、エンスト寸前で、ようやく上りきり道路に出た。 しかし妻の顔はこわばっていた。その前の日に、交差点で、何の前触れもなく車がエンストし、クラクションを鳴らされてひどい目に遭ったと聞いていた。しばらくして、もうこの車に乗るのは嫌だとゴネ出した。あと1年車検が残ってるで…という私の問いかけにも、毎日運転している身になってみろ、運転して帰るのは自分なんだ…と言ってきかない。車は高速道路を通過し、見慣れた堺の街へと戻っていた。家路を急ぐ泉北1号線を南下していると、そこに日産の大きな看板が見えてきた。 妻は、あそこ、あそこに止めて…と、突然言い出した。カーディーラーに寄るなんて久しい出来事である。ましてや、日産は一度も行った事がない。車を止めると、日産の営業マンが飛んで来た。車が売れなくてルノーと提携した日産であるから、そこはチャンスはものにしないと…という意気込みが伝わってくる。いきなり妻は車下さい…と切り出す。魚を買うんちゃうぞ…と思いながら、そこにあったウィングロードという出たばかりのワゴン車を見て、あ、これ、これいいわ。気に入ったわ。(殆ど見ていないに等しい。)これ見積り下さい…。あまりの事に日産の営業マンは面くらい、そして飛んで火にいる夏の虫と思ったに違いない。 まあ、俺が乗る訳じゃないし、かめへんけど…と思いながら、横で聞いていた。話はとんとん拍子に進んでいく。太陽は車の中で寝て居た。下の子供はそこにあった、おもちゃで遊びだし、そのうちに咽が乾いたのか、営業マンにむかってジュース!ジュースちょうだい。ジュースが飲みたい…。と叫ぶ。決して親には言わないのである。雰囲気でジュースをくれる人と判断したのだろうか…。 そこはルノーと提携したばかりの日産である。決算を控えてたとえ1台でも車を売りたい日産である。即座にジュースを持って来た。わが子ながら飲み物、食い物に弱い。知らないどんな人が何を言っても、お菓子とジュースを見せればついていくに違いないとすら思える。商談の中、子供がぐぐっと一気にジュースを飲み干した…。話が佳境にさしかかった時、子供は言った。 ジュースおかわり! 営業マンは、ちょっと後で、あげるからね…と言いながら、妻と話をしようとしだした。うちの子の特性を掴んでなかったようである。それを聞いた瞬間、叫び出した。 ジュースおかわり!ジュースおかわり!ジュースおかわり!ジュースおかわり!ジュースおかわり!ジュースおかわり!ジュースおかわりちょうだい〜〜〜〜!ジュ〜〜〜ス、ジュ〜〜〜ス、ジュ〜〜〜ス、ジュ〜〜〜ス飲みたい〜〜〜! こうなると親も手をつけられない。何を言っても聞かない。今までどれほどこいつに恥ずかしい目にあわされた事か…。百貨店の通路の人ごみのまん中で大の字に寝て、お菓子〜〜〜〜!と叫んだ事が何度あったろうか。てこでも動かない。解決策は、お菓子を買い与えるしかないのである。 いくら何でも車を即日買うのは…と疑問を持った私は、話がまとまるところでせめて2〜3日位考えさせて下さい…と切り出した。営業マンは、もらった…という顔をしながら良心的な笑顔で快諾した。顔がほころんで、1台決まり!という表情をしたのを私は見のがさなかった…。 太陽が起きて来た。帰ろうとした私たちに、ここは子供の機嫌でもとろうと思ったのだろうか…。抽選の粗品の箱のふたをあけて、どれでも好きなものを持ってって…とおもちゃを二人に見せたのである。うちの子の特性を分かっていなかったようである。 ぼくはこれとこれとこれ〜〜!ほんじゃ、おいらはこれとこれとこれにしよう!両手で抱えきれない程の、おもちゃを掴んだ。 そこは最近業績不振の日産である。おもちゃで車が売れるならば安いもんだとでも思ったのだろうか…。 車をバックさせて1号線に出ようとした時、仲間の営業が2人程出て来た。オーライ、オーライ、オーライ、オーライ、スト〜〜ップ!一人が道路に飛び出て、来る車を制止している。車の通りの多い幹線道路にバックでいともたやすく安全に入り込める。さらに豪華な来場記念品をもらい、笑顔と感謝の言葉の砲列を浴びせられながら、日産を後にする。まったく気持ちの良いディーラーだ。さすが業績不振の日産である。そして、彼らの顔にVサインがあったのを私は見逃さなかった。 車は一路南下するように見えて、日産から50メートルほど先の信号を右に曲がるべくハンドルを時計回りに回転させていた。道を隔てて反対側にトヨタの大きな看板がある。妻の、今度はあっちに行こう!との声を聴きながら、まださめやらぬ、日産の営業マンのありがとうございます!の感謝の声を耳に残し、私は幾分かの呵責を感じながらも、車をUターンさせて向いのトヨタへと向かわせたのだ。 あれから何ヶ月過ぎただろうか…。その日に買ったトヨタの車に今は乗っている。だが、車は買わなかったが日産自動車の株主さんにはなった。460円で株を買ったのだ。今530円を越えている。よっしゃぁ〜〜!日産がんばれ〜〜!…と今では心底応援しているのだった。(実に我が身勝手な話ではあるが…) (ふゆき) |
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