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体育会系(upload.9.26/pm7:10)

オリンピックでは高橋が金メダルを取り、まさに世の中スポーツ一色の秋。そして運動会の季節だ。日曜日はうちの子の運動会だったが、10分程度で私は逃げた。今日は確か川上シュンローは子供の運動会の筈である。よく体育会系のノリとか、文化系のノリとか言う言葉を聞く。大学の種別みたいだが、確かに自分は痩せているし、体育会系ではない事は確かだ。体を動かすのが面倒である。川上シュンローもまた、肉質はともかくとして見た目は体育会系のようでいて、ぶよぶよなので全然違う。

私が最初に入った会社の同僚に浜上君という同期の桜が居た。長崎出身で長崎弁がなかなかぬけない彼とは何だかウマがあっていつも一緒にいたし、独身寮の隣の部屋同士でもあった。痩せ形の彼は、音楽と本を読むのが好きなナイーブな田舎出身の好青年という趣だった。レコードを聴きながら、よく感傷に浸ったものである。

その彼が体がなまってきたし、朝ジョギングでもしようかと思ってる…と私に言った。20才そこそこのまだ体力があり余っていた時だったので私もやろうかな…とうっかり口をすべらせてしまったのが間違いの元だった。朝5時に起きるのだと言う。元々夜行性の私が朝5時に眠りにつく事はあっても、起きるなどとは到底考えられなかった。「おいが、起こしちゃるけん!お前も一緒に走りんさい!」

約束をきっちり守るのが長崎県人の良いところのようだ。まだ夜明けを迎える前に、彼は言葉通り私を叩き起こしに来た。まあ、同じ釜の飯を食う、同期入社の隣部屋の友人である。2〜3日はつき合うか…と私も眠い目をこすってジョギングを開始した。

ところが奴のジョギングと来たら、国道を北に向かって、ぐるりと町を一周してそこから近くにあった女子大のグランドまで走るのだという。そ、それってジョギングって言うかああ、早朝マラソンちゃうんか!その女子大は急な登り坂になっていて走った後、そこを駆け上がるのは容易な事ではない。事実私の脚は上がらず、前へ進んでいるのか後退しているのか分からない位であった。だが奴はおいは先にいって待ってるけん!…と言い残し、跳ねるように坂を登って行って視界から姿を消した。棒のようになった脚を引きずって女子大のグランドにたどり着いた私を待っていたのは、凍り付くような光景だった。浜上君はグランドをウサギ飛びで一周していたのだ。文化系のフリして、き、君は実は体育会系だったのか。こ、こいつはどこまで体力が有り余っているんや…と、私は恐れおののいた。だが地獄はそこから始まった。

体育会系の身上は粘りと根性である。パチンコの必勝法みたいなものだ。そこに地方出身者の誠実さが加わると鬼に金棒である。彼は根気よく私を起こすのだ。しかもベッドの布団をとっぱらって体を揺り動かして叩き起こしてくれる。「起きんしゃい!根性なかね〜!さ、ジョギングするとよ!」どうにもこうにも辛い。たまらん。あっという間に私は音を上げた。
遂に私は部屋のカギを掛ける決意をした。次の朝、カギが掛かっている事に気がついた浜上君は激怒した。「おい!たなかぁ〜!カギばあけんしゃい!何しとるとよ!」私は目は醒めていたが決して起きなかった。もう走るのは嫌だった。だが体育会系の身上は粘りと根性だ。簡単に諦める浜上君ではない!ドアを何度も叩き、声を枯らして私を起こそうとした。ドアの横は模様の入ったすりガラスになっていて、彼の影が映る。動かずそっと薄目で見ると、そこには仁王立ちして頑と動かずにドアを叩き続け私をなじる浜上君の姿が映っていた。

根性なかね〜!

10分程経ってから、彼はこう言い残して走り去った。根性なくてもいいや。意気地なしの情けない男でもいいや。走るのが面倒だった。体育会系にはかなわんなあ。もうDNAに後から刷り込まれたように今でも思うのだった。

(ふゆき)