夜になると寝るまでの間インターネットにふらふらとアクセスする癖がついてしまった。家ではIP接続なので別にテレホも何も関係ないのだが、そういう人は多いに違いない。どんどん寝不足になる。睡眠不足は現代人の慢性の病気みたいなものかもしれない。夜の娯楽と言えば深夜放送だった時期があった。高校の頃だ。誰もが通り抜ける、これも青春の疫病みたいなもんだ。 当時はハガキ運が非常に良かった。出せば必ず読まれる。確率は9割位あった。駄洒落のコーナーにたまに投稿した事がある。(何か今とあまり変わってないようでめげる)中味は自信があったが、それでもなお、その頃はハガキに絵を描く事に力を注いだ。捨てるには勿体ないイラストを挿入する事でまず目に止まるようにしていた。目に止まって読んでもらえれば何とかなる…と思っていたからだ。 田舎のローカルラジオ局では当然深夜放送などやっている筈もなくメジャーなラジオ局の傘下に入って深夜放送を中継しているだけだった。結構ひねくれものだった私は誰もが聞くオールナイトニッポンは避けていた。夜になると朝鮮放送に混じって辛うじて入る大阪朝日放送のラジオを聴き入った。田舎ではどうせ誰も聴いていないだろうという希少価値感があったからだ。ABCヤングリクエストという番組で、当時、笑福亭仁鶴が人気絶頂の頃で、仁鶴頭のマッサージという番組に時折投稿した記憶がある。 読まれるとボールペン、その日の優秀な作品ひとつだけにノートが当たる。ノートを何冊かもらった。何度か読まれると、新鮮さを失い飽きてしまって情熱を失うのは人の常。中年の夜の夫婦生活みたいなもんである。それでも時折思い出したように書いた。それは見事な笑いのネタが出てくると、負けられるか…という挑戦的な気持ちがふつふつと沸き上がってくるからだった。そして周りは誰もその事を知らないという自分だけの秘密に対する優越感が投稿心をくすぐった。 ある時、やっぱりハガキを読まれて満足しきった朝…。私はバスに乗って、高校へと向かっていた。途中で年下の学年の同じ学校の生徒が乗って来て、私の前の席にいたクラスメートとおぼしき生徒の横に座った。殆ど気にしていなかったのだが、ひとつの言葉が聞き耳を立たせた。 昨日、聴いたか?ABCのヤンリク。この辺の奴がハガキ出してた。あほや、バカや、あんなしょーもない事をよく書くわ、神経疑うわ…等、罵詈雑言を浴びせたおした。そ、それは俺や〜〜、悪かったな〜〜!と言いたいのをこらえながら、腹立ちよりも誰も聴いていないと思ったのに聴かれていた事に対する失望感の方が大きかった。それは…密かに恋い焦がれていた憧れの人がしょーもない男とホテルに入ってしまったのを見てしまったかのような…(ちょっと違うな)それはあたかも自分の大切にしていたお気に入りの服と同じものがダイエーで1980円で売られていたかのような…(全然違う)。な、何でもいい、そういう気持ちだったのだ。 あれから四半世紀以上が過ぎ去った。人は成長し、過ぎ去った事実は思い出と昇華していく。だけど、私は少しも変わっていないような気がして仕方ない。ワールドボーイを携えて音に聴き入った少年は、ワールドボーイがパソコンに変わっただけで少年のままなのだ。何!おっさんになったってか、うるせ〜!俺が少年だと言ったら少年なんだ。やかましいわ!ほっとけ! 少年の未来がますます明るいように願って、合掌。…って、俺はまだ死んでへんで。 (ふゆき) |
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