仕事でレンタルビデオの通販のチラシを頼まれた事があった。まだMacintoshでDTPはその存在すら世に現していなくて、私もまだ持っていなかった頃のお話だ。ビデオのタイトルが150もあり写真がびっしり入るというものだった。アダルトビデオが多かった。うちは女の子のアシスタントがいるので、まさかその子にやってもらう訳にもいかない。それは勘弁してくれ…と言ったのだが、文字と写真の枠だけでよいとの事だったので、つき合い上仕方なく引き受けた。 枠と文字だけなので、仕事は簡単である。 だが、写真があまりに多かったので写真分解代(当時1点1000〜1500円ほど掛かった)を節約したかったのだろう。ビデオのパッケージをそのまま写真に撮影してプリントを原寸で張り込めないか…と言う。全部原寸でプリントを貼り込めば多少品質は落ちても分解は一度で済むからだ。複写台の上にカメラをすえて撮れば出来ない事はない。だがカメラ屋に出すのがいやだった。どう考えたって変だ。 フィルムを持っていって引き取るのはするからお願いだ…と懇願されて渋々引き受けた。…とは言っても決まった寸法に撮るというのは簡単ではない。目盛りを入れてカメラの位置を少しづつ変えて方眼紙を撮影して、それを定規で計って、どの位置から撮影したら良いのか決めた。あとは機械的にパッケージを置いて、シャッターを切りまくるだけである。作業はみんな帰った後でしかできない。 翌日、カメラ屋に持っていった。ところが人間なんて信用できないものだ。あれほど、懇願して引き取りはすると言ったのに、忙しくて行けないから行ってくれと言う。冗談じゃない。あんな裸のビデオの表紙ばかり撮影した写真をどんな顔して取りに行けと言うのだ。そんな事は繊細な神経の俺にできる筈がない。どんな事があってもできないと断固拒否の姿勢を貫いた。 そして、カメラ屋さんにフィルムを引き取りに行った…。何でやねん、何で俺が引き取りするねん。カッコ悪いやないか。まだ、本物のヌードを撮ってる写真の方がましというものだ。ビデオの表紙を撮影するなんざ、どう考えてもマニアックでおかしい。これは仕事のいっかんで…と言い訳するのもおかしい。 カウンターには若い女の子がいた。いらっしゃいませ。写真でございますね。これですね。これでよろしいでしょうか…。お確かめください…と言いながら、しなくても良い確認のために写真を取り出してトランプのように並べよった。そこに写るは、霰もない女の裸、裸、ぎょっとした顔を一瞬したのを私は見逃さなかった。そして何事もなかったかのように、領収書を取り出した。お、俺の事務所の名前を書くのか…。それはいやじゃ。こんな仕事ばかりしてると思われるではないか。ちゃうちゃう。心の中で俺は訴えたのだが、女は、少し蔑むような目で俺を見下ろした。そして、その口元は何も言わなかったが、こう言っているように俺には聞こえたのだ。 あんたも好きやなあ…。 ま、待て〜〜!お、俺は無実だぁ〜〜! だが、何故だか知らないが、その受付の女の子の服を透視して、裸が見えてしまったのはどうしてだろうか…。 ああ、それにしても忙しい…。たまらん。二日間家に帰れないというのは最近ついぞなかった事だ。人手が足りない。誰かきてください…。とここで求人しても始まらない。遅れに遅れても、こうしてアップする根性を誰か誉めてください。 (ふゆき) |
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